生まれながらのそれとして、特殊な筐体と魂持つ存在。
それゆえに、霊体からの引きも多く、
本人も及び知らないこととして、
怪しい妖異につけ狙われることも多かったのが、
当家の腕白な次男坊のルフィさんで。
そういう生まれらしいこと、何となくな感触だったのを
あれこれ調べてくれたというお兄さんも、
先々で弟を守るための力になればということか、
修験道の鍛錬などなどへ手を伸ばし。
そこからどうずれ込んだやら、
様々な武者修行をこなした末に、
今はアーチェリーの世界選手権にランクインされていて、
そっち関係のツアーなどで忙しい身。
父上は父上で一等航海士というお務めでやはり家を空けがちなので、
中学生に上がったばかりという年頃からは
このお家に一人で寝起きしていたらしい坊ちゃんだったが。
そんな境遇の彼へと寄り付く 妖かしのあまりの多さに、
ある意味 彼もまた引かれたようなものか、
今現在はというと、
それはそれは頼もしい “破邪”という封魔のエキスパートが天界からまかり越し、
おはようからおやすみまで、傍らにしっかりついててくれており。
精霊刀という霊体粉砕には途轍もない威力を発揮する刀剣をぶん回し、
はたまた、それへと自身の強大な覇気を載せ、
庭つき二台分駐車スペースつき 二階建て分譲住宅ほどもあろうかという妖異を
ほんの一振り、鋭い視線つきの一閃にて蒸散させてしまえるという恐ろしさ。
……なのではあるが、
今は高校生となったルフィさん、
なので、昼間は学校があって不在なため、
結果、たった一人でお留守番を務めておいでの彼であり。
「……。」
今日は久々にいいお天気となったので、
そろそろ寝苦しい夜も近いものか、
少なくとも もう毛布は要らんということか
毎朝蹴り出している坊やなので
洗って干して片づけてもいいようだなと。
ついでに合い布団を押入れへ出しといてやるか、
となれば、カバーを洗っておかんとな。
押入れといや
クロゼットの抽斗から出し忘れの靴下を発掘してやろうかと思ったが、
ついこないだやったばかりで、
続けざまに手掛けると“やってくれる”という刷り込みになるからまずいと
隣の小野寺さんの奥さんが言ってたしな。
……といったもろもろを、
テラスに担ぎ出した敷布団を叩きつつ、
分厚い胸の内にて巡らせておいでな辺り
結構、やることはいっぱいあるらしい破邪様なご様子なので、
こんな立場、暇だからヤダとかいうご不満は沸いたことがないらしく。(笑)
布団を叩くのも、実はあんまり ダニだの埃だを除くことへは効果はなくて、
表面のほこりを払う程度で良しというの、はす向かいの本多さんから聞いてたので、
パンパンと叩いたのは４,５回で止めたのだが、
「……。」
……切れ長の鋭い双眸を半目に座らせ、
鋭角的な風貌を無表情にも冴えさせて。
そんな真剣な顔になって、
もしかして…来るべき大妖襲来への対応とか、
天変地異の根源的な何かの出現に備え、
どんな算段を構えての熟考かと思や。
そういや今日は駅前の菱屋で特売だったな。
国道沿いのディスカウントスーパーへは週末に行くとして、
菱屋のコロッケとメンチカツは、
ルフィにはおやつ代わりみたいなもんだから
常時１ダースは冷凍してストックしておかにゃあならんからな。
冷凍といや、豆田のたい焼きも、
そろそろ冷たいものへ商売替えなさるころだから、
冷凍用に買い置きしておかねぇとだな。
梅雨時なんぞにふと思いついて 食いたい食いたい連呼しやがるからな。
……なぁんて。
こんなことばっか考えてたのだから
まま、平和といや平和じゃありますが。(苦笑)
「……。お。」
おっかない顔をしつつ、その実、ぼんやりと考えごとにふけっていた破邪殿。
ふと、今の今まで向かい合ってた 坊ちゃん愛用の布団へ
ちゃんとその視線を据えたれば。
いいお日和を受けてホカホカと温められ、
心なしかふわり膨らみかけてもいるその表面に、
「……何をしてやがる。」
地獄の魍魎でもすくみ上がりそうなほどの低い低い重低音で、
凄みを利かせて訊いたのは。
陰体の妖異、蛇のような小型の妖かしが
坊ちゃんの強力な咒力の残渣に惹かれでもしたか、
うねうねとのたうっていたからで。
“あんな小物が彼奴のいることに気付かねぇで寄り付いたほど、
何をボ〜〜っと考えごとしてやがったやらだな。”
ある意味 気配を消してたようなもので、
相手にも思わぬ出会いがしらみたいなものだったのによと。
そんな小物相手に精霊刀を召喚して切り裂いてるところが、
どんだけ間抜けなんだかなという苦笑と共に、
金髪痩躯の聖封様が問題のテラスへ降臨するまで30秒ほど…。
〜Fine〜 16.04.22.
＊何かカッコいい活劇とか書いても良かったんですが、
今日はもーりんもお洗濯頑張ったのでついついこんなネタを…。
 めるふぉvv
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