Moonlight scenery

        Give a sweet smiling face.”
 

 

 日本では、最も寒さが厳しいことから“更に衣服を重ね着る”という意味で“更衣
きさらぎ”とも書く二月の初め。だというのに、春の始まりということで“立春”なんて日でもあったりもするから不思議なもので。
「正月を“新春”なんて呼びもするそうだしな。」
「昔の暦での話だそうですよ、それ。」
「昔の暦?」
「ええ。日本という国は、サムライの天下だった“エド”という時代の末までは、月齢で数える“太陰暦”を使っていましたからね。その暦だと、今の“太陽暦”とは1カ月と十日ほどズレがあるのだそうで。」
 よって、そっちの暦で数えると…日本の二月の初めは“一月”だった。中国のお正月は、今でもこの時期に祝われますでましょ?
「立春というのは1年の始まりという意味でもあったらしいですよ?」
 そうと説明しながら書記官が卓の上にて端末操作をすると、広々とした大広間の壁に据えられた大型液晶画面がパパッと切り替わり、振り袖姿の女性たちや梅の花のスナップショットと共に、今年の一月二月のカレンダーが大きく映し出されて、
「昔の日本では、年の初めから数えて一、二、三月を春としましたが、今の暦で言うと二月の第2週辺りまでその始まりがずれ込みますからね。」
 微妙に“厳寒期”に重なってはおりますが、それでも南や西の地方からは花の便りも聞こえて来始める頃合い。よって、四季折々の気候や風情の移り変わりというものへは、きちんと適ってた暦ではあったらしいですと。大型ディスプレイをアンテナペンで指しながら、丁寧なご説明を申し上げているのは、こちらのお国の王立大学の教授にして、王宮内図書館の学芸員を束ねてもおいでの大先生で。
「ふ〜ん。」
「で? 何でまたそんな寒い時期に、炒った大豆や、ヒイラギの葉を咥えさせたイワシや、のり巻き寿司を投げ合う風習なんかがあるのだ?」

  ………はい?

「いえ、あの…。畏れながら陛下、投げるのは大豆だけですし、投げ合う訳ではございません。鬼や邪気が寄り付かぬよう払うための、神聖な行事だそうですよ?」
「大豆で?」
「はい。日本の“鬼”という悪魔は、小さなものや細かいものが苦手だそうで。それで、豆をぶつけたり、細かい骨を持つイワシを戸口に下げて追い払うのだとか。」
「そうか。そうだよな。食べるものを、それもそんな、食料を大事にしなくてはならなかろう寒さ厳しい時期に、理由もなく粗末にするなんて訝
おかしな話だと思ったよ。」
 欧州にも収穫期直後にトマトやオレンジを投げまくる祭りもありはするが、そんなの理屈に合わないなと思ったよと。だっはっはっ…と豪快にお笑いあそばしたのが、ここ、R王国の現国王シャンクス陛下で、
「でも、冬場にも餅やみかんを投げる風習はあるみたいだし、雪国では婿まで投げるというからの。」
 経済も科学やITも進んだ先進国でありながら、同時にそんな風習まであるなんて。日本ってミステリアスな国だよなと、プリントアウトされた資料をめくりながら うんうんと頷いておいでなのが、次代の国王となられる東宮、エース皇太子殿下という顔合わせ。冬場でも比較的温暖な気候の、地中海に面した小さな小さな王国は、近年何かとお騒がせの砂漠地帯と接していながらも、豊かでのんびりとした国情や国民性は平穏安泰なままに健在で。自給自足を十分賄っている農林水産業に次いでの経済の中核である“観光”の方でも、様々な方面・勢力からの圧力があるでないままに…テロだなんだという物騒で危険なものからの悪影響や陰りなども一切ないまま、相変わらずの高い集客率を保ち続け、順調に外貨を稼ぎまくっている次第であり。そんなせいでか、年がら年中“外交関係”の政務にお忙しい筈の陛下や殿下におわす筈が…なんでまた“日本の風習・二月編”のお勉強に勤しんでおられるのでしょうかしら?
「日本ではこの時期に食べ物がらみのイベントが結構あるって聞いたのでな。」
 それにしたって…棟上げの餅まきや、雪国の婿投げや、節分の豆まきはともかくも、のり巻きを投げ合うなんて、そんな罰当たりなお話は一体誰から聞いたんですよッ。
「先日、某国の新年会のレセプションで親しくなった大使の御令嬢からちょっとね。」
 それって…日本の大使の御令嬢、じゃないでしょうね。そんなとんちんかんな知識を世界中に振り撒いてどうすんだか。それでなくたって、そんなもの日本にだってないぞというよな、奇天烈な“和食”が世には溢れてるそうなのに。
(苦笑)
「日本というなら、2月9日は“肉の日”だそうだぞ、父上。」
「肉か〜。それも良いかな。」
 で? 何で2月9日だと肉なんだ? 音ですよ音。niの月のkyu番目の日で、日本語の“肉(meat)にあたる言葉の“にく”と語呂が合うから…って、だ・か・ら。何でまたそんな異国の文化を、新しい年も明けたばかりで国事に外交にお忙しい筈のお二人が、揃ってお勉強なさってらっしゃるのでしょうか? 日本からお客人でもお招きですか?

