天上の海・掌中の星 “寒暁冬萌”
 

 
 12月になってもいつまでもコートが要らないくらい生暖かい気候だったものが、冬休みに入った途端に冴え冴えとした冷たさに満ちた朝を連れて来て。気のせいだろうか、いつも窓辺近くまで来ていた小鳥たちの囀
さえずりも、冷え込みの強かった今朝は随分と遠くに聞こえたような。そんな朝がやって来てもう暫くほど経っている時間帯だが、
"…う〜ん。"
 とある閑静な新興住宅地に建つ、分譲の2階建て文化住宅の…1階の廊下の端っこ辺り。階段下にて渋面を作って立ち尽くすのは、緑の髪をした精霊様だ。上背のある屈強精悍な青年なのに、無駄な肉は極力削ぎ落として絞り上げられた肢体は、セーターにジーンズというあっさりとした恰好の下にあってスリムにさえ見えるほど。馬力と瞬発力の双方をバランス良く合わせ持つ"実用重視"の身体だからで、突飛な髪の色を除けば…柔道かラグビーか、何かしらのスポーツを嗜
たしなむ若人という雰囲気の、いかにも頼もしそうな偉丈夫だが、これが実は人には非ず。物質世界のこの三次元よりももっと高次元の世界から、世の理ことわりを乱す"負の生気"や魔性による影響力を粛正しに来ている"破邪"という格の精霊さん。吸いつくような切れ味と威容を誇る精霊刀を操って、問答無用の一刀両断、魔物たちを片っ端から封滅浄化してしまう"白の鬼"。最近増えた またの名を"浄天仙聖"ともいい、真まことの名前というのまで持ってる御仁だが…面倒なので略して"ゾロ"と呼んでやって下さい。こらこら そんな仰々しい存在が、一般家庭のお廊下に姿を現して、一体何をしていらっしゃるやら、心のお声を拾ってみれば、

  "どうしたもんかな。"

 おおお、何かしら困っていらっしゃるご様子だが。
"いい加減、素直に起きてくんないかな。"
 ………はい?
"坊主が起きねぇんだよ、ったく。"
 ははぁ…成程。お元気が取り柄の坊やが、お休みほど早く起き出すいつもの現金さを発揮せず、いつまで経っても2階から降りて来ないからでしたか。…ふ〜ん。
(笑)
"…そうやって笑ってな。"
 あやや。聞こえましたか、こっそりの含み笑い。
(苦笑) (笑)筆者とのMCはともかく。只今現在の破邪様は、この家の唯一の住人である中学生の坊やのお守りをその主な任務としている。小柄で童顔、下手をすると小学生に間違われさえするほど幼(いとけ)ない容姿と所作の、ルフィという男の子で、屈託のない笑顔は彼を知る全ての人たちに"お日様"のような印象を与え、お元気でめげない無邪気さが誰からも愛されている陽気な子。だがだが、実は…遠い過去からの因縁から、その身に"負の陰体"を招いてしまう苦悩を背負ってもいて。悲しい存在になり果てた者たちを、追い払うのが可哀想だと、その小さな身に受け止めてやっていたのを見かねて、自分が守ってやるからと傍らに居ることを決めたのが事の発端であり、このお話のスタートで。もっと詳しいところは前話までをお読み下さいということで。こらこら
"う〜ん。"
 学校は既に冬休みに入っているので"遅刻"する訳でなし、無理から起こす必要もないのだが、それでもそろそろ起きてもらわないと色々と困る。クリスマスは昨日済んだが、そうなると次にやって来るのはお正月であり、この一家には珍しくも家人の全員が顔を揃える行事なので、そこはやはり…ささやかながらもキチンとした準備をしてやりたいと、柄にもないことを思ってしまう精霊さんであり。昨年は少々不慣れなところもあったけれど、聖封様の助言も得つつ何とか無難に支度を整えた。大掃除の後に、布団を全部干し出し、シーツやカバーなどというリネン類を洗濯し。縁起物で床の間や玄関を飾り付け、それからそれから、おせちとかいう正月料理に、鯛の尾かしら、雑煮に餅や酒、ホームパーティー風のカナッペやオードブル、刺身に寿司などを取り揃えて。今時は売っているものが大半なので、形だけで良いならそれで揃えるという手もあると、先日 馴染みの市場で八百屋の奥さんから聞いたので、昨年のお重箱で人気が低かった田作りや昆布巻きは いっそ出来合いのものにして、その代わり足りなくなった黒まめやキントンは多めに作らないとなとか。色々と算段も固まっている…このところ加速がついたように めっきりと"主婦"づいている精霊様なのだが、
(笑)

