えこうさぎのおはなし1はこちら

 ※絵はかなりテキトーです。へへへ。

  えこうさぎのおはなし その2

ユークリッド王国には代々伝わる不吉な言い伝えがあった。

「王国に滅びをもたらす者、月より来たる。長い耳、二頭身半。

この者に汝の本当の名前を告げてはならぬ」

VOL1.えこうさぎヒコーキに乗る

その朝、えこうさぎが拾ったボトルの中身はライオンの牙のネックレスだった。

えこうさぎの海岸はちょっと不思議な海流らしい。ここには世界中の海岸からボトルが届き、ここから世界のどの海岸にもボトルを届けることができた。

「月からきたうさぎ」のうわさはじわじわと世界に広がっていった。

BBCとかCNNとかNHKとか世界中のテレビ局がインタビューを申し込みたがったが、遊びほーけているえこうさぎはなかなかつかまらなかった。

天文学者に物理学者に数学者に生物学者にサマーセットモームにムラカミハルキ、月と月のうさぎについて知りたがる人はこぞって海に行ってボトルを流したが、お返事はいつも同じだった。

えこうさぎが月のことで憶えているのはふぃりっぷのことだけだった。あとのことはなんだか夢の中のことのようにアタマの中でもこもことしている。

ある日届いたボトルに入っていたお城への招待状。

こ、これぞあの、シンデレラが王子様をげっとしたブドー会?

何故か王子様が大好き、えこうさぎ。

で、ユークリッド王国ってドコ?

ユークリッド王国はとても遠かった。初めて乗ったヒコーキでえこうさぎは機内食を2回食べた。

が、しかし、お迎えの車に乗ってやっとたどりついたお城の広間でえこうさぎを待っていたのは王様ひとりだった。

VOL2.ユークリッド王かく語りき

「月からやって来たえこうさぎ、月でのことは何も憶えていないとか。さぞ地球でひとり心細いことだろう。それでは音楽は?音楽や歌は憶えてはいないだろうか。私は月の音楽を聴いてみたい。」

えこうさぎは出されたケーキをいただきながら月の音楽について考えてみた。

「思い出せません。ごちそうさま」

王子様いないし、ケーキもいただいたし、そろそろ帰ろうかな〜。

「もっとゆっくりしていきなさい。この城の庭には世界中の美しい花が咲いているのだよ。絵画や宝石のコレクションもある。好きなものを見ておいき」

「あした、くまさんとピクニックの約束してるのでかえります」

「では何か私で力になれることがあったらいつでも遠慮なく言っておくれ。そして月のことについて思い出すことがあれば必ず私に教えておくれ。それは私にとっても大事なことなのだよ。私の先祖はこの世で最も美しい青空を求めてこの地にたどりついた。私の家系はそういう家系なのだよ」

VOL3.なぞのボトルメイラー発見?

ピクニックにうってつけのぽかぽか天気の昼下がり、えこうさぎとくまさんは草の上で笑いころげていた。自分のところに流れ着いた相手のお手紙の見せあいっこですでに2時間、このふたりは笑いっぱなしだった。

「あれ、これえこがかいたんじゃないよ」

「ホント?きのう流れついたんだよ。えこちゃんが流したんだとばっかり思ってた」

「すごい。なんか予言みたいじゃん」

「えこちゃん、ホントにサンドイッチとコーヒー持ってきてんじゃん」

「これってぐうぜん?きゃはははは」

「あ、サンドイッチのキュウリ落としたぁ。きゃははははは」

うさぎとくまの昼下がりはあくまで平和に流れていった。

この謎の予言ボトルのことをくまさんが自分のブログになんとな〜く書いたところ、世界のボトルメーラーたちから意外な大反響。

ピクニックの絵は「元祖えこもどきボトル」と呼ばれ、あと何種類のもどきボトルが存在するのか、いやその前にもどきボトル認定の条件はなんなのか、そもそも誰がかいているのか1人なのか複数の人物なのか、果てはこの世に偶然は存在するのかユングは正しいのか、最後には誰ひとりアタマがついていってないアリサマ。

