ロロノア家の人々 Tea timeより
     
温泉に行こう!・U おまけ A
  



        




 二人とも"相手が自分とは同性の男なのだ"ということに気づいたのは、引き返せないほどの"好き"を自覚した後だった。放ってはおけないくらい、いたいけなくも一途で愛しいから。片やは、凛とした態度や気性の男前さが、何ともカッコいいから。そんなような、常に口にする、若しくは分かりやすい置換句として思い浮かぶフレーズだけが、相手へ惹かれた要素では勿論なかった。それだけで反応するなら、他の男の子やら伊達男にだってクラクラふらふらとよろめいていた筈で、
『俺ァホモじゃねぇんだよ、気持ち悪い』
 周囲が"…え?"と、一瞬凍って反応を引きそうなお言いようだが
(笑)、それが彼らの真実だから仕方がない。相手がルフィだから、傍に居るのがゾロだから。それで始まった恋であり、培った愛だから、これはやっぱり"同性愛"と簡単に片付けてもらっては困るし、そうかといって…普通の恋愛にはないだろう苦労というか煩悶というかもなくはなかった茨の道で。
『それは仕方のないことだろう。わざわざややこしい相手に惚れたのも、そんな恋愛を貫くって決めたのも手前ェ自身なんだからよ。』
 実は秘かに"恋敵"だったくせして、何かというと嫌がらせに誤魔化して発破をかけてくれていた、金髪のコック野郎の憎まれ口を思い出す。彼に限らず、自分たちの間柄に気づいて、だがしかし、応援の構えを取って黙認してくれていたかつてのクルーたちは、ルフィが幸せなら…という方向で見守ってくれていて。まま、彼の"海賊王になるんだ"という破天荒な野望に付き合ってくれてたほどなのだから、そこに今更"仲間の一人に惚れちまった、しかもうっかり男だった"が加わっても動じたりはしないというところか。

  "…そこまで言うか。"

 あ、ごめんごめん。………っていうか。あんたはそっちに没頭せんか、馬鹿者が。
(怒)




