甘い体臭のする彼だと気づいたのはいつからだったろうか。蜂蜜やらチョコレートやら、歯の浮きそうな甘いものが大好きな、まだまだ子供だからなのだろうか。その“子供”が、今はどこかうっとりと潤んだ眸をして、男の頼もしいまでに太い首条へ盛んに頬擦りをしかけていて。子供が遊んでとせがむような無邪気さに見えないこともないけれど、
「………ふ、ンん。」
どこか甘い響きのする鼻声混じり。せがんでいる対象が、いつもの…遊びやお菓子ではないものだというのが仄かに察せられるような、吐息であり声だった。宿の入り口、診療所の受付のように小窓の空いた以外は全面締め切りのカウンターがあって。向こうもこちらも顔を合わせずに手元だけで金と鍵をやり取り出来るようになっているところは、大体どこの地方でも同じシステムであるようだ。毛布にくるんだ少年をかつぎ込んだ奇妙な男だというのは、店の方にしてみれば関心のないこと。プライベート云々というだけでなく、何かしらの事件にかかわった人物であっても、こういうシステムですからねぇと、関与を否定出来る利点があってのことだろう。先程、シェフ殿が寄越してくれた硬貨を出すと、彼の大きな手でやっと掴み切れるほど、結構多い釣り銭と共に番号札の付いた鍵を差し出された。
番号を頼りに辿り着いた部屋は、カバーのかかったベッドと僅かな調度品とで小ぎれいに整えられた、まあまあ清潔そうなワンルームで。出した硬貨でこちらのレベルのようなものを値踏みされたというところだろうか。一応は窓もあって、だが、夜中だから壁紙に合わせた色合いの厚手のカーテンが引かれたまま。ベッドは質素だが頑丈そうで、毛布ごとそっと少年をその上へと降ろすと、かすかに寝具から甘ったるい香りが舞い上がる。干しても抜けない、商売女の頑強な脂粉の香りというやつだろうか。それとも、ムードを盛り上げるためにと、この店でサービス的に振り撒いている香水か何かだろうか。
“………。”
そこへ考えが至った途端。似たような薬品でえらいことになっているルフィなのだということへも思いが至って、ムッと来る。斜めになった麦ワラ帽子を頭から退けてサイドテーブルへと載せる。彼にとっての唯一無二の宝物を取り上げられても反応はなく、
「ん…。」
ぼんやりと、天井を見やっているにしては焦点の近い眼差しを宙に漂わせていて。まるで…赤ん坊が何を見、何を考えているのだか、傍からは判らないのと似ているなと、ゾロは腰の刀を外しながら、そう思った。
“赤ん坊か…。”
此処に居るのは、どこかとろんと力ない顔でいる、頼りなげな少年だ。いつもいつも“海賊王になるんだ”と豪語し、弾けるような勢いで大口を開いて笑う、お日様みたいに闊達な、あのルフィではない。ベッドの端に腰掛けて、
「…なあ。」
髪に手をやり、いつものように耳の上の横鬢辺りから節太な指を差し込んで、手櫛で梳いてやりながら、ふと、呟く。どうせ届きはしないのだろうと判っていて。
「俺、こんな弱っちいお前はホントは好きじゃねぇんだぞ?」
根拠のない、だがだが本人にだけは何かしらの手ごたえがあって、胸を張って言い切れる強かな自信に満ちた、そんな“偉そうな”ところが彼らしさであり、時に傍迷惑ながらも、そんな彼だから惹かれているのに。
「対等な奴だから惚れたんだぞ? 判ってんのかよ、おい。」
髪を離れて、頬へ降りた手。大きな手に易々と収まる、やわらかな感触の頬を包み込み、刀ダコでか皮膚の堅い親指の腹でふにふにと軽く真ん中を押してやる。くすぐったかったか、薄く笑ったルフィであり、
「…いい気なもんだよな。」
口では呆れたようにそう言いつつも、ほこりとした微笑い方につい釣られて、ゾロの口許も薄くほころんでいる。
「………。」
