月夜見
 puppy's tail 〜その88
 

 “風より速く♪”
 

 おねさん おねさん、こんにちはvv
 ごーでんイークが はじゅまいましたねvv
 テービでゆーえんちのお話とか、
 ネジュミーのお友達の大っきいクマさんが
 “は〜いvv”ってしてゆトコとか見たし、
 こあいこあいほーたい巻き巻きの
 お化けがいるトコのお話も見たおvv
 今年はパパもあんまし おしもと行かないそーなので、
 いっぱいぱい遊しょべるぞーって ゆわれたけど。
 ごーでんイークて、
 遊しょべない日だったかなぁ? あれれぇ?





    ◇◇◇


お商売をしておいでの自営業のお宅だと、
業種によっては休みの日ほど稼ぎどきなんで。
連休がそのまま“バカンスだ、遊びに行こうvv”とはならずの、
ちょっぴり詰まらない想いをする子も少なからずおいでだろう。
こちらのお宅のうら若きお父様も、
隣り町のスポーツジムに、不定期勤務をしている身。
本人は主に武道を修めた人物なのだが、
それでも基本は他のジャンルにも通じるもんで。
結果、その世界では知らぬ人はないという
鬼のトレーニングコーチとして勇名を馳せておいでなため。
長期休暇には、だからこそ集中して鍛えたいという
短期特別メニューを予約して来るアスリートの方が
引きも切らずという“引っ張りだこ”状態になるのだが。
今年のこのGWは珍しくも予約者がないのだとか。

 『ゾロもそろそろ人気薄かな?』
 『何だよ、そんな嬉しそうに。』

  今時の子には厳しすぎて敬遠されたんじゃないか?

  いやいや、今年はオリンピックイヤーだから、
  ○○くんも▽▽さんも、この時期は調整に入ってるとかで。

  じゃあ、それ以外の人は?

  さてなぁ……。

何ででちょうねぇなんて、
キッチンから駆けて来た小さな海
(カイ)くんを
“ひょ〜いっ”と抱き上げた動作にて
何とか誤魔化した屈強精悍なご亭主様だが、

 『予約を入れてた学生アスリートと、
  某剣道クラブがありはしたんですがね。』

こそりとツタさんにだけ話しておいたのが、
学生アスリートさんの方は春の気候の乱調に振り回されたか、
風邪でダウンしたそうで。
片やの剣道クラブの方は、
何が原因やら、合宿中に部員の半分ほどが腹痛で倒れたのだとか。

 『…何が原因かは判っていないのですか?』
 『といいますか…。』

角が立つから言えないという感じで、
何やら言葉を濁してらしたので深くは聞かなかったんですが、

 『賄い担当が
  不慣れな女子マネージャーさんたちだったそうなんで。』

食中毒というよりも、
辛すぎるものとか、煮込みが足らずに後から胃に来るようなものとか、
そういったものでの消化不良が原因らしいんですよと。
どっちにしたって、
そりゃあ あんまり他言は出来んわなという事情でのドタキャンで。
怒るとか笑うとかいう以前の問題、
どういう健康管理をしてたんだと、呆れられるんじゃなかろかと、
それぞれの監督さんが冷や汗もので挨拶に来たんだそうで。
とはいえ、

 『昔の俺だったら、
  何だそりゃ、
  真剣に取り組んでないからそういうことになるんだろうがって、
  少なからずムッと来たんでしょうけれど。』

結構丸くなったらしい今の自分へか、
それとも青くて頑なだった過去の自分へか、
小さく苦笑をして見せたお顔は、
微妙に精悍さよりも朴訥さの方が勝さっていたので、

 『判りました。奥様には内緒ですね。』

日頃から無邪気な奥方は、そこまでの事情を聞いたら聞いたで、
それって、じゃあ喜んでちゃいけないことなのかなぁなんて、
彼なりの真面目に、
素直な想いから考え込んでしまわれるかもしれない。
そうなるよりかは、
たまには偉そうな自慢顔をさせてやってもいいんじゃないかと、
そうと割り切ったらしいご亭主なのだろと。
こちら様はそこまでの説明なんかされずとも
余裕で察してしまえるツタさんが、
承知しましたとにっこり微笑ったことで、
大人二人が示し合ったのが連休前のお話で。

 「ぱーぱ、きぇいきぇいvv」

広いリビング、ぱたたぱたたと駆け回ってた小さな王子が、
サイドボードの上へ新しく置かれた
重たげなクリスタルのオブジェへ
小さなお手々をやや不器用そうに差し向けたのへ、
まだまだちいとも届きはしないが、
そして、だからこそ そこへ置いたのでもある
小じゃれたデザインの実はトロフィーに、

