天上の海・掌中の星

   “衣替えのころ”

いきなり余談で始まって申し訳無いのだが、
もーりんには妙なジンクスがあって。
こういったお話の中で
“晴れた”と書けばUPする頃には雨だったり、
“それは寒かった”と書けばいきなり暖かさが訪れたりと。
せめて書いたその日にUP出来なかったお前が悪いという、
奇妙なお仕置きでもしたいのか。
結構いい割合で大きに裏切られてしまうということで。

  とはいえ

この春の気温や天候の乱高下は、
もーりんのそういうジンクスや行いのせいではないと、
思うのだけれど。
思うんだけどもなぁ。
思っちゃいかんのだろうか。

  まま、思わないという方向で。(出展は さだ○まさし)




     ◇◇◇



今年はとうとう真っ当なお花見が出来なかったと、
当家の臨時世帯主である坊やを ぶうたれさせた春は。
まだまだ今少しほど、
ちょいと桁の外れた気まぐれを続けるつもりでいるようで。
どちらかといや過ごしやすい、
爽やかな好天が2日ほども続いた翌日。
関東地方では、
それはそれは勢いよくも、真夏日の到来日の更新をやらかした
…にもかかわらず、九州・四国・関西では、
強烈な前線が居座っての2日連続で台風もどきの暴風雨が襲い。
初夏めいた、どころじゃあない、
秋口ですかというよな気温と雨とに翻弄されてたりもして。
何と言いますか、
季節感の話どころじゃあなくなって来つつある今日この頃。

 「明日からまた降るだってぇ?
  うあ〜、これってもしかしてこっちへも北上してくんのかなぁ。」

全国のニュースでも紹介されたのが、
先週の頭にも襲い来た大荒れ天気の、
関西地方での様々な被害。
それでなくとも
九州の某県では名産だった牛や豚に重篤な病が広まっており、
その処置でお忙しい最中なんだろうになぁ。
あ、神戸だ。うひゃあ、
松の木が土砂崩れで横向きにすべってって、家の壁へ穴空けたんだって。
メルトモのおばちゃんチは大丈夫だったんかなぁ、と。
様々な天候被害を刻々と伝える映像を観つつ、
いちいち“うひゃあ”とか
“うわぁ”といった奇声を上げてる坊ちゃんであり。
いや、驚いているのは本心からなんだろけれど、

 「ルフィ、天気予報はどうした。」
 「あ、いけね。」

夕方の定時のニュース番組は、
局によって扱う項目の順番が微妙に違ったりするので。
トップニュースが異なる局同士の場合、
間が悪いとチャンネル変えた先では別口のが終わったところ
入れ替わりで先のと同じニュースを始めるところだったなんていう、
時差に似たような現象が起こるため、
それが知りたい情報の方だったらいいのだけれど、

 「ありゃりゃ。どこも○○の話になってるから、
  明日の関東の予報の話は見逃したみてぇだぞ。」

何だよな、そんなもんの新発売には興味ねぇぞ 俺りゃ。
まま、何なら携帯やPCのそういうサイトへ飛んでって、
調べるって手もあるしと。
一人前な言いようでひとしきりぶうたれつつも、
無難な局のそれへと戻すと、
ご本人もソファーの方へと戻っておいで。

 「あ〜あ、来週からは夏服だってのによ。」

義務として制服というものをまとう人々は、
六月の初日を限(キリ)に、
おおむね夏の半袖姿へと そのいで立ちを切り替える。
銀行だのお役所だのは、
所在地の気候に合わせて、微妙に早かったり遅かったりもするのだろうが、
学校は とんでもなく暑い寒いという地域を除き、
六月と十月がその節目とされているもので。

 「一応出してはあるが、」

すぐ傍らへ戻って来た坊やが、
ぼすんと勢いよく座り直した同じソファー、
背もたれへ片腕引っかけて悠然と腰掛けていたお兄さんが、
準備は万端とのお声を掛けてくださる。
恐らくも何もの当然の習い、
日本の古来からの暦に合わせてのことなのだろが、
この、衣替えのタイミングってのが、
ルフィ坊ちゃんには今ひとつ“気に入らないこと”なようであり。

 「だってよ、
  今年は寒かった春だったから、そんなに文句も出なかったけど。」

近年の異常気象が始まる前からのお話として、
例えばGWを過ぎると、
花見のころの花寒はどこへやらという勢いで、
気温はぐんぐんと一旦上がりまくるもの。
だというに、ブレザーだの詰め襟だのという上着やジャケットを、
着続けにゃあならないという基本を六月まで強いられる。
さすがに、暑い中でも何がなんでも着続けていろという強制はないけれど、
羽織らぬまでも持っては行かにゃあならないとあって、
荷物になるわ、そこいらについ置いてしまうので汚すはしわになるわ。

 “後半はお母さんがたのお悩みだな。”

