“ドっキドキの…vv”A
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「おおおっ、これはまたっっ。」
「成程、あの子が言ってた通りだ。」
「大きさも毛並みもプリンにそっくりじゃないかっ。」
監督さんも動物タレント事務所の人も、年甲斐もないほどの勢いを乗せてその身を乗り出し、声を揃えて驚嘆なさったそのお相手は。シンプルなブルゾンにワークパンツというこざっぱりとした恰好の、実に頼もしい体躯をした男性の腕に抱えられ、それは愛想よくお尻尾を振っている…シェットランド・シープドッグの仔犬ちゃん。
「この子が、この町で評判の"るう"くんですか。」
「…はあ。」
一体どんな説明をしたのやら、と。ゾロとしても曖昧な言いようしか出来なくて。何せ、ご本人はこの腕の中でシェルティの姿になっているから、面と向かっての釈明を聞けない。その仕草や眸の動きなどから"何を言いたいルフィなのか"は何となく判るゾロなので、るうを相手にでも簡単な会話らしきものは出来る…とはいえ、まさかにそんなことを衆目の中でご披露出来る筈もなく、
「人懐っこいし、人の言葉がある程度は判るらしくて、
それに大人しいから無駄吠えもしない。
飼い主さんが大体の指示を出せば、
まずは その通りに動いてくれる…と聞いているんですが。」
「まあ、そうですね。」
ルフィにしては結構考えての説明をしたらしいなと、ここに至ってようやっと奥方を少しは見直したご亭主だったが、
"それにしたって…。"
なんてまあ危ないことを、それも自分から言い立てたとはと、相変わらず呆れている旦那様には違いなく。
『お願いっ。今日だけだからサ。
俺の飼い主ってことで、
るうになった俺を監督さんのとこまで連れてってくれよ。』
困ってるみたいなの、どうしても見過ごせなくて。もしも代役が立てられなかったなら、辛そうなあの子が無理からお仕事させられるかも知れないんだ。でもさ、事務所の人とかも良い人みたいでサ。だから俺で出来ることなんなら代わってやりたいんだ。な?な? 良いだろ? ゾロ〜…。
"…あの顔で拝まれちゃあな。////////"
ざっと窮状の説明をしたそのまま、眉を下げ、大きな瞳を潤ませて、ねえねえと甘い声で訴えられて。擦り寄るみたいに抱きついて来た柔らかい腕を、肩や首っ玉へと搦められ。とどめに"きゅう〜〜〜ん"と切なげな鼻声ですがって来られては…いかな天下の元剣道全日本チャンピオンでも逆らえないらしい。お昼寝に入ったカイくんはツタさんにお任せして、るうにメタモルフォーゼしたルフィを腕に抱え、渋々ながら撮影班のところへと向かったゾロであり。そこで早速にも冒頭の歓迎を受けたという訳で。
「此処でワンちゃんが出て来るところを撮影するのは、早く済めば半日かからないカットだけです。」
屋外シーンの、ちょっとした演技が必要な何コマか。原作は人気の少女漫画なのだそうで、役柄からして賢くて不思議なワンちゃんという設定になっているらしく。殊に主人公の恋の橋渡しをするという役どころが重要なポイントなのだとか。勿論、1度や2度ほどの切っ掛けで初対面の男女が そうそうくっつきはしない。様々な場所でこのワンちゃんは活躍するらしく、そっちの方は既に東京のスタジオの方で撮影も済んでいるというお話で、
「これが台本です。」
その場その場で指示をお出ししますので、ワンちゃんに伝えて下さい。アシスタント・ディレクターらしき青年が、誰も使ってないらしい真新しい台本をゾロへと手渡し、ペコリと頭を下げる。一般人へも礼儀正しい、随分と躾けの行き届いたチームであるらしく、勝手は判らないままながらも まあ待遇は悪くはないかなと、少しずつ落ち着いて来た旦那様だったが、
「何か怖くね? あの人。」
「しっ、聞こえるぞ。」
