もしパソコンが住宅だったら
この文章はメールマガジン,「シスアドちゃんこ鍋」第26号(2002.3.1)に,小説「シスアド夢十夜」(第八夜)として掲載されました。
こんな夢を見た。
新築の一戸建て住宅を購入し,新しい生活が始まった。
2階の6畳の間にテレビを据え付け,アンテナを繋ぎ,コンセントを差し,スイッチを入れた。ところがテレビはうんともすんとも言わない。
私は引越の輸送でテレビが壊れたのだと思い,電器屋を呼んだ。
電器屋はヒューズを取り替えれば直るでしょうと言いながら,テスターでテレビの中を調べ始めた。
「あれっ。」
電器屋が叫んだ。
「化け猫さん,電気が来てませんよ。」
なんと,私がテレビを差していたコンセントは壊れていたのである。
別のコンセントに差し込むと,テレビは何の問題もなく映った。
私は電器屋に出張料5千円を支払う羽目になった。
私は不動産屋に抗議した。新築なのにコンセントが一つ壊れているとは何事だと。
すると,不動産屋は言った。
「化け猫さん,コンセントの一つくらい,なくても困らないでしょう。
そんなの普通ですから,我慢して下さい。」
この業界ではこれが普通で,補償する義務などないとのことであった。
半年ほど経ったある日,突然1階の台所の扉が開かなくなった。
調べてみると,2階に置いた本棚の重みで歪みが生じたためであった。
私は不動産屋に抗議した。不動産屋は言った。
「この家は2階に本棚を置くことなんか想定していません。とりあえず,本棚を動かしてみて下さい。」
更に半年後のある日,外から帰ってくると家がない。
火事で全焼していたのである。
警察と消防の調べによると,風呂場の天井裏にあった水道管から徐々に水が漏れ,すぐ側を走っていた電線に触れてショートし,発火したもようであった。
この家を販売した不動産屋も,建築に当たった各業者も,一切責任を問われることはなかった。
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