天上の海・掌中の星

    “今年もよろしく”


律義にも毎週末に底冷えが襲い来て、
クリスマスには格段の寒さがやって来た師走だった割に、
やはり週末になった大晦日は、
さほど“寒波”というほどの冷えようはしなかったような気がすると。
それはそれはお元気な当家の坊ちゃんが、
年も明けての“三が日”最終日という今頃になって感慨を述べておいで。

 「そりゃ お前がばたばた忙しかったからじゃね?」
 「そっかなあ?」

リビングに出したコタツの掛け布団、
手編み風セーターに包まれた小さな肩まで引っ張り上げていて。
おいおい それじゃあ暖気が逃げるぞと、
傍まで来たゾロから
大きな手で脇を身に添うようにわざわざ直してもらった手際へと、
えへへぇvvなんて目許を細めて笑ってる、
こちらのお宅の腕白なルフィ坊や、

 「まあ、箱根駅伝の往路を観らんねぇのは、毎年のことだけどもな。」

その、大学生たちの奮戦の、
後半にあたろう“復路”の中継を見つつ、
そんなお言葉を零したのも、結構大仰なことじゃあなくて。
年末は、町内会のお仕事の一環として、
あちこちのお家の大型ゴミのゴミ出しの手伝いに奔走したし。
交替制の夜回り・宵の部では、
子供らの保護者役として火の用心の呼びかけにも参加した。
紅白の途中からうたた寝してしまった分 寝起きもすっきりと、
近所のお寺まで除夜の鐘を撞きにも行ったし、
元日はそのままの流れで、
子供会の裏山までの“ご来光登山”に付き合って初日の出も拝んだ。
行き交う皆様と一通りのご挨拶を交わしつつ帰宅し、
遅寝をしてから、
聖封様直伝 破邪様特製のおせちという、
なかなかに縁起(ゲン)の善さそうな御馳走を堪能し。
大量の年賀状を仕分けし、やはり大量に届いてたメールの確認をして。

 『お、シャンクスは来週戻って来れそうだって。』

大型貨物船の船長を担ってらっしゃる父上は、
半年ぶりの帰還が
微妙にクリスマスや正月からずれたのを悔しがっておいでだとか。
兄上の方は、相変わらずにロッキー山脈での修行中。

 『そういや、年が明けたんだなだってよ。』

ケータイの電源落としてて気がつかなかったって、
どんな生活送ってんだかなと。
それでも、彼も帰って来るらしいとの便りへ嬉しそうに眸を細め。
その屈託のなさと、されど言葉にはしないところが照れ臭くてなら、
結構 大人になったなぁなんて感慨をゾロへと い抱かせ、
ついでにサンジを盛大に呆れさせてから。

 「昨日も何しか忙しかったしよ。」

翌日はといえば、
時々顔を出してた道場の稽古はじめだと、
朝っぱらから出掛けて行って。
小学生相手に組み手や背負いのお相手役なぞ勤め上げ。
午後は午後で、やはり子供会の行事の一つ、
公民館に集まっての書き初めのお手伝いにと駆り出され…と、
新年からもなかなかにお忙しい毎日を送っておいで。

 「子供のころはサ、
  大人らが飲み過ぎた〜って
  いつまでもうじゃうじゃ寝てて相手してくれなくて。
  正月なんてお年玉と年賀状以外、
  暇なばっかだよなぁって、
  エースやウソップと言ってたもんだのにな。」

今時の子供は構ってもらえていいよなぁなんて、
一端
(いっぱし)の大人のような言いようをしつつ。
ほれ おやつだと、破邪様が運んでくれた、
焼いた餅に海苔を巻いた磯辺焼きを、満面の笑みにて頬張っておいで。
そんなせいだろか、まったく不平には聞こえないのでもあって。

 《 ……そんなせい、ってだけでもなかろによ。》

同じコタツの隣りの縁にと腰を下ろしたお仲間さんの胸中を、
ちょっぴりゆるんだ表情からやすやすと拾った、
当家の上空の高みにおわした誰か様。
何とも思ってない相手なんかじゃあない、
むしろ愛おしくてしょうがない坊やの一挙手一投足だもの。
どんな生意気も可愛い我儘にしか聞こえなくって当然だろと。
口許へ咥えた紙巻きへ火を点けながら、
素直じゃないねぇとの苦笑を漏らし。
さて どのタイミングで奇襲を掛けてやろうかいと、
新年早々のお楽しみ、企んでおいでだったようでございます。


  あけましておめでとうございます
  新しい年が、いい一年になりますように…






   〜Fine〜  12.01.03.


  *ちょこっと補足を足しますと、
   ウチのご町内では“夜回り”というのがありまして。
   拍子木を鳴らしつつ、
   火の用心と声をかけてゆっくりと歩いて回るのですが、
   まだまだ早い時間帯だと、
   子供会の行事なのか、それともお家の人と一緒になのか、
   小学生くらいのお子様も一緒に回ってらっしゃいます。
   風邪引かないでね?

  *実は年末に何かと思っていたのですが、
   大みそか当日は急にばたばたっと忙しくなりましてね。
   特に何か、超常現象が降って来るでもないんですが、
   それでも気分が改まる新しい年の始まり…にしては、
   相変わらずの彼らでございますが、(う〜ん)
   どうぞ 今年もよろしくお付き合いくださいますように。

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