月夜見
 puppy's tail 〜その87
 

 “オレンジ おーしーvv”
 

 おねさん おねさん、こんにちはですvv
 あのね、今日はネ、ミカンの日なんだってvv
 え? ちやうの? おえんじの日?
 真ん丸で ちょと かたいたいな
 おミカンの日だよね?
 そいでね、あのね、
 ばえんたいんの続きなんだって。
 カイには よく判っかりましぇ〜んvv




    ◇◇◇



よその子がこんな生意気な言い方したら
“しばいたろか”と むっかり来るのですが。

 「これが我が子だと、
  おませになったなぁなんて方向へ
  感慨深くなるから不思議ですよねぇ。」

 「でもそれって、
  他所の人へはやっぱり
  不愉快な言動には違いないんだからね。」

何にでも やに下がるから“親ばか”って困りもんだよなと。
トレーニングジムでは、
野球や陸上、レスリングと、
どの世界においてもおっかないアスリートさんたちから
更に恐れられてる鬼コーチ、
名代のインストラクターとして知られてる存在のくせに。
海(カイ)くんに関しては
どこにでもいる単なる親ばか、
もちょっとカッコいいままで いりゃあいいのになんて、
困ったもんだを連発してしまう奥方だが、

 “そんなお顔も、どうしてでしょか、
  背伸びをなさってるようにしか見えないんですが。”

そこは大人のツタさんなので、
お顔にさえ出さない胸のうち。
いつまでも童顔だからとか、
実はわんこな坊っちゃんなので
どこか天然さんだから…というんじゃなくて。
ちょっぴり腐すような言い方をしながらも、
そんな旦那様へ、ちょみっと上目遣いに、
じ〜〜〜っと視線を向けておいでの可愛い奥方様だし。

 「ぱぁぱ、えいっ!」
 「おっ、凄いな豪速球だ。」

小さな坊やが、小さなお手々で
ビニールのボールをぽいっと投げたの。
こちらは大きい手のひらで
ナイスキャッチで受け止めつつ、
大仰な言いようをするゾロなのへ。

 「〜〜〜〜〜。////////」

一番ほややんと、
ふわふかな頬から
表情の豊かな口許からと ほころばせ、
そりゃあ惚れ惚れと見惚れておいでなのが、
他でもないルフィ奥様なんだもの。
こ〜んな判りやすい天の邪鬼さんなのへ、
気がつかないワケないじゃあないですかと。
こっちはこっちで
苦笑を押し隠すのが大変な
ツタさんだったりするのであり。

 「ところで、
  今日は何で
  チューリップのお花がお土産なんだ?」
 「あ〜〜〜〜、それはだな。//////」

まるでルフィみたいに
天真爛漫で可愛かったから、
ふらふら〜って そそられて、
ついつい買って来たんだよ…なんて、
最初は一応 白々しい言い訳をなさるのに、

 「ふぅ〜〜〜〜ん?」

同じソファーに腰掛けていてという至近から、
ずいとすぐ間際まで擦り寄られ、
大きなお眸々でのぞき込まれると、

 「う……。///////」

たちまち口ごもってしまわれて。

 「ぱぁぱ?」

何だ どしたと、小さな坊やまでもが、
急にぎこちなくなった気配を察し。
お膝から肩越しに
大好きなパパを振り返っての
やはり“じ〜〜〜〜”っと。
ママと同んなじお顔で
パパのことを見上げて来るものだから。

 「…………すまん、貰った。」

正直に言い直されるのに
さほど手古摺らない“よい子”のパパだったりし。

 “そういう順番で
  今日がそういう日だとお知りになったのにねぇ。”

こちらは東京のサンジさんご夫婦から、
レストランで取り寄せておいでの、
そりゃあ見事なオレンジを、
やはりそういう日だからと贈ってくださったの、
手際よくも食べやすく切り捌きつつ。
そんなこんなを繰り広げてくださった、
相変わらず可愛らしいご夫婦へ。
なんてまあまあ、
いつまでも瑞々しいお二人であることかと。
微笑ましいたらありゃしない、
そんな感慨に胸元がほかほかする、
ツタさんだったそうでございますvv




    〜Fine〜  12.04.14.


  *聖バレンタインデーがあって、
   それへ応じるホワイトデーがあるのなら、
   その後の彼らへ
   ちゃんと大切な人と仲よくしているのか
   確かめ合ってネという日として設定されたのが
   この“オレンジデー”だそうで。
   ホワイトデーと同じで、日本独自の記念日じゃなかったかな?
   何でオレンジかというと、
   欧州のほうでは古来より、
   オレンジの花がブライダルに用いられる風習があるからだそうです。

   チョコとマシュマロを交換しあったら次はもう結婚なのか?
   どこのハンコック様ですか、それ。(こらこら・笑)

めーるふぉーむvv ご感想はこちらvv

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