音 | A | Ais(B) | H | C | Cis(Des) | D | Dis(Es) | E | F | Fis(Ges) | G | Gis(As) | A |
平均律周波数 | 440.00 | 466.16 | 493.88 | 523.25 | 554.37 | 587.33 | 622.25 | 659.26 | 698.46 | 739.99 | 783.99 | 830.61 | 880.00 |
比 | 1 | 2^(1/12) | 2^(2/12) | 2^(3/12) | 2^(4/12) | 2^(5/12) | 2^(6/12) | 2^(7/12) | 2^(8/12) | 2^(9/12) | 2^(10/12) | 2^(11/12) | 2^(12/12) |
純正率周波数 | 440 | 495 | 528 | 594 | 660 | 704 | 792 | 880 | |||||
比 | 0.8333 | 0.9375 | 1 | 1.125 | 1.25 | 1.3333 | 1.5 | 1.6667 | |||||
うなり | 0.00 | 1.12 | 4.75 | 6.67 | 0.74 | 5.54 | 8.01 | 0.00 | |||||
誤差(%) | 0.0000 | 0.2256 | 0.8994 | 1.1230 | 0.1129 | 0.7874 | 1.0113 | 0.0000 |
2)フラジョレット
2)金管楽器:本来は倍音のみ
2.弦楽器の周波数の計算
1)弦の振動と周波数の理論
ヴァイオリン、ギター、三味線・・・、何でもいいからこの類の弦楽器を思い浮かべてみていただきたい。低い音の弦は太く、高い音の弦は細くなっている。また、左手で弦を押さえて短くすると音が高くなる。この程度は中学1年生でも学校で習って知っていることである。そして、調律の際には弦の張り方を調整するが、強く張れば音が高くなり、弱く張れば音が低くなる。
ここで、物理で習う公式を思い出してみよう。振動数をfとすると、f=n/2L(S/ρ)^1/2となる。弦の長さが倍になればオクターブ下がり、弦の張力を4倍にすればオクターブ上がり、弦の太さが2倍になれば(線密度は4倍)オクターブ下がる。通常聴こえるのはn=1の基本振動数であるが、様々な倍音も聴こえ、豊かな音色となるのである。
弦楽器の最低音は5弦コントラバスの最低音(約33Hz)であろうか。あるいはピアノの最低音(約27.6Hz)、これくらいになると基本振動は人間が聴こえる限界に近付いており、主に倍音を聴いて音階を判断していると言われる。それはさておき、弦楽器は通常の場合基本振動がはっきりと聴こえ、それが認識されているのである。しかし、弦の何分の一かの部分を指で軽く押さえた上で演奏すれば、基本振動の数倍の振動数の音がメインになることがある。これが所謂フラジョレット、あるいはハーモニクスと呼ばれるものである。ヴァイオリン属の楽器では時折用いられる技法であるが、日本の琴でも用いることがあるそうである。
3.管楽器の周波数の計算
1)木管楽器:開管振動と半開管振動
物理で習った話を思い出してみよう。波長をλとすると、開管振動は気柱の長さ(実際には開口端補正を加える)が根音のλ/2となる。通常のフルートの長さは約60センチ強だから、音速を340m/sとしてv=fλの公式から計算すると、およそ280Hzの音が鳴ることになる。実際には開口端補正がかなりあり、C即ち約264Hzの音が出ることになる。オーボエは約70センチで、Bの音が出ることになっている。倍音はλ、3/2λ、2λ・・・と出ることになっているが、実際に使うのは口元のキーを開きオクターブ上げる2倍音である。
