ロロノア家の人々
     
“笹の葉 さらさら…”

 
 ♪ 笹の葉さ〜らさら 軒端
のきばに揺れる
   お星様き〜らきら 金銀 すなご ♪


 そのまま"五色の短冊〜♪"と続けかかったルフィに、
「お母さん、のきばってナニ?」
「すなごってナニ?」
 大きな角膳のお向かいから、幼いお声が相次いでかかる。縁側廊下と向かい合う反対側のお廊下には腰高窓、その両方を開け放ち、心地いい風を通した涼しい茶の間。今はまだ軒先に巻き上げられているものの、使い込まれた簾
すだれも出した。板戸や襖も、籐を編み込んだものや透かし彫りの細工があるものなど、夏仕様の建具と取り替えた。古い家には恒例の"模様替え"もすっかり済ませていたし、勿論のこと、住人たちの衣服も軽やかな夏服に替わっており。まだまだ陽焼けは薄いものの、短い袖から剥き出しになった小さな肘をお元気にも体の両横へと広げて、それぞれに好きな色のクレヨンを覚束無く扱う子供たち。まだ幼稚園前という年頃ではあるけれど、大人の多いお家なせいか、短冊への"お願いごと"はもう自分で書けるらしい。そんな彼らと向かい合っているのは、やはりゆったりとした半袖シャツに短パン姿のこの家の奥方で。
「のきばってのは…えっと、だな。」
 実は自分でもよく知らなくて、牧場じゃないよな、あーうーと言葉を濁しながら、傍らの縁側にてキヌサヤのスジを取っていたツタさんをチラチラと見やる。奥方からの"救援信号"の目線に気がついたツタさんは、
「軒端というのは、こういう庇の端っこという意味ですよ。近い方がお茶の間や座敷からはよく見えるけれど、軒の下では背の高い笹だと先がつっかえますしね。お唄の中のお家では、笹飾りをそんな辺りに立てて眺めていたんでしょうね。」
 やさしいお声で説明してくれる。ふぅ〜んと関心したような声を上げるお嬢ちゃんのお隣りから、
「じゃあじゃあ、すなごは?」
 今度は坊やの方が訊いて来たが、
「えっと…。」
 これはちょっと…自信がないのか、言葉に迷うツタさんの向こう、
「砂子っていうのはな、細かい砂そのものとか、あと、金や銀の細かい粉が漆の器や名人の描いた絵なんかに吹き付けてあるだろ? ああいうのを言うんだよ。」
 そんな説明をしてくれたのが、
「あ、お父さんvv
 山吹色の短冊からお顔を上げたお嬢ちゃんが嬉しそうなお顔になる。朝一番の門弟さんたちの手合わせを指南して来た師範殿が、庭沿いに戻って来たところ。自分は参加しないで見守っていただけだから大して汗もかいてはおらずで、文字通り"涼しい顔"にて皆を見回した彼であり、
「それって、お正月やお花見のお重箱に描いてある模様のことか?」
 雪駄を脱ぐでなく、縁側に腰掛けたままでいるところへ、奥方が小首を傾げるようにして声をかけると、
「ああ、あれのことだ。」
 あっさりと頷首して見せる。そうそうあんまり贅を尽くしたお道具は揃えていないお家だが、節句の時だけ使うお重箱やお屠蘇のお道具などは、一応きちんとした塗りのものが準備されていて。ルフィが思い出したのは、その中でも一番豪華で大きなお重箱。三段重ねの黒漆の外側、丹精な続き模様には、細かい霧のような金の吹き付け細工がなされていたのをゾロも思い出す。
「笹の葉の向こうに見えた星空が、まるで漆に吹きつけた細かい金粉みたいだねっていう唄なんだよ。」
「ふ〜ん。」
 二人の会話の間にも、茶の間に上がって来ないお父さんに焦れたか、自分からぱたぱたと傍らまで寄って来たのは短いワンピース姿のお嬢ちゃん。傍らの板張りに座りかかったのを、軽々と抱えてお膝に抱っこしてやる師範殿で。つややかな黒髪を左右の耳元に二つに分けて結っており、こちらを見上げようと顔を振るごと、胸板にぱさぱさと当たって擽ったいのへ小さく苦笑しつつ、
「笹飾りか?」
 膳の上のにぎやかな彩りを目顔で指して訊くと、奥方が晴れ晴れとした顔でにっかり笑った。
「おうっ。一杯作んだぞ。去年のより一杯っ。」
 今夜は七夕の星祭り。皆して集まって取り掛かっている切り紙細工作りも、いよいよの佳境であるらしく、膳の上には細い紙の輪をつないだ鎖や、何度も折って切り込みを入れてから広げたらしき、網のような吊り飾りなどが色とりどりに散らばっていて。その微笑ましい図に、ゾロもついつい目許を細めて見せる。
「ツタさんが一番上手なんだよな。」
 赤からオレンジ、黄色・黄緑を経て緑へ。3センチ角の正方形の端っこを糊づけして連ねた色紙の帯は、そのグラデーションが鮮やかだし、お習字の半紙を細く細く互い違いに切られたリボンは、風にひらひら、なんとも軽やかだ。細やかなお飾りの数々に羨ましいなという声を出すルフィのお向かい、
「でも、お母さんのスイカも上手だよ?」
 坊やが指先に摘まんだのは、糸をつけた緑の縁取りに赤い半月のスイカの切り身。タネの粒までちらほらとクレヨンで描かれていて、
「そうだな。美味しそうだ。」
 にこりと笑うと、坊やは嬉しそうに笑って我がことのように胸を張り、当のご本人もまんざらではなさそうなお顔になって、手元に見下ろしていた短冊に照れ隠しからかグリグリと渦巻きを書き始める。
「でもね、お父さん。」
 お嬢ちゃんが膝の上からクリッとお顔を上げて来て、
「どうして織り姫様と彦星様のお人形さんは下げないの?」
 クリスマスのツリーにはサンタさんを下げるのにと、小首を傾げて訊いて来る。………う〜ん、確かにやることは似てますが。どうしてなんでしょうね、その辺り。

