天上の海・掌中の星

   “真夏のお楽しみ?”


この夏は、というか、梅雨からこっち、
とんでもないお日和が続いており。
まずはのスタートで全然降らなんだ梅雨が、
台風がらみの豪雨になるわ、ゲリラ豪雨や落雷が続くわ。
それがやや収束したと思ったら、次にやって来たのが途轍もない猛暑。
まだ夏休みにさえ入ってないのに、
登校時間帯で既に30度近い暑さが訪れるよな日が続いての、

 「夏休みに入りゃ入ったで、午後から雨って日が続くしよ。」

柔道部の高校総体向け合宿から戻って来た坊やが、
ぶいぶいと口元尖らせて不満を並べたのは、

 「先週の末にさ、合宿所の近所でも花火上げる予定だったらしくてな。」

川沿いに夕涼みの客を当て込んで、
屋台とかカフェとかを開くのが恒例になってるとかで、
そのオープニングの余興でサ、
開幕と閉幕の晩に花火を揚げることになってたのが、

 「急な大雨と雷で中止だもんな。」

よほどのこと残念だったものか、
あーあーあーと、事あるごとにプイプイと膨れておいで。
お祭り騒ぎが大好きなルフィだし、
皆でワイワイと見物したかったらしいのが、
あっさりおジャンとなったの、
余程のこと残念だと憤慨しているのだろう。

 「花火なぁ…。」

確かに、この酷暑続きの気候では、
亜熱帯よろしく 昼以降に雨催いとなる可能性が高いのは否めない。

 それでお前、合宿のほうはどうだったんだ。

 面白かったぞ?
 柔道の顔触れはあんま変わらなかったけどな。
 N高の二年の先鋒が来てて、都大会で粘られたん思い出しちまった。
 あと、剣道の方で久蔵そっくりな兄ちゃんがいたし、
 なんと、久蔵んチの七郎次兄ちゃんそっくりな美人もいたしvv

 ??? (別なお部屋のお話がらみな話題ですいません。)

その合宿から戻って数日。
何でまたいまさらそんな話が出たかと言えば、
八月頭に近所で毎年恒例の花火大会があるのだが、
この調子だと、それもまた雨に降られないかが心配だったりするらしい。

 「そういやここんとこも、
  いきなりの雨が凄まじい降り方してるしなぁ。」

花茣蓙のに替えたリビングのラグの上、
シーツじゃタオルケットじゃという大物を
お膝の上でばっさばっさと振ってから
畳んでおいでの緑頭のお兄さんの発言へ、

 「なあゾロ、雨は都合つかんのか?」
 「出来ねぇな。」

すぱりというお返事がなかなかに容赦なく、
どあぁああと呻きつつソファーへ沈む真似っこをするルフィなのを、
心からの本気で案じたか、

 「ゾロって ひでぇっ!」
 「おや、チョッパー。」

天世界関係者がいきなり現れるのはもう慣れたが、
この小さなトナカイの聖獣さんがというのは珍しいこと。
どした、昨夜来たときに何か忘れもんかと、
庇われのだろうルフィまでもが、
ソファーからむくりと起き出して来て 気を遣ったくらい。

 「だって、お楽しみがある晩に雨降るのはヤじゃないか。」

それをあんなあっさり“出来ねぇ”なんて言っちゃってと。
そこへの憤慨に小さな蹄を震わせておいでのチョッパーだったようで、
可哀想じゃねぇかと兄貴ごころから飛び込んで来たらしいところが、

 “可愛いじゃねぇかvv”

ゾロのみならず、ルフィまでもが感じたらしいのはひとまず置いといて。

 「いやいやいや、ルフィだってそんくらいは心得てんだって。」
 「そだぞ、チョッパー。」

つぶらな瞳をウルウルさせてる愛らしいトナカイさんへ、
半パンにタンクトップ姿のルフィさんが、鹿爪らしく人差し指を立てると、

 「いきなり天気図に無い乾いた空気とかが現れたら、
  気象庁のお兄さんたち大わらわだろうし。」

  ……じゃあなくて。

 「あり得ない天候が割り込めば、
  その反動でその後もっと荒れた天気が続く恐れもあるしよ。」

と、これは破邪のお兄さんが教えてくれて。
そこまではまだ知らなかったか、
幼いトナカイさんがキョトンとしているのへ、

 「他の奴らも我慢すること、俺だけ特別なんてズルイだろうがよ。」

でもな、チョッパーが俺の味方になってくれたんは、凄く凄く嬉しかったぞと、
満面の笑みで にゃははと元気よく笑った坊っちゃんだったので。

 「…そかvv」

こんなことでよかったら、いつでも頼れな、うんっ、と。
こちらも、後ろへ引っ繰り返りそうになるほど
反っくり返ったチョッパーだったのだけれども。

 『じゃあどうして、わざわざ訊いたんだろ、ゾロに。』

そんなのダメだって判ってたのにねと、
そこんとこだけ判らないなぁと、小首を傾げたおしていた聖獣さんだったのへ、

 『何でもかんでも、甘える理由にしたいんじゃね?』

天巌宮のキッチンにて、
ココナツクリームをたっぷりかけた
七段重ねパンケーキを“ほれ”と出してくれながら。
金髪に青玻璃の双眸も涼やかな、名シュフにして封印一族の御曹司様が、
そんな言いようをしてヒントとしてくれたけれど。

 『???』

甘えるのなんていつでも出来るじゃないと、
それこそ増す増すと“???”となってしまったトナカイさん。
いつでも以上に“もっともっと”となっちゃうんだよと、
そこまで教えるのは武士の情けで控えたものの、

 “ちっとは控えろ、あんのクソ馬鹿剣豪めっ。”

ウチの年頃のチビさんに、ややこしい知恵をはやばやとつけてんじゃねぇよと、
妙に親心を発揮しちゃったサンジさんだったのは、
また別のお話だということで。(笑)



    〜どさくさ・どっとはらい〜  13.07.31.


  *相変わらずにお日和がなかなか落ち着きませんよね。
   東北・北陸はまだ梅雨明けしてないってホントでしょうか。
   長雨のせいで、
   何と もうフリースの上着を着ないと寒い朝もあるそうですし、
   そうかとおもえば、ミレニアム越えの酷暑の夏でもありますよね。
   花火大会もお祭りも、八月からが本番ですが、
   どうか1つでもたくさん、無事に開催されますようにvv

ご感想はこちら*めるふぉvv

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