月夜見
 puppy's tail 〜その28
 

  “パパ、だいすきvv”

 

    あのね? カイのお家では、パパとママといっしょに住んでるのだけれど、
    他のお友達んトコはね? そんなお家ばっかじゃないんだって。
    ハルトとヒルマのお母さんは、トーキョーてトコに住んでるらしいし、
    ビャクヤとレンジはね? 1ちょーめのいちごがパパなんだって。
    それ聞いて、ママもカイもビックリしちゃったの。

      「だって、イチゴなんて名前なんだもん。
       てっきり女の子のシェパードだって思ってたのに。」

      「…お前がビックリしたのは、そっちへなのか?」

      「え………?」





            ◇



 別のとある“まんが”を知らないと全然意味が判らないネタを、のっけからすいませんです。
(苦笑) こちらさんもそろそろ夏の気配が近づいて参りました…の、関東の奥座敷に位置する高原地域。下界に比べれば気温も低めで、朝早くに目が覚めるとね、時々辺り一面が霧だか靄だかに覆われてる時もあるんだけれど。お昼間は結構気温も上がって来たもんだから。ロロノアさんチの毛並みの豊かな二人のワンちゃんズなぞは、時々町外れの湧き水の小川までの遠出をしては、早々とお水遊びに興じているらしく。全身びっしょびしょになって帰って来たりする日も増えてくる頃合い。忙しいツタさんの手を余計に患わせちゃいなかろうなという注意をすれば、
「ゾロがお昼からいる日に、1日1回って約束は守ってるも〜ん。」
「あもってゆ・も〜んvv」
 ママの口真似と振り真似をして、意味など判らないままに“つ〜ん”ってお鼻をそびやかして見せる、小さな王子様の一丁前な所作にあっては。お家でお留守番を強いられてる不満から、ちょっとばかし拗ねてたお父さんも、ご不満そうなお顔でいた筈のその相好を一気に崩してしまうほど。小さな坊やを大きな手で支えてやり、高々と抱っこして。そうでしゅか 守ってましゅか、なんて、赤ちゃん言葉まで出る時さえある緩みっぷりに苦笑しつつ、
「あれじゃあ叱っても効果ないよねvv」
 くすすと笑った奥方へ、ツタさんまでもがついつい苦笑を禁じ得なかったりするのだそうで。………お父さん、形無しでございますが。
(苦笑)


  ――― でもね?


『ルフィのトコのパパさんは、凄っごいカッコいいもんねvv
『そうそう。優しいし、頼もしいしvv
 ご近所のお友達からの評は、すこぶるつきに良いまんま。
『こないだもね、ウチのマーマが坂道の途中でサンダルの紐が切れちゃって、どしよどしよって困ってたらね? お買い物からの帰りだったルフィのパパさんが通りかかって、ひょいっておんぶしてくれたんだよ?』
 お散歩にって朝や夕方連れ出される子たちが一斉に集まる、芝生の綺麗な広場の木陰。飼い主さんたちが人間同士でお喋りしている傍らで、こちらも広っぱを駆け回った後のインターバルなんかにワンコ同士で集まって、色々とお喋りするのだけれど。そんな場で、ルフィ奥様も知らないお話が飛び出すことが結構ある。
『ルフィやカイのお声が聞こえるせいかな? ボクらにもよく話しかけてくれるしね。』
 通りに面した生け垣の隙間やブロック塀の飾り穴。お顔だけ出して“わうわうvv”ってご挨拶するの、他の人だと“わあ、びっくりしたっ”なんて閉口されちゃうのに、ゾロさんだと“いい子だね”って撫でてくれたりすることとか。どう見ても同んなじ純白のマルチーズの双子なのに、どっちがどっちかを間違えないで呼びかけてくれたりとか。結構、ワンコ仲間に受けの良い旦那様なのが、
『そんなことがあったの、ふ〜ん。』
 初耳なお話に戸惑いつつも、ルフィには ちょっち自慢だったりし。大人のお話へキョトンとしているばっかの、こちらも真っ白なウェスティのカイくんが、蝶々などに気を取られて遠くに離れ過ぎぬよう、時々首条あたりを甘噛みしてはじゃらしてやりつつ…井戸端会議は もちょっと続く。
『セイジュロのお散歩にって隔日で来るバイトの大学生のお兄さんがネ? ゾロさんと道とかですれ違うと、必ず心拍数が上がってるって。』
『…何? それ。』
 どうしても高齢のご夫婦に猫っかわいがりされてる子たちが多い中、毎日何キロも走らなきゃいけないような、運動量が必要な大きな体格をした子だったりすると、アルバイトのお兄さんが散歩を受け持つなんてケースもあって。そのお兄さんたちが、あのね?
『ゾロさんのこと、知ってる人がたまにいるんだよね。』
『そうそう。』
 さすが、元・剣道の通年全日本チャンプだった人で、今インストラクターとしてお勤めのスポーツジムでも、プロのスポーツマンの方にわざわざご指名されることもあるほどに、その筋では未だに勇名衰えずで、認知度も人気も高いのらしく。

