“夏の思い出にも いろいろあって”
　

　今年の夏は、暑かったねぇ。
　カイもママも、あんまり あちゅいから、
　わんこになるのも、時々になったくやいでね。
　その前は、じゅうっと雨あめ降っててサ、
　そえが今度はアチアチだもんね。
　だからね？
　ママといっちょに怒ってやったの。
　おそらのバカーって。
　いちゅまで あちゅいんだーって。

　そしたら大人しくなったのね。
　ホントよ？ うんvv



　　　　◇◇◇



この夏は記録的な酷暑で、
あまりの思い切りのよさについて行けず、
暑けりゃこっちのものと思っていただろ、
海辺やプールの営業も、
そこへ行くまでが暑いからと、
観光客の出足は低く、
結果的にはさして奮わないところも結構あったとか。

　「エアコンがない生活が、
　　信じられないほどの暑さだったもんねぇ。」
　「さようでございますねぇ。」

当家では、
住人の半分が言葉の綾じゃあなくての
“自然児”たちなので、
出来ればそういう機器は
使いたくないのだがという方針が、
七月半ばであっさりと撤回されたほど。
本来なら、
ある程度は暑さにも寒さにも耐性も高い筈な、
自然世界の精霊、
その身の半分ほどがわんこである奥方と坊やでさえ、
この夏の凄まじい日照りには音を上げ。
人の子の姿のまんまで水遊びに興じたり、
やわやわなお腹 丸出しでお昼寝したりと、
涼しそうなカッコになっても大変だった夏を、
やっと何とか乗り切りましたという秋の初めだったりし。

　「ゾロがやたらと困ってたけどもねvv」

うくくと、ちょっぴり人の悪そうな調子で、
ついつい笑ってしまうルフィだったりするのは。
その手元に広げているフォトアルバムの中、
短パンどころか、ボクサーパンツ一枚なんてな超薄着で、
上はタンクトップ姿でうろうろするルフィだったり。
カイくんに至っては、冗談抜きのパンツ一丁で、
うにゃいと板の間に伸びてたりもしたからで。

　「俺がそういうカッコなのへ、
　　目のやり場に困るってお顔は何とか判るとしてさ。」

いくら暑くても、
お腹を出しての板の間にへちょりというのは、
風邪を引かぬかお腹を冷やさぬかと、
随分と心配していたらしく。
だっていうのに、当のカイくん、
タオルを掛けられてもうるさそうに蹴飛ばすわ、
シャツを着せられても勝手に脱いじゃうわ。

　「しまいにゃあ、パパ暑いからイヤイヤ、だもんね。」

くっつくと暑いから、そばに来たらメェですと。
ストーカーへの接近禁止令ですかと思わせるよな、
過激な発言まで出たりして。

　「………あれはさすがに堪えたぞ。」
　「わあ、びっくりした。」

嘘をつけ、気配くらい匂いで判ろうよと、
切れ長の眼差しをちろんと眇め、
話し相手になっていたツタさんへ
“ただ今帰りました”の会釈をしたお人こそ、
こちらのお宅の稼ぎ頭のロロノア・ゾロお父さんであり。
この夏の暑さがそこへも響いたか、
勤め先のアスレチックジムも、
夏休みにしてはそれほど込み合うこともなかったらしいのだが、
ゾロパパのインストラクターのお仕事だけは
あんまり代わり映えしないで数が集まってたお陰様。
カイくんやルフィとの夏の遊びが
あんまり楽しめなかったことが微妙に残念だったそうで。

　『花火も見たし、キャンプもしたじゃん。』
　『したじゃんvv』

お庭でのプール遊びもほぼ毎日堪能したし、
それへのお付き合い、
陽ざかりへ出てホースでお水をまく係を
そりゃあ根気よく務めても下さった。
だというのに、
まるでお父さんの方が小学生ですかと思うよな、
もっと遊びたかったのになんて言われてもねぇと、
丁度座ってた位置の真後ろ、
ソファの背もたれに顎を置いてる
旦那様を振り返った奥方としては、

　「大体サ、ゾロだって
　　物凄い色気のある身体してるんだぞ？」

　「あ"？」

カイくんやルフィばかりが、
ふしだらなカッコしてたように言うけどさと、
何か反論したいようであり。

　「腕の盛り上がりとか腹筋の硬いとことかさ。
　　それと、時々面倒がって着てるシャツをめくって顔拭くの、
　　あれって絶対反則だし。」

こっちにばっかり、
肩やら腹やら太もも出してるのを目の毒とか言うけどさ、
ゾロだって結構ドキドキするよなカッコしてるんだからね、と。
ぷく〜と頬を膨らませる奥方だったりし。



　　こういうのを「破れ鍋に綴じ蓋」っていうんですよね？
　　ねえツタさん？（苦笑）






　　　〜Ｆｉｎｅ〜　　10.09.15.

　　＊箱根もそろそろ秋の気配なんでしょか。
　　　どんなカッコしても暑いなんて、日本はいつから亜熱帯になったやら。
　　　わんこのルフィやカイくんには大変だった夏だと思われ、
　　　過ごしやすい季節にこそ、一杯はしゃいでくださいましね。

＊＊