「こうなったら世界ボトルメイラーオフ会を兼ねてみんなで持ち寄ったもどきボトルの認定会をひらきましょう。審査委員長はもちろん、えこうさぎ先生です!」

「もしもし、王さまですか〜?このあいだはケーキごちそうサマでした。カクカクシカジカですので、お城を会場に貸してください。ぶっちゃけ、パーティです。おっけーでしたら審査委員にしてさしあげます」

こうして第一回ボトルメーラーオフ会はめでたく大晦日に開催決定。ぱちぱち。

が、この時から事件の不吉な影はノーテンキなえこうさぎの上にじわじわと迫っていた。

「ねーね、えこちゃん。さっきからあのひと、ずーっとえこちゃんのこと見てるよ。きのうもいたよ」

「まさかスパイとか探偵?」

「まっさかあ。あんなバレバレのヘボ探偵いるわけないじゃん」

「そーだよね」

VOL4.届かなかったボトル

あっと言う間にやってきた大晦日、レッドカーペットの上を歩いてお城の広間に通されたボトルメイラーたちはみな眼を見張った。

広間の真ん中には巨大な氷の固まりが置かれていた。中にはいくつものボトルメイルが閉じ込められている。

「みなさん、ようこそユークリッド王国へ。これが私のボトルメイルコレクションです。我が国の国境付近の山岳地帯で発見された氷河の一部です。何故あそこにこれだけの数のボトルがあったのかはわかりませんが、これは誰かの届くことのなかった想いです。今夜はみなさんと一緒に氷が溶けるのを待って、ボトルを開けていきたいと思います」

ユークリッド王がみんなの前で声高らかにそう告げると、いっせいに拍手が起こった。

その時、広間の灯りが消えてあたりが真っ暗になった。

「怪人二十面相参上!予告通り、ユークリッド王国の秘密のボトルと月から来たうさぎはこの二十面相がいただく!」

お約束のように、きゃーきゃー叫ぶボトルメイラーたち。

「えこうさぎ、こちらへ!」

誰かが暗闇の中でえこうさぎの手を引いた。

さ、さらわれる〜っ。いやっいやっ、ユーカイいややあああっ。ウデにかみついてやるっつ。

ぱっちん。

突然、灯りが戻った。

「あ、ヘボ探偵」

「アケチです」

お役目ごくろーさま。

そして巨大な氷はもうそこには無かった。

「この国には昔から『月から来たうさぎが秘密のボトルを読み解く時、永遠の国の扉が開かれる』という言い伝えがあると聞きます。二十面相はそれを狙ったのでしょう。私は犯行予告を受け取ってからずっとあなたを影でガードしてまいりました。ボトルはもう氷ごと奴の手に落ちているものと思われます。これから追跡いたします。えこうさぎはあちらの奥の部屋でコバヤシくんと避難していてください。コバヤシくん、頼むよ」

「ハイ、先生」

アケチ探偵を見上げるコバヤシ少年の眼はどこか不安げだった。

VOL5.だいじょーぶなのか、アケチくん

ああ、何の因果でボトルアイドルが大晦日にこんな小さな部屋でガキとふたりきり、差し向いでココア飲んでんだか。

「はー、二十面相にねらわれるし王子さまもいないし。なんかツイてない〜」

「ユークリッド王国には王子はいませんよ。王様はここにひとりで住んでいるんです。使用人たちはみんな通いです。王様には若いころに好きな女性がいたそうですが、両家の反対にあって結婚できなかったらしいです。ロミオとジュリエットみたいですよね」

「ふうん。そのひとは今どうしてるんだろ」

「紅白観てんじゃないですか」

このガキ。

「そうだ、ボクたちも紅白観ましょうよ」

ぷっちん。

コバヤシ少年がリモコンを手に取るより先にテレビのスイッチが入った。

「あれ?ボクまだ押してませんよ?」

画面に現れたのは二十面相だった。手にはスケッチブックのようなものを持っている。

「えこうさぎに告ぐ。アケチくんは預かった。彼を解放して欲しくば私のアジトにひとりで来たまえ。徒歩5分だ」

二十面相はへたくそな手書きの地図をカメラに向けた。

「では、待っているよ」

ぷっちん。

「ばかばかばか、アケチくんのばかあっ。アンタがつかまってど〜する。ヘボすぎるぅ〜」

「仕方ありませんよ。アケチ先生、まだ新米なんですから」

え?