  「…“その筋”ってのは何だ?」
  「だから、えと…。何だっけ?」

 大きな窓からお庭からの涼風がそよぎ込む、自宅の広いリビングの真ん中。少しずつ調度を夏物に入れ替えてる中で、これは新調したばっかりで青々としているイグサの花ゴザ風ラグマットの上。ちょっとばっかりお行儀は悪いが、さらさらした肌触りが心地良いのについつい惹かれ、ごろりと仰向け、大の字になって転がってる、お若いパパとママと小さなボクと。自分のお腹の上へまだまだ小さな王子様こと海
(カイ)くんをまたがらせていたご亭主は、腹筋の上げ下げを余裕で繰り返しては乗っかっているカイくんを揺すってやって、きゃっきゃとはしゃがせていたのだが。ルフィが持ち出したワンコの時の会話の中、妙なフレーズへ“何だそりゃ”と意識を留めた。ワンコたちにもなかなかに人気者のご当人から訊かれて…あれれぇ? 何だっけと小首を傾げた奥方へ、
「体育会系、ですよ。」
 困った時のツタさんが、ちゃんと言葉添えをして下さって。カット細工の綺麗なガラス鉢に、ほどよく冷やした黄桃色のマンゴーをきれいにさばいて持って来て下さったツタさんも、
「私も時々、旦那様のことを訊かれたりしますしね。」
 うふふとどこか自慢げに、擽ったそうに笑って見せる。勿論のこと、お仕えしているご主人のことをほいほいと口外するようなツタさんではないのだけれど、
「こんなところでお姿を見ることが出来るなんて思わなかったなんて、まるで銀幕のスターへ憧れてる坊ちゃんみたいな言い方をする子もおりますよ?」
 そりゃあ大きくて力もある、ハスキーだのピレネーだのって大型犬の手綱を余裕で預かり、結構な距離をざくざくとジョギングか散策みたいなノリで走り切るような。上背もあって恰幅の良い、いかにも雄々しい男の子たちだってのにねと。ご亭主へのちょっと不思議なファン層へ、ツタさんとしてはあくまでも“微笑ましいことvv”と解釈なさっているのだが、

  「………ゾロ、俺が腕力で太刀打ち出来ない愛人だけは作らないでね。」
  「ば…っ。///////

 何てこと言い出すんだと憤慨した旦那様。そこまではともかく、

  「カイが聞いてるだろ?
   そんなふしだらな言葉を、こんな小さいうちから教えるもんじゃあない。」

 赤くなったのは自分の身に疚しいことがあったからじゃあなく、愛人なんて言い回しが無垢な存在には口にするのも恥ずかしいだろう“えっち系”のフレーズだったからだというから穿っている。
「…子煩悩なパパって、そういうところまで子供に合わせて退化しちゃうのかなぁ?」
「さあ、あんまり聞いたことはありませんけれどもねぇ。」
 都会暮らしをしていた割に、男女交際の経験値が低いゾロだってのは重々承知しているが、それでもね。そんな程度の言い回しであたふたするような“純情朴訥系”ではなかった筈。とはいえ、
「ほぉら、甘い甘いマンゴさんですよ〜vv
「きゃうっvv ま〜んごvv あむvv
 お膝にカイくんを抱っこして、大きな手には玩具のようにさえ映る、小じゃれたフルーツ用のフォークに刺したデザートを、喜々として手づから坊やへ食べさせている様子とか見ていると、
「“その筋”の方々には、せっかくの夢を壊すから見せらんないね、あの姿。」
「………奥様。」
「だってサ。」
 俺だってあんな風に食べさせてもらったことないのにぃ〜〜〜っと、ふくふく柔らかい頬を膨らませ。半分くらいは焼き餅からか、案外とシビアなこと言ったりもする奥方であったりするらしいです。
(苦笑)