役者でもないのに、あの存在感はどうだろう。ガタイも凄げぇ良いし、緊張感漂う鋭い眼光に、むうと封じられた寡黙そうな口許してるし。こんな場に来ても全然物怖じしてない、あの威容はどうだよ。耳に棒ピアスなんかして、柄にないかわいい仔犬を連れて来たけれど、もしかしたら…どっかの怖い組の人かもしれないぞ。本人のじゃなくて、親分のとか、姐さんのを預かってるとかさ………。
――― う〜ん、何と言いましょうか。(笑)
そんな風に怖がられてたよとは、撮影が終わってからルフィから聞いた真相だったりするのだが、今はそれもさておいて。
「るうちゃんの"パートナー"を紹介しておきますね。」
監督さんが自ら"こっちですよ"と招いてくれた、現場の一番奥向きの、陽当たりのいい芝草の上。ディレクターズ・チェアを開いて座っていた若い青年がいて、こちらが近づいて来るのを察してか、お膝の上に開いていた台本を閉じ、それはなめらかな動作で立ち上がった。どうやらこのドラマの主役を演じている俳優さんであるらしく、この好待遇からして…かなりのランクで人気がある有名人で、大事にされている存在でもあるらしい。大学生くらいだろうか、清々しい雰囲気をたたえた背の高い青年で、彫の深い印象的な顔立ちは優しげに整い、深色の瞳に柔らかそうな笑みのよく映える、一言で表現すれば文句のない"美青年"だ。今時のひょろっとした、可愛いだけのアイドルではなさそうで。体つきもなかなか均整が取れていて、肩や胸板もしっかりとした厚みがあるし、すっきりとした顎の線や首条などはちょっぴり精悍で男らしく、大人っぽいかっちりとした手も手入れが行き届いていてそれは綺麗。大仰でわざとらしい身動きやら顔つきやらは一切見せないのに、ちょこっと小首を傾げるだけでも華やかな存在感を示し、さすがは芸能人、見せ方を知っているなと感心させられる。………と、
「…おっと。」
腕に抱えて来たルフィが、ふと、もじもじと体を動かし、ゾロの腕の中から自分で"すとん"と降り立った。
"あの人が お兄ちゃん。"
さっき逢ったプリンちゃんが言っていた。共演していたのはそれは優しいお兄ちゃんで、ちゃんと演技が出来るまで いつまでだって待っててくれたし、ちゃんとこなせたら"良い子だねぇ"っていつもやさしく撫でてくれたの。お友達のところにやっぱりシェルティの仔犬がいてね、その子の相手をしてるみたいで凄く楽しいって休憩時間とかに一杯お話ししてくれたの…と教えてもらった。ただ、犬のプリンちゃんは、そもそも"人へは従順であれ"と躾けられている。匂いや声の調子なんかで語られない気持ちまで読み取れても、大概の人は"良い人"と変換される育ちの良い子だ。相手だって"芸能人"さんだからね。日によって機嫌がころころと変わる、気性がお天気な人とかだったら合わせるの難しいかもなと、そんな辺りを読み取りたくて、監督さんやゾロより先に単独で接してみようと"たかたか…"と駆け寄ってみたルフィだったのだが、
「あれ? プリンちゃんじゃないな、君。」
駆け寄って来た"るう"を見て ひょいっと屈み込んだお兄さんは、開口一番にそうと言い、それでも軽々と抱え上げて…その場から立ち上がらない。
「よく判ったね、その子は代役なんだよ。」
こんなに似てるのにと驚いたような声を投げられて、
「判りますよ。顔立ちが違いますもん。」
苦笑したお兄さんは、傍らまでやって来た監督さんを見上げると、あらためて屈託なく笑って見せる。プリンちゃんはどうしたんです? いや、それがね…と、一通りの簡単な説明がなされて、それでやっと事情が通じたらしく、
「この子のオーナーさんですか?」
お兄さんはゾロの方へと視線を向けた。るうの体に腕をしっかりと回してから、やっとのことで立ち上がって、はいと相手へ手渡しし、
「初めまして。」
ペコリと頭を下げて見せた。そして、
「ボクは桜庭春人といいます。
今日は るうちゃんのお世話になります、よろしくお願いしますね。」
