ホンっトに 何ということもない話
 〜匂い・U(初出;海月透過率サマ)

甲板で大の字になって寝転んでたら、
「お前は昼に寝ると夜寝らんないんだろうが。」
視界の中に逆さになってぬっと割り込んで来た"昼寝の王様"にそんなこと言われた。
…その通りなんだけどもさ。
「眠くはないんだ。空、見てる。」
そう言うと、
「そっか。」
すぐ傍に屈んでいたのが立ち上がって、
船端のいつもの場所に凭れてしまうのが逆さに見えた。
寝転んだまま、目だけで追っかけたもんだから、
頭の後ろと背中がくっつきそうな格好になっちゃって、
見かねたウソップが、
「…ルフィ、寝違えるぞ。そんなしてると。」
「うん。」
寝るつもりはないんだけどもな。

………………………………………………。

あれ? 何か、記憶が飛んだような。寝ちゃったのかな、オレ。
傍に誰かがいる。
いい匂いがする。
汗をかいててもちょっとスーッとする匂い。
温みの中に切り口のはっきりした何かがあるような、
温ったかくてやわらかいけど鮮明な匂い。
オレ、この匂い、よく知ってる。
「…起きたか?」
「あー…。うん。」
薄目を開けると、逆シルエットになった影。
見上げた上の方、耳元でピアスが揺れてて、
でも、何でこんなトコに来てるんだろう。
ここは甲板の真ん中で、さっきいつもの船端に行ったのに。
そう思いながら体を起こすと、
「…わっ。」
いきなり眩しくて、びっくりした。
"あ、そうか。"
寝てる間中、傍に座って陰を作ってくれてたんだ。
でも、あれ?
甲板はどこにいたって眩しくて、けどでも、いつもは平気なのにな。
あ………。
「帽子がないっ!」
頭を抱えて慌てていると、
「ほら、ここよ。」
ナミが苦笑混じりに持って来てくれた。
「んもう、忘れたの? 今朝方、直すからって預かったでしょ?」
「あ、そうだった。ありがとな。」
どういたしましてと差し出されたのは、穴も塞がって新品みたいな麦ワラ帽子。
これがなかったから、だから、傍に来てくれたのかな。
ちらっと見ると、目がかち合う。
「どうした? かぶらないのか?」
「いや、かぶるけど。」
何でこんな一杯判るんだろう。
オレのこと、オレ以上に。
「?」
どうかしたか? って顔してる。
どうもしないけど、どうしよう。
そのうち、オレが思うより先に何でも判るようになっちゃうんじゃないかなぁ。
ゾロのこと一番好きなのも、そのうち判っちゃうんじゃないのかな。
あ、それは別に困ることじゃないか。
やっと落ち着けたんで笑って見せると、少しだけ目を細めて口の端っこで笑ってくれる。



甲板の真ん中で、何故だか?顔を見合わせている二人へ、
「なんか出来損ないの兄弟みたいよね、ああやってると。」
ナミの言いように、ウソップがやや青ざめる。
「…史上最強の兄弟だぜ、それって。」


〜Fine〜  01.7.10.〜7.11.

*あとがき*
ウチのSS専属ルフィは
お懐かしやの"ぼのぼのくん"になりつつあるのかも知れない。
じゃあ、ゾロはスナドリネコさんね。
それともヒグマの父さんかしら。
おいおい
………何を書いているんだか。限キリがないのでこの辺で。
自分で書いておきながら何ですが、
途中何度もサンジくんになって蹴ってやりたくなりました。
あ、そういえば、めずらしくサンジくんがいなかったわ。
Mr.2の来訪と一緒で、
付き合ってられないって思ったのかな?

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