月夜見
 puppy's tail 〜その100
 

 “トリと、オラオラと、リュック?”
 

 おねさん、こにちわ。
 なんか急に しゃむく(寒く)なりまったね?
 風邪こんこんとか してましぇんか?
 してない? そりは良かった。
 そいでね、あのね?
 んと、あさって。
 あさての晩は、はろいんなんだって、知ってたぁ?
 お? むむむ、知ってましゅたか、やりましゅね。
 まじょまじょとか、おーかみとかのカッコして、
 カボチャのケェキとか大っきいクッキィとかアメとか、
 いっぱいぱい、
 食べたぃ(食べたり)もあったぃ(貰ったり)
 しゅるおまちゅり(お祭り)なんだってvv



    あんわんvv





こちらのお宅では、
もはや毎年恒例の催しとなりつつある仮装のお祭り。
最初は愛くるしい奥方に、
猫耳カチューシャと肉球つきの手套なんぞ装備させ、
ショートパンツに黒マントとか着ぐるみで
黒猫だのオオカミさんだのへの仮装をしていただいて。
亡者や魔物が来ても祟られまいぞ、
この子はあんたのお仲間じゃないのと
誤魔化す仕立ても万全としていた晩だったのが。

 「ちゃ〜んっvv」
 「お、今年は吸血鬼か♪」
 「ちやうの、ドラドラなの。」

ずんと小柄な総身だというに、
一丁前にサッシュベルトで腰回りをくくった
漆黒のタキシードもどき。
しかも、シルクハットとステッキというオプションも揃えての、
正装でまとめたおチビさんで。
肩から背中へ下がっているのは、
踏んで転ばないかというのが心配な、長い丈の黒マント。
スタンドカラーの白いブラウスの襟元には、
ビロウドの蝶ネクタイがこれまた愛らしいが、

 「俺はこっちにしなって言ったんだけどもね。」

こちらさんはさすがにまだ平服のまんまなルフィママさんが、
カタログなのだろう、
ムック誌のようなカラー満載の小冊子をテーブルへ広げたの、
首を伸ばしてパパゾロが覗けば、

 「おお、魔女っ子Ver.…って、
  こういうのっていつぞやに着てなかったか?」

三角の尖んがり帽子をかぶった
漆黒のフリフリワンピースに ニーハイソックスという
大人が着たらば子悪魔みたいな
魔女っ子コスチュームのページを開くルフィさんなのへ。
はたとゾロが思い出したのは、他でもない、
先月、お月見の晩に峠の茶屋ごっこしたときの彼らの装いで。
そりゃあ華やかなフリルだらけなところだけはお揃いながら、
ママは一応スーツっぽいカッコだったけれど、
カイくんのほうは、確か
ペチコート一杯のサーキュラースカートはいてましたもんねぇ。
あれの二番煎じにならんかと言われたものの、
だがだが、お母様としてはちゃんと理由もあるようで。

 「スーツはだって、七五三で着れば良いじゃんか。」

おおお、そういえばそれも来月の行事ですが。
そしてそして、
全国的にお子様を仮装させて良い日でもございますが。

 「おいおい、そんな備考欄があったんか。」

すたじお・ありすさんが言ってなかったっけ?
(例によっては実際と異なる場合があります。)こらこら
もーりんの構えた冗談はさておき。
寸の足りないあんよを放り出すよに踏み出して、
おしもとから帰って来たパパへ、
ぱたたぱたたと駆け寄って来た小さなドラキュラさんを。
そ〜らと高々抱き上げてやった頼もしいお父様としては、

 「女の子のカッコさせるのって反対してなかったか?」

お正月にだったか、それは愛らしい振り袖だの用意したのに、
見向きもしないカイくんだったのへ。
そりゃそーだとなかなか冷たいリアクションしてなったかと、
そういうことは結構覚えてるらしいご亭主の、
何とも ごもっともな言い分へ。
あっはっはーvvと軽やかに笑ってから、

 「だってサ、こうまで可愛いと、ついvv」

最初の内は、ゾロって変な趣味があんのかとか、(こらこら)
カイくんがそういうの好きになったら困らないかとか、
そういう警戒もあってあんまり賛成出来なかったんだけどと。
パパに抱っこされて一緒にソファーまでを戻って来たおちびさんの
マシュマロみたいにふわふかな頬を。
それは愛しいと双眸細めつつ、ちょんと指先でつついてやって、

 「それに、男の子のカッコって
  バリエーションが少ないんだよね。」

 「それなんだよな。」

そこは同感と、パパさんも深々と頷く。

 そりゃあ、
 お抱えのデザイナーコレクションとか謳ってるトコでは、
 スーツや紋付きみたいな定型物でも、
 襟やタックなんかの切り替えのところに
 ド派手な柄ものを差してみたり、
 そうかと思えば、提携してますからって、
 和装なのに何とか戦隊のヒーローが背中にいるような
 子供は喜ぶかも知れないけれど…な
 変わった羽織を用意してたりトコも
 あるそうだけど。(どこだそれ)

そういう方向の、風変わりを求めてる訳でもないんだよなと。
あくまでも正統派の装いの中で、でも、
毎年違った格好をさせて、可愛い可愛いと坊やを愛でたい、
そこはお揃いな親心。

 「ましてや、ウチの子は途轍もなく可愛いんだし。」
 「そうそう。」
 「タキシードを着ようが、
  ぷりきゅあの変身モードを着ようが、
  そりゃあ似合うに決まってる!」
 「そうそ…って、何だ?
  その、ぷりん何とかとかいうの。」

おおっと、今時なことで
ちょこっとパパとママの波長がズレたようですが。(笑)
まま、今年のコスチュームはドラキュラで決定ということで。
来年、何か妙なものへコケぬよう、
ロロノアさんチの頼もしき良心、
ツタさんに頑張って貰いましょう、うん。





    〜Fine〜  13.10.29.


  *トリック・オア・トリートをもじったらしき
   タイトルだけ思いついて、
   後がなかなか続きませなんだ。
   当日のルフィママはといえば、
   『ボタン灯籠とかも可愛いわよ』とか
   だいぶ履き違えたロビンさんによる
   斜め上のコーデュネイトをされてたら笑えます。
   うん、亡者には違いないんだけどね。

  *こんなお話ですが、ぱぴぃ100話目です。
   長かったんだか早かったんだか、
   相変わらず変梃りんな一家ですが、
   これからもどうぞよろしくです。

めーるふぉーむvv ご感想はこちらvv

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