「知らないんですか?アケチ先生も二十面相もそしてボクも、何代も入れ代わってるんです。マニアの間では有名な話ですよ。ちなみにボクはオーディションで2222人の候補者の中から選ばれました」

「ほほほぉ。アケチくんと二十面相は?」

「先生は世襲制です。ですが時代の波に押されて先代は浮気調査に明け暮れて、二十面相との対決はごくたまにしかありませんでした。それで先生も跡を継ぐ気は全く無くてフリーターとかでブラブラなさっていたのですが、先月に先代がお亡くなりになったのでしぶしぶと。二十面相の側も後継者問題で行き詰まったのでしょう。今の二十面相はつい先頃ネットオークションで『二十面相になる権利譲ります』を落札した人物かと思われます。つまり、彼も新米という訳です。えこうさぎさんをさらい損ねたのは単に段取りの失敗かと」

「シロート対決でターゲットにされるのもメーワクなんですが」

「御愁傷さまです。二十面相の正体さえ判れば打つ手はいくらでもあるはずなんですが、先生はそのことにも気が付かないみたいで」

「正体もわかんないやつのとこにひとりで行くのヤだからね」

「ごもっともです」

VOL.6二十面相のアジトへようこそ

二十面相のアジトは本当に徒歩5分だった。

童話に出てくるような小さな丸い小屋のドアを押して中に入ると、何も無い部屋の白い壁にぐるりと何枚ものボトルメイルが貼られていた。まるでちっちゃな美術館みたいだった。

えこうさぎはひとつづつ、順番にメイルを観ていった。

「ようこそ、えこうさぎ」

気が付くと二十面相が後ろに立っていた。

「コンバンワ」

それだけ言うと、えこうさぎはまたメイルを見つづけた。ひとつひとつゆっくりと観て、観終わると次に移動した。二十面相はえこうさぎに付き添うように静かに後をついていった。ふたりとも一言も口をきかなかった。

えこうさぎが全てのメイルを観終わった頃、二十面相がやっと口を開いた。

「この中のどれが秘密のボトルメイルなのだ?えこうさぎには判るはずだ」

「どれも同じだよ。ごくフツーに誰かが何かをたくしたお手紙だよ。フツーに大事なお手紙なんだ」

えこうさぎは二十面相ににっこりしてみせた。

「これ全部かいたの、あのライオンさんだよね?王さま」

ことん、と音を立てて二十面相の白い仮面が床に落ちた。その顔は確かにえこうさぎの知っている顔だった。

VOL.7月にうさぎはもういない

「どうして僕だってわかったの?えこうさぎ」

「くまさんが元祖えこもどきボトルを拾ったそのころ、えこはお城でケーキをいただいてて、その他のもどきボトルはこの国で氷づけになって今ここにある、そうでしょ?」

「そうだね」

「あのライオンの牙のネックレス、あの牙をぬいたのはえこなんだ。月にいたころにえこはライオンさんの牙をぬいたんだよ。このメイルみてるとわかるんだ。地球に来てからえこの眼にうつったそのまんまの海や空や山や川、そのまんまの思い出。あのライオンさんしかかけないよ。オークションの落札者のIDはmoonlion。二十面相はライオンさんのことを知ってるダレか。ホントは、最初からえこからあのライオンさんのことがききたかったんでしょ?」

「その通りだよ。どうして彼の牙を抜いたの?」

「思い出せない。でも血がいっぱいでて痛かったんじゃないのかな」

「血はとっくに止まっているから心配しなくていい。あのライオンは牙が無くなればきみと仲良くなれるかも知れないと思ったんだ。でも相変わらず今でも友だちなんかいないけど、えこが思いだしてくれたならもう寂しくないさ」

「やっぱりライオンさんはさみしいんだね」

「ライオンってのはそういう生き物なんだ。仕方がないさ。あいつは一生えこのことを忘れないだろう。きみがあいつの一部分を持っているからだ。でもそのことを誰にも言わない。自分だけが知っていれば十分なんだ。たとえ喋ったところで誰もあいつの言うことなんか信じないけどね。きみが地球で自分は月から来たとみんなに言っていてもそれは構わない。何故ならそこはみんなが知っているあの月ではないから。きみはどうしてあそこを月だと思っていたんだい?」

みんなが知ってるあの月じゃない?