吐息をひとつ、ため息のように吐き出すと、上体をねじるような格好のまま、その両腕を伸ばし、ルフィの体の両脇に突いてそっと体を重ねてみる。小さな温み。やわらかで心地よくて、甘い香りのする少年。夜ごと身を重ね、何をか確かめ合っているのだけれど、未だそれは掴むことが叶わぬまま、どこか遠くへ逃げてしまうばかり。もしかすると彼を捕まえたい自分なのかも知れない。深く強く求めれば、もしかしたら手に入るのかもと、そんな気持ちがどこかにあって、だのに、気がつけば…彼に溺れて自分さえ見失い、夜陰に呑まれてしまうだけ。
“今のこいつじゃあ、尚のこと…。”
自分が欲しいと感じる“いつものルフィ”ではないのだから、その“何か”も捕まえようがないのだろなと苦笑する。
“…………。”
さっきからずっと手を拱こまねいているのは、ともすれば“状況”へと駄々を捏ねているようなものなのかも知れない。時間もないことだしと判ってはいるのだが、
「………。」
所謂“性行為”において、男は女に比べると即物的なように思われがちだが(実際の話、性感帯とやらの範囲も、女性がほぼ全身なのに比べれば、性器オンリーと言っていいほど少ないのだが)、これで結構メンタルなことからの影響は女性以上に大きい。相手から失望されると、それが直接の罵倒や叱咤でなくとも感じ取って一気に自信を無くすし、逆に、性感帯へ触れられたわけでもないのに、声や匂いといった要素でやすやすと盛り上がることだって出来る。相手の媚態へ、それを齎したのは自分なのだと、ああ、こんなに感じているのだと感じ取って、自分もまた盛り上がれる。……何が言いたいのかというと、男もまた“その気”になるには色々と、ムードだの気構えだのという微妙な要素も結構必要で。いくらルフィ本人には違いないとはいえ、この状態の彼に対して、なかなか“その気”にはなれるものではない剣豪だったりするわけである。
「………。」
ついつい…髪に鼻先を埋めるようにして、しばらくの間じっとしていると、
「ん。なあ、なぁって。」
体の下から、ねだるようにせがむように少しだけ強い声を出して来るから…正気に返ったのかと、正直“どきり”とした。
「ん? どした?」
顎を引いて覗き込みながら訊くと、だが表情はどこか焦点の合わないままであり、
「なあ、ここ。」
自分から浮かした腰を切なげに擦り寄せて来て、何かしらねだるような声を出す。こちらの温みや匂いを感じて、ゆるく立ち上がりかけていた“その気”に拍車が掛かったらしい。蜜を帯びて甘い、そんな睦声がくすぐったくて、
「ここをどうすんだ?」
「…んー。」
どうとも動いてくれない相手に焦れったそうに身をよじり、首っ玉にしがみついてますます身を擦り寄せ、懸命に触れさせようとする。妙に大胆なのも薬の作用のせいなのだろうか。本人は、自分は夢の中にいるとかどうとか、そう思ってでもいるのだろうか。
「なあって。」
眉を寄せ、それは切なそうな顔をするものだから。この現状には悪あがきも通じないかとゾロは苦笑し、そのままそっと覆いかぶさって。仄かに濡れて赤々と、これまでになく煽情的な口許へ、ゆるりと唇を重ねたのだった。
普段は依然としてどこか初々しい彼なので、とにかく少しずつの刺激で盛り上がらせて、時々はまだどこか不安そうな顔をするところをいかに宥めるかにかなりの時間をかけている。だが、今夜の彼にはそういう手間は必要がないらしい。枕灯以外の照明を落とし、上半身は脱いで、ベッドへ…ルフィの傍ら、冷ややかなシーツの海へと身をすべらせる。依然として力ない、小さな体を腕の中へと掻い込んで、深い接吻で薄い舌を十分に味わってから口許を離れ、耳朶の下、おとがいの深みへと鼻先をもぐり込ませる。触れた唇の濡れて温かな感触に、くすぐったそうに笑っているのか、肩がかすかに震えたのが伝わって来た。そこから首条をすべり降り、鎖骨の合わせ目の窪み、肌の薄そうな辺りへと到達する。ボタンの少ないシャツは既に片手ではだけさせていて、重みをかけぬよう片腕だけ背へと回して抱いたまま、片側の胸板にひたりと這わせた手のひらを、肋骨の曲線に添わせてすっと脇へとすべらせる。途中、つんと浮いた突起に親指の腹が触れるのはわざと構えたコース取りで、