髪は長いめで、しかも甘い亜麻色に染めていたが、それでもね。相手の眸を見て はきはき話す、実にお行儀の良い好青年だし、初見のワンちゃんをいきなり高々と抱き上げては怖がるだろうと、ちゃんと考えてあげられるほどに優しい良い子だと、お父さんはそんな風な第一印象を彼へと持ったそうである。
"誰がお父さんだ、誰がっ。"
――― あはは…vv まあまあ、押さえて押さえて。
◇
普通、動物の演技は動作ごとに何回にも分けて撮影し、幾つものカットをつないであたかも一連の動作であったかのように見せるものだが、
"…ま、ルフィならそんな小細工は必要ないか。"
此処まで歩くんだよ、とか。此処でこっち向いて、とか。そんな細切れの指導も彼には要らないとゾロには判るが…さて、どうしたものか。
「この道を散歩して来て、此処のカフェの前でリードが振り切られる。チビには…あ、これ、るうちゃんの役の名前です。チビちゃんには見覚えがあった茉莉絵ちゃんがいて、そこへと駆けてこうとしたんだが、進一郎くんには彼女に見覚えがないから…。」
此処からこうなって…と身振り手振りを交えて距離やら位置やらを指定され、それを…屈み込んで一応"るう"に伝えるゾロだったが。気のせいだろうか、
"こいつ…笑ってねぇか?"
お座りの姿勢でお尻尾をぱたぱたと振りつつ、一見お行儀よくこちらを見上げて来る、お鼻の尖ったキツネ型のお顔が、何だかちょっと。いつもよりも悪戯っぽい、からかうような表情になっている気がした。だって聞こえてるのにね。もうどうすれば良いか通じてるのに、それが皆には判らないなんて、何だか可笑しくない? そんな風に言ってるみたいで。余裕じゃねぇかと、ソロとしては ちょいと呆れた。
「よろしいですか?」
ADさんに声を掛けられ、已なく立ち上がって るうから離れる。
「よ〜し、カメリハいきます、位置について下さい。」
助監督さんのよく通る声がかかって、それから監督さんの"アクション"という声が放たれ。カメラが回されて、エキストラ以外の周囲を囲む人々が一斉に口を噤む。平たい組紐タイプのリードを片手に、少し先の季節用の明るい色合いのシャツとジャケットに木綿のボトムという軽装にて、軽快に駆けてゆく桜庭くんこと"進一郎"くんのストライドの広い足元に、つかず離れつと絶妙な間合いにて追走している るう。長い毛並みがふさふさと風になびいて、明るい早春の昼下がりの陽射しの中をたかたかと駆ける小さな姿が…なんて可愛いのだろうかと。周囲の皆さんと全然違う視点からの観覧をなさって、鼻の下を延ばしかかっていた旦那様だったが、
「…あっ?」
かすかに上がった幾つかの声に、ざわっと周囲が波打った。ルフィが指定された位置で勝手にリードを振り払って駆け出したからで。本当だったら此処でカメラを一旦停めて、あらためてセッティングをして撮り始める段取りだったのだが、
「そのまま、そのまま。」
監督さんがくっきりした、だが小さな声を掛けて周囲を黙らせる。それと同時、気を利かせたADさんが、相手役の女の子を指定の位置に立たせて、駆けて来たルフィを台本通り…段取りでは も少し先の撮りだったのだが…受け止めて、
「あら、可愛いvv」
いい子ね、迷子なの? そんな風に話しかけて頭や背中を撫でてやる…と、そこまでのカットを一気に撮れた。
「よしっ。」
大満足というお声をもってカメラを停めさせる監督さんであり、
「オッケーです。」
助監督さんの声に皆さんがほうっと息をつく。もしかして"ハプニング"だった筈なのに、悪い言い方での"小細工"のない、ひとつなぎの絵が撮れたものだから、監督さんは随分と喜んでいらっしゃる。一度に数台のカメラを回していたから、角度的に違う絵をつないでの構成にすれば平板な印象にはならないだろう。
「ビックリしたぁ。」
少女の手から離されて、それでとゾロのところへ戻って来たルフィへ、やはり駆け寄って来た桜庭くんがそんな声を掛けてくる。何せ一番近い場所で、この意外な展開を目の当たりにした人だ。
「今のって偶然じゃないですよね。」
