月夜見
 puppy's tail 〜その91
 

 “月の初めにvv”
 

 おねさん、知ってまいたか?
 今日はね 九月ってゆうのの初めの日でしゅ。
 そりと、
 ずっとずっと前に、去年の地ちんより大っきいのがあって。
 そいで、気をちゅけましょって日なんだって。
 ことしは雨こんこがないないだから、
 火のもとってゆうのに 気をちゅけましょって。
 雨こんこ、ないないのほが いいのにな。
 いっぱいぱい遊しょべるもんvv




    ◇◇◇



 「今年は土曜なんだねぇ。」
 「そうでございますねぇ。」

月の頭になると、
家中のカレンダーの古いページを
“新しい月ですよ”と破り去ってゆくのが、
この一家の奥様ことルフィの、誰へも譲れぬお仕事の1つであり。
当然のことながら、2カ月ずつのはこの儀式が2カ月に1度になるのが、
奥様には いたく詰まんないということで。
それだけの理由から、
キッチンの小さめのと、リビング横のパントリーの扉の以外は、
全部1カ月ずつのに統一
(?)されているほどで。
古い分はツタさんが、
果物の皮を剥いたり、魚をおろしたりした時のゴミ受けに使うのでと、
折り畳める小箱へと早速にも折り紙を始めるのもまた
こちらのお宅じゃあ、月の初めにいつも見られる光景で。
唯一 外へのお勤めをなさっておいでのお父さんなぞ、
ああそっか、今日から○月かという目安にしているほどだとか。
とはいえ、

 「今年は、ってのはどういう言い回しだい?」
 「あ、ゾロ、おはよーvv」
 「パぁパ、 はよーvv」

短冊に切り分けたパイシートに、
卵黄と蜂蜜を塗ってグラニュー糖をまぶし、
上手な火加減で焼いたプチパイを、
焼き立て命とばかり、カリポリうまうま、仲良く食べてた、
奥方とツタさんと、
二人に挟まれてた海
(カイ)くんという家内チームへ。
後から合流したお父さんが、
月の初めの話なんじゃあ…と怪訝そうな声を掛ければ、

 「だって、九月の初めって二学期とかいうのの始めだろ?」

ご当人は学校には縁がなかっただろうに、
それでも、知ってるも〜んと、
やや斜め上を向き、小鼻をそびえさせるルフィさんであり。

 「お孫さんが夏休みに来られるお家が多いですから、
  季節の巡りも
  そういうのが目安になりやすいんですよ、ここいら。」

 「あ、な〜るほど。」

ツタさんのフォローでやっとこ納得がいくのは、
パパが微妙に疎いからでもあって。
今いる顔触れには学齢世代がいなくとも、
九月かぁ、
ああ夏休みも終わりだねという感覚になるから
不思議なもんで。

 “まあ、本人がでも家族がでも、
  誰しもどっかで関わって通る道だし。
  633だけだとしても結構長い毎年の話だしねぇ。”

 決算勘定で言やぁ、十月との境が節目のはずだしね。
 ???
 旦那様、奥様には余計に判りませんて、それ。

……という余談はともかく。
土曜始まりということは、
土日がお休みが定着している昨今、
始業式は週明けの3日というずれ込みようとなるわけで。

 「それでなのかな。
  学校が随分と早く始まってるところもあったでしょ?」

そうでしたね、
24日の月曜から始業というニュースも結構見ましたと、
ツタさんが5つ目の簡易ごみ箱“ポイ”を作り終えつつ、
相槌を打ったものの。
余った端っこ、ぐ〜りぐ〜りとテープみたいに巻き巻きし、
カイくんの前でパッと手を放せば…あら不思議、
誰も触ってないのに渦巻きが開いてくよ?
というお遊びを、早速ご披露していたゾロパパが、