  「別にそんな予定なんてないサ。」
  「そぉそ♪」

 これまた二人揃って白々しくもお惚けになっておられるが…何〜んとなくなら判っちゃたもんね。お忙しいのはさておくとしてもそんなもの何とでもクリア出来る精力家のお歴々。それよか、堅苦しい“お勉強”だってのに、いやに ほこほこと嬉しそうだし、食べ物がらみのイベント…だなんて、誰のために研究しているやらが丸判りってもんでしょうが。
「おお、日本ではバレンタイン・デイにはチョコレートを贈るそうだ。」
 甘いものとは打ってつけだぞとワクワクする父上を、
「いくら何でもそこまで日が経っていては、奴らも帰って来てますって。」
 さすがに幾分かは冷静な…というか、現実的なエース皇太子が“ちっとは落ち着いて下さいよ”と宥め賺
すかしているけれど。食べ物がらみなのは、あなた方の大切な第二王子のためだからだとして。
「う…。」
 奴らというのは…誰のことでしょうか?
「……………国家機密だ。」
「これ以上はオフ・リミット。」
 筆者といえど容赦はしないぞ、さあさ出てった出てったと。気配を殺して控えてた護衛の方々へ合図を送り、皇太子殿下が人を“ワンワン扱い”して追い出したもんだから、後の相談はあいにくと“見えない・聞こえない”でございましたが。…いいんだも〜ん。もうあらかた背景は読めたから、こっちは勝手に当のルフィ王子の方の様子を見に行くも〜んと。大人げない選手権なら負けんとよとばかりに、張り合ってみた筆者でございましたとさ。





            ◇



 何だか妙な始まり方をしましたが。もう皆様にもお解りですねの、こちら、例の王国の王宮内。此処もまた一応の四季は巡る土地柄だが、暖かく適度に降雨もある恵まれた土地は豊かに滋養を含み。灼熱の砂漠地方と隣接しているにも関わらず、潤沢な水脈も持つために昔から農地も広くて、それはそれは恵まれた大地に感謝して、穏健に歴史を紡いで来た、至ってのんびりしたお国柄…だということになってはいるが。取るに足らない、脅威にさえなり得ない小国ならば尚のこと、どうしてまた…大きな戦乱も幾つか通過した長い長い間、どこにも屈せず“独立国家”でいられたのかと言えば。毒の無さそな顔をして、その実、それはそれは強かな裏の顔を持っていたから。綿密緻密、速くて正確で、そうであるということをこそ広く知らしめていた“情報力”を存分に駆使していたがため、物品金銭のみならず、列強に名を連ねた大国が引っ繰り返る爆弾になり得るほど、大きくて危険な種の“情報”までも積み上げて、驚くほどの財を成した国だったから。下手につつけば何が出るやらと恐れられ、形のない“核弾頭”を持つがゆえに安泰を誇っているとまで囁かれている恐るべき国であるのだそうで。まま、そういう表のお顔がどうのこうのというような、お堅いお話はこのシリーズではエンドレスで“一回休み”状態だということで。
おいおい
「チョコレートやキャンディをふるまうとは、日本という国、バレンタインデイとハロウィンを混同しとるのではないのか?」
「いえいえ。ハロウィンはハロウィンで、別扱いで祝うようになりつつあるとのことでございますれば。」
「きっとクリスマスのどんちゃん騒ぎと同じようなもんで、宗教的な背景まで浚ってってことじゃあないのだろうな。」
 歴代の王様たちに負けず劣らず、いやさ、今世のシャンクス国王陛下こそ、融通の駆け引きに最も長けた、史上最強の覇王様よと謳われている凄まじい王朝であるというのに、それを支えている陛下と皇太子殿下のお二人が、お呑気にも“美味しいイベント歳時記”を首っぴきで検索していらしたのはどうしてなのか…と言いますと。

