天上の海・掌中の星

    “盛夏も半ば”


お盆の前にも訪れる“立秋”を過ぎれば、
節季のご挨拶が“暑中お見舞い”から“残暑お見舞い”へと変わるそうで。
言われてみれば、つか、
まさかそうそう暦通りにはなるまいよと思ってたのに、
あんだけ暑苦しかったのが、朝晩だけは ぐんと涼しくなったんで。
おおおと ちょっとびっくりした。
“さすがは立秋ですよねぇ”なんて
もっともらしく言ってたコメンテーターの人もいたけれど。

 『いや、それはたまたまだと思うぜ?』

確かに、季節の移り変わりの目安として日を切ってあるんだろうけどよ。
イマドキのデジタルなあれこれじゃああんめぇし、
そうまできっちり、日が変わったからって塗り変わるもんでなしと。
昨日、お手製のゴマ団子を差し入れに来たサンジが言ってたしなぁ。




      ◇◇◇



前のお話が、何と六月の衣替えのエピソードだったんで、
2カ月振りのご登場となるこちらの坊ちゃん。
お元気元気が看板で、
夏休みといや プールにキャンプに海に山だと。
猛烈な日照りも何のその、
若い人のスタミナはどうなっているのかねぇと、
おばさん世代が呆れたくなる溌剌ぶりも満タンに。
お若い世代のその筆頭を誇っての腕白さを、この夏もまた発揮中。

  「受験勉強は?」

……それは言わない約束よ、お父っつぁん。

 「誰が“お父っつぁん”か

お、やるか?…じゃあなくってだな。(まったくだ)
学校がお休みになっての、朝から晩まで坊やが家にいる態勢になるので、
お家を守る“主夫”でもある破邪殿のスケジュールも微妙に変わる。
坊やがガッコにいる頃合いだって、
掃除だの草むしりだのという家事とそれから、
ゴミステーションの掃除当番だの、
下校の時間帯に小学校の通学路に立つ安全当番だの、
町内会のお仕事も卒なくこなしておいでの働き者で。

 『またあの頼もしい仏頂面なのが、
  怪しい奴らの撃退に絶対効果出してるってもんでね。』

ご当人と直に接してみれば、
むしろ朴訥なかわいいお兄さんだと判るのだけれど。(ぷぷぷvv)
遠目に警戒しもって見るだけだと、
鋭角的な面差しとか、
シャツの上からでも判るゴツゴツと逞しい精悍な体つきとかいう要素が、
威圧的でおっかなく見えもするようで。
近隣の学区内で噂になってる“不審者”が、
だがだがこの地区内ではぱったりと姿も影も見なくなっているのも、
彼が参加してくれるようになってからだとか。
そういうあれこれへと出掛けるゾロなのへ、

 『え〜、そんなのに出掛けてたんだ。』

俺、聞いてねぇと、
知らなかったことがあったのが不満か、
ぶうたれつつもルフィがいちいち付いて来たのが七月中のこと。
そうこうするうち小学校も夏休みに入り、
下校の見張りがなくなった分、プールの監視当番が増えたものの。
彼らにはある意味、お懐かしいそれ、
ラジオ体操の指導という、ルフィさんの分担も復活したものだから。

 『俺、今日は市民プールまで出掛けっから。』

小学校のプールだと、クラスの奴には遠出になるからさと、
別行動になるのも否めない現実を、やっと受け入れたらしい可愛ゆさよ。

 「可愛いってゆうなっ!//////////」
 「いや、十分“可愛い”って。」

抗議をすること自体、そしてお顔が真っ赤な照れ具合も含めて、
十分に“可愛い”範疇だぞお前、と。
呆れてのこと、目元が半分ほど座っておいでの聖封さんが、
スーパーの朝市でどさりと買って来たという
もぎたてトマトやトウモロコシ、
ナスにシシトウ、イチジクに桃というお値打ち食材を受け取りながら、
いい間合いにてのお返事を返しておいで。
天聖界には夏休みはなく、
はたまた宗教的な縛りもないので“お盆だから”という特別な何かもないながら。
それでも夏場は、解放感からくる不用心や、
暑さがもたらす判断ミスから不幸にも亡くなる人も多いのか、
それらにまとわりつく様々な思念の動きも活発だそうで。