     【七夕祭り;tanabata-maturi】

     夏を迎える節季の祭りで歴史も古い。天ノ川を挟んで繰り広げられる織女と牽牛の伝説は、なんと2000年も昔、紀元前の中国に既にあったのだそうで、それが日本に伝わったのは孝謙天皇の時代、750年代の奈良時代にまで逆上る。東大寺の大仏開眼辺りの頃ですね。この季節、日本にもそもそもは農耕にまつわる祭事があったのですが、以降はこちらに塗り替えられてしまったそうな。仏教その他、渡来人が伝えた様々な文化に彩られていた時代でしたから、割と簡単に受け入れられたのだろうと想像出来ます。
     笹にあれこれ飾ったのは、日本では笹や竹はそもそも神聖な植物だとされていたからで、この部分は伝説渡来より以前からの風習。成長が早く、また殺菌作用に優れていた笹は古来より魔よけの植物とされていて、神事にはよく用いられていたため(ex,地鎮祭には地面に立てるし、お払いにも多用)、天上の牽牛織女へのお供えがよく見えますようにと笹が選ばれたと思われます。そこへあれこれ飾り付けをするようになったのは、機織りの名人だった織女にあやかって、お習字やお稽古ごとが上達しますようにと祈ったから。願いごとを書いた短冊というのも、元は機織りの象徴としてカラフルな布を下げていたのが安価な紙に変わり、そこへ習いごとの上達などという祈りを書くようになったらしい。(平安時代に貴族たちが詠んだ歌を蘆
    ヨシに書いたものが変化したとする説もある。)
     この星祭りが、ポピュラーなものとして庶民たちも楽しむレベルにまで降りて来るのは随分と遅く、江戸時代に入ってからだそうで。内政が戦乱によって揺れ続け、何とも不安定だった世の中がやっと安定したからこそのこと。ちょうど同じ日に、町の長屋では井戸を浚って来るべき夏に備えたそうです。




   「………で?」

 すまん。お嬢ちゃんの質問の答えは見つからなかったです。ただね、織女も牽牛も天上の神様扱いされてるから(二人を罰したのは格上の主上神)、それを象
かたどったものなんてのをむやみに作るのは、畏れ多かったんではないでしょうか。それに、笹はあくまでも"捧げ物は此処ですよ"という目印だったんですし。
「だそうだぞ?」
「ふ〜ん。」
 お話に場外の人を引っ張り込むのは辞めて下され。
(笑) …それはともかく。
「お母さん、ねぇ"な"ってどう書くの?」
「んん? えと、こう…だ。」
 手元で渦巻きを書いていた短冊へ見本を書いて向けてやる。お世辞にも"きれい"とは言えない字だが、これでも船でナミやチョッパーから読み書きは教わったからちゃんとしたもの。