  "勝手に買い物に行くと、後々で五月蝿
うるさいからなぁ。"

 中学生の男の子といえば、掃除や洗濯、食材のお買い物といった"家事手伝い"なんて雑事は鬱陶しいばかりの筈が、市場のアイドルでもあるルフィ坊やには、商店街が立派な遊び場でもあるらしく。日頃のお買い物なら諦めても、春先の新年度売りつくしだのお盆だのといった"大売り出し"系のこういうイベントっぽい大きなお買い物には必ず連れてけと大騒ぎする。よって、年末大売り出しだなんて大きな代物、置いてけぼりなんぞ食わせようものなら、絶対にぐずるに決まっている。
"今日の一日だけってもんでもないんだが…。"
 年末までの連日催される訳だから、何も今日一日だけを逃しても、予定的にはさしたる支障はないのだけれど、
"今日の日替わり特価品は、みかんMサイズが1箱 980円だから、ちょいと見逃したくなかったんだがな。"
 ………やっぱり"主婦"臭くなっていらっしゃるご様子。
(笑) お部屋を覗きにくいのでしたら、様子を探ってみましたか? もしかして急な風邪の熱とか腹痛とかかもしれませんよ? 日頃はプライバシーってのを考えてか、あまり壁の向こうをまさぐったりはしない破邪様だけれど、今は…ほら"緊急避難"というのを繰り出して。
"いや、そんな種類で具合が悪けりゃ、探るまでもなく伝わって来て分かる。"
 ふむふむ。隠しようがないというのか、むしろ助けを求めるものだろうから、その気配が自然と届くのだそうで。
"それ以外となるとなぁ…。"
 あ、そうでしたね。確か、あの坊ちゃん、その思考を…このゾロさんどころか、天使長であるナミさんにも読ませないという、特殊な存在なんでしたっけ。

  "…う〜ん。"

 あやや、一番最初に戻ってしまいましたがな。でも本当に、出掛けたいならお声を掛けるのが一番手っ取り早いんですのに、何をまた…らしくもなく こんな場所にて逡巡なんかしてらっしゃるやら。保護者なんだから生活態度への教育的指導を施す権限はある筈ですぜ? 旦那。
おいおい

  "それは分かっているんだが…。"

