蒼夏の螺旋

   “ないものねだり?”
 


まだまだ小雪が舞う日もあるけれど、
それでも日に日に春は近づきつつあって。
東京で梅が咲いたという
報告もあったそうだし、
そういや、陽あたりのいい窓際にずっといると
背中が思いの他 ほかほかする日もあるし。
旬のブロッコリーが濃い緑で並ぶ横に、
今は ちょろっとしか入ってないキヌサヤが
ふざけんなってお高さで居座ってるけど、
もうすぐスナップエンドウとかが顔を出す。

 “そしたら グリンピースでまめご飯だよなぁvv”

ああ待ち遠しいぞと今からうっとり顔になり、
ふくふくした頬に手のひらをあてて妄想しておれば、

 「? どした?」

お風呂から上がって来たご亭主が、
まだちょっと湿っているものか、湯気をまとった頭や首回りを拭き拭き、
戻って来たそのまま、ソファーのお隣へ腰掛けることで、視野の中へと収まって。
いい呼吸で“ん”とルフィが差し出す缶ビールを受け取り、
ぷしっと小気味のいい音立ててプルトップを起こし開け、
最初の一口をごくごくと、
結構な量、一気に飲む豪快さが実は好き。

 “…喉とか結構動くよなvv”

まだ暑いからか、
寝間着のスエットじゃあなくてTシャツ姿なせいだろか。
女性で言う“デコルテ”周りが随分とあらわになっていて、
きゅうと無駄なく引き締まっているからこそだろ、
陰影がゴツゴツしていて“きれい”とは呼べない見栄えのはずが、
どうしてだろか、視線がついつい向いてしまう。

 “おかしいよなぁ。////////”

オレ、こう見えて(?)可愛いもののほうが好きなのにな。
何であんな、ムサイ見栄えなのに眸が離せないんだろと。
そうと思うのさえ 妙な抵抗なのかも知れぬほど、
頭のどこかでは不思議だなぁと感じつつも、
何とも自然な反応で、
さっきまでの妄想のネタだった料理本から顔を上げたまま、
しばらくほど場を空けていた伴侶様の雄々しい肢体を
あちこち見回していたりする。

 結構 首太いよな、
 つか、肩幅も凄いよなぁ。
 厚みもあるしよ。
 背広姿になるとシャープなのは
 着痩せして見えてるのかな。

腕が肘から上がって、
大きな手が短めの髪を拭うのに視線がつられ、

 手も大きいもんな、
 手や足が大きいと大きく育つって言うけど、
 小さいころはそう違わなかった気がすんのにな。

う〜んと唸りつつも視線は剥がせず。
切れ長な双眸が瞬きするのや
チッ、美味いじゃねぇかなんて
つまみにと出されてあった鷄皮の唐揚げへ
ちょっと皮肉っぽい笑い方するのがされど厭味なく決まっているのやへ、
ついつい見ほれ続けてしまい。

 何でかな、
 男臭いのにカッチョいいんだもんな。
 女子の人から
 “ムサイ”とか煙たがられてないのは、
 チョコレート山ほどもらって来たのが物語ってるしな。

む〜んと、とうとう眉根を寄せてしまうに至り、

 「……どうかしたか。」

さすがに見つめられてる方でも
何だ何だと異変に気づいたようで。
どっか拭き損ねててソファーとか濡らしたか、
それとも、まさかとは思うが
スマホを覗き見して何か誤解をしてるとか?
よくあるお題目へ
ちらりと不安を感じかかっておれば、

 「だってよ、狡いじゃんか。」

ふわふかな頬、
ますますと真ん丸く膨らませ、
童顔の奥方、
裏が起毛になった
フリースの部屋着をまとった
小さな総身をやや丸め、
ソファーの座面へ上げたお膝を抱え込むと、
不平でございますというのを
隠しもせずに言い返したのが、

 「ゾロだけ、
  カッチョいい大人になっててサ。」

 「…………………はい?」

口元とがらせ、
いかにも不満だとルフィがこぼす。

 「背丈や体型が違うのは、
  そういう血統っていうか、
  個性の差も知れないけどサ。」

頬っぺとかも しゅっと締まってて、
精悍っていうの?
そういう顔になっちゃったし。
背中とかも広くて頼もしいし、
手なんか…と言いかけたところへ、

 「これか?」

ひょいと延ばされたのが、
タオル越しに頭を拭いてた大きな手。
営業企画部の人で
外回りが主体じゃあるけれど、
一応はホワイトカラーの身なくせに。
剣道もたまに続けているせいか、
相変わらずに武骨で力強い手なのが、

 「う〜〜〜。///////」

気持ちがグルグルするのは、
羨ましいのか好きだからなのか。
まるで、
好物の鷄ももの照り焼きを差し出されたのに、
何でだか手を出さないような。
絶妙な言いようだが、
当人が聞いたら
“ちょっとそれって”と怒り出しそな(笑)、
そんな空気を不審に感じたものか、
差し出したまま、放っぽらかされてる手を、
何を思ったかひょいと持ち上げたご亭主様。
そのままその手をルフィの頭の上へ乗せ、
まとまりの悪い黒髪を
ポンポンと軽く撫で叩いたものだから。

 「〜〜〜〜〜っ。/////////」

普段ならば何てことないじゃれ合うのの延長、
何だよぉなんて“にゃはvv”と笑い、
自分からも飛びついてたような程度の
構いつけだったはずだのに。

 「もうもうっ、
  他所でもこんなことしてたら、
  怒るからなっ。」

 「おおうっ。」

飛びつくところは同じだったが、
何だこのタラシっぷりはと、
何でだかお怒りを煽ってしまったようで。

 “……単純なんだか複雑なんだか。”

大きな生き物には
小さな生き物の機微は
なかなか判りにくいようで。
日頃の天真爛漫さとは
一線を画した何かしら、
大きいからというよりも、
後発だから追いついてないだけかも
知れないが。(う〜ん)
まあ とりあえずは
懐ろに飛び込んで来たんで良しとするかと、
小さな奥方、
駄々ごとくるみ込んで差し上げた、
のっぽの旦那様だったようでございますvv





     〜Fine〜  15.02.19.


  *たまにはルフィ奥様完敗のお話もと思いまして。(笑)
   それにしましても、
   スーツゾロって何でああもカッコいいんでしょうかvv
   フィルムZの半ばのいで立ちもそうですし、
   ピーカ戦のゾロもvvv
   ラフな恰好での野性味あふれる雄々しさとは一味違い、
   なんてのか…窮屈そうな恰好のはずが負けてないまま、
   むしろ 機能美をどこまで晒してくれますかと
   感動するほど凛々しくもカッコいいvv
   アニワンで堪能するぞvv


ご感想はこちらvv**めるふぉvv

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