「…ん、ゃ…んん。」
 幾分か掻き乱された夜具の上へ胡座をかいて座ったその膝の上。小さな体をあっち向きに座らせて、そのまま懐ろへと抱え込んでいる。背後から手を回しての"悪戯"に、乱れた吐息が時折撥ねる。しっかと掻き抱かれている訳ではなく、凭れかかっているだけの体が、だが、脇へ倒れたりずり下がりそうになる不安定さはない。背後からの両手があって横へは倒れも逃げも出来ないし、与えられる刺激に"ひくり"と震えるたび、反射的に逃がれようとする体は背後の胸板へ押し付けられるからで、
「あ…いや、ん…。」
 はだけられたパジャマの懐ろ、男の指に散々に弄
いらわれた小さな肉芽が、双方ともに緋色を増してすっかり熟している。掠める程度に触れられても感じる箇所を揉みしだかれて、
「…そこ、ばっか、嫌…だ。」
 肩越しに訴えて来た唇を、斜め上から攫うように射止めて、少しきつめに吸い上げる。
「ん、ん…。」
 除かせたくてかそれとも執拗に弄るのを止めさせたくてか、こちらの両の手へとそれぞれに、添えられていた小さな手が片方、力なくずり落ちて。だから…というのでもないが、その、形だけ制されていたのを解放された大きな手が、するっと腹をすべってゆき、
「あ…はっ、や…嫌…っ。」
 パジャマの下の方、ズボンの中へと侵入してゆく。そこではそこで、既に勃ち上がりかけていたものが、下着越しに形を浮き上がらせていて。
「相変わらず敏感だよな。」
 ちょうど耳元で低められた声が囁きかける。その甘さに嬲られてか、熱に染まった唇がひくひく震えて何とも悩ましいお顔になるから、
"…無意識だから怖いよな。"
 その天然ぶりには困ったような苦笑が浮かぶゾロである。ルフィにとってのこういった、間柄やらベッドマナーやら etc.…。何につけても初体験だったらしいから、ゾロとの睦み合い以外には手管だの知識だのを吸収する機会はない。浮気という形での可能性が有る筈をこうと言い切る自信にも物凄いものがあるが、何のことはない、ここにもルフィの子供っぽい単純さが現れているだけの話。誰かを好きになったなら、その人専属であるのが常識だとばかり、ただただ一途にゾロだけを想い、ゾロとだけ睦み合う自分であり続けたから。それだけ不器用であったのだと、そうと指摘されればそれまでだが、本人に言わせれば、
『だって…ゾロはカッコいいもん。』
 だそうである。…説明になってないってば。
(笑)
「ん…あ、ひぁ…ん。」
 最も敏感な箇所へ直接触れられての官能の震えから、つい体が動いて。身じろぎに顔を背けたことで、鼻先で広く晒された首条へ容赦なく唇を這わせてゆくと。肉食の野獣に喉笛に食いつかれた仔羊のように観念したか、撥ね避けるような反応はせず、
「ん、んんぅ…。」
 逆にそれを甘んじて受けるよう、悩ましげに顎の先をもっと向こうへ反らして見せたりする。
"…ふ〜ん。"
 こんな素振りを見るにつけ、欲しい気持ちはお互い様だと、最近やっと安心出来る余裕も生まれた。昔より穏やかな日々の中、ずっと一緒に居てもまだ足りないのか、まるで餓
かつえを埋め合うように求める心は止まらず。けれど、いつまでも初心うぶで恥じらいの抜けない、幼い恋人さんのぎこちない素振りには、正直言って時々罪悪感のようなものを感じもしたのだ。自分ばかりが貪欲で、かなりの無理をさせているのではなかろうか。そうと思うと不安や杞憂はとめどもなくて。小さな棘を長いこと、飲まされ続けもしたものだった。
『…俺が怖いか?』
『? ん〜ん、怖くなんかないぞ?』
 今から思えば滑稽な、そんなことまで直接訊いたほど、この剣豪が不安だったというから…恋って凄いなぁ。
「…あ、あっ、あぁ、んゃ…あう…。」
 握り込まれた中心部から急激な愉悦が放たれ出すのへ、咄嗟に脚を閉じようとするのを、もう一方の大振りの手で、内腿を宥めるように撫で降ろして邪魔をして。
「や…っ。ねぇ、ぞろ…。あ…やぁ…嫌、あ、ああっ!」
 小さな肩に載せた顎先で、実は…体を縮めて丸くなろうとしかかっている奥方の上体を、それだけで押さえているから、最初の絶頂に向けてさりげなくも真剣な旦那様であり、
「やっ…あ、ああっ。やん…。」
 相手の大きな手へ、やっとのことで自分の手を重ねた丁度そのタイミング。反射的に反り返った小さな顎がひくりと震えて、
「あ、ああ…あ…。」
 同時に勢いよく窄
すぼまった肩が、今度はゆるやかに萎えて弛緩してゆく。そんな小さな肢体を、きゅうっと両腕全部で包み込んで抱き締めてやって、体内に波立つ嵐が静まるのを待ってやり、
「…ん。」
 やがて…自分の方から肩越しにこちらを見上げてくるのへ、あやすように笑いかけつつ。愛らしい口唇へと、誘われるように口づけを落として、身の裡
うちにふつふつと滾り始めている潜熱を解放にかかる旦那様だったりするのである。


            


 夜具の上へと横たえて、逞しくも雄々しい体躯の下へ組み敷いた小さな身体。あれから再び体内へと火を点けた跡が、柔らかな肌に点々と赤く浮かんでいて。それもまた煽情的な構図ではあるのだが、
「あ、やう…っ。」
 ねじ込まれる瞬間に、かすかに辛そうに眉を寄せる。真ん丸く開かれた唇の中。薄い舌が淫らに撥ねたのがちらりと見えた。一応は指で充分に馴らしたのだが、もともとの体格差があるし、いつまでたっても絞まりが良すぎる彼であり、
「キツイんじゃないのか?」
 こちらも少々差し迫った声音で問うと、懸命な声が返って来た。
「…んなこと、…ない…もん………。ん、…ひぁっ。」
 愛しい人が悲鳴のようなか細い声で啼くのへ。痛々しいと思いつつ、だが………何とも言えずそそられる自分が居る。もっともっとのたうちまわる様が見たいと。あられもなく乱れて、堪忍してと許しを請う声が聞きたいと。そんなことをつい妄想する自分。懇願しながら泣きじゃくる可愛い人を見据えつつ、そうさせているのが他でもないこの自分だという嗜虐的な快感に浸りたいと思う自分。
"………危っぶねぇ。"
 快楽の縁は突き詰めると、破滅に通じる地獄と紙一重な狂気の沙汰なのかも知れないなと。ほんの刹那ながらも我が身に見えた危険へ失笑し、それよりは…大切な人を慈しみ愛おしもうと、集中し直すご亭主である。