 何となく。自分でも妙だなと感じてはいるのだが、何故だか足が重くて…2階へ上がれないでいる破邪様で。ほんの昨夜、風呂から上がって髪をごしごしと拭ってやってる途中から、居間のソファーでくうくうと寝息を立て出したものだから、そぉっと抱えて部屋まで運んでやった筈なのに。その同じ経路を、何故だろうか…踏み出せないでいる不思議さよ。一体何がこんなにも自分の足を引き留めているのだろうか。よもや、封印結界を操る系の魔性が現れたとか?
"…そんな高度な奴が放し飼いになってりゃあ、グル眉野郎がすっ飛んで来るって。"
 またそういう乱暴な物言いをする。余計なお世話の中割り説明を致しますなら、彼が言ってる"グル眉野郎"というのは、先に おせちの助言を下さった人として挙げました"聖封様"こと、サンジさんという精霊さんのこと。こちらさんも…このゾロさんが"破邪"の中でも飛っ切りの格であるのに引けを取らないほどの上級精霊さんであり、彼の担当は主に、封印全般と魔性の浄化、陰体反応の探査というところ。破邪様が無に滅してサラバと片付けるのに対し、こちら様は邪の素養を封じてナイナイと片付けるタイプの能力者で、料理は…彼ら聖封一族の伝統の趣味だとか。
おいおい ちょっと話が脱線したが、力技ではゾロの破壊力には勝てないサンジさんであるものの、存在・気配を察知する能力では天聖界でも屈指という実力を持つ彼であり、監視エリアの中にそんなとんでもない輩が紛れ込んでいたならば、そのパワーの大きさゆえに、あっさりと目星を差して追っかけてくると言いたいゾロさんであるらしい。で、そんな気配がないということから、そっち系統の邪妖でもなさそうだと言いたい彼だったらしく、
"まあ、いいか。"
 踏ん切りをつけて、階段の上を見上げ…その姿がふっと消えた。瞬きする間もあらばこそ、次に彼が現れたのは…カーテンを引いた子供部屋である。壁紙もカーテンも、カーペットや勉強机に至るまで、内装や家具が妙に真新しいのは、秋半ばに誰かさんが大暴れをしたからで。(『寒凪天狼』参照)子供部屋にしては少し広めの室内の主役、木製ベッドの真ん中にこんもりと盛り上がってる布団のお山に近づくと、
「ルフィ、起きな。もう9時を回ってんぞ。」
 深みがあって響きのいいお声にて、可愛い坊やへと呼びかける。お元気の余燼を夢にまで持ち込むのか、なかなかアバンギャルドな寝相を毎朝披露してくれる少年なのだが、
"…ん?"
 それを思えば、布団の山のどこからも手や足が飛び出していないこの様子。随分と大人しめの寝相なのではなかろうか。そんなにも寒かったのかなと小首を傾げ、
「ほら。もう朝だぞ?」
 再びの声をかけると、布団の山がごそりと動いた。やっと起きたらしいなと苦笑し、
「どうしたよ。昨夜は早く寝たんだろうに。」
 言いながら部屋を横切り、窓に近づいてカーテンに手をかける。しゃ…っという小気味のいい音を立てて真新しいカーテンが開かれると、少々雑然とした感のある室内目がけて、冬の乾いた陽光がそれは元気よく なだれ込んで、無言のままに満ち溢れる。布団の小山にもその光は十分に当たっており、それを取り巻くように、こまやかな埃が斜めに射し込む金色の陽の帯の中を…深海を揺蕩
たゆとうプランクトンみたいにゆっくりと舞っている。
"う〜ん、これは。"
 買い物から帰り次第、此処も掃除せんとなぁという想いがその分厚い胸板の裡に浮かんだ破邪様だったのは置いといて。
(笑)
「ルフィ?」
 どうしたよと声を掛ける。さっき動いたのはただの寝相だったのだろうか? これでは埒が明かないと、意を決してベッドへ近づきかかったゾロだったが、

  「………ぞろ?」

 そんな動きの機先を制すように。小さなくぐもった声がした。
「??? ああ。」
 ルフィの声に間違いはないが、何だか…少し、様子が訝
おかしい。どした?という含みを載せた声を返すと、
「あのね、あの…。」
 何だか躊躇
ためらいを感じさせるよな、勢いのない声で。もそもそと力なく話すところが彼らしくない。朝一番でもそれはそれは朗らかに、弾けるほどの元気をなみなみとたたえたお声でご挨拶してくれる良い子だった筈なのに。
"???"
 だがだが、くどいようだが、体調が悪いから助けてという気色は感じられない。そういうSOSを自意識でセーブ出来る例もなくはないけれど、こんな子供だし、ゾロに向けて遠慮とか警戒とか構える子ではない筈だから、今更押し隠しはしなかろう。様子が訝しいなという不審から、ゾロは布団の端っこへと手を掛けると、
「一体どうしたよ。」
 何の衒
てらいもなく、軽々と…ふかふかの羽毛布団をめくり上げたのだが。

  「………っ!」

 その途端に。きゅううっと身を縮めた坊やだったのが、何だか印象的だった。まるでゾロをこそ恐れたような反応だったから、だろう。だが、そうではないとすぐさま気づいたのは、やはり坊やの見せた反応からで。
「おい、ルフ…。」
「…ぞろ?」
 こちらから掛けかけた声を遮って。敷布団の上へ蹲
うずくまり、亀の子みたいに"ぎゅう"っと手足を身の傍へと引きつけて丸くなっていた坊やが、恐る恐る顔を上げる。それから、

  「………。」

 何度も瞬きをして、こちらの顔をじっと見つめて………幾刻か。妙に真摯な、神妙な雰囲気があって、それへと呑まれたかのように付き合いよく押し黙ってしまったゾロがハッとしたのは、