一方、半開管振動では気柱の長さがλ/4となる。クラリネットはオーボエよりも短いような気がするが、実際にはかなり低い音が出る。通常用いられるB管の場合、最低音はEsである。クラリネットはベルが大きく開いているので、実際の管長を55センチとすると、λは約155Hzとなり、Esの音に一致する。さて、半開管振動の場合、倍音は3/4λ、5/4λ・・・である。左手親指のキーを開けると、1オクターブではなく1オクターブ半高い音が出る。そのため、他の木管楽器に比べて音域が広く、また倍音を使わずに12度以上の音を出す必要があるため、キーの数が多くなるのである。なお、開管振動の倍音はちょうどオクターブ上で問題ないが、半開管振動の場合、振動数が3倍、すなわち純正律の1オクターブ5度上になる。クラリネットの高音域は他の楽器よりもごく僅かに音が高くなる傾向があることになるが、通常は気にならないレベルであろう。
ちなみに、マリンバ等の共鳴管が半開管(底が閉じている)になっているのは、低音域で管の長さを抑えるためであるが、これによって特にマリンバはどこかクラリネットを思わせるような少しこもった音色を持っている。共鳴管を折り曲げた開管にしたら、文字通り底抜けに明るい音色になるのであろうか。
トランペットやホルンなどの金管楽器にはバルブが付いていて、自由に音階を変えられるが、これは19世紀頃に完成された技術である。かつての金管楽器にはバルブがなかった。そうすると、どのような音が出るのか。
まず、トランペットのB管は管の全長が約1.4メートルである。これなら根音は約121Hzとなるが、実際には開口端補正を加えてBの音が出るのである。しかし、通常はこの音は使わない。使わないと言うよりは、余程の技術がないとこの音を出すことは出来ないのである。通常はその2倍の周波数の音が最低音で、次は3倍のF、4倍のB、5倍のD、6倍のF・・・しか出すことが出来ない。つまり、バルブのないトランペットは、ド・ソ・ド・ミ・ソ・(シ♭)・ドの音しか出せなかったのである。したがって、古典派の音楽ではトランペットの使い方はファンファーレのようにドミソの音しか使わないことになる訳である。この音階は勿論純正律のものである。
4.気温の変化による音程の狂い
中学の音楽の時間のことである。何年生の時か忘れたが、1学期の終わりごろ、リコーダーのマウスピースの部分を完全に奥まで差し込まず、2ミリ程開けるように言われた。暑い日はリコーダーの音が高くなるので、管を伸ばせば丁度良くなるとの説明であった。
あるいは管楽器を演奏される方なら、楽器が冷えている時と暖まった時で音程がずれるために苦労されたことがあるであろう。例えばクラリネットのA管をずっと吹いていて、急に冷えたB管に持ち替えたり、長い長い休符の後に金管楽器がやっと登場した場合など、どうやって音程が合うのか不思議な気さえするものである。
ここではこのような音程の違いがどうして生ずるのか、そしてピアノや弦楽器はなぜ音程が変化しないのかについて説明したい。
音速は約340m/sと言っているが、実は気温によってかなり変化する。気温をt[℃]とすると、音速は(331.5+0.6t)[m/s]となることをご存知の方も少なくないと思う。ここで改めて、上の弦楽器と管楽器の音程が定まる理論をご覧戴きたい。
弦楽器の音程は弦の長さと張力と線密度の関数になり、これによって振動数fが決まる。そこには音速は関係していないので、気温が上下しても(弦の膨張・収縮が無視できるならば)音程は変化しないのである。ところが管楽器は管の長さによって波長λが決まる。ここでf=v/λであるから、λが決まってもfは音速に比例して変化することになるのである。
さて、中学の音楽の授業での話を検証してみよう。あれは確かアルトリコーダーだったと思うが、取り敢えず左手を全部押さえたCの音辺りで、管長約30cmということにしてみる。これを2ミリ伸ばせば波長は150分の1長くなり、振動数はそれだけ小さくなる。これは気温が約3.8℃上昇したときの音速の変化を打ち消す値となる。実際には気温がもっと高くなっていたと思うが、寒い日でも吹いていれば管内が暖まるので、きっとこれくらいの補正でいいのであろう。