「私、○○生命の社員になっているんです。」
「え、保険の勧誘をなさってるんですか?」
「違います!」
「私、これでも父の会社の社員なのよ。」
「え、あの有限会社化け猫商店の。へえ、化け猫ちゃん、働いてるんだ。」
「違うわよ。社員になってるだけ。」
「なぁんだ、税金対策でお給料貰ってるのね。」
「何言ってんの、違うってば!」
この二つの事例、何が違うのか分からない人も多いであろう。私の経験では、商学部や経済学部を卒業している営業マンが分からない可能性が高い(爆)。商法なりなんなりを読めば分かるのであるが、社員というのは従業員のことではない。本来は株式会社以外の形態の会社に出資している人間のことをいうのである。
最初の事例から見てみよう。生命保険会社は多くの場合相互会社の形態を取っている。相互会社とは、みんなで出資して利益を分かち合う会社であり、生命保険に加入した全ての人が出資者すなわち社員となるのである。生保の外交員は(実際には保険に入っているのでその人自身も社員であるが)社員ではなく、従業員(職員と呼ぶことが多いらしい)としての立場で活動している。生保の社長も決して生保のオーナーではなく、単にその相互会社のマネジメントのために雇われた従業員に過ぎないのである。
次の事例は有限会社である。有限会社についてはもともと商法に規定がなく、有限会社法によって別途定められたが、現在ではミニ株式会社という位置づけと考えてよかろう。株式会社の出資者は株主と呼ばれるが、有限会社の出資者は社員と呼ばれる。したがって、この化け猫ちゃんは、父の会社の資本の一部を自分の名義で所有しているのである。
ちなみに、株式会社には社員というものは存在しない。多くの大企業が株式会社となった現在、従業員という言葉のイメージが余り良くないので、一般に社員と通称されるようになったのであろう。したがって、「○○株式会社の社員には、決して悪い人間は存在しません」と言っても、絶対嘘にはならないのである(爆)。
ところで、有限会社はどうして有限会社と言うか。それは無限会社に相当する二つの会社形態に対応するものだからである。有限会社の社員は、もしその有限会社が多額の負債を抱えて倒産しても、その責任を問われることはなく、自分が出資した金額の損をするだけで済む、つまり責任が有限なのである。では、無限会社というのがあるのか? 無限会社という名前ではないが、合名会社と合資会社の二つの形態が存在する。合名会社は社員全員が無限責任である。合名会社が負債を抱えて倒産した場合、社員全員の連帯責任で支払わなければならない。一方、合資会社には無限責任社員と有限責任社員が存在する。無限責任社員(複数いてもよい)がオーナー社長で、有限責任社員は一定額の出資でサポートする応援団である。合資会社が倒産した場合、有限責任社員は自分の出資額を限度として損をするが、無限責任社員は残った負債の全てに責任を負う。
私はある合資会社の無限責任社員になっている。普通は名刺には代表取締役とでも書くのであるが、わざと無限責任社員と書いた名刺を持ち歩いている。そして、名刺を出した相手が「無限責任社員って何ですか?」と訊くようなら、その相手が完全な技術屋でもない限りは軽蔑することにしている。
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