 *…ところでこれもまためっきり余談ですが、
  この世界ってやっぱり共用語は英語なんですかね。
  看板には英語が多かったし、生活様式もゾロの故郷以外はめっきり洋風でしたもんね。
  そうそうこだわる必要はない、とも思うんですが…。

 お膳に張りつくように頬をつけ、坊やの小さな手がちょいと怪しい字を連ねた短冊。坊やもその仕草も、どっちもが微笑ましくて、
「何て書いたんだ? お願いごと。」
 訊くと、顔を上げ、うふふと笑う。
「んとね、早く強くなりたいですって書いた。」
 この春から始めた剣術のお稽古のことだろう。母と坊やの屈託のない会話に、お父さんのお膝からはお嬢ちゃんがお顔を上げて来て、
「みおはね、早く大人になりたいって書いたの。」
「大人?」
 そお、と。ちょっぴり恥ずかしそうに微笑いつつも頷く娘御に、
「…そうか。」
 若いお父さんのお返事の語勢が…やさしいながらも少々弱かったのは、いつまでも幼いままでいて欲しいと、そうなら自分の手元にずっと置いておけるのにと思ったからに違いない。ルフィだけでなくツタさんも、こっそり"くすす"と笑っていて、何ともほのぼの、一家団欒という構図であったが、

  「み〜お〜ちゃん。」

 不意に玄関口の方からのお声がかかった。やはり幼い女の子たちのもので、
「? あ、いけない。」
 一瞬きょとんとしてから、あややと立ち上がる。そんな茶の間へ若い方のお手伝いさんがやって来て、
「ちかちゃんとよしこちゃん、衣音くんがお見えですよ。」
 来客たちの顔触れを告げてくれた。途端に、
「あ、そうだ。子供会だ。」
 坊やも慌てて立ち上がった。
「あのね、ウチの竹林から大きいの切り出すんだって。」
「そいでね、川野辺の広っぱに立ててお飾りするの。」
 この屋敷の裏手に広がる竹林は、ここの師範殿の名義の地所だ。とはいっても、春のタケノコ、夏の七夕、お洗濯用の竿に細工もの用の若木などなど。好きに切って下さいと村の人たちには開放してある。外来者からの奇襲に備えての防壁代わりにと、元からあった林の傍らに屋敷を建てたという順番なのだし、人が入ってくれた方が通路が出来て扱いも楽になる。
「お飾りって、じゃあ今作ったのも持ってくのか?」
 ひょこりと首を傾げる母御に、二人はぷるぷると首を横に振る。
「子供会のは昨日作ったんだよ?」
「そう。そっちのを飾るの。短冊も今日書くの。」
 説明している間にも、ツタさんとお手伝いさんとがお帽子やハンカチを持って来てくれて、
「晩のご飯には帰るから。」
 二人でバタバタ出掛けて行く。ほんのちょこっと前までは、急いで急いでと急かしてもとことんマイペースでのんびり屋さんだったのに、
「待ったぁ?」
「ん〜ん。」
「行こっ。」
「衣音、ちよちゃんは?」
「お飾りする広っぱの方。父さんが世話役で来てるから…。」
 子供たち同士の会話が聞こえたのも暫しの間で、すぐさま遠くへ駆けてゆくお元気さよ。家族よりも自分たちのお付き合いの方をどんどん優先するようになってゆく、その取っ掛かりのお年頃。急に静かになったお茶の間に"ちり〜ん"という風鈴の音が妙にくっきり鳴り響く。ツタさんはお茶でも淹れますねとそのまま台所へ向かい、膳の上のお飾りや短冊を大きめの紙箱へと収めつつ、ルフィは何かしら思い出してか くすすと笑った。
「?」
 縁側から"どうした?"と目顔で訊いたご亭主の緑の短髪が、庭の翠たちより浅い色味に陽を受けていて目映い。道着に包まれた幅のある頼もしい肩、厚みのある雄々しい胸板。だのに、かっちりと締まって見えるのは、バランスよく上背があるのと、ぴんと真っ直ぐに伸ばされた背条のせいだろう。此処での生活ももう6年目に入ったというのに、相も変わらず若々しくて颯爽としているゾロの雄姿に見とれたのも一瞬。
「あのな、去年までは毎年毎年せがまれたのに、今年は自分たちでちゃんと"こういうお話なんだよね"って、覚えてたんだ。」
 見事に主語と目的語がすっ飛ばされた言いようだったが、それがあの子たちのことであり、せがまれたのは"七夕"のお話のことだとあっさり知れて。だが、
「毎年毎年って、お前が話して聞かせてたのか?」
 ゾロとしては、そっちの方へ何かしら引っ掛かりがあるらしい。
「???」
 いきなり何を言い出すやらと、大きな眸を見開いてキョトンとするルフィだったが、ご亭主の心配も分からなくはない。七夕はこの和国独特の風習。此処よりずっと南国の、全く別の文化圏にあった島で生まれ育ったルフィにとっては、幼い頃から親しんでいた話ではなく、どこで身につけた話をどう語って聞かせたのやらと感じたからだが、
"…まあ、ツタさんがたいがいは傍らにいたろうしな。"
 そうそう目茶苦茶な話でもあるまいと、ややあって気を取り直す。そんなゾロの心持ちには当然気づかないまま、キョトンとしているルフィからの視線に、
「あ、いや。えっと…。お前はどこで聞いたんだ? 七夕の話。」
 いかにも取り繕ったという感じの言いようで話を振った旦那様には、ご夫婦のお湯飲みとビワの実を盛った鉢を運んで来たツタさんがこっそり微笑っていて。やわらかい柿色の果物に眸を輝かせた奥方は、手早く皮を剥いてもらった最初の1つを美味しそうに頬張ると、
「何言ってんだ。」
 手のひらに大きなタネをぷいと吹き出してから、
「ゾロに聞いたんだぞ? 船に乗ってた時に。」
 困った人だなぁと言いたげに、眉まで顰めて言い返す。
「………え?」
 意外や意外と、心底キョトンとして眸を見開いたゾロへ、
「覚えてないんだ。」
 今度はぷくうと頬を膨らませて、
「大好きなのに年に一度しか逢えないだなんて、俺だったらそんなの絶対ヤダって話したじゃんか。」
 それさえ覚えてないんかと、このまま行くと完全にへそを曲げそうだったが、