「…ん。」
触れるか触れないかという曖昧な感触が却って気になったらしい。ぼんやりと見上げて来た眸がそよぐように揺らめいた。
「どした?」
「ん、今の…いィ。」
曖昧な呟きへそうかと微笑って、手のひらを元の位置へと戻し、同じ仕草を繰り返す。今度は突起に当たって乗り上げたまま、指の腹で円を描くように、軽く捏ねるように扱いてやると、
「ゃ…ンんっ。」
切なそうに身を捩ろうとし、息を弾ませ始める。堅さのあった突起がやがて柔らかにほぐれ、鮮やかな緋色を帯びて熟して来た頃には、逃れたいような、だが、気持ちがいいと言いたげな、甘い睦声を細く洩らして、小さな顎を反り返らせていたルフィだった。体を少しずらして、手前のもう片方の突起を唇に含み、その代わり、先程まで蹂躙に蠢いていた手は、程よくしまった肉付きの腹をゆっくり這い降りて、ズボンの上から触れてみる。
「…あ、ぁあ。」
デニム地の上からでも触れれば形が分かるほど、うずうずと立ち上がりかけているらしくて。やはり慣れた手際で片手でボタンを外し、ベルト部から大振りの手を遠慮なく差し入れる。ファスナーが手の甲に押される格好で勝手に降りてゆくのも、いつものこととてさして気に留めず、下着の上から“するっ”と撫でるように触れると、
「ア…んっ、…ゃ、あ…っ。」
舌先で押し潰すように突々かれる胸への刺激へか、それとも中心部へのくすぐるような焦れったい感触へなのか、短くながら細い悲鳴を上げ、身悶えして両腿を閉じかかる彼であり、
「おいおい。シテほしいんじゃなかったのか?」
口許だけで小さく笑い、目の前で唾液に濡れて立ち上がってる突起へと甘く歯の先を当ててやる。敏感になった箇所へはそんなだけの刺激でも十分に効くらしく、あぁと糸を引くような細い声を上げたルフィは、身を反らせるようにして、赤く上気した頬を肩の向こう、背後のシーツへと押しつけた。随分と呼吸が弾んでいて、口許は吐息に濡れ、煽情的な赤に染まっている。薬のせいで感じやすくもなっているのだろうか。既に先走るものでじっとりと濡れかけている下着の感触に、
“…そうか。”
このままズボンまで濡れてしまっては不味かろうと気がついた。上半身を抱えていた腕を腰辺りにまでずらし、
「ほら、脱がすぞ?」
腰を浮かさせ、
「ひ…ぁっ。」
閉じられた腿はその内側を手のひらで撫で下ろすことで開かせて、まるで子供の着替えのようなノリでざっとジーンズを引き降ろす。ゾロの長い腕の丈に任せ、勢いよく足の先まで滑った膝丈のズボンは、だが、片側だけが爪先まで抜け、もう片方は足首に引っ掛かって止まってしまったようだった。
“ま・いっか。”
そんなにきっちり一々対処を構えるほどのことで無し。放ったらかしで行為の方へと戻る。腰回りを抱えた格好になったその、男の腕や肩へとルフィの手が触れていて、
「ん? どうした?」
何かこちらへ訴えたいのかと、身をずり上げて顔近くで問えば、
「ん、ん…。」
間近になったこちらの首条深く、腕を巻きつけてぎゅうとしがみついてくる彼だから、
「…そうか。」
切なくてしようがないのだろう。どうにかしてほしいのだろう。彼の落ち度のせいでは…全くないとは言えないながら、こんな身になってしまったのは彼が望んだことではない。サンジの言いようではないが“可哀想な”彼なのだ。
「早いとこ、楽にしてやるからな。」
水気の重みがあって柔らかな黒髪を撫でてやり、その手を下方へ降ろすと…立ち上がりかかっているものへ直接重ねた。途端に、ピアスの下がった側の耳元で、少年の細い呼吸がかすれた声を含んで短く撥ねる。無骨な手の中に収められ、ゆっくりと揉みしだかれるにしたがって、首条にしがみついていた手が…最初は反射的なものだろう“きゅっ”と力がこもったものが、ややあって。
「あ、…ゃあ、あっ、ひ、…ゃん、んんっ。」
手の先が震えて滑り落ちかけては厚い肩へすがりつき、まるで海で溺れかかった時のように、助けを求めるような顔をする。この顔にはさすがに弱いゾロだが、何とも言えない表情になりつつ、