他人事みたいなお言いようをするお兄さんだが、
いかにもスポーツマンですという、
短髪にかっちりとした頑丈そうな肢体を保ちつつ、
こちらの彼の日常も、
やってることはそういった家事に占められており。
様々な機会に注意を留めた情報番組や井戸端会議から得たものながら、
染み抜きや水アカ取りは任せとけというほどの蓄積もお持ち。
テレビからばかりじゃあない辺り、
決して愛想がいい訳じゃあない相手でも、
腕白盛りを預かる気のいい兄ちゃんの苦労へは、
周囲の奥様がたが放っておかないものと思われる。
……さぞかし、聖封様からやっかまれてんでしょねぇvv

 “ほっとけ。”

目許を眇めた破邪さんに“ケッ”なんて言わせたところで、
冗談はともかくとして。
(苦笑)

 「ぱふ〜んvv」
 「わっ、こら。」

お風呂上がりのホカホカが
そろそろ冷めて来た頃合いだからか。
戻って来たソファーのすぐお隣にいた
頼もしい抱き枕へ目がけ。
どちらかと言や彼の側のほうが柔らかだろう頬っぺから、
ぱふりんとくっついてゆく無邪気さよ。

 「大体サ、上着ありからいきなり半袖って言われてもな。
  間に長袖シャツ優先っていう合服の時期入れろって、
  女子がいっつも言ってたし。」

朝早くとか部活で遅くなった時間帯は、
六月過ぎてもさすがに半袖じゃあ寒い日だってあるからね。

 「そこいらの融通、自分でつけられるように、
  長袖プラスわんって期間を作れっての。」

 「おお、何だか賢い物言いだな、それ。」

生徒会選挙にでも打って出る気か?と間近になってるおでこの下辺り、
胸板へ張り付いていたぷにぷにな頬を、
悪戯半分ちょいちょいとつつきつつ訊けば、

 「そんな面倒なもんには興味ねぇも〜ん。」

何が不満か、そっぽを向いたままでの素っ気ないお返事。
そういえばこの子は、
出来るだけ家にいたい、ゾロの傍にいたいと、
常々 言って憚らないんだったっけと、今になっての思い出した誰か様、

 「〜〜〜〜。////////」

思い出したその途端、
何とも言えぬ感慨に、胸のどこかがチリリと擽られてしまう。
男の子なのだが、
しかも柔道なんて勇ましいもんを嗜んでる子なんだが、
それでもどこかに庇護欲を掻き立てられる何かがあって。

 “………偉そうによ。”

相変わらず、今でも時折 邪妖からつけ狙われてもいる子だのにね。
それでも腰が引けることはなく、
むしろ無茶ばっかりしかねなくって。
チョッパーを巻き込んでの天世界での冒険譚も山ほどあるし、
こちらでだって、さんざん怖い目にあっただろうに、
それらを駆逐出来る力持つ存在にして、
天世界でも最強の破邪へでさえ、

 『じゅうごの母の心境なんだ』

そんな言いようをぺろっとしてしまう豪気な坊やで。

 “………。/////////”

役目だからなんかじゃあない。
この温みが失われたら、自分はその後どうすりゃいいのかと、
本気で狼狽えたこともあったほど、
こちらからだって大切な存在。
だから………だからね?

 「だあ、なんて冷たい足してやがる。靴下をはかないか。」
 「やだもん。履くとすぐ暑っちくなるんだ、オレ。」

そんなこと言ってて今朝なんてクシャミの連発してやがってよ、
まだ高校生だろに、どこの親父だお前はよ…と。
部屋まで靴下を取りに行かせたいか、
ほれほれと胸元を揺すぶって急かして見せれば、

 「言ったな〜?」
 「言ったがどうした。」
 「ふかいしすーが上がったから、
  ゾロが責任持って何とかしろーっ。」
 「わ…っ☆」

不意を突かれたゾロが、あわわと眸を剥くのも物ともせず。
膝立ちになっての ますますがばちょと、
頼もしい首っ玉へ両腕回して
ぎゅうぎゅうしがみつく坊やだったりし。

 “どっちの何が不快指数を上げていることなやら…。”

暇だったので遊びに来かかっていた天聖界の誰か様、
お家の真上で呆れ返ってしまい、
ご訪問の日を改めたのは、言うまでもなかったのでありました。





  〜Fine〜  10.05.24.(05.31.up)


  *何かというとお天気とか気候の話ばかりになってて申し訳ない。
   でもでも、いくら何でも、
   そろそろ初夏めいてくるでしょうねぇということで♪
   といいますか、
   日付がややこしいのが示すよに、
   このお話、実は最初を書き始めたのが先週だったんですね。
   ちょーっと目ぇ離してたほんの1週間の間にも、
   上着がないといられぬ冷たい雨が降ったかと思えば、
   そんなの何カ月前のお話?と言いたくなるような、
   突き抜けるほどのいいお天気が戻って来たり、
   先週だけでも冬の終わりの名残りが垣間見えた、
   目まぐるしさだったもんで…。

**ご感想はこちら*めるふぉvv

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