            ◇



 このところ、すっかりとゆるみ切った“子煩悩”でいるご亭主ばっかを見ているせいか、他所からの噂でどんなに“素敵だ”とか“カッコいい”とか言われても、なかなかピンと来ないのが、
“身内って損してるよな…。”
 ルフィ奥様には少々ご不満でもあるらしい。いちいち意識してカッコいいポーズばっかされてもナンだが、それでもさ。
“晩のゾロの、男臭くて頼もしくって雄々しいとこは…人には言えないしサ。///////
 当たり前です。
(苦笑)
“だってだって、凄っごいカッコいいんだもんvv
 俺だけの知ってることにしとくのが口惜しかったり勿体なかったりするほど、野性味あふれてカッコいいのにサ。

  ……………………………。

“………ほらぁ。今、このモニターで字を追っかけてる方々にしても“野性味あふれてカッコいいィ〜?”なんて、思い切り怪訝そうなお顔になってるに違いないのにぃ〜〜〜。”
 あははのはvv まあ…そういや、閨房の描写はしなくなって久しい、健全な“ひよこクラブ”化しているばかりな、ここ最近の『puppy's tail』ですけれど。


  ――― 手荒に夜着を剥かれて、
       瑞々しい肌をあらわにされた幼いほどにも若い肢体が、
       仄かな含羞
はにかみから、
       撓うようにやんわりと身じろぐのを抵抗ととってか。
       抗っても無駄だと思い知らせるほどの大きな手が押さえ込み、
       甘えから逆らおうとしていた
       非力な爪の悪戯な企みさえ易々と封じてしまう。
       猛々しい屈強な四肢に組み敷かれたまま、
       その深色の眸と至近で見つめ合えば…何故だろうか。
       陶酔への微熱と甘い切なさとが、
       泣きたいような真摯な温みで、胸の奥から じくりと込み上げて来る…。


 なぁんていうような甘い蜜夜だって、ちゃ〜んと2日と明けず過ごしていらっさる
(きゃい〜んvv、いまだに熱っつあつのご夫婦だっていうのにね。だってのに、昼間はすっかりと“良きパパ”になっちゃったゾロさんであり、
“夜中のパパは、いつまでも変わらずカッコいいってのにvv////////
 判ったってばさ。まだ明るいうちから…ちょっち危ないモードのまんまで、臆面もなく惚気ております奥方で。つまりは、自分の自慢の旦那様だってのに、そのカッコよさの部分を他人から聞くばっかなのが口惜しいのらしい。こんな素敵なゾロなんだからねと、ふかふかの胸の毛並みをもっと膨らませて堂々と。いちごや まもりちゃんや、野良の相談役のボニーに、これでもかってほど一杯いっぱい言い触らしたいのに。
“………まあ。ワンコ仲間には、そゆ辺りは何となく通じてるらしいけど。////////
 何たって皆が皆、お鼻が利きますからねぇ。
(う〜んう〜ん) 今朝もそんな一夜を堪能した余燼からか、起きぬけこそ“ぱきーっ”とお元気だったものの、ご飯を食べて血の巡りが良くなった筈なのに何故だかまたまた眠たくなった。なので、今朝のお散歩は、赤ちゃんのカイくんのままの格好にて、パパがカートを押してのお出掛けとなった。これも夏の調度として出窓の傍らに出してた籐のアームチェアに、ちょこりと斜めの横座り。肘掛けに腕を載せ、しどけなくも枝垂れかかるような座り方をして、緑が鮮やかなお庭を眺めていたルフィママだったが、

  “………んん?”