   ――― なんか…おかしくなりそうだ。

 ぐいぐいと。狭いところを押し広げつつ侵入してくる様子が、リアルな圧迫感となって突き上がって来る。秘筒をどんどん奥へと進んでくる、蛇の頭みたいな剛
つよくて熱い塊り。
「あっ、ああ、あぁんっ。…あ…っ。」
 最初のころは苦しいばかりだったこの侵入も、今では与えられるあらゆる感覚が愛情経由で快感へとすぐさま変換されてしまう身となった。力強さに凌駕され、蹂躙にも似た勢いで犯されることへさえ、不思議な陶酔を感じるから…慣れって怖い。
「あ、あ…はぁ…。ひぃあっ! あ…っ。」
 最奥まで押し込まれ、薄い胸が上下する。じっとしていても圧迫感は物凄く、腹の奥がじんじんと熱い。しかも、
「…あっ、やっ…ああっ。ぞ、ろ…やぁ…。
 ずるりと。引き出されかけては突き上げられて、熱くて堅い、狂暴なそれが尚の凌辱を始める。秘壁に擦れる感触も、体中が揺さぶられる突き上げも、激しくて熱くて…堪らない。
「やぁっ。…あ、ああっ、あうっ。」
 いやらしい水音を立てる秘蕾も、いつの間にか痛いほど張り詰めた勃起も、どちらも熱くて堪らない。どろどろに蕩けてしまいそうな感覚に呑まれる。ゾロの大きな手が細い腰回りを掴んで離さない。逃がさないためではなく、腰を打ちつけるのに安定させるためだ。その箇所の肌が燃え立ちそうなほどに熱い。直接擦られる肉壁も、打ちつけられる振動も、同じところから発している行為だと判っているから。愉悦の深さも物凄く、際限が無い。

   ――― こんな、好きなんだ。

 激しいほど、熱いほど、その想いの丈も大きいという証し。

   ――― こんなまで、俺のこと、欲しいんだ。

 なんて愛しい人だろう。もっと責めてよ。もっと欲しがってよ。そう思う自分がいる。もっともっと溺れたがっている淫蕩な自分。

   ――― そこ、うん、こっちも好き。もっと、そう、強く。

 思うまま蹂躙されるのが気持ちいいと、つい口走りそうになるほど、淫らでいやらしい自分がいる。こんな自分だって知れたら呆れられちゃうかも。でも…ああ、何だか もうもう、訳が判んないよう。


   「…ぞろ。」
   「んん?」
   「もう…イク、イキたい。」
   「そか。」



 ルフィ自身、実は覚えていないのだ。いつも最後にはこんなやり取りがあってから、自分が果てている、いや、昇華へ追い上げられているのだと。朦朧とした意識の限界にあって、甘い声でねだるその哀願にやさしく応じてくれる旦那様であり、

   「あう………っ!」

 悲鳴にも似た声を洩らして。頼もしい腕の中、ぎゅうっと抱かれて意識を飛ばす小さな奥方は、大概はそのまま深い眠りに落ちる。これ以上はないほど安全で安心な、温かくてやさしい懐ろの中で………。



   ――― 俺も大好きだよ、ゾロのこと…。













   「………もしかして俺って、やらしいのかな。」
   「そんなら、俺はもっとやらしいってことになんぞ?」
   「うっと…。/////」




   〜Fine〜  02.10.6.


   *SAMI様、すみませ〜ん。余計なオマケをつい。(泣)
    こんな半端な代物、要らないと仰せなら
    遠慮なく仰有って下さいませです。


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