光合成。  “蜜月まで何マイル?”より

 
 まだ色味は浅いながらも、明るい青が戻って来た。あの、冬の空に特有の、どこか素っ気なくも重々しかった気配はすっかりと消えうせて、人見知りをわずかに残しつつも、陽射しが向こうから触れてくるという感覚がある。
『春島海域に入ったみたいね。』
 この気候が安定しだした今朝、ナミがそんな風に言っていたのを思い出す。ただ冬島海域から出たというだけでなく、春の気候が支配する、穏やかな海に入ったのだそうで。ああそうだ、春だよなと、春は良いなぁと。小さな船医をお膝に抱えて、二人してキッチンの屋根、みかん畑の縁に腰掛けて、午前中いっぱいを とほんとして過ごした。
"…うっと。"
 昼からは薬品の整理というお仕事があるからと、陽なたぼっこの相棒が医務室に入ってしまい、仕方がないかなと一人で上甲板へと上がる。年中剥き出しの腕や胸元の肌へと吹き寄せ、髪をさやさやとなぶる潮風までもが、何だか甘く、人懐っこくなったような気がして。気分も軽く、鼻歌混じりに短いステップを上がり切ると、柵に背中を凭れさせての座った姿勢のまま、ゾロが寝ている姿が眸に入った。自分の分身である三本の日本刀を傍らに立て掛けて、

  "もう熟睡してるや。"

 すぐ間近にまで近づくと、足を折り畳んで顎の近くで膝に手を載せ、屈み込んで寝息を聞く。潮風や帆をはためかせる風の太鼓の音に邪魔されないくらい顔を寄せて耳を欹
そばだてると、すう・すう…とゆっくりしたテンポでしっかと刻まれている寝息がして。ついさっきまでキッチンでちゃんと起きて飯食ってたのに、相変わらず素早いことだなとちょっと呆れた。午前中もこんな調子でぐうぐうと寝ていたゾロで、

  『天気が良いからな、光合成にはもって来いなんだろうよ。』

 にやにや笑いながらサンジがそんな風な言い方をし、それへと"うるせぇよ"なんて怒っていたから、ゾロには"こーごーせー"っていうのが何なのか一応は分かっていたらしい。ルフィには意味が分からなくって。チョッパーに訊いたんだけれど、どもりながら知らないよぉって何だか慌てて医務室に行っちゃったし。サンジやナミは何だかニヤニヤしてるばっかりだし、ウソップはそっぽを向いててさ。ロビンに聞いたら、植物が空気から"にさんかたんそ"っていうのを取り込んで"よーりょくそ"っていうのを使ってエネルギーと"さんそ"を作り出すことよと教えてくれた。そのとき、お日様の光のエネルギーが必要なんだって。だから、晴れてることに引っかけて持ち出された言葉であるらしいのだけれど。けど、平仮名のところが今一つ分かってないままなので、ルフィには何のことやら、依然として良く分かっていないままならしい。
"………でも、ゾロ、怒ってたよな。"
 あんまり嬉しいことではなさそうなので、蒸し返すのは辞めにしとこうかな。そんなこんな思いつつ、傍らに屈み込んだまま、剣豪殿の寝顔に見とれる。

  "………。"