 「う〜ん。そこはどうだろねぇ。」

ちょみっと異議を申し立てる。

 「違うの?」
 「雪の多い土地とか、
  冬休みが長い分を夏休みの短縮で調整してるって地域なら、
  前からのことだろけどねぇ。」
 「あ・そうでしたね。」

それにつけても、ハッピーマンデーとか
連休が飛び石になったら最後尾がもう1日休みになるとか、

 「最近のカレンダー事情はややこしいよね。」

長期休暇や連休に予約が入る身の
有名トレーナーでもあるパパさんとしては、
毎日出勤なさるわけじゃあないけれど、
それでも暦には結構 眸がいく昨今だそうで。

 「無理から月曜を休みにしたって、
  休めない人は休まないのにねぇ。」
 「そうですね。
  農家の方とかに至っては、
  役所や何やが
  思わぬ日に勝手に
(?)休んでて迷惑だって声もあったとか。」

パパさんとだと結構大人のご意見も聞けるツタさんだが、

 「おやちゅみ?」

小さな皇子が小首を傾げて、
小さなお手々でエプロンをクンクン引くのへは、

 ジャムですか? あ、ジュース出しましょうね。
 奥様も飲まれますか?
 グレープフルーツとマスカットがありますよ?と

最優先でいつものお母さんモードに
早変わりするところも おサスガで。
ご質問の方へは、

 「そうだよ、八月中は長いことお休みだったからねぇ。」

そ〜らと軽々の抱っこをしつつ、パパさんがお返事に回っており。

 「坂の下のキウチさんトコとか、
  ロビンお姉さんちの隣りのサキサカさんとことか、
  小さいお兄ちゃんやお姉ちゃんが何人か来てたろ?」
 「うんっ♪」

通りすがりに構ってもらえた、
か〜わいい〜vvって抱っこされたのvvと
ウフウフ微笑う皇子へ、

 「いつもは毎日学校に行かなきゃならなくて、
  それで此処へは来られないんだが、
  長いお休みだけ遊びに来られる。
  そのお休みが昨日で終わったんだ。」

 「うう?」

 「ゾロ、説明文が長すぎ。」

カイくんもそろそろ ミルクよりハム大好きになって来ましたが、
まだまだ小さいので、分厚すぎるハムにはまだ齧りつけませんよね?
それと同じで…と、
先日奥様と話しておりましたのでと。
さすがは即妙なツタさんで、
そんな風に説かれていたらしいルフィママさんが、

 「つまり、
  タケちゃんやルミちゃんは…今度はそだな、
  クリスマスに遊びにくるんだな。」

 「わいvv」

そんな風に軽妙に告げてやって納得を招いた展開の見事さへ、

 「おおお。///////」

何たって、微妙にルフィさんの親代わりという部分も
依然お持ちのゾロお父さんなので、
こんな格好で彼の成長が見られるもまた、
感慨深いひとこまだったりするようで。

 「ゾロ、大袈裟。」
 「パァパ おさけ。」

坊やの方からは、何だか微妙なコメントを返されてますが、(笑)
果たしてそれが届いているものか。
自分そっくりの小さなミニチュアを腕へと抱えた、
ちょっとはお兄さんになりつつある、
いやさ立派なお母さんに成長中の愛しい奥方へ、
嬉しい愛しいと、柄にもなく甘いハグしたくてやまない
お父さんであるようです。






 ● おまけ ●


 「ママわ、でもね。晩は にゃんこになんの。」
 「?? 何の話だ?」
 「だって、
  ふにゃんとか、なぁう〜とか、
  ハナちゃんみたいに甘甘のお声 してゆときがあって…。」


   「〜〜〜〜っ。/////////」×@


何たって、寝てる間にわんこになっちゃうお子様ですんで。
いくら寝室が離れてたって、
お耳もよくなってて聞こえようってもんでしょうよねぇ。

  さぁてどうしましょうか、ご両親vv




    〜Fine〜  12.09.01.


  *実はおまけの方が ぽこんと浮かんだネタだったんですが、
   深い意味なんてまだ判らないのでしょうし、
   大人は恥ずかしがりなんで、
   人から隠れて甘えっこするんだよと、
   だからカイも内緒にしててねと、
   それで十分じゃなかろかとは思うのですが………。
   なんて爽やかな新学期の始まりでしょうか。(こらー)

めーるふぉーむvv ご感想はこちらvv

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