 どこからか。妙に訴えかけるような気配がする。午前の涼風に梢が揺れて騒ぐ音とか、遠くの道を思い出したようにスクーターや自動車が通る音にもみくちゃにされながら、細く細く、切れ目なく続く気配。
“…何だろ。”
 人の姿をしていても、耳やお鼻の感度は良い方なルフィだが、微妙に切れ切れなのが拾い切れない。でもね? 知らん顔が出来ないのは、これが“緊急”とか“救援”のトーンを帯びているからに他ならず、
“…っ。”
 ままよと窓から離れると、瞼を降ろして静かに念じる。ふわりと体の輪郭が淡く光って、少年の体型がするすると縮み、あっと言う間につややかな毛並みのシェルティへと変化
へんげ完了。
“…これって。”
 やっとのこと輪郭が鮮明になったそれは、か細い声だ。リビングをたかたかと横切って、開けてあった大窓からお庭に出てみれば、少しほど奥まった辺りに配置された、良い景色の枝振りが庭師の方にも絶賛されてる、楓の古木が視野に入る。堂々とした風格のある幹と、低いところは安定し、上へ上がれば小枝を絶妙な角度に垂れさせた枝振りの、そのバランスが何ともお見事で。秋の紅葉の時期にはその古木の佇む一角だけが、抜群の錦絵のような趣きになるほどなのだが、気になる気配は、どうやらその楓の方から届いており。
“………。”
 まだはっきりとは正体を見ていないが、もしかして。柔らかな芝生の絨毯をさくさくと踏み締めてそちらへ向かえば。その高みから幼い誰かの震えるような声が降って来る。
“ありゃりゃあ。”
 糸のような細い声なのは、夜中のうちに駆け登ってしまって、それからずっとそこにいたための憔悴のせいか。根元からではどこだかも判然としないほどの高みに幼い爪をかけ、必死で鳴いてる仔猫がいるらしい。
“こ〜れは困ったね。”
 この姿では当然のことながら登れない。かといって、ルフィの姿に戻っても、
“ワンコの匂いを感じてパニクるかも知れないしな。”
 ここいらの猫族にもルフィの素性は結構広まっているのだが、こうまで幼いのに外に居たとなると、これは野良の仔に違いなく。犬か大人猫に追われたか、親とはぐれた仔猫なら尚のこと、ルフィという特殊な存在のこともまだ知るまい。飼ってる犬の匂いがするのではなく、本人からワンコの気配がする人間なんて、特殊すぎて怖いに違いなく、
“どうしよう。”
 みぃみぃという声も、徐々に小さく掠れてく。るうの耳でぎりぎり拾えるほどなのだから、これは相当に弱ってるとみていい。
“どうしよどうしよどうしよ…。”
 為す術を思いつけず、ここから離れることも出来ず。うろうろうろうろと行ったり来たりをしていると、
「どした?」
 おお、やったっ! 救世主がお散歩から帰って来ましたvv
“ゾロっ、話は後なのっ!”
 気が急いたまんま、わふっと飛びついた奥方。…シェルティになってることさえ忘れているのか、やたらと“わふわふ・あうあうっ”と盛んに吠えた。
「る〜ふぃ。」
 ご近所迷惑だぞと眉を顰めかけたゾロだったが、