  「…お前。」

 小さな坊やがその大きな琥珀色の瞳に…今にも縁から溢れそうなくらいの涙をためていたからだ。
「ルフィ? どうしたんだ?」
 只事ではないぞと、背条に冷たいものを感じながら手を伸ばすと、

  「………っ。」

 またまた目に見えての怯えを示して、身を堅くする坊やであり。
「…おい。」
 何だか…さっきから、胸の奥底にちくちくと。不快な痛みが沸いて止まないゾロでもある。遥か昔にお師匠様と過ごした子供時代のみを例外に、誰ぞとの親しい交流とやらを持った覚えもないまま、気の遠くなるほどの歳月を幾星層も。孤高の中に身を置いて来たこの彼が、出会ってからこの方のずっと、唯一無二の宝物のように慈しんで来た坊やだというのに。今になってこんな反応を向けられたとあって、それへと何も感じないという方が無理なお話だろう。そりゃあ確かに、貴夫人を扱うような丁寧さで対して来た覚えはない。何かにつけて乱暴だろうし大雑把でもあったことだろうが、そんなざっかけないところへ無邪気に懐いてくれていた彼ではなかったか? 向こうからこそくっつきたがって、抱きついたりおぶさったり、それからそれから…キスをねだったり。それを今更 怖がられてもと、何だかこっちこそ辛いぞと感じたゾロだったのだが。

  「…あの・な、俺…。」

 ひぐぅ…っと。引きつけるように大きくしゃくり上げながらも、震える声で何か伝えたいらしい彼だと気づいて、その懸命な様子にほだされる格好で…自分の側の不快感はとりあえず力任せに押し込めた。触られるのは嫌なようだから、ベッドの端の空いたところへと腰を下ろして、何だか妙な恰好での対面になった二人だったが、
"………。"
 何とも痛々しいなと、それもまた破邪殿の胸の奥をつきつきと突々いてやまない。大きな瞳のその許容をとうとう越えてしまったらしく、頬にこぼれ落ちた涙が朝日の中でてらてらと光っている。ぽさぽさとまとまりは悪いが水気の多い髪が、これもやはりつややかに光っていて。撫でてやりたい衝動に駆られたのを何とか押さえ込む。すると、ルフィが…小さな小さな声で、こんなことを言い出した。



   「あのな、俺、…今朝、大人んなっちまったんだ。」


   ――― はい?






            ◇



 傍らのテーブルの上に放り出されてあったボックスティッシュを差し出してやると、恐る恐る手を伸ばし、何枚か引っこ抜いて思い切り洟を咬んで見せた坊やで。

  『ガッコで習ってたからサ、
   もうすぐ来るんだろうなってゆう"知識"はあったんだ。』

 それと。ルフィ坊やの場合は特別な能力があったことから、そっちの筋の知識も一応は蓄えとして持っていたことが問題で。
『女の子は"せーり"、男の子は"せーつう"ってのが来たら、霊能力はガタンって落ちる場合があるって。』
 そういや、言いますね。身体が大人になって、殊に"生殖"という生々しいことへ縁を繋ぐと、ピュアで神聖な力は消えたり減ったりするって。
『だけどサ、何だか現実味がないってのか、だからどうなるってところまでは考えてなかったんだ。………今朝になるまで。』
 毛布にくるまれたまま、凭れ掛かってる頼もしい懐ろ。その雄々しい胸板へ柔らかい頬を擦りつけて。仔犬のような"くぅ〜ん"という切なそうな鼻声を上げた小さな坊やは、まだ赤みの残る目許を振り上げると、頭上で擽ったげな微苦笑を見せている大好きな精霊さんのお顔を見上げた。

  『俺の能力がもし消えたら、ゾロんこと見えなくなるかもって。』

 それがただただ怖くてたまらず。あまりに恐ろしくて、生きた心地さえしなくって。もうとっくに起きていたにもかかわらず、階下に降りてみよう、そこにいるゾロに会ってみようという勇気さえ沸かないままに、ぐすぐすと声を押し殺して泣いていたらしい。何十分もかかってそんなお話を打ち明けた坊やに、

