リセット不能
| 浴場の扉をそっと開けると、中から鼻歌が聴こえて来た。 気持ちいいのだろうな…可愛らしく開放的な声に、つい顔が緩んでしまう。 女将に渡された「貸切」という札を外から分かるように戸に掛けると、君が脱いだスリッパの隣に自分も同じ様にスリッパを揃え脱衣所に向かった。 狭い脱衣所には、着替え等を入れるかごが数個用意されているだけだった。その中の1つにきれいに畳まれたバスタオルや浴衣が見え隠れしている。 若いなと思わせる時もあれば、こういう時にさり気なく育ちの良さも窺える。私は彼女のそういうところが結構好きなのだ。 「…君。私も入っていいかね」 すりガラスの向こうにいる彼女に声を掛ける。 「え?なっ!ど、どうして先生が?」 驚いた声が返ってくる。湯の跳ねる音も大袈裟に聞えた。湯船に入っていたらしい彼女を相当慌てさせてしまったようだ。そりゃそうだろう…。 「小さい温泉がいくつかある旅館で、その一つを貸切にしてみた。私と2人だけだから…」 あまり強制はしたくない。やんわりともう1度訊ねる。 「……タオル巻いてきて下さいね」 入ってもいいという事だろうな。彼女らしい返事だ。 ガラスの戸を開けると君は、入る私から背を向けるように浴槽に入っていた。彼女と距離をおいて湯に入ると、君の方から私に近寄り、私と同じ様に浴槽のふちに背をもたせ、小さい声で「先生のえっち…」と言ってはにかむ様に笑った。当たり前なのだが…彼女もタオルで体を隠している。 私から歩み寄っているようでいて、実はいつも歩み寄ってくれるのは彼女の方なのだ。 私は…やはり、臆病だ。 彼女はどうしていいか分からない様で、ずっと浴槽から見える細い月を見ている。 「気持ちいいな」 私が短くそう言うと、彼女も短く「はい」と返事をした。 お互い短い言葉しか交わしていないが、とても落ちつく。 「先生、折角温泉に入ったんですから、こんな時位足を大きく伸ばして下さい。体を伸ばすと血行も良くなって、温泉の効能がより引き出されるんですって」 思い出したように君が言う。私も彼女の言葉に従い大きく足を伸ばしてみた。 「で、腕だけで体を支えて、少し体を浮かせてみて」 「成る程…これはなかなかに気持ちがいいな」 フワフワとした浮遊感が、今日1日の疲れをさらってくれるようだった。 「でしょ?」 クスクスと笑う君を見ようとしたその瞬間…体ががくんと傾いた。君が私のひじの裏を叩いた為、体を支えていた腕がカクンと折れてバランスを崩したのだ。 私は湯に頭まで浸かって髪までびしょ濡れになってしまった。 「こっ、こら!」 「先生の、ドジ」 掌で顔を拭う私を見て、君は無邪気に笑った。 私もだまされたと言うのに、つられて笑ってしまう。 暫く2人で笑っていると、急に真顔になって私の肩に寄り添ってきた。 「幸せで…何だか泣きそう…」 私も君といると本当に楽しいよ…。心から笑える場所がある私は幸せ者だな。 濡れた髪をかき上げながら、君に視線を移す。 しかし本当に色が白い。 何者にも汚されていない、少し怖い位に清らかだ。 「やだ、先生。そんなに見ないで…」 「私が君を汚してしまっているのだね…」 私が申し訳ない気持ちを込めて言うと、彼女は激しく首を振った。そのせいで留めていた彼女の髪がはらりと落ちた。 しどけなく濡れた黒髪と肌の白さのコントラストがおろしたての碁石を思わせる。なだらかな肩の曲線に張り付く髪が滑らかで。 「違います…私が先生を…けがれのなかった先生を…」 下を向いてしまった君の髪に触れると、彼女も視線を上向かせ、私を見つめる。もの言いたげな潤んだ瞳が寂しそうに揺れた。 私はどう言葉をかけてよいものか分からず、落ちそうになるタオルを支えている彼女の手を掴むと、自分の方に引き寄せた。バランスを崩した君は空いた手を底について体を支える。両手から離れた彼女のタオルは君の体からゆらゆらと離れ、腰の辺りで止まった。 紅をさしたような鮮やかな唇に、私の唇を重ねる。 左手は彼女の腕をつかんだまま、右手で更に君の腰を引き寄せると、彼女の胸が私の体に触れた。 「…やっ…」 小さな抵抗を見せた彼女が余りにも可愛かったものだから、少し意地悪をして、更に強く私の胸に引き寄せた。 そして深い口付け。恐る恐る私の舌を受け入れる彼女がいじらしい。 歯止めが効かなくなりそうだったので、名残を惜しむ事はせず、すぐ唇を解放してやる。これ以上甘美な口付けを続けていたら私の理性がどうにかなってしまいそうだ。 思春期の少年のようだな、私は。 完全に力の抜けた彼女は、暫く私の事を見詰めた後、ハッとした様に急いでタオルで体を隠した。お互い顔が赤いのはのぼせたからだけではないだろう。 「恥ずかしいから…先に上がって下さい」 「先生…」 上がり湯を掛けているところで、振り返る。 君は私に背を向けたまま、浴槽から言葉を続けた。 「誘って下さってありがとうございました」 礼を言いたいのは私の方だよ。 恥ずかしくなってしまうほど、胸の高鳴りを覚えた。 彼女の胸の柔らかさを思い出す。 もっと彼女の沢山の部分に触れたいと願うのは…罪だろうか。 |
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先生とはちょっと「きゃっきゃ」はしゃいだりしてみたいのですが…。
イメージと違ったらごめんなさい。
先生一人称は難しかった(>_<)失敗。もう書くまい…。
チュウしたよー。ディープなのしちゃったよー。
しかもお風呂で。
好きな人とお風呂に入るって好きです。
いつも思うのですが、文章が浅いですよね…;言葉足らずで。
でも私の書くドリー夢なんてそんなカンジでもいいんじゃないかと思います。
お試しドリー夢って言うか、肝心な部分だけ書けていればいいかな、と。
所詮文字書きとしてまだまだ未熟な私だし、自分の立場をわきまえているつもり。
読み手さんの想像力にお任せしてしまってごめんなさい。
03・04.18