月夜見
 puppy's tail 〜その69
 

 “お正月を写そうvv”
 

  おねさん、あけましゅて おめでとごじゃいましゅvv
  えと、
  おとしも よおしく おねがいしまっしゅvv

  ………え? なになに ママなに?
  あ、ちやうの?

  お、おと、こ、今年も?
  ことしも よおしく おねがいしまっしゅ、ですっvv




    ◇◇◇



ちなみに、微妙に松の内は過ぎ去っておりますので、
大人同士のご挨拶だと“寒中お見舞い申し上げます”ですね。
そんなこんなな今年の年の初めは、
随分と底冷えのする厳寒と共にやって来た。
毎年恒例の箱根マラソンも、
転んだり足がつったりする選手が結構いたようで。
そんな子たちへも届けとばかり
(カイ)くんもパパに抱っこされての応援に行って、
“ばんばれ・ばんばれ”と懸命に旗を振って差し上げた。

  え?
  あんな目立つ親子だのに、
  中継ではちらとも映ってなかった?

そりゃあ当然ですって。
こ〜んな可愛い子が全国中継されたりした日にゃあ、
どこの“子役プロダクション”が目をつけるか判らない。
なのでと、
頭をすっぽり隠すよな毛糸の帽子をかぶらせ、
ぶかぶかなダウンのコートでくるみ込み。
やっぱり大きめのダウンのロングコート羽織ってたお父さんの懐ろに、
カンガルーの子供みたいにもぐり込ませての応援で。
あんまり大事に大事にと懐ろ深くへ抱え込んでたもんだから、
小さな坊っちゃんが振り回す旗が、
すぐ上の自分のお顔へビシバシと当たりまくりだったそうだけれど。

 『可愛い息子のすることは全然痛くない。』

なんだって。
今年も子煩悩なパパだってとこは相変わらずなようです。
(笑)
そんなパパさんがリビングの真ん中に胡座かいて座っているのへと、

 「きゃぁあぁ♪」

嬉しそうなお声を上げて“たたた・とたとたっ”と、
これでも彼なりの最高速にて突進してゆくカイくんを、

 「おーしっ。ど〜んっ♪」

座ったまんまのパパが少しほど身を乗り出しては、
“どーんっ”と受け止めてやるという、
変則的な押し合いっこを楽しんでいるのは、

 「お相撲が始まったからだろか。」
 「さあ、どうでしょうね。」

確かに初場所は始まっているが、
ちょうど終盤が、
カイくんのお腹に合わせた当家の早い目の夕食の時間とかち合うこともあり、
あんまり関心は寄せないご一家なのだけれど。
大みそかから年明けにかけての寒波は、
3が日の後、少しだけ収まっていたが。
そんな油断をしていちゃあいけないとでもいうことか、
成人の日が過ぎた頃合い、
またしてもの大寒波が日本全土へ襲い来た。
箱根のお山も、雪景色はその白を深めたし、
特に冷え込んだ朝早くの黎明明けには、
吐き出した息さえ凍りそうになるほどの寒さで。
なかなか寝床から出られないよぉと、
ぶうぶうぶうたれていた奥方。
今朝はいきなりシェルティ姿で階下までを降りて来たほど。

 『だって、わんこのカッコだと寒いのも平気だし。』
 『カイが真似するからおやめなさい。』

ルフィママ曰く、
自分で自在に安定してメタモルフォゼ出来るようになったらば、
どういうリセット効果なやら、
朝はわんこの姿で目覚めるようになるとのこと。
それが早まったら困ると言いたいらしい、子煩悩パパは、
成長の兆しがカイくんへ現れるのへ、妙に敏感でおわすらしく。

 『そのくせ、歯が生えそろったっての一番喜んでたんだよね。』

親としてはどっちが大事か、ちゃんと判ってるんだもの。
心配せずとも大丈夫かな、なんて。
ママさんに上からの物言いされてるなんて、
……まだまだ御存知ないんじゃあなかろうか。
(苦笑)

 「パーパ、ど〜んっvv」
 「おおおっ、強いなぁ、カイは。」

ぐらんと、わざとらしくも大仰に、
背後へのけ反って見せちゃあ、
押され負けてますという、
演技をご披露しているパパゾロさんであったりし。

 「ゾロも結構 負けん気が強かったはずなのにね。」

だっていうのに、あんな演技なんてことが出来る融通が身につこうとは。

 『親になるってのも、一種の成長なんだねぇ』

まだまだ童顔、ふかふかな頬っぺをしたまんまのお若い奥方が、
モヘアのセーター着た胸の前へと腕を組み、
うんうんと、いかにも感慨深げに頷いてみせたのへ。

 『……そ、そうですねぇ。』

ツタさん、どういうリアクションをしたらいいものやら、
そりゃあ困ってらしたそうで。
とりあえず、
いかにも大真面目な坊やを前に、
笑い出しちゃいそうになったのを、
何とかこらえるのが大変だったらしいです。
(苦笑)

