知らなかった。あいつ、ああいう表情することあるんだ。



試合の後、彦一が他の一年と話してるのが聞こえた。
監督が、「あんなに嬉しそうにプレイする仙道は初めて見た」って言ってたって。
オレの気のせいってわけじゃ、なかったんだ。



あいつが、あんな、誘うような表情するなんて、意外だった。
あんな笑顔、見たことなかった。
今までにあいつが見せた、どんな笑顔とも違う。
部活中にミスった仲間に、ドンマイ、って言う笑顔とも。
テスト前ノート借りるときに、サンキュ、って見せる笑顔とも。
土曜の部活の後、浜辺で一緒にだべってるときの笑顔とも。
この間、茂一が出張で部活が休みになった、って聞いたときに見せた笑顔とも。
いつだったか、新しいフォーメーションがばっちり決まって、ナイッシュ、ってタッチしたときの笑顔とも。
「お前今日誕生日だったよな」ってオレに言われて、「あ、忘れてた」って言った笑顔とも。



なんか、オレ、あいつのことほんのちょっとしか知らなかったのかな。
あいつは、確かに掴み所のない奴だけど、それでも、なんとなく、なんとなくだけど、オレは、あいつのこと比較的よく知ってるポジションにいるって、思ってた。
誰かがあいつの陰口言ったら、「あいつは悪い奴じゃない」って正面切って言い返せる位置にいると思ってた。
けど、もしかして、・・・オレもやっぱりあいつのこと全然分かってなかったのかもしれない。



なあ、お前はムカつかなかったのか?
あんな、赤い髪のハダシ体育館シューズの奴に、「お前はオレが倒す」なんて言われて。
あんな、ルールもろくに分かってないような初心者の一年に、試合メチャクチャにされて。
オレ、あん時まで相当我慢してたんだけど、もう、どうにも許せなくなって。
バスケを馬鹿にしてるとしか思えなかった。
この体育館に、もう一秒だっていてほしくないと思った。
なのに、なんでお前は笑ってられたんだ?
なんで、あんなに楽しそうにしてられたんだよ。
なんで、あの赤い髪の奴ばっか目で追うんだよ。
あいつは、オレたちの持ってないなんかを持ってるっていうのかよ。
・・・お前にとっては、今までのオレたちとのバスケは、楽しいものじゃなかったのかよ・・・?



バカかオレ。なに泣いてんだよ。
みっともねー。



オレの知らない仙道がいたって、いいじゃねーかよ。
第一、オレはあいつのただの友達の一人でしかない。
そう、それは分かってんだけど。
だけど。
なんでこう、つらいんだろう。



ほんとなら、喜ぶべきなのかな。あいつが、なんか本気で楽しめるものに出会ったこと。
そうかもしれない。そうだよな。
でも、なんでそれ、素直に認められないんだろう。
オレって、友達としてサイテーの奴かも。



あいつの視線の先にいるのは、あの、湘北の一年。
そう、・・・オレじゃ、ないんだ。



今のオレにできることは、とりあえず、・・・せめて今よりもう少しだけでも、上手くなることくらいかな。
もう少し、シュート練、してくか。



                               






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