 ゾロの昼寝って本当に気持ち良さそうなんだよな、と、思う。真冬の甲板で寝ている時は、いくらルフィでもさすがにそうは思わないけれど。こんな良い天気の日に今みたいに体を伸び伸びと延ばして寝ていると、その余裕ある態度がいかにも泰然としていてカッコ良くさえ見える。一見、無防備みたいにも思えるけど、そうじゃないし。そんな風に言ったら、
『そおお? ただの怠け者じゃないよ。』
 眠っていても危険を感知出来る反射は大したものだと思うけれど、それにしたってゾロ自身の対応レベルがかなり高設定になっているから。あの反射だからこそ、すんでのところで切り返せるほどギリギリの、相当危ない事態にでも陥らなきゃあ起きないし。一般人のあたしたちからすれば、地震が来てから反応する地震計みたいなもんだわよと、ナミがそんな言い方をしていたのを思い出す。
"…でもさ、やっぱカッコいいもんな♪"
 雰囲気も体も充実していて、一言で言うなら"重厚な男"だと思う。長くて重々しい脚を前方へと投げ出して、両腕を肘から上げて大きな手は頭の後ろ。こうまで余裕の隙だらけで悠々と身を延ばしているのは、ここが安心し切れる自分の船の上だからだろうか。それとも彼の、凄腕なればこその自信から? 手枕に乗っけた頭の短い緑の髪が、陽を受けてぬくぬくと温かそうだ。賢そうな額は突然レンガが落ちて来ても割れないくらい頑丈で、ああでも、余裕ある寝姿なのに、何で眉間に難しそうなしわを寄せているかなと、ルフィはついつい"むう"と唇を曲げた。部屋で一緒に寝てる時はやさしい顔して寝てるのにな。せっかく明るいのだからこんな中であのやさしい顔が見たいもんだのに。明るいのが眩しいのかなぁ。
"………。"
 良い日和をしっかり堪能しているくせに、眉を寄せ、どこか不愉快そうにも見える厳つい表情を浮かべた彫りの深い顔。男臭いって、こういう顔を言うんだろなってつくづく思う。深色に冴えた眸が今は閉じてるのが凄く残念だけれど、ほのかに陽に灼けた肌はよく鞣
なめした革みたいな張りがあって。それがぴたりと張りついた頬や顎の線。すっきりしていて…だけど、だから。見てるだけでちょっとドキドキする。耳朶に下がった棒ピアスが時折揺れてちかちかと光る。顎の下のおとがいから喉、鎖骨の合わせなんかを、つつつ…と視線で撫でてみて。
"………。"
 喉の部分だけ窪んでる体が、胸板で高さをぐんと盛り返して。シャツを押し上げてる隆々とした肉置きは、やっぱり頼もしくて見栄えが良い。深い寝息に合わせて規則正しく上下する様子は、彼が生きている証しだが、
"…何だか"おいでおいで"って言ってるみたいなんだよな。"
 それに、こうやって間近によるとちょっと分かりにくくなる体の幅も、実を言うと…ゾロが頼もしく見えるからと、ルフィがこっそり大好きなポイントで。黒バンダナを巻いた彼の二の腕の逞しさが、されど重々しくなくすっきり見えるのは、胸板だけでなく背中の雄々しさもあるからだ。此処に傷がないことを誇りにしているその背中に、瞬時に割り込まれることで庇われた場面が何度かあったせいで見慣れた後ろ姿。これもシャツを押し上げて陰を刻む、背中のかいがら骨の辺りの肉置きはまた物凄く、剣を構えた腕に力が込もると、力強く ぐぐうっと盛り上がるのが何とも強壮で。それをびしぃっと引き締めて、頑丈そうな腰から真っ直ぐ伸びた背条が凛々しくも豪の気に張り詰めている、惚れ惚れとする背中。
"………。"
 日頃の人間離れした鍛練の成果が凝縮している、それは素晴らしくも完成されたるその肢体。じっと午睡に耽っているだけでこの存在感であるからして、戦闘という修羅場に飛び込んで一気呵成とばかりに動き出した時の躍動と冴えは、もうもう筆舌に尽くしがたいまでに、鋭にして撓
しなやかで柔軟。ただ力任せなだけではない、何でこうまで無駄のない対応や反射が、しかも連綿と繰り出せるのかと。神憑り、いやいや、鬼神のようなという言葉は彼のために存在するのだろうと思わせるほどの働きを軽々とこなす途轍もない剣豪。

  『…見世物じゃねぇんだ。失
せな。』

 そういえば、初めて見た時から既にその存在感から目が離せなかった。ちょっとした事情から海軍に捕まって、乾いた処刑場に飲まず食わずで何日も晒されていて、干上がりきってボロボロになりかかっていたのに。塀の上から覗いていた自分たちへ"見世物じゃねぇんだ"と嘯
うそぶいた声には太々しい張りと凄みがあり、わずかに上げた顔に据わっていた双眸から放たれた鋭い睥睨には、底冷えがしそうなほどの迫力があった。どんな苦衷も艱難辛苦も、その雄々しい魂を、その鋭利な気魄を、そう簡単には踏み躙にじれはしないのだなと思えた。海賊狩り、血に飢えた魔獣。その肩書きのカッコよさから関心が涌いただけだったものが、本人のその存在感に魂ごと鷲掴みにされた。そして、そんな印象そのままに…豪気で信念から外れたことは大っ嫌いな、ついでに義に厚い男なのだという横顔を裏書きする経緯を知り、これはどうでも手に入れなければと気が逸はやったものだ。海軍なんか元から視野にはなかったし、本人の意思さえ関係ない。何が障害として立ち塞がろうと絶対仲間にするんだと、それはもうもう揺るぎなく決めていた。………さすがは"海賊王"になろうという男、物の考え方の順番が違う。(笑)