  『…そうか。』

 こちらさんもやっとのことで安堵の吐息をついて見せ。大丈夫だからと手を差し伸べてベッドから抱え上げ、きゅううっと抱き締めてやって宥めるのに小半時ほど。それから。シャワーを浴びて下着を取り替え、今は階下のリビングにて。その大好きな精霊さんのお膝に抱えられて、何とか"生きた心地"という奴を取り戻した坊やであるらしい。

  「…ぞろ。」

 うっとりと眸を細め、甘いお声で名前を呼ぶ。その頬に、凭れた背中や肩に、確かに感じる大好きな人の温もりに、心の底から安らいで浸っている。そして、
"そんな恐怖心が、一種の障壁を作ってたんだな。"
 ゾロがどうしてだか彼のいる子供部屋へ迎えずにいたのは、ルフィの強い恐怖の心が無意識のうちに結界のようなものを作り出していたせいだったらしく。…今だから言えることだが、それだけの能力が発揮されたほどなのに、ゾロが見えなくなるってのは順番がおかしい訳で。確かに"精神的な素養"ではあるが、この子ほどの力ともなれば…性行動くらい結ばないと消えまではしないだろうし、あれほど強大な魔性が遥か昔にかけた咒による代物。むしろそういった物理的な肉体上の成長なんぞに引っ掛からないほど強いに違いなく。
"それでも怖かったのか。"
 確かサンジ辺りが説明してやってなかったかなと、思い返しながらも。自分と会えなくなる、自分の存在を感知出来なくなるのが…こんなに怖いと感じてくれたのが、妙に嬉しい破邪様で。

  『だけどサ、何だか現実味がないってのか、
   だからどうなるってところまでは考えてなかったんだ。』

 能力が失われることもあるという事実を知ったばかりの頃は、むしろこんな厄介な力は消えた方がいいと思っていたから。だから深くは考えていなかった、覚えてはいなかった彼なのかもしれない。そして今は、そんなことが起こってくれるなと、強く強く思う気持ちが記憶に封をしていたと…。
"………。"
 指通りのいい髪を大きな手でさらさらと撫でてやると、擽ったそうに顔を上げ、嬉しそうな笑顔を見せてくれる愛しい子。怖かったのは自分も同じ。彼からの拒絶の反応がどれほどにこの身を胸を苛
さいなんだか。
"それだけ…弱いところが出来ちまったということか。"
 やれやれだよなと内心で苦笑をし、そろそろ昼になろうかという頃合いに気づいて、何か作ろうかと坊やに声を掛ける。
「んとな、山盛りのチャーハンが食べたいっ。」
「オーライ。」
 何とかお元気が戻ったらしき坊やの笑顔に、こちらも何だか胸の奥がきゅうと締めつけられながら。それを誤魔化すかのように…小さな体をぎゅううっと抱き締めてやってから、ソファーから立ち上がる破邪様である。年の瀬の慌ただしささえ一蹴した、小さな小さな大事件。こんな些細なことが…彼らには思わぬ重さとなって襲い来るのだなと、あらためて感じ入った出来事でございました。




  〜Fine〜  03.12.28.〜12.29.


  *な、なんか妙な締めくくり方ですいません。
   こちらもちょっと久し振りの(でもないか?)破邪様ですが。
   螺旋のルフィと競争するかのように、
   どんどん所帯臭くなってくゾロなのが、何か笑えます。
(笑)
   彼らの場合、不思議な力でピピッと片付いてしまうかというと さにあらんで、
   確かに"物の移動"なんかには便利なこともありましょうが、
   例えば汚れ物を洗うとか、塵や埃を集めて捨てるとか、
   移動にしたところで結局のところはその手で処置しなけりゃいけないので、
   家庭内の労働においては、あまり労力は変わらないそうです。

  *これが今年の最後のお話になりそうですね。
   今年は後半になって、
   PCがへそ曲げるわ、更新のペースが落ちるわと、
   何だかご心配やご迷惑をお掛けしておりましたね。
   なのに沢山の方に可愛がっていただきまして、
   本当にありがとうございました。
   来年もまた、どうか遊びに来てやって下さいませです。
   少し早いですが、皆様、よいお年をお迎えくださいませ。
   それではではvv

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