月夜見
 puppy's tail 〜その39
 

  あけましておめでとーvv
 

あのね、きのーの晩はネ、遅くまで起っきしててもよかったの。
パパがお寺に行ってたの、お迎えに行くからねって。
でもでも、カイ、ちっとも覚えてないの。
つーまんなーい。
ママもパパもまだネンネだし、
お正月って朝は つーまんなーい。



            ◇



上でおチビさんが何をかごちゃごちゃ言うとりますが、
(笑)
さてもおめでたいお正月の朝がやって来た。
昨夜は力自慢のご亭主が、ご近所のお寺まで除夜の鐘を撞きに行っており、
それをお迎えがてら初詣でに行こうねぇなんて、
お揃いのお顔を突き合わせ、
キャッキャvvと喜んでいた母上とおチビさんだったのだけれども。
まずは海(カイ)くんの方が、10時を回らずして沈没なさり、
いやな予感がしたツタさんが、年越しのおそばを出しながら、
『奥様、坊っちゃまの添い寝をして差し上げては?』
そうと助言したお陰様。
紅白も終わって除夜の鐘が鳴り始めた頃合いに、
ゆさゆさと起こして差し上げれば、
バッチリと大きな瞳を見開いた幼い奥様。
一応約束したからねと、眠ったマンマなカイくんを背負って、
そりゃあお元気にお寺まで出向き。
除夜の鐘のラスト20回ほど、二人で一緒に撞いて来たのと
すこぶるつきのご機嫌でご報告いただけたほど。
そんな晩を過ごした見返りの朝寝坊をなすって、それから。
「パーパ、マーマ。起っき、すゆの〜〜〜。」
寝室前でとうとう駄々を捏ね出した坊やのお声に、まずは父上が顔を出し。
寝床のお隣りが涼しくなると、条件反射でも働くものか、
母上もやっと、半分寝たままながらもリビングまで起きて来て。

  「さあ、それではvv」

ここでツタさんが頑張るのは、
お雑煮のお餅を焼くの…はオーブントースターにお任せし、
腕まくりして取り掛かるのは、男衆三人へのお着物の着付け。
ゾロパパは つい最近まで剣道の道着を着てらしたけど、
ルフィママはもともと和服が苦手な方だし、
カイくんに至っては、昨年の七五三がお初の和装。
「あ、お振袖vv カイくん、着ないの?」
「やーの。」
テレビでこういうのはお姉さんが着るのだと自己学習したらしく、
一応の次いでで出してはみたけど、つんつ〜んとそっぽを向いちゃう敬遠ぶり。
「…まあ間違ってはいませんから。」
「そうだな。」
ああでも、ルフィにそっくりなこの愛らしさ。
潤みの強い大きい瞳に、ふかふかと柔らかな小鼻に頬に。
つんと先っちょの尖ったところまで、実はふにふにとやあらかい唇、
小さくて愛らしい顎の先まで。
寸が詰まってる今なればこその愛くるしさを
重々生かす格好もさせてみたかったのにと、
往生際の悪い旦那様を尻目に、てきぱき紋付き袴をお揃いで着させて、
さあそれから、遅い朝餉を皆で囲む。

まずは新年のご挨拶。
「明けましておめでとうございます。」「ますvv」
「今年もどうぞ、よろしくお願い致します。」「ますvv」

続いてのお屠蘇は、塗りの急須のようなお銚子が2つ用意されており。
「はい、奥様とカイくんとこっちですよ?」
「こ〜ち?」
「そ。カイくんの大好きなアップルジュースですよ♪」
「キャ〜〜〜vv」
「おっとっと。飲み過ぎはいけませんぜ、旦那。」
「にゃ〜〜っ!」
「こらこら、ルフィ。意地悪しない。」

