5年前のフランスIT事情


 これは私が某社の駐在員としてパリに2年間滞在し,帰朝後に書いた報告書の一部である。Windows95を使い始めた頃で,インターネットが一般にはまだそれほど普及していなかった時代の話である。面白いから,そのまま載せてみよう。


4)電子メール(インターネットメール)
 現在試験中であるが、本来最もコストが低い方法であり、今後本格的に検討する必要がある。この方法では文書ばかりではなく、写真、音声、動画等、デジタル情報化出来るものなら何でも送信する事が出来るので、ごく近い将来には必要不可欠な通信手段になっているであろう。
 現在の所、各情報の送信は以下の様になっている。
 文章:E−mailで文章を送信する場合、フランスのコンピューターでは日本語はしばしば文字化けを起こすので、簡単なものは英語または他のヨーロッパ語、複雑なものはファイル化して送信することが多い。日本語が正しく送信出来ることが確認出来た相手であれば通常のメールも日本語で送れる。
 写真:様々な方式の写真を送信して見たが、本社へは問題無く送れる。通常の写真や印刷物はカラースキャナーで読み取って送信する。デジタルカメラの情報はそのままコンピューターに移し、ファイル化して送信する。インターネットのホームページで見付けた写真もファイル化して送信する事が出来る。
 音声:ファイル化して送信出来る筈であり送信試験を試みたが、本社のコンピューターが整備されていないために再生出来なかった。
 動画:MPEG形式のファイルを送信する事は出来たが、本社で再生するソフトが無く、インフラの整備を待つしかないとの事である。
 さて、以上の様に、現在の所文章や写真は自由に送信出来る様になっている。したがって、急がないものはfaxよりも安価に送信出来るし、写真等は一々郵送しなくてもほぼリアルタイムで届ける事が出来るのである。
 極近い将来に国際的な回線が整備され、サーバー・プロバイダーのコンピューターの処理能力が向上した時点で、インターネットの回線を利用して本社と欧州事務所をテレビ電話で結ぶ事さえ可能になる筈である。欧州事務所は現在の設備で十分此れに対応出来るし、本社でも恐らく其の時には数万円でコンピューターの付属品を購入するだけで利用出来る様になるものと思われる。

