天上の海・掌中の星

    “誰への特別なんだろか(笑)


 「〜〜〜〜〜。」
 「…何つう顔しとるか、貴様。」

聖世界屈指の剣士にして、
役職の発祥ともなった存在の、次界最強の“破邪”殿が、
今日は何故だか、珍しくも 久々に昼間っから天世界に居る。
それだけでも意外すぎること、
幼い仕丁なんぞは姿からして見知らぬからか、
実に素直に“あの人 誰”と指を差し。
先輩格の衛士が慌てて、そんなしちゃいけませんと、
本人ごと抱きかかえてやっての
どこぞかへ撤収に運んでたりするくらいというから。

 「どんだけ祟られると思われてっかだな。」

コントのような、だがだが当人らは真剣なやり取りなのへと苦笑をし、
噂を訊いて押しかけた、この彼の一応の基本的所在地、
天水宮の広場までへと、お出ましになってたサンジさんであり。
それへ、それは率直 直截に、

 「うっせぇな。」

あんな小さいのなんざいちいち覚えてられねぇし、
その前に、そんな くっだらねぇ報復するよなトンマじゃねぇわいと。
天巌宮の御曹司へわざわざお答え下さってから、
だがだが、やっぱりどこか憤然としているものだから。

 「何だ、どうしたよ。」

日頃ならこのやり取りで大人げない自身に気がついて、
思い直すか、吐息混じりながらも気を取り直すところ。
だってのに今日に限っては、
はぁあとあらためての溜息を深々とついているばかりなゾロだったりし。
胸板厚く双肩も頼もしく、がっつりと堅そうな屈強な肢体に、
恐持てと解釈出来そうなほどの、
雄々しき気概を孕んだ、こうまで男臭い存在が、
何をまた…憂鬱そうに遣る瀬ない吐息をついているものか。

 「つか、何でまた戻って来てるんだ?」

チビさんが学校にいる間だって、
お前、あの家で細々した仕事を手掛けてなかったかと。
下界の装い、襟元が二重になった小じゃれたトレーナーに、
濃色のちょっぴりルーズでラフな型のGパンといういでたちの彼を、
殊更しげしげと眺めやった聖封さんへ、

 「…………。」

微妙に眉を寄せ、口許をひん曲げてという絶妙なお顔になって見せ、

 「それがな。」

何か言いかかったらしかったが、

 「…………………………いい。」
 「良かねぇよ、こん畜生がっ!」

俺はこれでも繊細なんだ、何にでもマヨネーズ掛けっちまう奴とか見ると黙ってられねぇんだ、そんくらい繊細な男へ何だその言い草はよ、気になって寝られなくなったらどう責任取りやがんだ、おお?と、
一気に畳み掛けて来た、自称“繊細な”お兄さんだったのへ、

 「だから、だな。」

ゾロの側とて、
ふざけるほどの余裕があっての はぐらかしじゃあないらしくて。
う〜んと、言いたいことを組み立ててでもいるものか、
少々考え込んでから、

 「今日は何かしらの代休とかで、ルフィは朝から家にいるんだが。」
 「お…………?」

だったら尚更のこと、飯だの話相手だの、
ちょっぴり甘えん坊な坊やの世話を焼く必要もあろうから、
地上に居なきゃあ いかんのでないかい?と。
彼らの間柄をようよう知っておればこそ、
瞬間湯沸かし器のごとくに熱
(いき)り立ったのと
同じくらいの勢いよく、
今度は冷静な判断を取り戻した聖封さんだったのだけれど。

 「だから…。」

何と言ったらいいものか、あのその・えっとだな、と。
自分の置かれている状況が不可解なのか、
それとも自分の心情が複雑なのか。
そしてそれらをどう言い表せばいいのやらと、
頭を抱えておいでの、屈強精悍なタフネスさが自慢の大妖狩りさん、

 「だから、だな。
  今日はあいつが俺へ決めてくれた“記念の日”だったんだよ。」

 「……………………………あ。」

そうかそうか、そういやそうだったよなと、
こちら様も今頃になって思い出したらしいサンジであり。

 “判っかりにくい奴〜〜〜〜。”

柄になく困惑しているゾロの、困惑という態度のせいで、
どんだけの大喧嘩でもしたものか、
はたまたどんだけの危機が訪れとんのかと、
こそり、見当違いな方向へと案じかかっていたほどであり。

 「で?」

  だったら目出度いことじゃないか。
  そういやあの坊主、
  毎年何やかやとお祝いしてくれてないか。
  俺もパーティーするからってお声が……

 「かかってねぇよな、今年は。」

だから気がつかなかったのでもあるのだと、
そこまでを自分で弾き出した聖封様。
はっとすると、再び…任務の相棒へと視線を戻せば、
待ち構えていたかのような視線とぶつかる。

 「……まさか。」
 「ああ。」

もう一度、はぁあと深い吐息をついてから、

 「今年はルフィが踏ん張ってるんだよ。
  ケーキにあんかけチャーハンと焼肉って品揃えの食事と、
  部屋の飾り付けをな。」

  なんと昨日から下準備してやがったらしくてな。
  今日は朝っぱらから台所を占拠しての、
  主役のはずな俺は、何でだか邪魔物扱いで追い出されてて。

 「準備万端整ったら、
  チョッパーに呼びに行ってもらうから、だと。」

 「ちょっと待て。
  まーたウチのもんを勝手に使ってからに…っ。」

道理で朝から見かけないなと思っておれば、なぞと。
実は今の今まで気がつかなかったに違いなかろにと、
今度はゾロの側が呆れたところで、

 《 ゾロ、サンジもいんのか?》

その、小さな使い魔さんの声が、
彼らの頭へどこからか鳴り響いて来。

 《 ルフィが準備出来たって。
  俺も俺も、ケーキの飾り付けしたんだぞ!》

やや興奮気味の、トナカイさんのお声があまりに可愛くて、

 「そっか。じゃあ、今から行くわ。」

罪のない子供相手だしと、
苦笑交じりにそうと応じた、緑頭の破邪様だったが、

 “どうせなら…。”

慣れぬあれこれへ、慌てふためいたり、
大きに焦ったりするところも見たかったんだがな、なぁんて。
どこの親ばかさんでしょうかという感慨を、
こそりとその分厚い胸の中にて
零しておいでの破邪様でもあったんだそうな。


  何はともあれ、

  
HAPPY BIRTHDAY! to ZORO!






   〜Fine〜  11.11.11.


  *今年のこの日は西暦で“1”が6つも並ぶので、
   ポッキーにもプリッツにも
   乾電池にも特別な日なんだとか。
   (いや、他の記念日でもあるんでしょうが。)
   我らが剣豪様、やっと未成年じゃなくなったんですね。
   今までの渋さや大酒飲みっぷりは何だったのか、
   それを言ったら
   ルフィなんて逆の意味から以下同文ですが……。

   えとえっと、
   ともあれ、おめでとうございますvv

**めるふぉvv ご感想はこちらvv

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