  「ああまで元気がなくなるとはな。」
  「あの二人ともが離れるという例は、これまでに無かったことだからだろうて。」

 それにしたって、誰一人いなくなってしまった訳ではないというのにね。身の回りのお世話をこなすためにお仕えする人たちは、ちゃんとたくさん居残っているのに。目の中に入れても痛くなんかないほど可愛いから、誰かに奪られないようにいっそ隠しておこうかと言って憚らないほどの溺愛を注いでやまない、父上の陛下や兄上の殿下もすぐお傍にいらっしゃるというのに。見るからに覇気がなくなり、見るからに“しょぼぼん”と元気がなくなってしまった王子様。お身内である王族の方々からのみならず、国民の皆様からまで愛され可愛がられてやまない、王宮のお日様とまで呼ばれておいでの第二王子様が、ここ数日ほど魂が抜けたかのようにぼんやりとしておいでで。まだまだ幼い王子の、その人気の素でもある、溌剌としたお元気さや闊達さが見られなくなったからには、これはもしやご病気か? それとも何かしら傷心なされるような、悲しいことが起こったのかと、まずはそこを心配なさったご家族や周囲だったが、
『いいえ、王子はお元気なままです。』
 元気がないことへの説明にしては妙な言い回しになるけれど、常の弾けるような闊達さが損なわれた原因として、何かしらのご病気になられた訳ではありませんと、主治医のチョッパー医師とお傍仕えの方々が申し出て。では何が原因で、普段なら三度の食事以外におやつも三度設けねば足りない食いしん坊さんが、定時の食事さえ山ほど残したりし、毎日のお勉強の時間になると、専門の捜索隊を構えねば居場所が判らなくなる“鬼ごっこ”をやらなくなったのかとやけに細かく問われた、佑筆、書記官のナミさんが畏れながらと申し上げるには。