第2節 情報通信機器による情報収集
1)ミニテル
 日本でも番号案内を有料化する時に電話帳の代わりに無料で電話番号を調べられる端末を配布する事が検討されたようであるが、フランスではこの端末が普及しており、また、通常のコンピューターにソフトウェアをインストールするだけでこのシステムが利用出来る。氏名あるいは会社名の一部と都市名を入力すれば、フランス全土の個人、法人の電話番号と住所が表示されるものであるが、広告が入っている企業では、場合に依っては数頁に及ぶ情報や地図等も表示される事がある(3611)。
 このシステムでは番号案内以外にも有料の様々なサービスが受けられる。以下に主なサービスをカテゴリー毎に列挙する。
 一般情報:各都市の1週間の天気予報の情報(3615 METEO)はブドウの生育状況の予想や、厳冬期等の出荷方法決定の参考に利用出来る。また、過去の天気・気温のデータも入手する事が出来る。また、各地方自治体のサービスでは各自治体の活動の他、その地方の情報(例えばボルドー市3615 BORDEAUXではワインの情報)のサービスも行なっている。
 交通情報:道路の混雑状況、目的地への距離等の情報サービス(3615 MICHELIN)、列車(欧州内)の時刻の案内および予約(3615 SNCF)。飛行機の時刻・サービスの案内(各社)および予約(一部)。全世界の飛行機の時刻(3617 AIRINFO)や飛行機の到着予定時刻(3615 HORAV)等。
 劇場等予約:オペラ(3615 OPERA PARIS)等の公営施設及び私営の劇場等の公演情報および予約。
 会社情報:フランス国内全企業の登記内容、決算状況等の他、欧州主要各国の企業の登記内容を表示、印刷することが出来る(3617 FAXBILAN等)。また、フランス国内の企業の登記簿抄本(Extrait K-bis)を取り出す事が出来るサービス(0836291111)もある。これらは概して料金が高いが、役所が閲覧手数料を徴収するのと同じ事であろう。
 ワイン関係:メドック地方のシャトーの案内(3615 MEDOC)等各地方の観光案内的な情報サービスの他、専門家向けのサービス(3615 OENOTEL)もあって、ワインコンクールの申し込みや結果の情報等も得られる。
 統計情報:貿易統計等の情報がミニテル上で公開されており、日本のように一々大蔵省まで赴いてマイクロフィルムを見なくても居ながらにして大抵の情報が入手出来るのである。
2)インターネット
 上記のように、フランスではミニテルが発達していて、一般の人間は大抵これで間に合うためにインターネットの普及率は極めて低い。しかし、これからの時代、フランス以外の情報も必要であるし、何よりもインターネットで世界中を瞬時に情報が駆け巡るようになったため、当事務所でもインターネットを導入することにした。接続時間無制限で月額77フランと余りにも安いので心配したが、かなり回線に余裕があるようで、大容量のデータの送受信にも余り問題は無い様である。
 電子メール(インターネットメール)の有用性については既に述べたが、様々な情報が一般に公開されていて、気に入ったものを自由に取り出せるのがインターネットであり、有用な情報を電子メールを受信するのと同様に受け取る事が出来ると考えればよい。
 パソコン通信が普及した初期には自分が作ったソフトウェアを人に見て貰いたくて無料で配布するマニアが多かったが、その傾向はインターネットになっても続いていて、パソコンを使う上で便利なソフトが多数配布されている。これによってパソコンの機能の向上、特にインターネットの情報を収集する為に必要な機能を拡張する事が出来るのである。例えば高度な技術を駆使したホームページを見るためのソフトウェアもインターネット上で配布されており、最新のシステムで供給される音声付き動画を見ようと思ったら、それを再生するソフトウェアを貰って(何箇所かマウスでクリックするだけで自動的にパソコンにダウンロードされる)から見ると云った具合である。勿論特殊なソフトウェアの中には有料のものもある。
 さて、その様にして世界中のあらゆる情報を得られる様になった。此れを利用して具体的に収集する情報としては、取り敢えず以下の様なものが考えられるが、これらに限らず順次開拓して行く必要があろう。
 ワイン関係:フランスの検索サービスで検索すると、公的機関のページが多く、各ワインメーカーのものは余り見掛けない。フランスワインは本来個々に宣伝して売るものではないのでこれは当然であろう。しかし、ブルゴーニュの大手ネゴシアン(D社は設置済み、B社は工事中)等で輸出に注力している会社はアメリカにページを開設する傾向がある。また、日本のメーカー各社もホームページを開設しており、同業他社の傾向をリアルタイムで掴む事が出来るのは大きい。ワイン関係のリンク集と各国の検索ソフトを使えばインターネット上にある大抵の情報は数分で取り出せる様になったと思うが、今後も随時整備して置きたい。また、VinexpoやVinitaly等の業者向けのワイン展示会は独自のホームページを開設しており、情報の入手や申込、ホテルの予約等のサービスが受けられる。
 フランス国内の情報:観光地やホテルの情報等は従来ミニテルの独壇場であったが、最近は外国からの観光客を意識してか、インターネット上の情報が増えて来た様である。今後は出張やアテンドに利用する他、日常必要な様々な情報が得られる様になるであろう。
 日本の情報:日本のニュース等もリアルタイムで見られるので、重大な事件が起こった場合等に貴重な情報源となろう。また、時折様々な情報を見る事によって、長期にわたる海外滞在中に日本の進歩から取り残される心配も無くなるであろう。
 パソコン関係:インターネットを含め、パソコン環境は日進月歩であり、常に情報収集を行なう必要があるし、有用なものはどんどんダウンロードして行けば良い。
3)テレフォンサービス
 フランス国内で不穏な事態が生じた場合には、日本人会のテレフォンサービスが有益である。毎日午後1時にそれ迄に入ったフランスと日本の大きなニュースを日本語で聞く事が出来る。また、滞在情報や日本人会の活動内容の説明等の情報もある。


 当時はコンピュータウイルスの大規模な被害は報告されておらず,気軽に情報やソフトウエアが無料で取れた良い時代であった。



ITバブルを茶化すコーナー    化け猫屋敷に戻る   化け猫屋敷掲示板(=^^=)m   級シスアド連盟