天上の海・掌中の星

     “暑い寒いと不満はあるが”
 


地球温暖化のこれも影響か、ここ数年ほど夏の暑さが半端ない。
昨年も 統合的な平均気温はどうかすると低い目だったらしいが、
夏とされる期間のところどこで災害並みの雨が多かったりしたためで。
実際、酷暑炎暑と呼んでいい日がそれこそ記録的に多かったし、
テレビなどにて予防法や対処が叫ばれ、
迷わず冷房を使えとあちこちで推奨されているというに、
熱中症で倒れる人は年々増えてるかも知れぬ。
しかも、夏と呼ばれる範疇外にまでその影響がはみ出しまくっており、
秋になってもいつまでも暑かったり、
そうかと思やいつまでも秋な気分のまま冬へ突入。
あれれぇ? 今年ってあんまり寒くないなと言ってるうちに春の声が聞こえて来て、
GWはいつも暑いよなと多少あった覚悟を上回っての猛暑が強襲。
早くも熱中症で倒れる人がたんと出たとか。

 「寒いのは何とか出来るけど、暑いのはなぁ…。」

早くも緩みつつある水色のアイスバーを、シャリシャリ齧りつつ、
暑い暑いと日向を歩む。
最近では運動会や体育祭をGW前後に持ってくる学校も増えており、
実はルフィさんとこもほんの先日、
新入生歓迎のレクリエーションと銘打った球技大会があったのだが、
サッカーもバレーボールもドッチボールもバスケも卓球も、
数人ずつほど気分が悪くなったと倒れた被害者が出ており、

 「残暑で被害が出る秋口から移したってわけでもないんだろう?」

お迎えに来たというよりも、
買い物に出てきてたら駅前のコンビニから出てきた坊ちゃんと鉢合わせ、
そのまま一緒に帰途についている 家政夫、もとえ、仮の保護者さんであるゾロが尋ねれば、

 「おお、体育祭はちゃんとあるぞ。」

それとは別の球技大会で、本来はGWに行っていたのだが、
今年は何と10連休なんて代物になったので、
各家庭での事情もバラバラだろうからと、そっちは完全に休校扱いとし、
そののちに日程を組んだらしいのだが、
選りにも選ってそれとの巡り合わせが悪かったという感じらしい。
ちなみに、それでも初夏の方が湿度は低いので、
残暑厳しい秋口よりは 熱中症リスクだけを見れば初夏の方がお勧めなのだそう。

 「そうと言いつつ、山ほど表彰されたメダル持って帰ってたよな。」

暑いのはなぁと言いつつ、
さかさか歩む ずんとのっぽなお兄さんの広いストライドに
ちいとも遅れることなく追随しているお元気ボーイ。
褒められたと察したか、にゃははと笑い、

 「団体競技ばっかだったけど、得点王賞とかあったからな。」

バレーもバスケもサッカーも、
ゴール数やアタックして決めた得点数がダントツだったらしく、

 『ボールが目の前でちょろちょろってしたら追いかけずにはいられんなんて、
  犬みたいなやつだよなぁ。』

木登りが得意で身が軽いところはおサル並みの瞬発力だってのに、
それと敵対の特性まで持ってるなんて、

 『獣の王かもしんないな。』
 『百獣の王といやライオンだぞ? サンジ。』

獣扱いされたことよりも、
犬やサル並みなことが高じたらライオンってのはおかしくないかと、
随分と斜めなことへとキョトンとしたところも相変わらず。
そのまま、天聖界のシェフ殿がそれはそれは香ばしい匂いも美味そーな
鶏半身の照り焼きをふっくらと仕上げ、
玉子炒飯に乗っけてほれ食えと差し出したので有耶無耶になってた辺り、

 “犬だサルだというよりガキなだけだがな。”

無邪気で腹の中に何にもない、単純明快な まさしく“子供”。
何かしら悪戯なり摘まみ喰いなりをし、立場がまずくなっても誤魔化し切れず、
可笑しきゃ笑うし ムッとくれば怒かる。
さすがに最近は多少ほど 場の空気とやらへの気遣いも出来るようになったものの、
体調が悪い人の前だとか、責任者として迷惑をこうむる人がいそうだからという方向でだけ。
ある意味 動物的に、直感で嗅ぎ取って視線を外したり無表情になるだけのことなのだが、
父上や兄上などにすりゃあ “大人になって…”と感涙ものの進歩らしいし、

 『ばあちゃんに知れたら、その大人げない相手へどんな報復するかしれねぇから、
  それもあって 大人になんなきゃあねって、マーガレットからも言われた。』

いましたな、人間に限ってならば、
財界への影響力でも咒力でも もしかして世界最強かもしれない女帝のおばあ様。
溺愛の対象であり、衒いなく甘えておいでの孫でさえ、
その人を怒らせたらいかんというのは多少判るのらしくって。

  …こういう格好でストッパーになっていようとは。(笑)

って、話がどんどんとずれておりますが。
まだ梅雨前だってのにこの暑さだもんなぁと、辟易気味な坊ちゃんなのへ、

 「じゃあ、あっさりしたものがいいか?晩飯。」

まさかとは思うが食欲がないとか?と訊けば、
棒だけになったアイスを咥えたまま、(それはもはやただの棒…)
ぶんぶんぶんと思い切りかぶりを振って見せ、
滅相もないと言わんばかりな貌になるのがまた判りやすい。

 「それは勘弁だぞ。美味いもん食べてスタミナつけてぇ。」

頼もしい腕へ飛びつくと、そこから提げたトートバッグを覗き込み、
なあなあと甘えかかるところが、何でだろうか嬉しくなるところは病膏肓。
弛みかかったお顔を引き締め、
今晩はハンバーグと鮭の包み焼だと告げてやる。
勿論のこと副菜もたっぷりお出ましの予定で、
やったぁと笑み崩れる食いしん坊を引きつれて。
まだまだ本番とは言い難い取っ掛かりの夏の前、
仲良しな兄弟の如くにじゃれ合いながら、家路をたどるお二人だった。






  〜Fine〜  19.06.09.


 *衣替えの前に書き始めたのですが、
  ついつい手を離していたらば、
  その間にびっくりするような酷暑はやっぱり落ち着きましたね。
  衣替えした途端、カーディガンが要る涼しいのが戻るのって、
  毎年のことなのに覚えてられんというか
  その直前の暑さが年々半端なくなって来てるというか。
  とりあえず、帽子と水分、携帯するようにしましょうね?

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