「・・・・ふいりっぷが、さいしょに言った。『やあ、月のうさぎさん』って」

「ふいりっぷは、えこの望みを叶えたんだ。ただ、地球に来たえこはふぃりっぷに会う前のことを憶えていない。それではバランスが保てないんだ。あの月が無くなってしまうか、えこがまたあそこにのまれるかだ。えこはあいつのことを憶えていなくてはならない。これは約束なんだよ。あいつのたったひとつの望みなんだ。わかるかい?」

「たぶん。でもひとつきいていいかな」

「なんだい」

「どうして、ふぃりっぷはいっしょに来れなかったのかな」

二十面相の仮面のなくなった顔が少し悲しそうにゆがんだ。このひとは、ずっと仮面をはずしたかったんだ、えこうさぎはそう思った。

「仕方がなかったんだ。ずいぶん時間がかかった、色んな思いをした。くねくねした遠回りの道みたいだ。でもこのやり方がえこにとっても一番の方法だったんだよ。本当のことを知るというのは、そういうものなんだ」

「あとのことは思い出さなくてもいいの?」

「えこはふぃりっぷと、あの月に残してきたライオンのことをずっと気にかけていたんだ。だからいい。もう何も心配しなくていい。あとのことは思い出さなくてもいいさ。ひとつ考えがあるのだけど、あのライオンにえこが名前をつけてやるのはどうだろう。そうすればあいつはどこにでもいるただのライオンじゃなく、この世でたったひとりのライオンになる。えこがつけた名前ならきっと喜ぶ」

えこうさぎは小さく首を振った。

「知ってる。えこはあのライオンさんの名前知ってるよ」

「そうか」

VOL.8ハッピーニューイヤー

ヘロヘロになったアケチ探偵を引きずるようにしてえこうさぎがお城に戻ると、ちょうど広間からカウントダウンの声とクラッカーがいっせいに弾ける音が聞こえた。

ぱぱぱ〜ん。ぱ〜ん。

「えこちゃ〜ん、ハッピーニューイヤー!どこいってたの。審査終わっちゃったよ?二十面相、おっもしろい出し物だったよね〜。やるじゃん、ユークリッド王」

「先生!えこうさぎさん!ご無事でしたか」

駆け寄ってきたコバヤシ少年にアケチ探偵を引き渡すと、くまさんがえこうさぎの腕を掴んだ。

「えこちゃん、あっちでみんなで踊ろうよ」

緊張の糸が解けたのか、アケチ探偵はコバヤシ少年に抱きついて泣いていた。

夜明け前、はしゃぎ疲れたみんなが広間のあちこちで布団や毛布を被って眠る中、えこうさぎはソファの上で毛布にくるまって壁の時計の音に耳をすませていた。ソファの感触は何故か懐かしく、時計は新しい一年の新しい時間を刻んでいた。

ユークリッド王は帰ってこなかった。

VOL.9えこうさぎの青いソラ

半年後。

「えこちゃん、なに読んでるの」

「うん、アケチくんからのお手紙。あれから弟子にしてくれってウルサイんだよね」

「そういえばさあ、あのユークリッド王国ってどこにあったのかな。みんな飛行機で行ったからわかんないんだよね。ネットで検索しても出てこないんだよ。えこちゃんは王様の電話番号知ってたんでしょ」

「んー、国番号とかあったかなぁ」

えこうさぎはうーんと背伸びをして空を見た。あの月には空が無くて、見上げた地球の青いトコは海だけだった。地球から見上げるとそこは青くて、それをみんな「ソラ」と呼んでいるんだって、ふぃりっぷが教えてくれた。

おしまい

作者からのヘボいおねがい

現在、メールソフトがバカになってどーしよーもありません。

もし、ご感想いただけるようでしたらトップ→掲示板にお願いします。ヘボくてごめん。

see you next!

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