  『隋臣長と護衛官の二人が、視察のため、
   一昨日の朝方からという日程にて、そのお傍を離れておりますれば。』

 それが原因なのではないかと。実を言えば…わざわざ言われずとも何となく、既に察していらした国王陛下と皇太子殿下。彼のご機嫌を盛り立てねばと、あれやこれや、楽しそうな華やかな、そしてそして美味しそうな“催し
イベント”はないか“プレゼント”はないかと、公務そっちのけで探していらした訳であり、
「取ってつけたように豆まきだの餅まきだのをしたところで、そこへと至る“ワクワク”がなければ、何のことやら楽しめないと思うのですが。」
 唐突さを理解できずとも、大人数で勢い良く立ち上げて、テンションに乗っけてしまやいいなんて力技を言い出しかねない大雑把なところは、さすが親子だなと思いつつ、
「市井のイベント興業ならともかくも、王宮内での、それも陛下が加わられるような催しに、そのようないい加減なものはちょっと…。」
 言いようはお堅いそれだったが、実は実は真意は別にあり、
「…そうか。」
 楽しけりゃ理屈なんか後回しというのはもしかしたらお血筋なのか、陛下や殿下とお揃いな筈の坊やなのに。それが通用しないほどまで意気消沈しているルフィなのか…という点は、さすがに外交がお得意技の国王陛下で、すぐにも伝わったらしい。
「芸達者なウソップがいて、笑わせてもらって持ち直せてないなんて余程のことだろうしな。」
 まずは彼らがそれなりの手を打っている筈だと、鋭い目串を刺されたところもおサスガならば、
「昨日のおやつに、P社の新作DVDと一緒に差し入れた、洗面器山盛りのポップコーンも、半分と食べずに残していたそうだしな。」
「…はい。」
 それこそ王子の傷心が伝染したかのように、こちらも“しょぼぼん”と項垂れてしまった国王陛下。その傍らでは、エース殿下が肩をすくめていて、
「一昨日はまだ、幾らか元気だったのだろう?」
 いえ、だから、ルフィ王子様が。
(苦笑) 今日は公務はお休みとし、シャツにセーター、シンプルなデザインのパンツというあっさりとしたいで立ちになられている皇太子殿下からそうと問われて、
「はい。ほとんど一日中、メリーと中庭で暴れまわ…遊んでいらしたんですが。」
 大きなムク犬のメリーは、最初のリクエスト通り、今やルフィを背中に乗せて駆け回れるほどにも大きく育ち。躾けたチョッパーたちの仕込みが良かったからか、ルフィの言うこともそりゃあ良く聞く子であるため、結構な広さのある中庭を端から端まで駆け回って遊んでいたのだが、
「昨日はそれにも関心を示さずに、ただただぼんやりと、お庭を眺めてお過ごしになられていて。」
 そんなご様子が滅多に見られぬことである上、それが放っておいてもいい程度のものかどうかを、ご自分のキャリアからきっぱり断じて下さる金髪の隋臣長様がお留守であるがため、侍従たちがさわさわと不安を訴え始め、翡翠宮の外、国王陛下らのお耳にまで届いてしまったと…。
「心配なさらずとも、お体に触りがあるほどの気鬱ではありませんよ。」
 病ではなくとも、大きなプレッシャーがあったり、深く思い詰めたりすれば、体にまで何かしらの触りが出るとは言うけれど。今回は原因だって判っているのだし、様子が妙になってからまだほんの2日しか経ってはいないこと。周囲の皆に言ったのと同様、陛下らへも案ずることはありませんよと、ナミが宥めはしたのだが、
「だがな、そこはやっぱり気になるではないか。」
 本気で豆まきをやるつもりだったのか、肩が突っ張らかった“カミシモ”という名前の、芯地の入ったベストを上着の上へとまとい、大きな桝
マスには炒り大豆を持参し。一応の盛装をして来たお茶目な国王陛下が、冗談はさておいてと…男臭くて冴えた面差しのそのお顔を憂慮に染めてしかめて見せる。
「例えば食べ物なんぞを用意せずとも、サンジが“どうしたのだ?”と案じて傍らへ寄れば、それだけで相好を崩してそりゃあ大甘えをする坊主だろうが。」
 あの、絹糸のように綺麗な金髪と宝石のような澄んだ光を凝縮させた青い眸の、それはそれはエレガントな所作も麗しい隋臣長殿に、自分から駆け寄ってはどれほど甘えて懐いていた王子様だったか。そして、
「ゾロにしてもそうだよな。」
 野暮で武骨で不器用で、王子に関してだって何にも蓄積を持たないままだというのにも関わらず、サンジでさえ時折 目の敵にするほどに、王子の側からの“一目惚れ”で熱烈に懐かれている果報者。それは鮮烈な出会いが刷り込んだものなのか、それはそれは慕っており、彼なりの一計を持って王子の前から姿を消した時も、一介の臣下相手に3年掛かりで行方を追って捕まえたほどの入れ込みよう。しかもしかも、
「あの腕白小僧が、甘えかかりに飛びつくたんび、一丁前に含羞
はにかみのお顔なんてするんだから、ありゃあ本物だろうしな。」
 飛びつき甲斐のある屈強な肢体をし、男同士でも惚れ惚れとするような精悍な男臭さをたたえた、そりゃあ頼もしい 元・戦闘員。さまざまな修羅場を掻いくぐって来た、クールに冴えた男らしさに一目惚れしたルフィだったというのは、もはや今更な経緯だが。単なる憧れに留まらずな様相を呈しつつある今日このごろらしい…ということまで感づいていた兄上様であるらしく、
「何だと? それは一体どういうことだっ。」
 こちらも今初めて聞いたような言いようをしている陛下だったが、薄々は感づいていたくせにねと、ナミとウソップが顔を見合わせて苦笑をする。そういや、だからこその軽い意地悪を、時々こうむってた護衛官さんでしたものねぇ。
(笑) それはともかく。ただ傍らにいないだけで、あのお元気な王子様がこうまでどんよりと意気消沈してしまう。彼ら以外の隋臣たちや父上兄上が束になってかかっても足りないくらい、そんなまで重みのあった二人だったのかという認識が、今回またしても新たになったということか。
「邪気払いの豆はともかく、顔だけでも見て来よう。」
「そうですね。」
 お元気で愛らしくて、そしてそして、それだけではなく。無邪気で無垢な心持ちのまま、健やかに育った…歪みのない鏡のような和子。ただ無垢なだけなら、打たれ弱い ひ弱い存在になるところ、辛いことも悲しみもその身に吸収していて、なのにそれを全く匂わせないでいられる、懐ろの深さを兼ね備えた、柔軟で伸びやかな優しい子。いつだって支えになってくれる君だから、そんな君が消沈しているのはとっても辛いと思う人々もたんといて。その筆頭であらせられる父上兄上が、揃っていそいそと向かわれた小さな王子様のお部屋の窓辺には、小さな指先が描いたものだろう、グルグル渦巻きやら3本の棒の*マークやらが、窓ガラスに宿った露の上、ぽつりぽつりと散らばっている。

