ロイヤルウースター Loving Cup
 1905年 Harry Davis

18世紀ダービーにおいてZachariah Boreman の風景画は
非常に緻密でKPMの緻密画のような描き方であり
遠近法を取り入れている。
私的には、18世紀ダービーにおいては
Thomas'Jockey'Hillの描く風景画が好きである。
空の占める比率が高く地平線上に
薄い水色の色彩を入れる事に
より水彩画風にぼかして美しい。
さすがに、ダービーは上手い。

しかし、風景画においては、ロイヤルウースターの
天才絵付師Harry Davis(1885-1979)に
並ぶものはいないと思う。
R.Rushtonも上手いが、Harry Davisの作風を
真似しているような感じがある。
建築物を描く時、茶色の細い線を使って外形線を
描くところなどが似ている。
だが、Harry Davisの建物の茶色の外形線は、
特に縦の線に効果的に使われている。
またDavisの特徴は他の画家に比べると
画面の左右手前はもちろん
遠くの方の細かい所さえも手を抜かずに
きっちり描きこんでいる所だ。
それでいて水彩画のようにぼかして
幻想的に仕上げてある。

このLovingcupにおいては、水面に写った建物も丁寧で
手前の釣り人の釣り竿の先を見ると
円状の水の波紋まで描き
こんである事には驚いてしまう。
また、水面の穏やかな波の揺れが
白い光で描かれているのがわかる。
このLoving cupにサインはないが
1905年Harry Davis、20才の作であると思う。
建物の特徴的な筆使い、また後面の花の描き方が
「アンティークカップ銘鑑」(和田泰志著)に掲載の
Harry Davis作のC&Sの花の描き方ととても似ている。

このLoving cupに関してはオーストラリアの
HarryDavisコレクターの方に鑑定してもらって
95%Harry Davisの作であるとして良いとの事であった。
残り僅かの可能性としては
John Stinton か Rushtonが考えられるが
Davisであると考えた方が濃厚であるとの結果だった。

ペアーの中の一つにしかサインをしなかった場合もあるので
時としてサインのないものもあるとの事である。

ただサインがあったら私には買えなかったので
なかったお蔭で出会えたと感謝している。