「もちっと我慢な。」
聞いてやらない。淡い繁りを濡らす先走りは止まらず、ゾロの手をぬるく浸して。逃れたいのか身悶えの止まらない少年を、片腕での軽々とした就縛と短い口づけで宥めながら、健気なほどにぐいぐいと力を漲みなぎらせて立ち上がってゆく自身を愛おしんでやれば、
「あ、あっ、あん、、や…だっ、やっ、ああっ!」
髪がシーツを叩いて鳴るほどかぶりを振り、背を大きくのけ反らせて“嫌だ”を連呼する本人と裏腹、熱く勃ち上がった“彼”は、ゾロの手へ速まった鼓動を伝えて脈打ちながら、一瞬、逡巡でもしているような格好で息を詰めていたものの、
「…あっ。やぁっ、あ…っ!」
男の腕の輪に抱えられた腰がひくんと大きく撥ねたそのまま、細い悲鳴と共に一気に精を放った。ほとばしるその勢いにまんま翻弄されているのだろう。
「や、ああっ、あ…は…んん、ん…っ。」
意識を揉みくちゃにされ、切れ切れな悲鳴を上げながら必死ですがりついて来る細っこい身体を、こちらからもしっかり抱き締めてやる。長いことじんわりと焦らされた状態が続いたせいだろうか、常より僅かに長く吐き出され続けた精熱だったが、やがて、
「ぁ…はぁ、んく…ん、ん、ん…。」
まるで全力で駆けて来たかのように胸板を激しく上下させ、少しずつ萎えてゆく、甘ったるい汗の香の匂う身体。やはり上下している肩の動きに合わせて短く途切れる、熱を帯びた吐息を胸板に受け止めながら、そっと宥めてやっていたゾロだったが、
「ん…なァ、ゾ、ロ。」
少し掠れかけた声で、甘く呼びかけてくるのに気づいた。そう簡単には抜けない媚薬であるらしく、ある意味で重宝されてる代物なのだろうなと苦々しく感じつつ、
「どした?」
訊いてやると、
「ん、ん、こっち。こっちも。」
手を取って導こうとするから、判った判ったと苦笑する。精を放ってそれから…という段取りのようなものに、体がすっかり慣れている彼なのだろう。ここまでだけでは満足出来ない。もう一か所も愛されなければ、そちらからの刺激も味合わなければと、そういう身になっているらしい。さすがに日頃は…まだどこか恥じらうことの多い彼だから、こうまで積極的に求められたことは一度もなくて気がつかなかったが、身を重ね合うようになってからもう随分になる。互いへの気持ちは溢れんばかりでありつつも、行為自体には慣れがなく、あれほど痛々しくて健気だった少年も、いつの間にやら…そういえば。このところでは、その声を聞くだけで滾たぎり立ってしまいそうなほど、蕩けそうな熱い睦声を上げ、甘い鼻声やら仕草やらでキスを愛咬を“もっと”とねだりもするようになっている。こうまで妖冶な彼に仕立て上げたのは、間違いなく自分であり、
“…まいったな。”
何もこんな時にこんな形で思い知らされなくともと、何とも言いがたい複雑な心境で、もどかしげに愛撫をせがむ愛しい少年に、仕切り直しのキスをした剣濠殿である。
「…あ、ぁあっ。」
意識が半分飛んでいるようなものだからか、いつもならかなり時間をかけねばほぐれない蕾も、締まりの強きつさは変わらないながら抵抗は薄いようで。男の太い指をゆっくりと飲み込んでは、内部も徐々に熱く蕩けてゆく。さっき飛ばした自身の性熱を塗り込められて、くちゅくちゅと湿った音を立てる蜜口の縁。抜き差しする格好でしきりとそこを擦っている、ゾロの少し堅い指自体の感触も、彼には気持ちがいいらしい。既に二本を飲み込んでいて、いつものようにもう一本を加えて改めて押し込むと、
「あっ!」
小さな顎をのけ反らせ、両手ですがるように掴まっていた男の肩を、反射的に押し返そうとするのだが、
「あ、は…ああ、んっ、ん…。」
やがてそれも馴染むと。細っこい腰を揺らめかせ、悩ましげに眉を寄せては、熱で潤ませた眸でもってこちらを見上げてくる。
「もう良いか?」
訊くと、通じるのか“こくこく”と何度も切なそうな顔が頷くから、こちらも既とうに怒張しきって勃ち上がっているものを秘処へと近づけ、まずは宛てがう。