  「いつまでそうやってんだ?」

  「…あ"?」


 気がつけば。しゃがみ込んだままの恰好で、ぼんやりとゾロの腹巻き辺りを眺めていたルフィであり。そんな彼だと気づいてなのかどうなのか。薄く片方だけ眸を開けて、こちらを見やるしれっとした顔がまた、ちょいと小憎らしいったら。
「何だよ、起きてたんか?」
「起きてたんじゃなくて起きたんだ。」
 そんなにまじまじ眺められてちゃあ、落ち着いて寝てもいられん…なんて、普通の人みたいな言いようをするものだから。柄じゃねぇ〜っと思いつつ、
「…悪りぃ悪りぃ。」
 何かしら企んだ顔つきになり、くくっと笑ってそのまんま。顎の近くで抱えていた膝を甲板に降ろしてぺたりと座り込み、上体を倒してぼそんとばかり。背後の柵に凭れることで少し斜めになっていた、眼前に広々と、それは無防備に晒されていた胸板へと、そ〜れはそれは無造作に倒れ込んでいる。
「ル〜フィィ〜。」
「いーじゃん。どうせこのまま寝てんだろ? 俺も付き合うっ。」
「なら、少し離れな。」
「やだっ。」
「ぅおい…。」
「ゾロの胸板ってさ、暖ったかいし堅さも気持ち良いし、それに良い匂いがすんだも〜んvv」
「だからって人を勝手に枕にすんじゃねぇよっ。」
「聞こえな〜いっと♪」
 陽光に暖められた広い広い胸元は、確かに格好のマットレスのようであり、そのまま顔を上げれば大好きな翡翠の眸が間近に覗ける。ぱふんと抱きつき動かない、屈託のないその様子に根負けしてか、ゾロは体を少しずつ"ずずず…"と前方へとずらすと、体を平らにするようにと寝そべって、ご要望に応えるように"ベッド代わり"という態勢になってやる。信念に燃えて意気盛んな戦闘中以外の日頃は幼
いとけない船長さん。戦闘中もどこかマイペースな彼の、その延長みたいなこの無邪気さは、時に手を焼き、困りものでありながらも、実のところ…それをいなせる自分にちょいと優越感を覚えもするのだ。ほら、ちょいと小悪魔なタイプのカノジョがどうしても憎めないのと同じ理屈。高慢で我が儘で手を焼くカノジョでも、自分の言うことだけは聞いてくれるんじゃないのかなとか期待して、男衆はついつい何されようと許してしまうのだとか。………甘いぞ、優柔不断な男性諸君。(笑)
"なんか話が逸れてないか?"
 すびばせん。
(汗) 筆者の余談はともかくも、
「…? どうしたよ。」
 何がそんなにご機嫌なんだか。にへにへと笑っているのが何だか妙に不審だったので訊いてみると、
「んん、何かさ。」
 嬉しいのが込み上げて来て止まらないんだと、でも、上手く言えなくて。ルフィは"ふふ"と更に重ねて小さく笑う。ふかふかの頬へと食い込むように口角がきゅうと持ち上がって、降りそそぐ陽射しに負けないくらいの眩しい笑顔。惜しげもなく"にぱーっ"と全開で笑ってくれる懐ろ猫さんへ、
「おかしな奴だな。」
 まあそれはいつものことと、剣士も気に留めず大欠伸。すると、
「だってよ。」
 ルフィはなおも嬉しそうに"くつくつ"笑って見せる。
「こんな凄い奴がさ、一緒に居てくれてさ。船長命令だからって、何だって我慢して聞いてくれるじゃん。」
 古いところでは、あのケムリの海軍大佐をバナナワニと水責めの檻から脱出する時に助けた。最近では、何ともお粗末なレベルだったベラミーとかいう半端野郎が売って来た喧嘩を買わず、殴る蹴るのやりたい放題を黙って耐えた。どちらも意に添わないことだったろうに、多くは語らない、上手にも語れない、至って不器用者なルフィからの言葉にちゃんと従ってくれたゾロだったし。
「…何だってってことはないんだがな。」
「そっか?」
「まあ、理屈とか気分とかで我慢出来る範囲のことならってトコだな。」
 ぼうじゃっく・ぶっじ〜んにも(注;正しくは"傍若無人")お腹の上に転がっている船長さんであることは、恐らく"理屈とか気分とかで我慢出来る範囲のこと"なのだろう。むしろ…じゃらす対象が出来て手持ち無沙汰なのが収まったというよな顔になり、手枕をほどいた大きな手でもって、懐ろ猫の柔らかい髪や掴みやすい頭をもしゃもしゃと掻きまぜながら。そんな風にしゃあしゃあと言ってのけるゾロへ、
「ゾロって落ち着いてんだか気が短いんだか分かんねぇんだけどさ。あん時は、喧嘩を買うなって言ったの、黙って守ってくれたじゃん。」
 気が短く思えるのは対応反射が途轍もなく速いからだ。どんな奴をどんなタイミングででも瞬殺可能なほど、目にも留まらぬ速さで大太刀を抜刀出来る、それは凄まじい反射が彼をしてそう見せる。だが、彼の"強さ"の本領は、そんな素早さやとんでもない馬鹿力なぞではなく、ルフィ同様に粘り強くて決して諦めないことである。我慢強い彼だから、あんな薄っぺらな奴の挑発にも乗ることなくきっちり従ってくれた。孤高屈強な狼や虎だって、ハエの大群にたかられれば閉口するもの。威嚇として一声吠えるその代わり、実力の片鱗をちらと見せれば、それであっさり這いつくばらせることだって出来たものを。夢や野望を解さない、目先の計算にしか余念がないちっぽけな奴らだ、手を挙げることさえ馬鹿馬鹿しいと、まともに取り合うなと感じたルフィへ、そこまでは言ってないのに従ってくれたゾロだった。あの時はそれを当然顔で受け止めた自分だったが、後から思い出すたび、何だか爽快なほど誇らしくて堪らない。日頃のツーカーとは訳が違う。深いところまで全く同じな想いである筈はないのに、どうかすると思い切り不服だったかも知れないのに、
「小さいのばっかだったけど、いっぱい怪我してさ。刀を一振りすりゃあ黙らせられたのにさ。」
 だのに、そうしなかった彼だったのが無性に嬉しいルフィなのだ。そんなことを今頃になって引っ張り出して、人様の胸板の上、すっかり寛ぎながら"うくくvv"と笑っている彼に、
「………。」
 一瞬、その翡翠の眸を見開いて、それから。

