では、ここでまず、大将棋と中将棋の概要についてまとめておこう。大将棋は図1のように双方65枚ずつの駒を15×15の盤に並べ、中将棋は図2のように双方46枚ずつの駒を12×12の盤に並べる。何れの場合にも、現代の将棋とは異なり、取った駒は使えない。
車 |
馬 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
馬 |
車 |
車 |
刄 |
豹 |
虎 |
象 |
虎 |
豹 |
刄 |
車 |
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牛 |
猪 |
狼 |
凰 |
子 |
麟 |
狼 |
猪 |
牛 |
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車 |
龍 |
行 |
行 |
行 |
馬 |
王 |
王 |
王 |
馬 |
行 |
行 |
行 |
龍 |
車 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
人 |
人 |
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人 |
人 |
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兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
車 |
龍 |
行 |
行 |
行 |
馬 |
王 |
王 |
王 |
馬 |
行 |
行 |
行 |
龍 |
車 |
牛 |
猪 |
狼 |
麟 |
子 |
凰 |
狼 |
猪 |
牛 |
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車 |
刄 |
豹 |
虎 |
象 |
虎 |
豹 |
刄 |
車 |
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車 |
馬 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
将 |
馬 |
車 |
車 |
豹 |
将 |
将 |
将 |
象 |
将 |
将 |
将 |
将 |
豹 |
車 |
車 |
行 |
虎 |
凰 |
麟 |
虎 |
行 |
車 |
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行 |
行 |
車 |
馬 |
王 |
王 |
子 |
王 |
馬 |
車 |
行 |
行 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
人 |
人 |
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人 |
人 |
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兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
兵 |
行 |
行 |
車 |
馬 |
王 |
子 |
王 |
王 |
馬 |
車 |
行 |
行 |
車 |
行 |
虎 |
麟 |
凰 |
虎 |
行 |
車 |
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車 |
豹 |
将 |
将 |
将 |
将 |
象 |
将 |
将 |
将 |
豹 |
車 |
ここで、各駒の動き方についてまとめておく。なお、黄色で塗りつぶした駒は中将棋に使用されているものである。
駒名 | 動き方 | 成駒 | 動き方 |
仲人 | 前後に1コマ | 酔象 | 前左右斜め1コマ |
歩兵 | 前に1コマ | 金将 | 前後左右斜め前1コマ |
飛車 | 前後左右へいくらでも | 龍王 | 前後左右へいくらでも、斜めへ1コマ |
飛龍 | 斜めへ1〜2コマ | 金将 | 前後左右斜め前1コマ |
横行 | 左右へいくらでも、前後へ1コマ | 奔猪 | 左右斜めへいくらでも |
竪行 | 前後へいくらでも、左右へ1コマ | 飛牛 | 前後斜めへいくらでも |
角行 | 斜めへいくらでも | 龍馬 | 斜めへいくらでも、前後左右へ1コマ |
龍馬 | 斜めへいくらでも、前後左右へ1コマ | 角鷹 | 前へ1コマを1〜2回または居食い、左右後と斜めへいくらでも |
龍王 | 前後左右へいくらでも、斜めへ1コマ | 飛鷲 | 斜め前へ1コマを1〜2回または居食い、前後左右斜め後ろへいくらでも |
奔王 | 前後左右斜めにいくらでも | ||
猛牛 | 前後左右に1〜2コマ | 金将 | 前後左右斜め前1コマ |
嗔猪 | 前後左右に1コマ | 金将 | 前後左右斜め前1コマ |
悪狼 | 前左右斜め前に1コマ | 金将 | 前後左右斜め前1コマ |
麒麟 | 前後左右に2コマ、斜めに1コマ | 獅子 | 前後左右斜めに1コマを2回まで |
鳳凰 | 前後左右に1コマ、斜めに2コマ | 奔王 | 前後左右斜めにいくらでも |
獅子 | 前後左右斜めに1コマを2回まで | ||
反車 | 前後にいくらでも | 鯨鯢 | 前後と斜め後ろにいくらでも |
猫刄 | 斜めへ1コマ | 金将 | 前後左右斜め前1コマ |
猛豹 | 前後斜めへ1コマ | 角行 | 斜めへいくらでも |
盲虎 | 後左右斜めへ1コマ | 飛鹿 | 前後にいくらでも、左右斜めへ1コマ |
酔象 | 前左右斜めへ1コマ | 太子 | 前後左右斜めへ1コマ |
香車 | 前にいくらでも | 白駒 | 前後と斜め前にいくらでも |
桂馬 | 2列前の左右へ | 金将 | 前後左右斜め前1コマ |
石将 | 斜め前へ1コマ | 金将 | 前後左右斜め前1コマ |
鐵将 | 前と斜め前へ1コマ | 金将 | 前後左右斜め前1コマ |
銅将 | 前後と斜め前へ1コマ | 横行 | 左右へいくらでも、前後へ1コマ |
銀将 | 前と斜めに1コマ | 竪行 | 前後へいくらでも、左右へ1コマ |
金将 | 前後左右斜め前1コマ | 飛車 | 前後左右へいくらでも |
王将 | 前後左右斜めへ1コマ |
ここで気が付くことは、歩兵は別にすると、大将棋にあって中将棋では使われていない駒の成駒が全て金将であることである。ここで、次のような疑問が湧いて来ることになる。
1) 実は、これらの駒の成駒も、それぞれ別のもの(例えば飛鹿を90度回転させた動きをするとか)があったのではないか?
