天網恢恢疎にして漏らさず




紅葉さん(@rion_vir_yume)の女審神者・真宵ちゃんの本丸の面々と関わった、名もなき審神者の末路の話。
真宵ちゃんの設定→審神者設定(別窓)

真宵ちゃん本丸側視点
無限地獄の片道切符:http://privatter.net/p/1402522


とある本丸で、それは奇怪な事件が起きたという。
朝、身の回りの世話をする短刀が声をかけても返事がない。
どうしたのかと、彼が怪訝に思って戸を開けると、そこには袈裟懸けに切られた審神者の姿があった。
曲者が入った痕跡もなく、政府から駆けつけた役人も困惑するしかなかった。
政府が得られた収穫は、この本丸は刀剣達の扱いが不適切であり、
合意のない夜伽が行われていたという事のみであった。
ただ、死んだ審神者は、最近何かにおびえた様子を見せる事があったと、所属する刀剣は証言した。
そこで念のため、この頃は神刀が結界を張っていたのだという。
その矢先に、この謎の惨殺である。
確信ではないため、政府の役人には証言しなかった彼らだが、ひとつだけ心当たりがあった。
彼らと同じ刀剣による祟りである。その犯人にも、おおよそ目星がついていた。
しばらく前に演練で当たった、黒髪赤目の、童女と見紛う小柄な少女の本丸だ。
今回死んだ審神者は、いわゆる小児性愛者であった。
犯罪歴がない以上、現世では恐らく大人しかったのだろう。
だが、自身の持つ短刀に夜伽を強要するようになってから、たがが外れたに違いない。
容貌が幼い審神者を演練で見かけると、しつこく付きまとうようになっていた。
幼い審神者本人には危険が分からなくても、傍にいる刀剣達は当然危険に気付く。
あの審神者には会わない方がいいとでも主人に吹き込んで、早々に避けられるようになっていた。
だがしかし、その少女審神者は鈍い性質だったのだろう。
取り巻く刀剣達にいくらたしなめられても、ぴんと来なかったようだ。
さすがに審神者同士でしか出来ない話をしたいから、今度2人で食事にという誘いだけは、
あちらの近侍ともう一人の供が固辞したものの。
少女の実年齢を知った審神者は、それでも諦めようとしなかった。
15,6にもなってあの幼さなら、今後も彼にとって「有望」とでも思ったのだろう。
無論、やめておいた方がいいと、彼の刀剣達はそれとなく進言した。
ただ、言ってやめるたちなら苦労はない。結局、諫言に耳を貸す事はなかった。
それからである。審神者が何かにおびえるようになったのは。
原因は、大体予想はついている。誰ともなく口にした。呪詛だろう、と。
普通の審神者なら、刀剣の守りがあるから、刀剣同士の力の差が大きくなければ、そう大事にはならない。
だが、あの少女の刀剣は非常に力が強かった。
付喪神としての力が大きく上回る刀剣なら、呪詛は通る。祟りもなせる。
かの少女の隊には、何振りもの平安生まれの稀少刀があった。
年古りて、ただでさえ力の強い彼らが、恐らく何度も警告のために悪夢を見せ、
下心を持った審神者を憔悴させたのだろう。
だが、それでも審神者は付きまとう事をやめなかった。
ついに堪忍袋の緒が切れた少女の刀剣達は、祟り殺してしまったのだ。
切り殺す辺りは、さすが刀剣の付喪神らしいやり方というべきか。
ともあれ、要するに殺された審神者の自業自得だったのだ。
突然主が死んだ刀剣達は、深いため息をついた。
正直に言って、誰にとっても慕いたくなる主人ではなかった。
だが、かといってこんなに惨く死ねと思ってもいなかった。
何とも後味が悪い。それが皆に共通した心持であった。

それから、その本丸は新たに善良な審神者を迎えて再出発した。
ある日。とある本丸所属の紺色の軍服の太刀が、その昔話を聞かされた。
すると彼は、優雅に笑ってこう述べた。

「そうですか。その方達は、とても良い事をなされましたな。」




―END―  ―戻る―

たまに書きたくなる、伝聞調のやってる事がちょっと怖い話。まあ変態は自業自得。