  “こういうのって おとぎ話になかったっけ。”

 ネズミの嫁入り? 違うなぁ。絵姿女房? いやいやあれは横恋慕されちゃったお嫁様のお話だしね。モテモテな王子様の人騒がせぶりへ、肩をすくめて擽ったげな苦笑をしたナミさんだったが、そんな彼女が例えにと思い浮かべた日本のお話の数々は…かつてその王子様を寝かしつける時にと読んで聞かせた絵本にあったものばかり。皆して心配していますよ? どうか早くお元気になってくださいませね? 王子様。











  〜 おまけ


 ルフィの消沈ぶりが妙な騒ぎにまで発展してしまったのは、一泊二日で戻る予定だった誰かさんたちが、飛行機会社のダイヤの不具合が原因で、いつ戻れるのだか判らない身になってしまったからだったそうで。特に事故やら事件やらが絡んでのものではなかったため、いやホントに何の心配も要らない事態だったのだけれども。
「サンジっ、ゾロっ!」
 翌日の昼下がり、けろりとしたお顔で無事に帰って来た二人の従者たちに、さっそくにも…2階のテラスからのダイビングなんてな危険なお出迎えをしでかし、
「る〜ふぃ〜〜〜。」
 こちらもさっそく、サンジからの大目玉を食らってしまったところが何ともはや。飛びつかれて揺るぎもしなかったゾロの方はと言えば、
「…? どした?」
 首っ玉にしがみつき、脚まで胴に回してと、ぎゅうぎゅううとしがみついてくるばかりだった小さな王子様に、何事か感じたらしくって。その大きな手のひらで、
「うぐが…っ。」
 まずは意気軒昂な隋臣長様のお口を塞ぎ、
「…ルフィ?」
 ぎゅうとしがみついた小さな殿下のお顔を覗き込む。すると、実はえくえくと泣いてた彼であり………。


   ――― るふぃ〜〜〜? どした? 腹でも痛いのか?
        馬鹿か、お前。そんなことでこんな静かに泣く子じゃねぇよ。
        じゃあ何だってんだよっ。
        だからそれは、訊かなきゃまだ判らんと…。
        大体お前がいきなり叱りつけるから…。


 えくえくとすすり泣く小さな王子様。無言のままに腕だけ伸ばし、サンジさんまで掻い込む欲張りようを見せて、でもね。なかなかお話はしてくれなくて。実は安心して気が緩んだんだってことに、気づいていながら話してやらなかったナミさんやウソップさんだったのも、この際は…仕方がありませんよねぇ?




  〜Fine〜  05.2.03.〜2.04.

  *カウンター 165,000hit リクエスト
     kinako様 『皆から競うように甘やかされているルフィ』


  *存分に甘やかされてる王子様はあんまり書けなかったですね。
   切り込み方を間違えたみたいです。
   これでは、どれほど王子様から愛されている双璧なのかのお話なような…。
   それにしたって…こんなにも甘やかしてていいのでしょうか。
   お呑気な国のいかに平和かのバロメーターなんでしょうかね。
おいこら

ご感想は こちらへvv**

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