2) 実は、中将棋が先に出来て、あとから無理矢理大将棋を作ったが、成駒まで考え付かなくて、取り敢えず金将にしておいた。
ここで、成駒が金将であることの意味について考えたい。現代の将棋では、王将・金将は成らず、飛車・角行以外は全部金将に成る。また、平安時代の将棋は大将棋(13×13の盤を使用)、小将棋(現代将棋の双方2枚落ち、または金将が1枚という説もある)ともに、王将と金将以外は金将に成ったと考えられている。この金将というのは、実は最高位の将軍という意味である。金将は中国将棋の士に相当する。飛び道具や戦車などがあったとしても、これらはあくまでも兵器であって、最高位は将軍である。したがって、成った駒は全て金将になるという最高の栄誉に浴するというルールになっているのである。
しかし、大将棋のように派手な動きをする駒が多数出来てくると、金将になっては却って弱くなってしまう。そこで、派手な動きの駒は、より豪快な動きをする駒に成るようにしたのである。その名残が、現代将棋の龍王・龍馬である。
さて、ここで上記 2) の説は、文献調査などから、ほぼ否定されている。やはり大将棋が先にあって、それを元に中将棋が考案されたようである。盤の縦横が偶数格の将棋は例外的なものであることからも、中将棋が後から作られたものであると言われている。また、「車」の付く駒は大型将棋では基本的に全て両端にあるので、飛車が両端にある大将棋のほうが自然である。
では、上記 1) の疑問にどう答えるか。筆者は次のように考えている。
大将棋のルールを定めるにあたり、
1) 走り駒が成ると、もっと派手な動きをするように決めた。
2) 小駒の成駒に、適宜走り駒を割り当てて行った。
3) 盲虎の成駒が金将では弱いので、飛鹿を考案した。
4) 残りの駒の成駒は金将にしておいた。
ここで、小駒は、走り駒に成れるものと、金将にしか成らないものに大別される。大将棋の場合、終盤での攻防を考えると、棒銀や棒銅あるいは棒豹は避け、棒鐵か棒石、あるいは棒猫、棒猪、棒狼で攻めなければならない。飛龍や猛牛も使い捨てにして良いのである。このように、2つのタイプの小駒を使い分ける醍醐味が大将棋には本来あったと考えられる。
さて、大将棋を簡略化して中将棋を作るとき、面白い成駒は全て残しておきたいと考えたのであろう。そして、金将に成る駒は、終盤のスピードアップに繋がらないので、思い切って全部省略してしまった。このようにして、終盤がスリリングなゲームである中将棋が成立した。これによって、誰もが疑問に思うところの、中将棋には桂馬がないことの理由も合理的に説明されるのである。また、銀将・銅将を合わせた動きの猛豹が銅将よりも外側にあり、駒も小さいのは、桂馬の空いた位置に無理やりはめ込んだからで、元来大将棋ではもっと大きな駒が使用されていたに違いない。
ほんまかいな? (=^^=;; ← やはり無責任猫
付記
名古屋大学の武田教授の研究によると、中将棋が先に成立し、後に大将棋が成立したと考えられるとのことである。しかし、まだ上記の問題が完全には説明されてはいないので、今後の研究が待たれる。