   「…1日の長さだって全然足りてないくらいなのに。」

 ぽそりと。ゾロの口からこぼれた一言。それを聞いたその途端に、
「そーだっ!」
 ルフィは見る見る、お顔をぴかーっと輝かせた。あの会話の折りにルフィが零した一言。毎日一緒に居たって全然足りてないのにと、そんな惚気を本人へと愚図るように言ってのけた可愛い恋人さんだった。(「
Milky Way」参照vv)
「なんだ、ゾロ。覚えてたんじゃんか。」
 自分が切なげに言った一言をきっちりと覚えていた彼へ、わざと惚けて見せたりしてさと…やや照れつつも、一気にご機嫌が直ってしまったルフィだ。そう。確かに、あの航海の最中に七夕の話をルフィに話したのは自分。だが、後にも先にも一度だけのことだったし、胸のすくような冒険の話だって時折細かいところが抜け落ちてることがある彼だってのに、そんなささやかな話をこんな後までしっかり覚えていようとは。
"…うっと。/////"
 ゾロとしては、そのことの方がよっぽど意外。全部のビワの皮を手早く剥いたツタさんは、ご夫婦の会話にお邪魔するのも何ですからと思ったか。目礼を一つ残すと、楚々と場から離れてしまっていて。涼やかな風が吹きそよぐ茶の間には、ご夫婦二人だけが取り残されてしまっている。思わぬ展開ではあったが、
「………へへvv /////
 照れ隠し半分に嬉しそうに笑っている奥方の、ちょっとばかし幼(いとけ)ない様子が何とも愛らしく、
「…そっか。覚えてたのか。」
 ゾロの側も、先程までの驚きを静めて穏やかに笑って見せる。小さなもの、瑣末なこと。でも、鮮やかに思い出せることって結構ある。他人には取るに足らないような会話であっても、当人には鮮烈で衝撃的な一言だったり、それで救われたり幸せになれたり。生死の境を分けるような、驚異的でとっぴんしゃんな冒険の狭間の、小さな小さな"凪"の中での会話。

