月夜見
 puppy's tail 〜その110
 

 おっとびっくり?
 

おねさん こにちは、お元気しゅてまいたか?
きゅーに しゅじゅしゅくないまちたね。
カゼとか くしゅんしゅてましぇんか?
おなかぽんぽん 見しぇてネンネしゅてましぇんか?
こりからサムサムがやってきましゅからね、気をちゅけねばでしゅ。



       ◇◇


一丁前に他人様を心配出来るほど、
そりゃあお元気な箱根のロロノアさんちのおちびさんでして。
秋といったら気候も良くってスポーツ関連の大会も多数。
とはいえ、そういった正念場を直前にして
最後の調整をしなくちゃという段階のアスリートは
厳しい指導をするロロノアコーチを頼りはしないので、
秋の連休もゆっくり堪能できたこちら様。
早々と色づきの始まっていた錦景を当たり前の眼福として味わいつつ、
風の中に混じった枯葉の匂いや 茜色を染ませた陽の色合いから
秋の深まりを感じ取ってる毎日をお過ごしで。
そしてそんな秋が深まれば、やって来るのが七五三、じゃあなくて、
皆を支えてくれている、頼もしいパパさんのお誕生日が もうすぐそこだ。
今年は幸いにして週末とかぶっていないので、
隣町のアスレチックジムへの出勤予定も入ってないし。
何よりパパご本人はと言えば、
その週末の15日、氏子さんになっている神社まで
海(カイ)くんを七五三のお参りに連れてくことで頭がいっぱいらしいので、
宴の準備を進めてもそうそう気づかれはしない様相でもあって。

 「ケーキとご馳走はツタさんに頑張ってもらうとして。」
 「はい、お任せください。」

家人らの好き嫌いも味付けの好みも、
目分量でドンピシャなものを供せる“神様”がおいでなので、
そちらには微塵も不安はなく。
強いて言えば、

 「今年のケーキはマンゴーとイチゴがいいなぁvv」
 「カイも、カイもマンゴしゅきvv」
 「はい、いっぱい載せますね?」

パパはあんまり食べない甘いものだからというのもあるが、
ケーキの趣向はどちらかと言えば
母子の好みへ偏ってしまうのも ままご愛嬌。
食事のメニューはそれこそツタさんが辣腕を振るってくださるので、
エビフライからヘレカツに、鶏の手羽元の唐揚げ、
春巻きにミモザサラダに、マグロのカルパッチョ。
タコわさやモズク酢、からすみなどなど、パパには垂涎の酒の肴の盛り合わせに、
タラを使ったアクアパッツァに、若鳥の自家製ハムと茶碗蒸しまでと、
それはもうもう豪華な逸品たちがテーブルに居並ぶ予定であり。
スイーツにしてもメインのケーキのほか、
これもそっくり母子の大好物
プルプルプリンにふっわふわのシュークリームも追随するとかで。
これもまたツタさんお手製のドーナッツを手に、
リビングをどうやって飾ろうか、
おめでとうと言って渡すプレゼント、
ルフィとカイくんそれぞれが画伯っぷりを発揮した似顔絵やコメントを
今時はご家庭でも出来ちゃう、転写プリントしたTシャツとフェイスタオルのセット、
綺麗な箱に詰めてラッピングしなくちゃねなんて。
パパの耳目が逸れているちょっとした隙間を縫って、
コンビネーションよく相談を進めておいでの皆様だったりし。

 「何だ? こんな早くから顔揃えて。」

たまには…いつも以上の良いペースで日課のジョギング走ってきたらしいパパさんが、
息こそ乱さぬがそれでもやや寒い中と体温との格差、
ちょっと湯気が出てかねないお顔でおウチまで戻ってきたのへと。
テーブルにタックル仕掛けてあれやこれやを体の下へとかき集め、
あたふたと片づける場なんていう、コントみたいな光景も何度かあったりしたし。

 「ぱぁぱ。あしょぼあしょぼvv」

このごろでは ルフィママが背中を押さずとも、
小さな王子がパパへとタックルもどきを仕掛けて飛びつき。
おおそうかそうかなんて、あっさり誑(たら)し込み、
もとえ、懐柔しちゃってたりもするのだが。(笑)

 「…もしかして判っていて誤魔化されてくださっているのでしょうか?」
 「どうだろね。割とというか、ゾロって鈍感なところ多いぞ?」

繊細が過ぎては厳しいコーチングに徹するのも難しい…とまでは言わないが、
それでよくも会社勤めが続いていたなと感心されてたくらいに、
人の顔色を窺う側になったことがないらしい人なので。

 「時々 俺からのお誘いにも気ぃつかねぇ時とかあるし…。」
 「…奥様。」

だってよぉ、気がついたらレスリングもどきになってたり、
ああ汗かいたってそのまま寝ることになってあとからしまった〜ってだな、むがもが…と。
脱線するにもほどがあったのでツタさんが頑張った朝もあったのもご愛嬌。(そ、そうか?)
まま確かに、ルフィさんが言うように、
こちらのご亭主、家人への愛情はたっぷりお持ちだが、
たまにいろいろ見落とすことも多かりしで。
だがまあ、そもそも隠し事なぞないのが基本のご一家なため、
それで何か気づけという方がむしろ無理があるのやもしれぬ。
こういうドッキリでは大いに楽しめもするのだしと、
楽観的な方へ話が落ち着き、

 「今日は暖かくなりそうですね。」
 「うん。」

朝からいいお日和で、陽だまりではぽかぽかな中、
キャッキャとはしゃいで逃げ回るカイくんを
多少は手加減しつつもそら掴まえたと抱え上げたゾロパパの頼もしさは、
ちょみっとこき下ろしかかってなくもなかったルフィママにも
うっとり惚れ直すような効果をもたらしかかっていたのだけれど。

 「ぱぁぱvv」

それは頼もしい大きなお手々で“高い高い”をされるのが、
余程のこと楽しくてしょうがないものか。
きゃい〜vvっとはしゃいだ興奮状態のまま、
逞しい首っ玉へ小さな手を回し、頼りないながらもぎゅむと抱き着いた小さな坊や。
こぉんな可愛い坊やから、全身で好き好き好き〜という意思表示をされて、
嬉しくないお父様がいるだろか。
ましてや、最愛の奥方に瓜二つの愛らしさと来て、
か弱いながらもぎゅ〜〜っとしがみつかれて やに下がりかかっていたのだが、

 「あのねあんね? カイ、大きくなったらばパパのお嫁さんになったげる!」

   ………はい?