お雑煮のお餅は…自己申告でどうぞと、
オーブントースターがダイニングまで出張しており。
「あんまり食べ過ぎなさると、他の御馳走が入りませんよ?」
「そうだぞ?
 去年だったか餅で腹一杯にしたもんだから、
 おやつの栗きんとんと田舎じるこが食べられなくって拗ねかけたろうが。」
「もう大人になったから大丈夫だっ。」
「…それでも、5つで止めときましょうね?」

お年玉は…お小遣いをもらってもまだ有り難みが判らないカイくんなので、
「はい、これはツタさんとママからだぞvv」
「きゃい〜〜〜〜vv」
クルミの粒が練り込まれたソフトクッキーを、
カイくんが乗っかれそうな籐カゴに一杯。
香ばしい匂いが美味しそうな、カイくんのマイブームおやつだったりします。
「一遍に食べたら鼻血が出るからね? ちょっとずつ食べるんだよ?」
「え? クルミもそうなのか?」
「栄養価が高いですから、そんな謂れをよく聞きますが。」
でも、チョコやピーナツの食べ過ぎで鼻血が出た人を、
筆者は今まで見たことがない…。
「パパからは新しいボールだぞ。」
「きゃいぃ〜〜〜vv」
「あ、いいな〜♪ 赤いのの おニュウだvv」
ルフィママほどの大人になっても、
丸ぁるくてポンポン弾むボールを見ると、わんこの血が騒ぐらしいです。
「ルフィにもあるから、ほれ緑。」
「きゃいぃ〜〜〜〜〜vv」
喜び方が一緒な辺り…。
(苦笑)


今年は雪もまだ降らなかったせいか、年賀状もお昼前には届いており、
わざわざ賀状を出し合うほどもの知己は少ないはずのお家ですのに、
パパさんのお勤めのお知り合いとか、
いつぞやご縁が出来た、アイドルの桜庭さんとか、
動物プロダクションのプリンちゃんとか、
結構いろいろな方からのお年賀状が届いておりまして。
「…っ。ぱーぱ、カイの!」
「え? あ、ホントだ。ロロノア・カイくん。」
「何なに? 誰から?」
子供服のお店からのDM?
いや、それが…。
パパさんの眉間へ複雑そうなしわが寄ったのも無理はなく。
「さんじぇすと…、あっ。ほら、夏休みの。」
「…うん。」
「さーちゃ、にーちゃvv」
昨年の夏に一騒動あった折、お知り合いとなれた外国からのお客様。
金髪になかなかの美形で、お料理が上手だったお兄さんで。
しかもしかも特筆すべきは、
「カイが初見から懐いた、珍しい男の人だもんね。」
男の人には必ず人見知りするはずが、
最初っからの甘えっぷりも大胆に、そりゃあ懐いたお兄さん。
お国へ戻られる朝なんぞ、どれほど泣いたカイだったことか。
「覚えててくれたんだね。あ、でも住所は東京のるふぃんトコになってるや。」
「るふぃの代筆とかじゃねぇのか?」
「違うと思うよ?」
ついついこき下ろしたくなってるパパさんへ、困ったお父さんだことと苦笑をし、

  「だって匂いがするもの。」

俺は言われるまで覚えてなかったけれど、
まだ字が読めないカイが、なのにあんな素早く反応したんだよ?
今だって、ほら。
よいちょよいちょと手を伸ばし、ちょうだいとのおねだりを続けてる。
そんなお手々へどうぞと差し出すと、
きゃ〜いvvと満面の笑みを浮かべてから、お胸へすりすりして抱きしめるから、

  「………ゾロ、ハガキへ妬かないの。」
  「ややや、妬いてなんか。」

なんとも可愛らしいお父さん。
今年もなかなか、にぎやかな一年となりそうな気配ですが、
何はともあれ、


  A HAPPY NEW YEAR!!


  〜Fine〜  07.1.03.


  *のっけがこんな甘甘なお話で申し訳無いです。
   今年もどうぞ、よろしくお願い致します。

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