月夜見
 puppy's tail 〜その104
 

 “大雨ざあざあ”
 

おねさん、こにちは。
なんかし、こないだから じゅっと雨こんこでしゅよね。
わんこになってのおしゃんぽ ないないになゆから、
雨こんこ、カイきやいですのな、ぷんぷん。




     ◇◇◇



犬の姿も併せ持つ精霊という存在ならではで、
自由を封じられるのが…云々というのじゃあなく。
雨がひどく降りしきる中へ飛び出せば、
濡れて風邪を引くだろからと、
外出への禁令が降り続けているがため。
腕白盛りの坊やとしては、
アジサイの茂みをリビングの大きな窓からじいと見つめつつ、
大きな葉っぱに宿った水玉を弾いて遊びたいなぁとか、
水たまりの深さをばしゃんと飛び込んで確かめたいなぁとか、
そんな誘惑にムズムズしておいで。
梅雨前線に添うてなだれ込んで来た、湿った気団によるもの、
本格的に梅雨らしい空模様になったとも言える天候なのであり。

 「それでも、梅雨入りしたそのまま
  こうまでしっかり降るのは珍しいんじゃないか?」

 「そうでございますねぇ。」

梅雨入りは雨の日が続いて宣言されるものだが、
とはいえ、そうと宣言された途端、
前線は消えちゃあないが、
でもでも不思議と雨は上がってしまうことが多かったのにね。
梅雨入りしたよねと、確かめ合ってたりしたものが、
今年は雨模様がそのまま続いていて、
水害や土砂災害の声が早くもあちこちから聞こえてくるほど。

 「先週末も凄かったもんな。」

箱根では6日から7日にかけて記録的な大雨になり、
時に、話し声さえ遮られるよな雨脚にもなって。

 『〜〜〜〜〜〜。〜〜?』

 『ああ? 何だって? 聞こえないぞ?』

結構 大きな声で話しかけても通じなくって、

 『〜〜から、〜〜〜〜〜けど〜〜か?』

 『聞こえねぇってば。』

リビングで新聞なぞ読んでいたゾロパパへ、
片やキッチンから、片や窓のそばからなんていう、
微妙に離れたところから、

 パパ、雨こんこだけど遊ぼうよ、と

可愛らしくもお誘いしたり。
そうかと思や、

 大好きだから、覚悟しとけよ判ったか、なんて

甘いお惚気を、しれっとした顔のまま、
大きめの声で言ってみたりしてvv

 『それでなくとも鈍感なゾロだから、
  まさか そんなこと言ってるなんて、
  なかなか気がつかんくてサvv』

困ったパパだよな、そでちゅねぇと、
からかってるつもりの母子なのへ、

 『本当に聞こえてないと思ってるところが
  何とも可愛いんですよね。』

そりゃあ、最初の一声辺りは冗談抜きに聞き取れないが、
口元の動きで何とはなく推察も出来る。
となれば、聞こえないふりをして、
可愛らしいお誘いやら告白やら、
何度も言ってもらっているお父様も
なかなかにやり手と言えて。

 “相変わらず、可愛らしいご家族ですことvv”

双方の内緒をどっちも知ってるツタさんが、
素知らぬお顔で こっそりくすすと微笑っているよな。
そんな過ごしようを楽しんでおいでの、
梅雨どきの ロロノアさん ご一家なのでございますvv




      〜Fine〜  14.06.09.


  *関東地方は何だか広範囲で凄い雨が続いてるようですね。
   前線が来た直前に、
   かなり気温が高かったのも影響しているそうで、
   ゲリラ豪雨とか起きやすいそうなので、どちら様もご用心を。

めーるふぉーむvv ご感想はこちらvv

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