丁度、そろそろご飯にしましょうねと
ツタさんがお声を掛けにと掃き出し窓を開けかけたところ。
声だけかけてキッチンへ戻るのだろうツタさんと入れ替わり、
自分はお外へ出るつもりだったルフィもすぐ傍に居たものだから、
そんな可愛らしい告白、大人の皆様全員の耳へと飛び込む格好となった。
こういう仲良し家族にはよくあるだろう、それは可愛らしい一言で、

 “…お・よ・め・さ・ん?”

ちょっと一瞬、文言の一部への齟齬が生じてしまったか、
全員が“おや?”と一旦停止しちゃったものの、
こちらのママ自体が男の子であるのだ、坊やであるカイくんがそうと口走っても

 “どうだろう、問題はないのかな?”

そもそもお嫁さんて何なのかが判っているものか。
一緒にずっと暮らす人、一番の“好き”の座にいる人?
おとぎ話の王子様が見初めて、
ラストでいつまでも幸せに暮らしましたとされるヒロインのこと?

 “そんなもんだろねぇ。”

一瞬凍った皆々様が、
だがだが、まあそんなとこだろねと、
それぞれで無難な着地を見せたのも、それぞれなりに一応は大人であるがゆえ。
そして、

 「うん。とっても嬉しいけどな。
  パパにはママがいるから、カイまでお嫁さんにするのは無理だなぁ。」

ルフィママ曰く、鈍感な男ではあるけれど。
だからこそ、遠回しにしないでダメはダメと、
出来るだけ丁重にと頑張って言ってくれるところが

 “また惚れ直されるじゃんかって
  けしからんく思うほどカックいいんだよねぇvv”

実直そうな男臭い口許を誠実な笑みで温めて、
残念だけどとお断り。
がっかりさせはするだろけれど、
ごめんなと笑っているのを憎めないとさせる、
そんな男ぶりなのが許せんと。
こちらも笑っておいでのルフィさんと、そこもまた似ているものか。
いつもならすぐさま返ってくるお返事、
喜んでという色よいお答えではなかったことへ、

 「ふみぃ…。」

そこはやっぱり、“何で何で”と感じたのだろ、
一瞬ほど表情を曇らせ、むずがりかかった坊やだったものの。
抱っこされたままのパパには、大好きな想いも途切れぬか、
そのままちょんと、おでこへ ちうされたこともあり、
あっという間にご機嫌も復活。
きゃうvvと無邪気な声を上げ、
再び寸の足りない腕伸ばし、幼子の懸命さでぎゅむと抱き着く素直さよ。

 「ご飯だよ、二人とも。」

何とか決着したな、重くならずに扱えて重畳重畳と。
むしろ自分への安堵の声を その内心でこそりと掛けながら、
あらためてテラスポーチへ出てゆけば、

 「まぁまvv」

無邪気な王子が 柔らかいママにも抱っこしてちょうだいとの手を伸べて。
ふわふかな頬同士のそっくり母子が
きゃーいーvvっとはしゃぎつつ、
お互いに頬擦りし合う可愛らしい光景になったの、
何と可愛らしいと眺めていたパパさんや。
安心しましたとキッチンへ引っ込みかかったツタさんの前で、


 「じゃあじゃあ、2号ならいぃい?」


  ……………………はいぃい? ×3


とんだ爆弾発言が炸裂した、秋も盛りの箱根の某所だったそうでございます。





  「ど、どこで覚えたんだろ、そんな言い回し。」
  「まさかもしや、あんのグル眉かっ!」
  「いやいや、
   サンジさんやナミさんとのスマホでのお喋りは俺とかツタさん経由だし。」
  「じゃあ、あのオオカミのお姉さまが要らん知恵つけやがったか
  「いやぁねぇ。出遅れたって残念がってるとこなのに。」
  「ろ、ロビン、来てたのか。」
  「ええ。年末進行の執筆に。」

大人たちがああだこうだと沸く中で、
ありゃまあとキョトンとしてござった台風の目ご本人はと言えば、

 “早くテリュビ観たいなぁ。”

時々ママと観ている戦隊もの、
新しいライダーのを今日も観たいのと、DVDを抱えて大人しく待っておいでで。
そのパッケージを見た大人の皆様が “あーっ!”と一斉に合点がいくまで、あと数分。(笑)



  
Happy Birthday! To Zoro!




     〜Fine〜  15.11.09.


 *ネタを下さった いちもんじ様、
  こんなんでいかがでしょうかvv
  言った本人は仮面ライダー1号・2号くらいの感覚(お嫁さん2号(笑))
  というのに、大いにウケましたvv
  ただ、ルフィママがフォローに入ってその場はおさまったものの、
  次は二人のスキスキv攻撃でパパたじたじv …というのは
  時間的に間に合わずで消化できませんでした、すいません。
  また構ってやってくださいませねvv

めーるふぉーむvv ご感想はこちらvv

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