ちゃんと打ち合わせた場所からだったし。だけど、誰かの様子や合図を探した態度もないまま、いきなり…それこそドラマの筋書きのまんま、突然リードを振り払ったるうちゃんで。
「此処だけでも5回くらいに分けてのカット撮りがあった筈なのに。」
それをカメリハの段階で1発OKだものねと、隠し切れない驚きを伝えて下さり、
「ホントに賢い子だなぁ。」
オーナーさんの大きな手でわしわしと背中や胸元を撫でてもらって"どんなもんだい"胸を張ってる小さな仔犬に、全国的な知名度を誇るアイドルさんが心から驚嘆し、素直なお褒めのお言葉を下さったのだった。
◇
それから後の撮影も、まさに奇跡か神憑りかという案配でどんどんと調子よく進んだ。何しろ、言葉の通じないワンちゃんを動かすためにと、様々に考慮されてあった特別の段取りがことごとく不要となる。迷子になった振りをして、自分を探す"進一郎"さんが通り過ぎてから…植え込みの中からそろぉっとお顔を出すタイミングだとか、ご機嫌で千切れんばかりに振っていたお尻尾が、だが、状況の変化を察してか、段々と元気をなくして ゆぅっくりのぱたぱたへとテンションがダウンしてゆく演技だとか。何かにびっくりして、かりかりかりかり…ってラグマットの上で足を懸命に動かして必死に駆け出そうとするんだけれど、マットばっかりが後送りにされちゃってて全然前に進めてない焦りっぷり、だとか。撮影陣からして苦笑をこらえるのが大変なくらいに、愛らしくも絶妙な演技が次から次へとハマリまくるので、その結果、
「なんか時間が余っちゃったなぁ。」
るうちゃんが芸達者なもんだから、今日の収録の早いこと早いことと、桜庭さんがニコニコと笑ってくれる。撮影は女の子の方が中心の場面の収録に入っていて、それと、ゾロは監督さんに呼ばれてて。撮影の間中、出来るだけ傍らに居続けてくれてたゾロだったけど、この人に任せとけば良いかなって思ったらしく、ルフィを連れては行かなかったの。だもんだから、桜庭さんの定位置になってるディレクターズチェアのところで、只今、一緒に休憩中。お膝に抱えた るうにおやつのサンドイッチを分けてくれると、う〜んと大きく背伸びをしてから。バッグに手を伸ばした桜庭さんは、こっそり小さな携帯電話を手に取った。それを見上げて、
"新しいのって、こんな小さいのになってるのか。"
ルフィは携帯電話を使ったことがない。いつも家にいるので必要がないからだ。出掛ける時はゾロとぴったり一緒だし、万が一、出先で迷子になっても自慢のお鼻で探せるからねvv よって、ゾロが出先で使っているのしか間近に見たことなかったし、それにしたって…かなり古いのを大事に大事に使っていらっしゃる。桜庭さんは二つ折りのをぱかりと開くと、ボタンを延々と幾つも押しているから、どこかにメールを打っているらしく。慣れた調子で押し続け、途中で手を止めて"う〜ん"なんて宙を見据えて何かしら考えてみて。それからね、
「…あれ?」
ふと。足元の何かに気づいて……………それからそれから。
"………あれ? この人"
くすすと、それはやわらかく微笑ったのがとっても印象的だったの。演技の中でも優しい微笑い方をする人だけど、それとは全然次元が違う、濃密な気持ちのこもった、それでいて擽ったそうな微笑い方だったの。どしたのかなって思って、お膝の上で う"うって小首を傾げてるとね、笑った原因をバッグの中から大きめの手で摘まみ出して、
「ほら、るうちゃん見てよ。」
見せてくれたのは、まだ封を切ってない板ガムの包みだ。つんとするこの匂いはペパーミントかな? つるつるのパッケージの上に、ボールペンの刻むような細い字で何か書いてあって、
「仕事中に居眠りするなよ、だって。」
こんなの入れといたなんて、あの人、一言も言わなかったの。知らん顔してて、でも、こっそりこんなことしてサ。何か可愛いよねって、楽しそうに話してくれて。
"あれあれあれ〜?"