    『ゾロだってヤだろう?』
    『一日がもっと長けりゃ良いのにって思うくらい、足りない。
     寝てる顔ももっと見てたいし、何てのか…とにかくもっともっと一緒でいたいから、
     全然足んねぇんだ。』

 そんな惚気を、そうと気づかず懸命に言いつのった幼いお顔まで思い出し、
"いや、そんなに変わっちゃあいないけどな。"
 深色の琥珀の瞳に柔らかそうな小鼻。ふかふかの頬は今もなめらかで骨張らず、小さな顎までするんと降りるラインは、小さなお嬢ちゃんと全く同じで愛らしい限り。真っ黒な髪を適当な長さに削いで無造作に流した髪形が、相変わらずによく映える童顔を、
「???」
 ひょこんと傾げる子供っぽい仕草へと、苦笑を向けるゾロであり。何だかよく分からないけれど、大好きな男臭いお顔に浮かんだ笑顔に釣られて笑い、
「こんな風にさ。」
「んん?」
「こんな風に、やっぱり一緒に居られてさ。」
 ルフィは膳の上、ビワの種を指先でちょんちょんと突つきつつ、そんな言葉を紡ぎ始める。
「ゾロは約束を破んなかった。ちゃんと大剣豪にもなったし、ずっとずっと一緒に居てくれるしさ。」
 仄かに頬を染める初々しさがまた愛らしくて、
「………。」
 ご亭主、ついつい言葉が出ない。そんなことにも気づかぬままに、
「七夕のお話はさ、一年に一度しか逢えないのを、我慢するお話だけどサ。」
 いかにも幸せそうな声でルフィは続けた。


    「凄げぇ我儘な俺の傍にずっとずっと居てくれるのだって、
     簡単なことじゃないと思うから。
     あの子たちと一緒に陸で暮らそうなって言ってくれてから、俺。
     ずっとずっとゾロんこと、前よりずっと、ただの"好き"よりずっと、
     一杯いっぱい大好きなんだぞ?」

 頬を真っ赤に染めて。でも、にぱーと口許を真横にほころばせて。凄っごい凄っごい幸せだもんと笑って見せる。そんな奥方の笑顔つきの告白に、
「…ルフィ。」
 こちらはこちらで………。


    "あああ、苦節ん年。
     この無茶苦茶坊やのとっぴんしゃんな冒険に振り回されつつも、
     最後までついて来てよかった〜〜〜vv"

  "………………ぅおいっ(怒っ)"

  あ、いやその。そんな風には思ってなくてだな。
(汗)

「そんな言いようすんのは、ま〜だ早いぞ?」
 ゾロはにっかりと悪戯っぽく笑って見せる。
「ふえ?」
 力強いお言葉に惚気の甘やかさが吹き払われたような気がして。おややと顔を上げたルフィだったが、
「大変なのは、まだまだこれから。坊主たちから完全に手も目も離せるようになるまで、これからが長いんだからな。」
 初夏の陽射しと翠を背景に、それは頼もしく笑ったご亭主へ、
「ふや…。/////
 ますます頬を染めた奥方だったりするのである。今宵の七夕を前に、こちらの恋人さんたちは、既にしっかりその絆を確かめ会えた模様。ようよう梅雨も明けたお空には、気持ちのいい青に染まった空気が一面に詰まっているようで。今夜は良いお星様が見られそうだねと、若いご夫婦、溌剌とした幸せの笑顔を向け合うのだった。………幾久しくお幸せにね♪



   〜Fine〜  03.7.5.〜7.6.


   *突発的に思いついたお話です。
    七夕って子供たちにはどんな行事なんだろと思いましてね。
    今時の子たちは笹って見たことあるのかな?
    夏の娯楽も増えたから、こんなささやかなもの、
    見向きもしないのかなとか思ってしまったんですよね。
    お話にせよ行事にせよ、伝えるのも大人の役目ですよね。
    面倒がらないで頑張りたいもんです。


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