「あっ、ぁあ、んんっ。」
声は嗄かれかけ、時折掠れて。それでも…それで器の許容を越えるほどに溢れ出す気持ちを、外へ解放してでもいるのだろうか。悲鳴のような、絶叫のような。高く、細く。まるで薄闇の中に綾を成すように、妖しく切ない、熱く激しい、様々な音色を出し続ける。今、熱い筒先を当てられて、だが、
「ん、ぅんっ…。」
その続きをねだるような、鼻に抜ける声を上げるものだから。
「そうか、欲しいのか。」
耳元で囁いてやると、低まった声の響きにくすぐられてか少しばかり身を縮め、
「な、ハヤク…。」
とろんとした眸が見上げてくる。ここにいるのはやはり“ルフィ”ではないらしいが、だからといってなおざりな扱いは出来ず。何より、彼が相手でなければ、こうまでの興奮や高揚は得られない剣豪でもある。シーツの上に投げ出されていた両脚を、胸につくほど折り曲げさせて。自身が何度か放った精で薄く濡れた腰を掴んで、ぐいと引き寄せ、力任せに侵入してゆく。
「ぁアッ!」
狭い秘筒をぐいぐいと強引に広げながら押し込まれる肉瘤の力強さに、全身が震えて血が泡立ちそうになる。口が弾けそうなほど強引にねじ込まれるのも、堅い存在に強く壁が擦られるのも、痛みや苦しさも何もかも、至高の悦楽につながってしまっている。背条を駆け登り、全身へ、指先爪先にまで“さぁっ”と痺れるような熱を散らしてゆくのが、肌の下にまざまざと判る。体内に潜こもった熱と共に、淫らな嬌声が喉から口から勝手にあふれ出す。
「あ、はっ、ぁ…ッ、ああっ、ん…っ。」
ずぐずぐと濡れた音と共に、蕩けそうになった奥へ奥へ。絡みつく襞を易々と振り切って。どんどん際限無く侵入してくる力強い肉塊。最奥の、指では到底届かなかった箇所にまで、秘壁に擦りつけられながら押し入ってくる淫らな存在。それに前立腺をキツク擦られて、
「ひっ、あ、ぁあっ、ゃ、あっ!」
無残なまでの力づくで犯されているのは下半身なのに、頭の中で沢山の火花が弾ける。苦しいのに、キモチイイ。とろとろと蜜を溢れさせて勃ち上がった自身が、ぐんぐんと張り詰めて痛いくらいに突っ張っていて。アタマもカラダもキツイくらいの悦楽に支配され、オカシクなりそうで、どこかへ飛んで行ってしまいそうで、思わず眼前の宙へと伸ばした手を、
「…っ!」
力強い大きな手が掴み取る。最後の部分までぐいと押し込んだその動作に、
「…あっ!」
のけ反った小さな背中を、シーツの間に割り込んで来て掬い上げるように抱き締めた腕がある。
「………あ。」
枕灯の頼りない明かりの中、覗き込んでくる顔。荒い息のまま。だのに、こっちを案じている男臭い顔。誰だったかな、と、まさぐった記憶の窓がパタリと開いて、
「…あ、あれ? ゾロだ。」
荒い息の下、不意にそんなことを言い出すルフィで。
「こんな、トコにいたんだ。探し…て、たんだぞ?」
嗄れかけた声で訴えるのへ、
「そっか。」
ゾロは薄く苦笑して見せた。
「船から降りて来たんか。」
「うん。凄い探したんだからな。」
「そっか、悪かったな。」
「でも良いや。見つかった、から………ん、んんっ。」
細い声での会話は、だが、与えられていた律動によって込み上げて来た波に呑まれて。ルフィはそのまま眸を伏せる。はあっはあ…っと激しい勢いで吐き出される呼吸が喉を灼く。
「あ、ぞろ、…んぁっっ!」
先端を震わせてぎりぎりと反り返るほどに勃ち上がっていた自身を、男の堅い手に握り込まれた。もう我慢出来ないし、しなくても良いぞとその感触が告げていて、
「ああっ、あっ、あーっっ!」
蜜の糸を引くかのような。細い声を長く長く放って、大きくのけ反った小さな体を頼もしい腕がしっかりと抱き締める。いくら押しても動かないから、頑丈な壁だから遠慮は要らないぞと構えてくれたところへ、思い切りの力を込めて凭れかかれる充実感。
「あ…ああ…は…はぁ…。」