 「そうだろう。ママが取ったトロフィーだからな。」

偉かったね、一等賞だよってもらえたんだぞと、
正に“我がこと”レベルの
えっへんという心情滲みまくりなお声で説明してやる旦那様なのへ、
こっちへはさすがに、

 「…ゾロ、それって説明の理屈がおかしい。////////」

さっきまでは ちょみっと偉そうだった奥方が、
鼻白んだように薄い肩をすぼめてしまったが、

 「そうか?」

ルフィがそりゃあ溌剌と頑張ってた姿と同じほど綺麗なんだし、
文脈は妙だったかも知れんが間違ってはないぞと、
やはりやはり胸を張っての堂々としているもんだから。

 「〜〜〜〜〜〜〜。////////」

もうもう、そういうのは親ばかだけで十分だのに。

 「俺へまで“おバカ”でいるのは欲張り過ぎだぞ。」
 「何だ そりゃ?」

愛妻が好きすぎての盲目になってることを
恐らくは言いたいらしいのだけれども。
そちら様もやはりやはり稚さが過ぎてか
上手に言えない自分へのもどかしさへだろう、
むむうと膨れておいでの小さな奥方。

  とはいえ、
  まんざらでもないのも事実ではあって。

数日前のGW前半の冒頭、
都心寄りの広々した緑地公園で催された
フライングディスク大会“一般の部”
ロングディスタンス部門で、堂々の1位を余裕で獲得。
風の中を泳ぐように、
絹糸のような毛並みを優雅にたなびかせ、
主人の回りをたとたとと駆けていたものが。
ぶんっと丸いディスクが放たれるやいなや、
一転、小さなその身を弾ませて駆けて駆けて。
記録的レベルにて途轍もなく遠くへ投げられたディスクを
こちらも そりゃあ絶妙な駆け足で追いついちゃあ、
鮮やかに跳びはねての
空中キャッチをしまくったシェルティちゃんには、
会場内から怒涛のような拍手をいただいた。
そちらの競技のような、遠くへ投げる部門ではなく、
間近へ投げたの軽妙に捕まえたり、
投げたハンドラーの背中を駆け上がったりという、
音楽に合わせてディスクをキャッチする
“フリーフライト”というパフォーマンス部門なら、
来年はカイも出られるかも、なんて
そんなことを言う親ばかが誰だったかはともかく。
その折のトロフィー見上げ、
綺麗綺麗とはしゃぐ坊やと、ゾロのば〜かと照れまくりの奥方と。
そんなそっくり母子に左右から抱きつかれ、
結局は“両手に花”になっておいでのご亭主…とあって。
後半戦はやや荒れ模様らしいGWですが、こちら様だけは安泰安寧。
子供の日は誰かさんのお誕生日だし、
その翌週は母の日だしと、
イベント予定も満載で、
それはそれは幸せそうな連休が続くようでございますvv


  「ま〜ま、お皿びゅんvv」
  「あ、こらこら。カイ、お煎餅 投げたらメでしょうが。
   ………ルフィも速攻で追いかけない。」


    し、幸せよね? ね?
(笑)





    〜Fine〜  12.05.02.


  *更新が間延びしてすいません。
   いつまでもしぶとい風邪に翻弄されておりました。

   わたしらの世代では“フリスビー”で通じますし、
   このワープロも一発変換してくれるのですが、
   創始者さんがそのお名前を商標登録しちゃったらしく、
   それでのこと、某NHKの番組内なんかでは
   “フライングディスク”と呼ばれるようになったらしいですね。
   バンドエイドとかサランラップとか、
   コカコーラとか週ジャン、セロテープと一緒です。
   歌詞の中にあったら紅白では歌えないそうですね。
   でも確か、ホッチキスはかまわなかったんじゃなかったか?
   “つくってわくわく”の中で、
   あれもステブラーって呼ばれていましたっけか?

   そして、これは日本に限ってのものなのか、
   わんこと戯れる遊びの公式協会は
   “フリスビードッグ協会”だそうです。
   探せば“フライングディスクドッグ協会”もあるのかもですが、
   なんてのか、ぐっくっぐっと来て…………長っ。
(こら)

   それはともかく。
   ルフィママ、堂々の優勝をした一般の部ですが、
   子供の部では別部屋の金髪坊やが
   やはりシェルティちゃんを引き連れて優勝してそうですな。
(笑)
   もいっこのお部屋では、ゴールデンのアロウくんが参加してたりして?
   結構 犬猫率の高いサイトでございます。

めーるふぉーむvv ご感想はこちらvv

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