月夜見
 puppy's tail 〜その73
 

 “さっかあ、やっほぉvv”
 

 おねいさん、おねいさんっ、
 ゆーべの てぇび、観てた?
 前んときは、カイ、ネンネしてたかぁ、
 マァマがすごいごい嬉しそうだったの、いーなだったけど、
 今度はじぇったい観ゆって、
 カイもいっしょって、
 パパやママとも やくしょくしたのね。

 そいでね? あのね?
 カイも、やっほぉっvvて、
 マァアがゆってたみたいに わぁいわぁいvvしたかったけど、
 何回も何回も、
 あああんってドキドキするのがあったのに。
 ママも、うきぃ〜〜〜ってゆって、
 どんどんどんって何回も足踏みしちゃゆのがあったのにぃ。


  ちょみっと残念だったよね。
  ちゅぎでガンバだ、おにちゃんたち。





    ◇◇◇



南アフリカ開催の、サッカーのW杯の日本戦。
興奮の第一戦は真夜中だったが、
第二戦は何とかお子様が起きていられる時間帯のキックオフだったので。
小さなカイくんも一緒に騒げる、じゃない、堪能出来るということで。
それでなくとも、第一戦があの興奮を運んでくれたのだしと、
坊や自身は勿論のこと、小さなママさんも“早く来い来い土曜の晩♪”と、
歌うようにして待ち兼ねていて。

 『今度こそは、カイも一緒に観ような?』
 『うっ、カイも観りゅのっ!』

おぉ〜っと小さな拳を突き上げる様子が、一丁前でかわいくて、

 『〜〜〜〜っ。』
 『旦那様、一緒に勝鬨
(かちどき)挙げていらしてはどうですか?』

どっかの敏腕秘書殿じゃないんですから…と、
(苦笑)
いや、そこまで ややこしい言い回しをした、
ツタさんじゃあ、勿論なかったのですけれど。
遠目になっての、二人ともを眺めるのもまた愛らしくていいと。
愛らしい家人二人が屈託なく戯れてるトコ、
壁へスレスレに平行にした背中を、傾けぬままでしゃがんだり立ったり、
超スローなスクワットをしながらという、
一応はトレーニングモードで眺めておいでだった、
うら若きお父さんも、今は。

 「ふみみぃ〜〜っ。」
 「みゃ〜〜。」

結構あったシュートチャンスのたび、
小さな拳を握り締めちゃあ、
にゃ〜っとか、うわわぁ〜っとか、声立てての大騒ぎをし。
ネットを僅かほどずつ外すたび、
みゃ〜っとか、ひゃあぁ〜っとか、悲鳴を上げては、
ちょこりと座り込んでたラグへ突っ伏してしまう、
そりゃあ熱心なサポーターさんたちだったものが。
いい試合は観ている時間の過ぎ去るのも早いということか。
あっと言う間に前半を終えてしまい。
あれれ、あんなに詰め寄ってたのに決まらなかったねぇ、
惜しいの一杯あったよねぇと、
ツタさん特製の、手羽の空揚げとか一口カステラとか、
美味しいところを もぎゅもぎゅしつつ、
にわか解説者さんがあーだこーだと述べ合っての、さあ後半。
これまた、結構攻めてたし、
時折ダーッとラッシュをかけられちゃあ、
きゃああっと悲鳴を上げつつも、
応援の手は緩めぬまんま、何とかしのいでいるうちに、
時間はどんどん過ぎてゆき。

 ロスタイムは何分なの? え?3分?
 じゃあ急がなきゃ、急がなきゃ…と、

終まいには大きめのテレビ画面へ擦り寄りの、
そのまま中へ入りたいかというほどの肉薄ぶりにて きゃわきゃわと。
声よ届けと応援したけど…………、あああ。

 「口惜しーっ。」
 「くやちーっ。」

 もうちっとだったのにね?
 うっ。
 皆して凄っごい駆け込んでたのにね?
 うっ。
 キーパーさんも、飛びついてたしね?
 うっ。

力尽くしての積極的に立ち向かったけれど。
飛んで来たパスへの歩幅や間合いが合わなかったり、
はたまた さすがは ひは4位の実力、オランダさんの守りが絶妙だったりで、
(*ひは=FIFAと言いたいらしい。)
第二戦は惜しくも0−1だったのね。

 「口惜しーなぁ。」
 「くやちぃね。」
 「でも、頑張ったしね。」
 「うっ、ばんばった。」

まとまりの悪い髪をぱささんと乗っけた丸ぁるいオツム同士が、
一丁前なご意見交わし合ってのうんうんと頷き合う様がまた、

 「〜〜〜〜〜〜っvv」

こちら様も試合にちゃんと集中していたけれど。
小さな家人らがルールについてゆけないと、
オフサイドっていうのはねとか、
今のはPKじゃなくてコーナーキックだよとか、
説明もしてあげの、フォローに徹し。
終了した瞬間も、
“あぁあ残念”と、一方ならぬ気落ちだってしたけれど。
その、最愛の家人二人が、
幼い口調で、なのに尤もらしいお言いようを交わす様、
ほんの目の先で繰り広げてくれるものだから。

 “うあ、何て可愛いのだろかvv”

パパの胸のうちでは、きっとの間違いなく、
日本の惜敗以上に大きな見出しがついてるだろう、
そっくり母子による、
試合分析と次への期待…への愛らしい評価っぷり。
あああ、ツタさんにデジカメの操作法を教えときゃあよかったとか。
いっそテレビの角っこにでも、
ピンマイクならぬCCDカメラでもつけとこうかとか。
もうもうすっかりと、サッカーの試合はどこへやらな心持ち。
そして、そんなパパさんの胸中に
ついつい引っ張り出されてたツタさんはといえば。

 “さぁてと…vv”

今宵はこのままお休みになられる皆様だろうけれど、

 『あのねあのね? ツタさん。
  子牛の香草焼きとマスカットのムースケーキと、
  そいから、カイが頑張って“お好み焼き”焼くって。』

試合が始まる前のどさくさ、
小さな奥様が“明日の用意を”と囁いて来たのへの、
準備を整えておかなきゃですねと。
頭の中にて食材の在庫を確認しぃの、
ホットプレートは確か、パンケットルームに仕舞ってたかしら、
旦那様にはビールもご用意しなくちゃあねと、
こちら様は今からがキックオフという、案配なようでございまし。

  試合は残念だったけど、

    
Happy Father's Day!




   〜Fine〜  10.06.20.


  *今年は微妙な日ですよね、選りにもよって。
   皆、ちゃんとお家に帰っておりますか?(そっからかい)
   ちなみに、次のデンマーク戦は
   24日(木)の真夜中の3時半にキックオフだそうで。
   ウチの母いわく、
   「それって○○ちゃんがそろそろ寝るかという時間ちゃうん」

    ……うまいことを言う。
(こらこら)

   じゃあなくて。そこまで遅いと、
   ウチのルフィさんはどこのシリーズの彼であれ、
   観戦不可能ですな、こりゃ。(撃沈してます、何時間も前に・笑)

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