そういえば。桜庭くんてね、トワレなのかな、お花みたいな蜂蜜みたいな、とってもいい匂いがするんだけれど。さっきから…こやって笑うと、それとは別に もっと甘い匂いがするんだよねvv お尻尾をはたはたって振って、お膝の上からお顔を見上げてるとね、
「ナイショ、だよ?」
お顔を近づけて、悪戯っぽく笑って。形のいい唇の前へ人差し指を立ててから。誰かを好きになるって良いことだよね、ボク、これまでホントはどういう気持ちになるのか知らないままで演技してたからさ、今までに撮って来たドラマ、もう一回撮り直してほしいくらいなんだよね。そんなことをこっそりと、るうに話してくれたのvv
――― ねえ、これってさ…Vvvv ////////
◇◆◇◆◇
その後の数十分ほどで、ドラマの収録は無事に終了した。ルフィへの出演料は、後日に何と…ドッグフードを山ほど頂きまして。何でも番組提供に有名なドッグフードの会社が名前を連ねていたそうな。でもでも、
「…坊っちゃま、お召し上がりになりますか?」
「う〜ん。」
ツタさんに訊かれて、眉の間がコイルになりそうなくらいに、ぎゅむと額のお肉をくっつけてしまったルフィだったりする。るうの姿になってる時なら、食味も変わるから何とか食べられないことはないけれど。む〜んと難しいお顔をしてるルフィの背後、ソファーに腰掛けて新聞を読んでいたゾロが、
「ツタさんのお料理で口が肥えとるからな、お前。」
あっさりすっぱ抜いて下さって。
「う〜ん…。」
おやおや、それはまた。(笑) 一旦美味しいものへと慣れてしまった味覚のレベルは、なかなか下げられませんからね。かといって、処分するのも勿体ないし。
「…うん。サカキやボニーに分けたげることにする。」
ここいらの野良たちを仕切ってる頼もしい顔役のお友達の二頭。まんまに全部あげると言ったって、大人の二人は素直には受け取らないだろうから。時々、おやつにどうぞって持ってくよ。そうですね、それがよございますねって、ツタさんも賛成してくれた。
「そういえばさ、ゾロ、監督さんに呼ばれて、何、話してたの?」
「ああ。」
あれなと新聞を畳むと、そのタイミングを待っていたかのように、お膝へ奥方がもぐり込んで来て。ひょこんと小首を傾げるポーズがまた、何とも言えず愛らしい。
「………ぞ〜ろ。」
「あ。////////」
こらこら。さては、見とれてたな。(笑)
「だからだな。監督さんに呼ばれたんじゃなくて。」
んんんっと咳払いしつつ、
「動物タレントの事務所長さんに呼ばれたんだよ。」
ご亭主、愛しい奥方の丸ぁるいおでこを ついとつついて、
「お前を事務所へ登録して、芸能界へデビューさせませんかってな。誘われたんだ。」
「あやや。//////」
何なんだよ、それって…なんて、とんでもございませんという言いようをしながらも、
「だから、断っておいた。」
だろうと思ったと、ゾロから あっさり言い切られると、
「…俺には相談もなしに決めたの?」
おやおや、ちょっとは食指が動いた奥方だったのでしょうか。(笑) 俺は"ステージパパ"になるのは御免だからな。何だよ? それ。ルフィみたいな可愛い子に悪い虫がつかないようにって、アイドルのママとかパパとかがその子にびったりくっついてマネージャーになることだよ。ゾロは俺のパパじゃないじゃんか。じゃあなんだ。うと、旦那様だろ? う………。////////
