ayreak


東の空が白み、夜の終わりが近いことを告げている。
まだ起きるには早い時間だというのに、プーレは目が覚めてしまったが。
見かけは眠たそうにするでもなく、差し込み始めた朝日を浴びて彼はたたずむ。
「あ、もうお日様がのぼる時間なんだ……。」
少し驚いたようにプーレがつぶやく。
彼の種族は早起きだが、昇り始めた朝日を見ることはあまりない。
仲間達はといえば、まだテントの中で泥のように眠っている。
とはいえ、後2時間もすれば起きてくるだろう。後もう少ししたら、朝ごはんでも探しにいこうか。
そんなことを、まだ眠気が芯に残る頭でぼんやり考える。
テントに戻ったら、また寝てしまいそうだ。
眠ってしまってもいいのだが、なぜか寝に戻る気にはなれなかった。
せっかく早く起きたのだから、何かしたい。
そんな気分なのかもしれない。
しかし芯に眠気が残る頭は、そのくせ動く意志を発しなかった。
だから彼は、朝日を眺めてたたずむだけなのだ。
昇りきるのにどの位かかるか見てみようか。
今度はそんな事をまたぼんやりと考えて、じっと東の空を見つめる。

ゆっくりと雲が流れ、輝く太陽が徐々にその姿を現していく。
あまりにもまぶしすぎるので、そのうちにその輝きは見つめられなくなってしまうが。
けれど、闇よりはそのまばゆい輝きが好きだ。
しかしそれにしても、太陽は何故あれほどまぶしいのだろう。
それに、ずっと空に居てもいいはずなのに、何故か毎日飽きもせずに昇って沈むを繰り返す。
考えてみればとても不思議な、ぎらぎらと輝く文字通りの光の塊。

そういえば昔、兄が聞かせてくれた。
昔、この世界の空は真っ暗で、そのままでは何も育たなかった。
そこで光の神様が、光を集めて大きな玉を作って空に置いた。
光の玉は世界をすみずみまで照らし続け、やがてその光の下でさまざまな生き物が生まれた。
そして光の玉はその功績を称えられ、太陽と名づけられた。と。
動物も魔物も、知恵ある生き物全てが知っている古い神話の一節。
チョコボの間でもそれは伝わっていて、幼いチョコボは皆、神話を聞かされて育つのだ。
そういえば、その時にどうして太陽は沈んじゃうの?と聞いたら、
兄は困った顔で「ずっとお空にいると、疲れるんじゃないかな。」と、言ってくれた。
太陽も疲れるのかと思うと、おかしくてたまらなくて。
しばらく笑っていたことも、今では遠い日の思い出。
ロビン達人間に言わせれば、2,3ヶ月前は「大分前」になってしまうけれど。
そこまで考えて、思考は止まる。

取り留めのない考えばかりが頭を巡り、今更、眠気が意識に勝ってきたのかもしれない。

やがて太陽は地平から完全に離れ、オレンジを帯びた強烈な光が、
まどろむ世界を遥かな地平から照らし始める事だろう。
黄昏の残滓とは異なる、矢のように鋭く鮮烈な輝きは、やがて世界を覚醒へと導くはずだ。
しばらくすれば、まず小鳥達が起きてくる。

闇の下で生きる者達が寝に帰り、光の下で生きる者達が目覚める時間。

もうすぐ、夜明け。


―END― ―戻る―

絵が割りとうまくいったので、せっかくだからと小説でもつけようとがんばりました。そういいつつ、肝心の絵は背景に回ってますが。
元々ワンシーンなので、長くするのが一苦労。
描いた本人が言うのもなんですが、プーレはブラコンって気がしてきました。
兄ちゃん×3……事あるごとに言ってるような。
父ちゃんと母ちゃんの顔を知らないから、当たり前ですが……。