何でまた、そんな奇妙なことを奨励する日なのかも、
それが何でまた、他でもないこの日なのかも諸説紛々。
この日が特別なのは、
その昔使われていたユリウス暦ではこの日から1年を始めたからで。
だが、
それだと誤差が凄まじく生じてしまうため、
うるう年の調整で何とかなるグレゴリオ暦に替わることとなった。
それでの仕切り直しとなったため、
始まりの“一月一日”を今の日にちへ大きく遡ったのだけれど。
長年、こちらが年の初めだったことから、
この日にも新年のお祝いのご褒美を欲しがろう子供らに
“誤魔化しのお祝い”を振る舞った…とする説とか。
そもそも、この日は日頃不義理をしている知己への詫びを入れる日で、
そんなお声駈けの切っ掛け、話を振る際に、
ささやかなほらを持ち出すことが多かったので、
他愛ない嘘で人をかついでもいい日となった…とする説や。
仏教徒は時期的なものとしてこの日の直前まで長くて厳しい修行を行なったので、
それが明けたこの日は思わず幻が見えるほど疲労困憊していたことを揶揄したとか。
「そんな仰々しい謂ればっかなのか?」
「おお。
何たって
ヨーロッパの色ぉんな国にまたっがてるしきたりだからな。」
ふ〜んと大きなどんぐり目を瞬かせ、
素直に聞き入っていたルフィだったのへ、
「ほらルフィ、どこまでホントか当てにはならんぞ?」
「そうそう。」
たまたま居合わせた同じクラスの顔ぶれが、そんな茶々を入れもしたけれど。
そして、
「だな。
不確かなのはホントだし、
俺にしたって
そういう謂れの内のどれが本物かまでは調べてねぇし。」
自分の言うことが信用ならぬといわれたというのに、
平然としていてのこの返しよう。
日頃からも、
おどけてのこと楽しいほらを吹くことでも
知られていた彼だったからなのと、
それからあのネ?
◇◇
「…そいでな?
信じる奴は半々なのが、なんか俺、悔しいわけよ。」
「ふぅ〜ん。」
相変わらずに仲のいい二人が並んで立っていたのは、キッチンのテーブルの前。
桜がすんと早く咲いてる駆け足の春は、
時々訪れる寒の戻りが容赦なく思えるほどに、
暖かい日は初夏並みという気温までぐんと暖かく。
今日もなかなかの好天なせいで、
明るい陽が降りそそぐリビングや、こちらのダイニングキッチンも、
シャツにカーディガンという軽装の彼らが、
そりゃあ闊達そうに映えていて。
「なんだなんだ?
お前んちじゃあ、こういう日にも
かこつけてのケーキを焼くようになったのか?」
まさかに当家の坊やじゃあるまいに、
バニラエッセンスの匂いに誘われたわけじゃあなかろう、
毎日の監視警邏のついでに立ち寄ったらしいサンジが、
中空から現れがてら そんな軽口を叩いたのへ、
「違げぇよ。今日はウソップの誕生日だからだ。」
いっつも春休みのど真ん中だからな、
昔からの友達じゃねぇとお祝いが間に合わねぇんだと。
何でか大威張りで言う坊やだったのへ、
「おいおい、友達にかこつけねぇでも、
おやつくらい作ってくれようものだろに。」
俺にはまだまだ歯が立たぬとはいえ、
最近のこやつはロールケーキまでこなせるようになってるしなと、
あくまでも
ルフィのおねだりが調子のいいかこつけだと
思っておいでの聖封様だったのだけれども。
二人の挨拶代わりの応酬を、生クリームをホイップしつつ聞いていた、
ボウルを抱える腕も雄々しい破邪様はといえば、
「こういうことへの嘘はつけねえよ。」
ぼそりとした一言、しかも随分と短いお言いようで
引き分けるような、いやいや庇うような言を放ったものだから。
「さすがはゾロだな。俺ンことが良く判ってら 」
それは嬉しそうに“にししvv”と笑い、
作業台にしていたテーブルに手をつくと、
ぴょこぴょこと飛び跳ねて見せるはしゃぎよう。
「ああこら、ガタガタ揺らすんじゃねぇ。」
「おっと、すまんすまん♪」
少々ぶっきらぼうな物言いなのは常のことだし、
むしろ、柄にないことを言ったのでという照れ隠しの裏返しかもしれない。
そうと思わせるほどに、ルフィのご機嫌ぶりも崩れぬまんまの、
何なの、この甘甘な空気はよと、
サンジが呆れたものの、
『ああ、ルフィは嘘が苦手でな。』
後でのちょっとした隙、何とはなくカマをかけて訊いたところ、
素朴な仕上がりのイチゴのショートケーキを
それは上手にデコレートした大妖封じの匠が言うには、
『毎年のことじゃねえし、
お前が不審に思ったのも無理はねぇが。
アイツにこういう狡猾さはねぇよ。』
遠慮したって始まらねぇんだし、
自分が食いたいならすぱっとそう言う。
何より、買い食いの王者なんだから、
ケーキ食いてぇ…ってな口になったんなら
とっとと出かけてコンビニで買ってもこれようさ。
それに、
『…まだあんのかよ。』
付き合いの長いのも、あの坊主に入れ込んでんのも判ったと、
ややうんざりして聞き返せば、
『疚しい時は、
目を合わせず、吹けない口笛を吹こうとするよな奴だからな。』
『…なるほど、判りやすいわな。』
演技力以前の問題じゃねぇかと、
判りやすいにも程があろう、ルフィの稚拙な演技を聞かされ、
それへもだが、それよりも、
何とも和んだ目元となった破壊の太刀振る鬼神の惚気ようにこそ、
苦笑が絶えなかったサンジさんだったのでありましたvv
HAPPY BIRTHDAY! TO USOPPU!
〜Fine〜 13.04.01.
*四月馬鹿は覚えているのに、
そういや最近彼のお誕生日は後回しになってるものだから、
こんなカッコではありますがおめでとうvv
ウチのルフィさんも例に洩れず嘘は下手です。
つか、つこうと意識することは滅多にないんじゃないでしょうかね。
こうだったらいいのになとか、こうするつもりという
希望的観測は嘘じゃありませんしね。
…まあ、他愛ない嘘くらいなら?う〜ん?
「もしかしたら、
クロは見かけの可愛さによらず
久蔵よりもうんとうんと年上かも知れねぇぞ?」
【 にゃっ?! みゃっみゃ。】
「こらこら、何かと内緒じゃなかったか?」
「サンジ、あれこそあいつなりのほらだって。」
「ち、違うもんな。♪♪〜♪」(笑)
向こうさんのリビングでも、
微妙にそわそわしてる子がいたりして?(苦笑)
*めるふぉvv
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