  「…んん?」

 奥方をその大きな手でがしっと捕まえて、ちーと乱暴だったが尖ったお口を鷲掴みにして塞ぎ、じ〜っとすること数刻。奥方の体高が低かったのでと、お膝をついて息を止め、じっと耳を澄ましていたゾロだったが。
「…判った。助ければいいんだな?」
 間近になったシェルティのるうくんの、黒々と潤んだ瞳へ話しかけ、そのまま立ち上がると…ワークパンツにTシャツという軽装だったのを幸いに、楓の大木へと手をかける。いつも鑑賞用の樹という意識が先に立っており、登ろうなんて小さい頃から今までの一度たりとも思っても見なかった樹だったから。樹皮の脆いところを踏み損ねては、何度かヒヤッとしながらも、上へ上へとその身を持ち上げてく。
「たーた?」
 カートに座ったまま取り残された格好のカイくんが小首を傾げるのへ、ふさふさの尻尾を振ってやりつつ、視線と意識は樹上へ釘付けのルフィであり、
“いくら機敏で腕力もあるって言ったって。”
 雄々しき肢体をしているその分、ゾロは体が少々重い。脂肪率が極端に低い充実した体なので、木登りというジャンルにはもしかしたら不向きだったかもと、今更ながら思ったものの、見上げた恋人はもう既に中腹以上の高みにまで至っており、
「…お。いたいた。」
 そぉっと腕を伸ばして、何かへと手を伸ばす。あまりに脆そうな相手だからと気を遣っているのか、幼い抵抗へ手を焼いているのか。手が伸びたままなのが随分と長く感じられたが、
「おーし、いい子だ。もう怖くないからな。」
 片手を仔猫で塞がれて、しかも登るより面倒な降りるという難度の上がった帰り道も、片手だけで身体を支えたままひょいっとすぐ下の足掛かりへ跳ね降りては、タイミングをみて手をパッと瞬間的にずり下げるという、大道芸並みの離れ業でもってリズミカルに降りて来て。
「ほい、到着。」
 お見事に地上へと至った英雄さん。途中から騒ぎに気づいてツタさんまでが出て来ており、
「お疲れ様です。」
 冷水で濡らして絞ったらしきタオルとミネラルウォーターをそそいだグラスとを、仔猫と交換で差し出して下さる。
「どこの猫ちゃんでしょうね。」
 まだ眸が開いたばかりのようなほども幼い仔猫。にゃ〜にゃ〜と引っ切りなしに鳴く声が、あまりにも切なくもか細くて。痛いほど胸へと真っ直ぐに響くけれど、こうまで近くなったから聞こえるような細い声。あのままあんなところに居たなら、カラスも多いこの辺り、一体どうなっていたことやら。
「お母さんも心配してますかしら。」
「そうだな。」
 一汗かいたのをタオルで拭い、きゅ〜んと鼻声を響かせて大人たちを見上げているシャルティくんの傍らに屈んだ旦那様、
「お手柄だったな、ルフィ。」
 柔らかい毛並みを撫でてくれるけど。
“違うよ、お手柄はゾロの方vv”
 だってサ、何がどうしたって細かいことまでは判らなかった筈だもの。この子の声だって聞こえては居なかった筈。なのにね、ルフィが見上げてた先に、かすかな気配を嗅ぎ取って。何かあるに違いないって、さっさと行動に移ってくれた。
“大好き大好きvv”
 尖ったお鼻をグリグリってTシャツのお胸へこすりつけ、カッコいい旦那様へと甘える奥方の傍らからは、
「ぱーぱ、にゃーにゃ?」
 カイくんも何か察したか、小さなお手々を伸ばして“やいやい”と構っておくれの仕草を見せる。ツタさんの手の中で、みぃみぃみぃと糸みたいな細い声で鳴いてた樹上の仔猫は、やがてはロロノアさんチをテリトリーにする、ここいらの猫たちのリーダーにまで上り詰めるそうですが、そんな伝説の最初の手助けをした英雄さんはといえば、

  「さあ、お風呂に入りまちゅかね♪」

 あっと言う間にいつもの“子煩悩パパ”に逆戻り。カイくんが座るカートを鼻歌交じりに押してゆく、頼もしい背中をややもすると呆然と見送ってから。

  「「……………。」」

 シェルティのるうくんとツタさんとが思わずお互いのお顔を見合わせてしまったほどの変わりよう。何だかな〜とばかり、ううう?と小首を傾げてから、でもね?

  “………ま・いっか。”

 それほどに。あんな大変な冒険も、朝飯前の当然事で片付けちゃえる人なんだ、つまり。そいでね? そういうカッコいいことへの誉れより、何の変哲もない“日常”の方が大切で、日々少しずつ育ってくカイや、まだまだ子供な部分も多いルフィと体験する何でもないことを見逃さないようにする方が、ゾロには重要なんだね、きっと。
「お〜い。お風呂行くけど、ルフィはどうするか、訊いてくれないか〜?」
「あ、は〜い。」
 ツタさんがお返事して、るうもつぶらな瞳をはにゃ〜と緩め、たかたか速足でお家へ駆け寄る。ちょっぴり弱ってる仔猫へは、ツタさんがとりあえずのミルクをストローであげることにして。それも見たかったけど、お風呂から聞こえてくるアニメのお歌の誘惑にはかなわない。あっと言う間にルフィへ戻ると、
「俺もっ!」
 そりゃあお元気に、お風呂場へ駆けてった奥方だったそうでございますvv 閨房での惚気話を訥々と紡いでた、新妻の恥じらいは どこさ行っただ、あんた。
(苦笑)






  〜Fine〜  05.6.25.〜6.27.


  *カウンター 178,000hit リクエスト
     ひゃっくり様 『puppy's tail設定で、カッコいいゾロパパ。』


  *あああ、何だか収拾がつかない締めになってすいませんです。(猛省)
   どうもこのシリーズだと、
   ゾロが“キング・オブ・子煩悩”にばっかなっていて。
   カッコいいなんてどっから捻り出せばいいの〜〜〜っと、
   須磨の海に訊いて来たくなりましたです。
(もーりんです。)こらこら
   結局、こんな情けないお父さんですみません。
   もう私にはカッコいい彼らは書けないのでしょう、うん。
(開き直るか、こら)

ご感想はコチラへvv**


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