静夜思。
| 他の部屋から、楽しげな笑い声が聞える。盛り上がっているのであろう…。 なんとなく冷静にそんな事を考えながら、しかしこの部屋だけはまるで別世界だと行洋は思った。 「へへ…ご馳走様でした」 真っ赤になりながらは行洋から顔を離した。 「イマドキの女の子は積極的なんです、油断してると大変ですよ」 照れ隠しに冗談っぽく言うが、行洋は固くなったまま微動だにしない。 「先生…?もしかして…怒った?」 行洋が自分に少なからず好意を抱いてくれたのだと判ったからといって、さすがに女の子からキスをしてしまうなんてやり過ぎた、とは後悔してもすでに遅い。 自席に戻ろうとかがめていた腰を起こした、その時。 「うわっ…」 突然行洋にその手を掴まれて、体制を崩してしまった。 行洋はの手をそのまま自分の唇に近づける。行洋の少しカサついてはいるが暖かい唇の感触に、はめまいさえ覚えた。 「済まない…年甲斐も無く…ドキドキしてしまったよ」 行洋のそんな言葉に、もう力も抜けてしまい、はへたりと座り込む。 「せん…せ…」 行洋もの潤んだ瞳に吸い込まれそうになり、落ち着け、と意識を奮い立たせる。 「先生…好き…昔のカノジョの代わりでもいいで…」 の唇に指を当て、彼女の言葉を制した。 「そんな事を言ってはいけない」 その指をそのままあごに当て、自然に上向かせる。親指でほんのり色づいたの柔らかな唇に触れると、はびくりと体を強張らせた。 「私も君が…」 「失礼致します」 その時、次の料理を運びに女将がやって来た。2人は慌てて体を離すと、居住まいを正す。 片付いた皿を下げ、次の料理を並べている間中、は笑いをかみ殺していた。 「…プッ…」 女将が去ったとたんにとうとう吹き出してしまったにつられ、行洋も笑いながらたしなめる。 「こら、笑いすぎだぞ…クッ…」 「だって…今の先生、動きがすばやくって…あー、もうおかしい〜っ!」 「君だってあんなにポーっとしてた割には、速い動きだったよ」 「それ、言っちゃダメです〜」 最後のデザートまでしっかり食べ終わり、一息つくと、時間も遅くなってしまったという事もありは席を立った。 「ご馳走様でした。こんなに楽しくて美味しいお食事、久し振りでした」 「私こそ、本当に楽しかったよ」 行洋はこの後このまま1人で飲みなおすからとの為にタクシーを呼び、彼女を見送った。 「先生。又お菓子食べに来て下さいますか?」 「ああ、勿論だよ」 こういう時の、少し寂しげな表情が特に彼女と似ている、と行洋は心の中で思い、同時にそんな気持ちを打ち消そうと努めた。 「良かった…おやすみなさい」 タクシーの扉が開く。乗り込むほんの一瞬、の手が行洋の手に触れた。しかしそれを拒むように行洋からその手を離した。 「せん……」 しかしすぐ、今度は行洋から指を絡めると、再び離した。 「先生の…バカ…そんなことしたら、帰りたくなくなる」 「可愛い子でしたね」 女将が部屋に戻った行洋に酌をしながら言う。 「本当に私はバカだ…今夜は眠れそうに無いよ…」 「はい?何か言われました?」 「いや…なんでもない」 |
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こんな事があったら、私だって眠れませーん!
年上のおじ様と付き合うなら、
やっぱり高級なお食事に連れて行って頂きたいと思う私はいやしいかしら。
次辺り、ちゃんとチュウしたいなぁ…。
感想など頂けたら光栄です。
03.03.28