  「バーカ。」

 すぐ間近な懐ろに収まって嬉しそうに笑う船長殿の笑顔へか、それとも降りそそぐ温かな陽射しにか、眩しそうに眸を細めながら、剣士はちょっとばかし悪態をついて見せる。
「あんな雑魚共につつかれただけの傷なんてな、ゴムの体のお前と変わらんくらい、何ともなかったんだよ。」
 詳細は思い切り省いての語りだったのに、彼の言う"あん時"というのが例のモックタウンでのことだときっちりと把握した上で。俺の怪我の治りの速さを知らんのかと偉そうに言う。武道には"受け身"といって、殴られたり投げられたりする時に相手からの力を上手く逃がすことで自身へのダメージを減らすという、一種の"呼吸
タイミングを操る"技があって、
"まあ、あん時はそれを構えるほどでもなかったんだが。"
 良いようにボコボコにされたが、そしてそれを見ているしか出来なかったナミに、臓腑が煮えるほど口惜しがらせてしまったが、実を言うと…それまでに幾つか関わった戦いに比べたら大したことはなかった。ただ、
"それに…確かに要らねぇ我慢はさせられたがな。"
 自分への拳に無抵抗でいるのはさほどの苦ではなかった。だが、目の前でこのルフィが傷だらけになってゆくのを手出しせずに見ていなければならないのは少々堪えた。ナミだとて彼らと奴らとの実力の格差は重々分かっていて、なのに良いように嬲られていたのが腹立たしかったという順番だったろう。そんなことを耐えねばならない、成程、試練ではあったよなと、今頃になってちらっと思う。

  "………。"

