8インチフロッピーディスクの話 −1バイトが貴重だったあの頃−


 この文章はメールマガジン,「シスアドちゃんこ鍋」第34号(2002.11.14)に掲載されました。



8インチフロッピーディスクの話 −1バイトが貴重だったあの頃−

今みなさんがお使いのパソコンは、少々古いものでもハードディスクが10GBくらいあって、RAMは64MB以上あるのではなかろうか。私が先日買ったパソコンは、30GBに256MBあり、ご他聞に漏れず、ハードディスクは3割くらいしか使っていない。

みんながこれくらいの容量を持っている時代であるから、「こないだの宴会の写真送ってくれ」と言うと、合計1MBくらいの画像がメールに添付されて送られて来たりする。

しかし、つい5〜6年前を思い浮かべれば、ハードディスク2GBにRAMが32MBで上等であった。10年前なら、ハードディスクが100MBでRAMは2MB程度だったのである。そして、今回のお話はそこから更に10年前、ハードディスクなどごくごく特殊で高価なもので、RAMは64KB程度の時代の話である。

お手許にフロッピーがあったらご覧戴きたい。約9センチ角の、大抵は黒い色をしたプラスチックのケースの中に、直径3.5インチ(約89mm)の円盤が入っているものである。ここに1.44MBの情報が記録されている場合が多い。Windowsなどでは、これを読み書きする装置を、「3.5インチFDD」と表現しているが、これはその円盤の直径を表しているのである。

では、3.5インチ以外のサイズのフロッピーがあるのかというと、以前にわかちちさんの記事にもあったように、かつては5インチと8インチのものが存在したのである。

5インチと8インチのフロッピーはほぼ相似形であるが、3.5インチのものとは形がかなり異なっている。黒い四角のプラスチックの中に円盤が入っているのは同じであるが、3.5インチのように硬いケースに入っているのではなく、ふにゃふにゃの四角の枠に円盤が入っていて、真ん中は昔のEP盤レコードのように穴が開いていた。そして、ヘッドが触れて読み書きする部分は細長く穴が開いていて、手で触らないように注意しなければならなかったのである。

その5インチと8インチにも、細かい点で相違があった。
まず、お手許の3.5インチをご覧戴きたい。裏側(真ん中に銀色の丸い金具のあるほう)で、シャッターを上にすると、右下にプラスチックの小さな四角い部品がある。これをカチッと押し下げると、書き込み禁止状態になり、読み込みは出来るが、書き込みが出来なくなる。

では、ふにゃふにゃの5インチではどうしたかというと、ふにゃふにゃのところにこんな部品を付けることは出来ない。5インチの場合、ふにゃふにゃの枠に四角い小さな切れ込みがあって、ここに付属のシールを貼り付けると、書込み禁止になったのである。

ふにゃふにゃの8インチはもっと原始的であった。これを書込み禁止にするためには、ふにゃふにゃの枠の指定された場所をはさみで切り、切れ込みを入れることによって書込み禁止になったのである。カセットテープの爪を折るよりも面倒なものであった。

ところで、3.5インチのフロッピーのシャッターを、中身に触れないように注意しながら、そっと開けてみよう。長方形の穴の中に円盤が覗いている。裏側を見ると、やはり全く同じ穴が開いていることに気付く。
実は、フロッピーディスクドライブには両側にヘッドがあり、円盤の両面を使用しているのである。

5インチのフロッピーも8インチの後期も同様に両面を使用し、1枚で約1MBの記憶容量があったので、現在の3.5インチと殆ど同じ感覚で使用することができた。ところが、この1MB入る後期の8インチは「両面倍密度」と呼ばれる改良型で、初期は「片面単密度」つまり、片面しか使用せず、256KBしか記憶できなかったのである。

3.5インチはシャッターが付いているし、左右対称形ではないので、裏返しに入れると途中で引っかかって入らない。ところが、ただの四角いふにゃふにゃの枠に入っただけである8インチフロッピーは裏返しに入れても入ってしまう。そこで当時のマニアが考えたのが、片面単密度の8インチの枠に左右対称に切れ込みを入れ、裏返しに入れて裏側も使ってしまうことである。これによって両面単密度となり512KB記憶できるようになる。今でこそ安いフロッピーであるが、当時は1枚が数千円もしたので、このような裏技を考えるマニアが出てきたのである。

あの頃は本当に1バイトが貴重だった。フロッピーの中の要らないファイルを消しては、繰り返し使ったものである。

そうだ、一度ハードディスクの中の要らないファイルを整理しよう!



ITバブルを茶化すコーナー    化け猫屋敷に戻る   化け猫屋敷掲示板(=^^=)m   級シスアド連盟