 「よ〜し、も一回だ。」
 「もっかい、ど〜んっ♪」

きゃあ・きゃっきゃと、
弾けるような高い声にて飛び込んで来た小さな坊や。
そ〜れっと大きな手のひらに受け止めたお父さんだったのを、

 「よし、頂きvv」

小さめの手の中、
左右の親指と人差し指という4本の指にて、
4点の縁だけを支えているかのような。
微妙に危なっかしい構えようにて、小さなデジカメを構えていたルフィが、
かしゃった、と、
親子のはしゃぎっぷりを写真画像へと収めておいで。
ついつい自分までもが“混ぜて〜”と飛び込んでたのも昔
(?)の話で、
今は多少ほど、こうやって眺めていられるようになって来たお母さんの、
新しいお楽しみが このデジカメ撮影だったりし。

 『ナミさんやサンジさんへ送ったげるのvv』

あちらさんもお忙しいのか、なかなか遊びに来られなくなってきたものの、
メールや電話のやり取りは頻繁だし、
殊に、カイくんやルフィの愛らしい姿を、
送れの見せろのとのリクエストが頻繁なので。
こうやって何かというと撮影っと運ぶのも常のこと。
ツタさんまでもがデジカメや携帯の写メの扱いに詳しくなっており、
お孫さんから“おばあちゃま凄いっ”と感心されているほどだとか。
勿論のこと、
ただ撮影するばかりじゃあなく、
PCのほうへと整理するのもお手のものな大人たちであり。

 「結構たまって来たよねぇ。」
 「そうですね。」

クリスマスからだから、そろそろメモリがいっぱいになりそう。
お正月のとは別に整理しておきましょうか?
そんなこんなとお喋りしつつ、
カメラ裏の小窓に撮りためた写真を確かめ始める、
二人のママさんだったりし。

 「あ、このケーキは美味しかった〜vv」
 「今回はイチゴじゃあなくてマンゴーを挟みましたよね。」
 「え? そうだったの? 黄桃かと思ってた。」
 「ふふふvv ロビンさんもそうと仰せでしたよ。」
 「きっと判ってないんじゃないかって? ひっど〜い。
  ……あ・これ。カイくんが咥えてるの、羽織りの紐?」
 「はい。そういえばどこかへ隠されたままでしたね。」
 「カイくんがウェスティになって隠しちゃったんだよね。」
 「ええ。」
 「お庭かもしんない。後で探しとくな。」
 「そんなにも羽織り袴がおイヤだったのでしょうか。」
 「う〜ん。ごちゃごちゃ締めつけられるのが、ねぇ。」

でも、後でこうやって写真とか動画とかを観るって楽しみがあんのにね。
他所ではあんまり観直さないお家もあるそうですが。
え〜〜? 勿体ないなぁ…なんてこと。
のんきにお喋りしているお母様お二人のところへと、
当の王子が とたとた突進を仕掛けて来。

 「わあ、びっくりした。」
 「マ〜マ、チュタしゃ、まんま。」

紅葉みたいな小さなお手々が、
自分のお腹をちょんちょんと叩く真似。
ああこれはとすぐさま合点がいった二人がお顔を見合わせて、

 「じゃあ、蜂蜜パンケーキを焼きましょね。」

大きいお母さんが朝のおやつの支度にかかる間、
小さいお母さんは、もっと小さな王子を小わきに抱え、

 「じゃあ、出来るまでもうちょっと遊んでよ?」
 「うっ♪」

お腹が空きましたと伝言しにいった坊やを見送った、お父さんのところへと、
同じお顔が大小二倍になって戻ってく。

 「行っくぞ、ゾロ。」
 「おお、遠慮は要らんぞ。」

どんと来なさいと胸を張った雄々しい構えへ、
カイくんごと そぉれっと飛びつく幼い奥方。
外の寒さも何のその、
今年もまた、相も変わらぬ ホッカホカなお宅であるらしいです。


  本年もまた、どうかよろしくお願いしますね?

  「よぉちくっ♪」
  「カイくん、Vサインは親指じゃなくて…。」





   〜Fine〜  10.01.13.


  *いやもう寒くて寒くて、
   布団から出るのが まずはの一仕事となってる今日このごろです。
   皆様、いかがお過ごしですか?
   インフルも怖いですが、
   普通の風邪だって馬鹿にしちゃいけませんよ?

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