月夜見
 puppy's tail 〜その97
 

 “夏も本番?”
 

 おねさん、こんにちは。
 まいんち 暑ちゅいでしゅね、お元気しゅか?
 カイはねぇ、きのー花火見ました♪
 ぱんぱんぱぱんて、きれーでしたvv
 おねさんも花火好ゅき? カイもだ〜い好ゅきvv



    あんわんvv




何とも波乱の六月七月でしたが、
皆様のお住まいの地域はいかがでしたか?
こんなに小さな島国なのに、
まあまあ何て足並みが揃わぬかという、
とんでもない前半戦だった夏でございまして。
台風がらみの豪雨に始まり、
ずっと雨に降られ続けだった地域もあれば、
何でこうも降らないかという、
梅雨なんて名ばかりだったその上、夕立にも縁の薄いところもあり。
連日のように猛暑日か真夏日という関西と、
過ごしやすい曇天と照りつける猛暑日という
極端から極端な日がランダムにやって来た関東と、
どっちが良いんだかねという二種類の夏が同じ年にあるなんて
後で振り返ったときに揉めないかという奇天烈さだったり。

 「ここいらも暑いっちゃ暑いけど、陽が落ちれば涼しいほうだものねぇ。」
 「さようでございますねぇ。」

都心に比べれば標高があるし、緑も多いしと来るからか、
今年の箱根には まだあんまり熱帯夜も来てなくて。
過ごしやすいのが助かるねと、
自分に凭れかかって うつらうつらしかかっている海(カイ)くんの、
まだ幼いゆえか柔らかな猫っ毛を撫でつけてやりつつ、
ルフィママさんがこそりと囁き、
働き者のツタさんが にっこり微笑って“ええ”と頷く。
夏場は陽が落ちてもなかなか暗くはならないが、
それでもさすがに、都心ほど煌々とまで明るくないここいらでは、
八時間近になれば晩と呼んでもいい空の色になりの、
満を持して花火が揚がったりもする。
今宵は隣町のキャンプ場で、ちょいと遅い目の“開村式”とやらがあって、
そのセレモニーの最後に花火が揚がり、
こちらでもお家の窓からの見物と洒落込んだのだが。
さすがにまだまだ幼児のカイくんには、
起きていられるギリギリな時間帯でもあったようで。
キャッキャとはしゃいでいたのも最初のうちで、
すぐにも“わあ”と夢見心地なお顔になっての大人しく寝付いてしまったのが、

 「ふっ、他愛ないな。」
 「……奥様。」

日頃、ゾロから子供扱いされていた、これも賜物(?)か。
“上から目線”という訳でもないながら、
いかにも“子供だなぁ”という言いようをするのが、
こちら、本当に大人なツタさんには悪ふざけに聞こえたらしく。

 「だってほら、可愛いったらないじゃないvv」

眠たくないもんと頑張ってたものが、
小さな体を丸くして、くうすうと完全に寝入っているの、
ルフィにはたまらなく可愛いし、愛しくもあるようで。

 “…まあ、それなら良うございますが。”

大人げなくも揶揄しての言いようなら、
窘めなけりゃあと思ったものの。
まだまだそこまでの大人びた感覚からは縁遠い彼であるようで。
自分のお膝へ ころんちょと小さな坊やを体を伸ばさせて寝かせてやると、

 「もうちょっとしたらゾロが帰って来るからな?」

例によって
夏休みと言えばのコーチングの依頼が山ほど来ていて、
相変わらず お忙しいパパさんで。
今日も9時を回ろうかというにまだ帰って来てはない。
まま、ここまで遅くなってしまっては、
幼いカイくんが起きている筈もなく。
せめて寝顔を見たがるだろうからと、リビングにて待っておいでの皆様で。

 「来週の末の花火は、一緒に観に行けるって。」
 「それは良ろしゅうございましたね。」
 「うんvv あとは雨にならなきゃいいけどなぁ♪」

窓の外には夜風に騒ぐ樹木の声。
こんな時間に何の鳥だろ、
蝉にも似ている短かな鳴き方をするのが、
遠くでジジっと鳴いたのへ。
おおうとお顔を見合わせておれば、
それが招いたか、車が近づく気配も届いて。


   降るよな星空が見下ろす、箱根の更夜でございます。





    〜Fine〜  13.08.04.


  *箱根のお天気をググッたら、
     昼間こそ30度にもなるようですが、
   晩は23度とかうらやましすぎる気温らしいですね。
   さすがは歴史的避暑地。
   それに引き換え、相変わらずの熱帯夜続きな関西地方です。
   でも、エアコンとか扇風機とか、
   つけっ放しだと翌朝必ず鼻がグズグズいうし。
   仕方がないから、エアコン点けたきゃ起きてる、とか、
   窓の外が十分涼しくなったら寝ようとか、
   何だかよく判らないゴール目指しての夜更かししてます。

めーるふぉーむvv ご感想はこちらvv

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