天上の海・掌中の星

      “は・ぐ vv”


気が遠くなるほどの長い長い歳月を過ごして来た割に、
ゾロってば、
土地土地の風物とか歳時記とかいうものへは、
あんまり関心もなかったまんまだったんだって。
悪霊を払うことだって多々あったろし、
人の妄執が凝り固まった怨嗟や怨念ほど、
手ごわい相手はないしなんて言ってたくらいだもの。
人と関わることだって多かったのだろに。
いや面と向かっては関わっちゃあいかんのだなんて、
ややこしい言いようをしていてサ。

  それが今は

元旦にはお雑煮におせち。
七日には七草粥で、
小正月にはお鏡開いて小豆粥だろ?

 「節分は何だった? のり巻きか?」
 「えと、それと炒り豆とイワシの焼いたの。」

何だ何だ、味の濃いものばっかだなと、
来週半ばの節季の準備を、
もう今から書き付けておいで。
買い物に行くときに気をつけねばということか、
サンジに手を焼かせることもなくの、
準備のための覚書き、冷蔵庫に張ったカレンダーへと、
自分から先へ先へ、記しておくようにもなっていて。

 「恵方巻きって言うんだぜ?」

今年は西南西だったっけか。
そっち向いてのり巻き食べると福を呼ぶんだと。
ほほお、そりゃまたお前向きな“まじない”だななんて、
そういや食べる行事ばっか、重点的にチェックしてないか、ゾロ。

 「そりゃお前。」

食い盛りの伸び盛りがいる家だ、当たり前の順番だろがと、
今宵のメニューは手羽先へ具を詰めた揚げギョウザなの、
そりゃあ手際よく捌いておいでで。
新聞紙大の大きめのバットの上、
一体何人分だという数の手羽先が並んだのをよっしと完成させると、
それは一旦片付けて、
さて今から昼飯の用意だ、何が食いたいかと訊いてくる。
そういや、ゾロたちは空間移動がたやすい身だから、
時にはルフィを連れてまで、遠い海やら高原やらへ、遠出させてくれたりもして。
だったらあのさ、

『出来合いのを売ってる店まで、一足飛びで出掛けてって、
 そこで買ったので間に合わそうとはしないんだな。』

そりゃさ、大食らいがいる家は、買うより作った方が安上がりだとも言うけどさ。
そこまでするよな義理はないゾロだろうにね。
それでなくとも勝手の違うこと。
精霊刀を包丁に持ち替え、
キャベツや豚肉、鷄の手羽なんかを相手に格闘してくれて。
あんまり気分のいいことではないらしいのに、サンジにも教えを請うての、
美味しいものをたっくさん、手際よく作れるようにと日々頑張ってる。
それってさ、あのさ、


 「…、おわっ、たったっと☆」


不意打ちででっかい背中に飛びついたもんだから、
チャーハン用にと鍋を選んでたの、
足元へ取り落としかかったくらいびっくりしてて。
何とか無事に落とさなかったの、
全部を流し台の上へと置き直すと、

 「何しやがるかな、このお調子乗り坊ちゃんはよ。」
 「だってさvv」

そんなわざとらしい顔して睨んでも効かねぇもんな。
さすがに包丁持ってったら危なかったくらいは見てたもん。
だからさ、だから。

 「あんな、あんな、今日は“愛妻の日”なんだって。」
 「ほほお?」

だからどうしたと聞き返すお兄さんへ、
満面の笑み浮かべてルフィ坊やが言ったのが、


  「ゾロは、いっつも俺のご飯作ったり片付けもんしてくれっから。」
  「ああ。」
  「だから、俺の“愛妻”だっ!」
  「……………………はい?」


もしかしてそれって、ルゾロ宣言でしょうか、坊ちゃん。
それはサイトの傾向上、大いに困るんですけれど。

 「そうじゃなくってっ!」
 「何だ何だ? それだと困る人がいんのか?」

どこのどいつだ、話つけちゃると、
息巻くルフィに…何だか話が妙な方向へよじれそうなので。


  ババの話はこれでしまいじゃ。
(おいおい)




  〜どさくさ・どっとはらい〜  10.01.31.


  *いえね、愛妻の日だってので、
   蒼夏の螺旋あたりで何か書こうかとも思ったのですが、
   あれとかぱぴぃのは、
   いつも書いてるのとどこが違うんだってお話にしかならないので。
   ちょっと思い切ってみました。
   ………限度ってもんがあったかもですが。
(笑)

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