そういえば昔、作曲家に憧れた…


 子供の頃から音楽には縁がなかった。ただ、保育園では歌ばかり歌わされていたので、微かに絶対音感らしきものがあるような気はする。相対音感はどうか?丁寧に聴いて歌えば正しく歌えるようであるが、適当に歌うと調子を外すこともありそうである。そんな私であるが、中学1年の時に音楽の素晴らしさに目覚め、独学で楽典、楽器学、和声学、対位法、ドイツ語を勉強し、高校の作曲編曲部ではソプラノのメロディーが与えられて四声の合唱曲にする課題で、対位法的な処理で内声部を動かして先生を驚かせる位にはなっていた。高校2年の夏休み、音楽の宿題は自由に作曲して来いというのが毎年出ていたのであるが、その年だけ16小節に限定されてしまった。音楽の先生曰く、お前が9月に分厚いスコアを持って来るつもりなのは分かってると…。仕方がないので2部形式でオルガン用の小品を作り提出した。
 大学に宗教音楽研究会という幽霊サークルがあった。学園祭でキリエを発表した(スコアだけ張り出して他所へ遊びに行った)のは覚えているが、他にも色々と作ったような気はする。よく覚えていない。それから四半世紀、音楽からはすっかり遠ざかっていた。
 ところで先ほど何気なく家の中を片付けていたところ、古い楽譜の束が出てきた。暫し眺めて見たが、一体全体これは何なのだと、自分で呆れ返ってしまったのであった。
 キリエのスケッチ、これは確かに覚えている。最初短音階で作ったが、途中から教会旋法に変えたのであった。オーケストラを付けたスコアは行方不明であるが、この曲はアカペラもいいかも知れない。しかし、これはどうやら最終版ではないようだ。あれ?グローリアが出てきた。楽譜をめくって行くと、殆ど作曲が終わっている。サンクトゥス・ベネディクトゥスにアニュス・デイ。もうちょっとでミサ・ソレムニスが完成するではないか。しかし、それにしても単調でつまらない曲ばかり作ったものである。
 レクイエムのイントロイトゥス。確かに作った覚えがある。トラクトゥス??トゥーバ・ミルムも出てきた。そういえばディエス・イレやラクリモサも作った筈だが、楽譜が見当たらない。楽譜の束をめくっていくと、全く記憶にない別のキリエのスケッチが出てきた。よく見ると十二音技法で書いてある。
 ドイツの詩に曲をつけたリートもある。交響曲ト短調?? 作曲年が書いてある。中学3年生の時である。4管編成のオーケストラにハープとパイプオルガンまで入っていて、百数十小節のスコアが束ねてあった。第一楽章は展開部の途中で切れているが、第二楽章の冒頭も出てきた。メロディーも和声も管弦楽法も稚拙である。よくもまあ、こんな悪戯書きを延々とやっていたものである。
 改めて自分には音楽的な才能がないことを思い知らされた。やはり音楽は聴いているに限る。




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