"あらあらvv"
お珍しいことに奥様の方が勝ったみたいですねと。無邪気なご夫婦の屈託のないやりとりに、ツタさんもそれはそれは微笑ましげなお顔になって。お茶でも淹れて来ましょうねと、こっそり席を外したりして。もう秒読みとなった春にも負けない、いつだって とろりんと甘い温もりのまんまな、相変わらずなご夫婦でございますvv
おまけというか後日談 
3月の末になってテレビ放映されたラブコメドラマは、るうの出番はちょこっとだったけど、それでもDVDに全部きちんと収録しました。東京のナミさんやサンジさんにも話しておいたので、可愛かったよ、テレビ映りが良いこと…なんていう、嬉しいご感想のメールも頂きました。そしてそして。ルフィがなんと桜庭春人さんのファンクラブに入ってしまいまして。ドラマのDVDを集めるわ、ウチワやポスターなんていうグッズを通販で集めるわ。ドラマ主題歌を歌ったCDも出してらしたけど、
「お歌は…ちょっと音痴みたいだよね。」
こらこら、正直な。(笑) 彼が出ているドラマやインタビュー番組なんかも、ついつい観るよになりました。そのインタビューの中で、
【恋人ですか? いませんよ、まだvv】
どんなに巧妙に訊かれても、あっけらかんと笑って彼がそうと答えるたびに、画面のこちらで"…ふふんvv"なんて、何だか思わせ振りに笑って見せるルフィであり。いかにも勝ち誇ったような笑い方をするものだから、
「何だよ。何か聞いたのか?」
「聞いてないし、るうのカッコの時に聞いたこと話すのはルール違反だよう。」
先にそんな風にお説教した張本人のくせにと、つ〜んとそっぽを向くルフィだったが、くすりと吹き出しながら白状したのが、
「だって、桜庭くんて恋人いるもんvv」
「…はい?」
桜庭くんから聞いたお話じゃないならネ、ゾロにも話しても良いかなって思ったルフィだ。物凄く物凄〜く、好きな人だよ。あの撮影の時もね、その人のところからあの現場に来てたし、そのままその人のところに帰るんだなってすぐ判っちゃったもの。そういうフェロモンが出てたのvv 露骨な"匂い"じゃなくってサ、幸せそうなフェロモンの気配が、それも二人分もしていたの。とってもとっても両想いで、相手の人も桜庭くんのこと、大々・大〜好きだったのvv ああこの人、こんなにも幸せだから、尚のこと誰にでも優しく出来るんだなって、こっちまで嬉しくなっちゃったの。
――― 恐るべし、野生の感覚。
「………それ、他所では話しちゃダメだぞ?」
「は〜いvv」
お後がよろしいようで…。
〜Fine〜 04.2.27.〜3.6.
*puppy's tail 独立記念。(なんつってvv)
以前『蒼夏の螺旋』のゾロルと共演させたことがありましたが、
それよかもっと分かりにくい共演でございます。(まったくだ/笑)
特に分からなくても楽しめるようにって、
出来るだけ押さえて書きましたので、
テレビデビューしちゃったるうちゃんのお話として
素直に読んで下さいませです。

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