 「欧米は高緯度地域だから、
  夏の水際より冬の雪山の方が死亡事故も多くって、
  結果、そっちでの怪談がはやるんだろうな。」

 「そういやハロインも冬前だもんな。」

何を妙な話題で納得しあってるんだかと、
こちらもお買い得だったミネラルウォーターの箱買いを、
床下貯蔵庫や納戸へ収めて来たゾロが呆れて見せれば、

 「ゾロゾロゾロっ! ロンドンの方、何か結果出てねぇか?」
 「お前なぁ。」

何遍言っても人の名前を連呼する悪い癖が取れない坊やなのへ、
まずはの しかめっ面を向けてから、

 「お前が寝てからの話となると、
  女子レスリングでまずはのメダルってところかな。」

そうそう、忘れちゃいけない。
ロンドンで開催されているオリンピックもまた、
坊やにはこの夏限定の大きなイベントであり。
高校総体と日程がかぶってしまってた競技へは、
会場となってた宿舎のあちこち、消灯時間を守れぬ明かりが灯っているのへ、
今年ばっかりはしょうがないですなと、
引率の先生方が揃って苦笑したほどに、
関係筋の皆してワンセグテレビに釘付けだったりもし。
そしてそして、当家の坊やには大問題なのが、
今回もやはり“時差”がある土地での開催だったこと。

 「生中継が夜中だもんな。」

毎日眠くてしょうがないところへもって来て、
昨日からは高校野球も始まったのは正にダメ押し。
昼寝もおちおち出来ないじゃないかと ぶうたれながらも。
ソファーに陣取り、尋の長い両腕を開いて新聞を広げ、
五輪関係の番組はとチェックしている緑頭のお兄さんの、
Gパンにくるまれた堅い腿あたりへ、横合いからばったり倒れ込む甘えようよ。

 「くぉ〜ら、何してるかな。」
 「だって眠いんだも〜んvv」

お膝の上で、それは無邪気に“にゃは〜っ”と微笑ったお顔。
仰向いたせいで前髪がはらりとめくれる格好になり、
真ん丸なおでこが全開になってのこと、
日頃以上に童顔の甘さがさらされて、

 「〜〜〜。//////」

それがこちらを見上げてくるのが、よほどに眩しいと思ったか。
自分の口元を押さえたのはほころび掛かるのを隠すためで。
それでは飽き足らず、坊やの目元を大きな手のひらで軽々封じたのは、
そんな緩みようを見られたくなかったからかもしれないが、

 「あ、こらヤダ。」

途端にジタバタするルフィであり。

 「…何だ。」
 「顔、見らんないのはヤダ。」

目元を力ませての大威張りで、
何をまた恥ずかしいこと言い張りますかと。
言われたご当人がますます照れてのぐうの音も出なかったのと裏腹、

 “恥ずかしい奴らだよねぇ。”

俺が来てること、すっかり忘れちゃいませんかと。
まとめ買いした食材の、保存用の下茹で処理を手掛けつつ。
キッチンから首を伸ばした聖封さんが、
盛大に呆れてしまった残暑の午後でした。




   〜Fine〜  12.08.09.


  *八月に入って早々、
   BS−NHKで『十二国記』の再放送が始まって、
   録画したのが残ってるからいいやと、
   私としちゃあ観てはないのですが、
   絵板だったかの掲示板に、
   五輪の中継もあるってのにそれって…殺す気か、と
   嬉しい悲鳴を書き込まれていたのへ、ついつい受けてしまいましてね。
   それでなくたって、ウチのルフィ坊やは、
   こちらの子も“大川”の坊やも、
   きっと絶対 眸をしょぼしょぼさせつつも
   中継から録画から、放送全部見てるクチだと思われて。(苦笑)
   今なんて高校野球も始まっちゃったよ。
   五輪はお家芸のレスリングが始まったし、
   関西地方じゃあ、遅れてた分のアニワンの集中放送もあるしで。
   あああ、今日はBSで
   去年の『NARUTO』の劇場版の放送もあるぞ、と来て。
   一体いつ寝ればいいんだ、私たち。
   (後半は 大人の意見とは思えない内容だけどネ・笑)

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