気絶しそうなほどの絶頂感に襲われたことで、萎えかかりながらもまだ乱れた呼吸に翻弄されていた体内へ、不意に熱い塊がその存在感を主張し出す。
「…あっ。」
ずるりと。引き出されかけ、再び押し込まれて。再び擦られた肉壁が反応し出す。愉悦を感じる器官も秘処も、全てがもうすっかり疲れ切っている筈なのに、苦痛にも似た快感が、精を放ち尽くしたばかりの自身をさえ、ぴりぴりと刺激して立ち上がらせるから。
「あ、ああっ! ぞ、ぞろっ。」
力強く突き上げられて、力の入らない少年の体ががくがくと揺さぶられる。ギリギリでキチキチの細い秘道を、萎えるどころかますます怒張した一物に容赦なく擦られる刺激と、強引に引き出され押し込まれる動きとが、ルフィの感覚を気を失いそうなほどに高め、容赦なく追い込んでゆく。
「はぅっ、あ、ああっ、はあっ!」
もう嫌なのに、辛いのに。カラダはもっともっとと際限無く燃え立って。
「もう少しだからな。」
耳元で囁いた甘く掠れた声が、背条をざくりと震わせた。堪らなくてしがみついた男の太い首条。汗の匂いが官能的で、下半身だけでなく、匂いや腕に触れる熱い肩の肌の感触などからも、キモチがどんどん追い上げられてゆくような気がして。
「………あっ。」
体の最奥で放たれた、熱い熔岩のような迸ほとばしり。奥の壁を固体のように力強く叩いて、その刺激が壮絶なまでの悦楽を自身へと直接響かせる。
「あっ! ああっ、やぁっ! あ…っ、あぁーーーっ…。」
頭の中に物凄い光が弾けたような気がして………。ルフィには、そこから先の記憶はなかった。
◇
「…あれぇ?」
十分寝足りたらしい船長殿は、何かしらの後遺症でも出はしないかと、心配であまり寝られなかった剣豪殿の腕の中で、それはそれはすっきりばっちりと目を覚ました。身体の奥の方で何かが気怠げに欠伸を繰り返しているような気もするが、昼寝のし過ぎのような、そんな感じで、うん、負担ではないと切り替えて。
「なんだ。ゾロ、居るんじゃん。」
「居ちゃあ悪いのか。」
つい突っ慳貪に言い返した彼へ、
「だってよ、探しに行ったんだぜ? 昨夜。」
「…それは聞いた。」
「あれえ? 話したか?」
どうも記憶が曖昧なままでいるらしい。いつの間に戻って来たやら、昨夜の“愛し合い”は此処でしたのかなと、ちょこっと曖昧なままながら。
“ま・いっか。”
と大好きな匂いと温みにくるまって、にっこにことご機嫌な様子でいる彼へ、
「あんな、ルフィ。」
剣豪殿はどこか改まったような声をかけてくる。
「んん? 何だ?」
「一つだけ約束してくんないかな。」
「何をだ?」
「信用のおけない、怪しい奴から差し出された食いもんに、そうそう簡単に食いつかないってだ。」
約束以前の問題なような気もするが、相手が相手だ、仕方がない。本当だったら、どんだけ心配したかの憤懣をこめて、保護者として一発恫喝してやりたい剣豪殿でもあったのだが。やたら回復力に富んだ仔猫の目覚めを思わせるような、ふにふにと覚束なかったものが、あっさりあっけらかんと無邪気に眸を瞬かせて“にっぱーっ”と笑ってくれたりしたものだから、叱るタイミングをうっかり逃した“お父さん”としては、せめてもの譲歩、このくらいを提案するしかなかったりするのである。(笑)そして、
「う…うん。」
そして、こちらも…ちゃんと判っているんだかどうなんだか。それでも一応“約束だ”と、頷きはしたルフィだった。………無駄だと思う人、手を挙げて。はぁ〜い。こらこら
〜Fine〜 02.4.25.〜4.29.
*ぎりぎり2カ月更新の“裏”でございます。
これだけは断言させていただきますが、
今回のこのリクをいただいた方には、内容において一切関係ございません。
こんな風にして下さいとか、一切言われてません。
“町ひとつぶっ飛ばすくらい怒ったゾロ”のお話が、
なんで“裏もの”のオマケつきになるかな、自分。(笑)

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