 どんな試練や苦衷に遭おうと、途轍もない冒険や桁外れな修羅場へ飛び込むことになろうと、これからも自分はこの少年につき従うのだろうなと思う。ただ無闇に盲従するつもりはいつだってないのだが、どういう加減なのだか、彼の言い出しそうなことが読めるし、たとえ意に添わない選択を提示されたとしても、強く反対出来ない自分がいる。しょうがねぇな、好きなようにやらせてやろうかいと、腰を上げている自分。…もしかして自分も心のどこかでそっちを選びたいと思っているのかもと、そんな風な苦笑を浮かべつつ、船長命令に従っている自分。いざという時の男気、尻腰があるのかどうか、覚悟は本物か、それさえ把握していれば良い。どんな無茶をも呑んで平らげてしまえる彼に負けないように、その遥かなる野望に最後まで付き合えるように、無茶を無茶と思えないほど、こっちも無茶な男になれば良いのだからして。

  "確かになぁ。色々と無茶な奴だよ。"

 時にどんなセオリーさえ振り切ってとんでもないことをしでかしかねない、破天荒でパワフルな小動物。それがこのルフィという少年だ。もしかしたら、この子のくるぶしには眸に見えない羽が生えているのかもしれない。だから。人世界のどこか歪んだ"暗黙の了解"だとか"そういうもの"だとか、足枷である筈の重いものを易々と振り切って、真実だけを正道だけを真っ直ぐ真っ直ぐ見通せる、そんな瞳でいられるのかも。

  "………。"

 胸元に密着した軽い体のやわらかな温み。ぐりぐりと頬を擦りつけてくる幼いお顔をついつい覗き込むと、ひょいっと、前触れなく顔を上げて来たのと視線が合った。両の腕を肘で曲げ、重ねた両手を小さな顎の下に伏せてという格好で、

  「光合成。」
  「んん?」
  「お日様に当たって、エネルギーが作れるんだろ?」

 唐突に何を言い出すかな、こやつ。選りにも選って、あんなスカした野郎の当てこすりを持ち出しやがってよと、ちょいと眉根を寄せつつ見返すと、そんな眉間を人差し指の先でつんつんとつついて、

  「だから。一杯、お日様浴びておこうよ。」

 またまた突拍子もないことを言い出す船長さんで。じゃあ俺は植物なんかいと言い返そうとしたものの、
「ぱふ〜っvv」
 胸板の上、伸び伸びと。胸同士を合わせるように乗っかったまま、大の字になった仔猫のおおらかな無邪気さには………返す言葉もない。
"光合成ねぇ…。"
 こんなに間近い"お日様"からの光や温もりからならば、さぞや途轍もないパワーが生み出されることだろうよと、くつくつ笑って眸を伏せる。新しい季節、新しい海域。何でも来いと待ち構えるためにも、成程、補充は必要だろう。眸を閉じれば、背中には船の揺れが穏やかに伝わって来て。単調な潮騒の囁きと春めいた甘い潮風と、肌には二つのお日様からの温もりと。騒動と冒険と混乱の狭間の小さな小さな凪の時間を、幾つもの"お気に入り"に満たされて、じっくり堪能している剣豪さんだった。




   〜Fine〜  03.2.28.〜3.1.


   *ウチのサイトの本看板をようやく思い出したみたいです、この人。
(笑)
    何だか無性にゾロに逢いたくなっての一気書きです。
    世間様はシェフ殿のお誕生日ですが、
    ままそっちの作品はもう書きましたし。
    見てますか? K世様vv
    微妙な時期ながら、まだ考古学者さんがいます。
    …っていうか。結局、一体誰が船から降りるんだろうか?
    スカイピアの山ほどの遺跡からは
    ロビンちゃん有力って感じもするんですが。

   *ちょうどアニメが、悪名高き 安物・ベラ助の"勘違い劇場"だったもんで、
    それへの憤懣がついつい溢れてしまいましたが、
    一億の男はさすが、何を考えているやら、私にも少々分かりかねます。
    だっておバカさんの考え違いは早めに正してやらないと。
    真実を知るのが遅れたからこそ、
    完膚無きまでに、体のみならずプライドらしきものまで、
    後ほど散々なまでに打ち砕かれちゃった彼じゃあないですか。
(大笑)

   *そういえば筆者がよく使ってる、体の部位を示す言葉に
    "かいがら骨"というのがありますが、これは"肩甲骨"のこと。
    あと"頤(おとがい)"とかもよく使ってますね。
    顎の線とかその下あたりのことです。
    こことか喉が"逞しいけど引き締まってる"男の人ってセクシーですよねvv


back.gif