オペラの名訳・誤訳・珍訳

 オペラの歌詞は主にイタリア語、ドイツ語、時にフランス語やロシア語等で書かれている。これらを日本語に訳すに当たって、主に二つの問題が生ずる。一つはこれらの言語と日本語が根本的に異なるため、原詩のニュアンスを日本語で正しく伝えることが困難な場合が多々あることである。もう一つは、これらの言語を、それもやや古い時代の文語的な表現を正しく理解出来る日本人が少ないことである。前者の問題に関しては、時に原詩を凌駕するかのような名訳が現れることも無きにしも非ずとは言え、何れの場合においても、とんでもない誤訳が流布されることのほうが多いのではなかろうか。ここでは、そのような名訳・誤訳・珍訳を思いつくままに随時追加して行こうと思う。


題名の名訳・誤訳・珍訳集
 誤訳以前の問題として、原題をそのまま片仮名で表したものも多い。原題が主人公の名前ならそれで良いが、ちゃんと対応する日本語がある一般名詞でもそのまま片仮名で通用しているものも少なくない。これらを一々挙げているときりがないので、ここではそれ以外のものを取り上げることにする。

Le Nozze di Figaro フィガロの結婚
 これは本来、フィガロの「結婚式」あるいは「婚礼」とすべきであると思う。

Der fliegende Hollaender さまよえるオランダ人
 これを最初に訳したのが誰なのか知らないが、fliegenは通常「さまよう」と訳されることはない。しかし、ストーリーをよく表している素晴らしい訳だと思う。

La Traviata 椿姫
 原作の題名をやや無理に訳したものをそのまま持ってきたもので、事情を知らないと何のことやら意味不明である。


アリア名の名訳・誤訳・珍訳集

Fin ch'han dal vino シャンペンの歌
 シャンペンというか、シャンパーニュ地方で発泡性ワインが発明されたのは…と時代考証をするまでもなく、vinoと書いてあるではないか。まだ乾杯の歌と訳したほうが好かったと思う。

Si, mi chiamano Mimi はい、私はミミ
 (ロドルフォが自分について語った後、あなたも話してくださいと言われて、)「はい、みんなは私をミミと呼びます。」と答えている。その後には「でも私の名前はルチーアです。」と続くのである。「はい、私はミミと呼ばれています。でも…」の最初だけ取ったとしたら、見識を疑わざるを得ない。


歌詞の名訳・誤訳・珍訳集

 これは無数にあるので、昭和時代のレコードの付録や音友等から出版されていた本の対訳をじっくり探して後日ご紹介したい。




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