Tropical Night  〜蜜月まで何マイル?

*この作品は『Tropical Heaven』をお持ち帰り下さった方に限り、
DLFとさせていただきます。(とゆか、オマケ篇ということで。)
(これ単独では話が分からないと思いますの。)
あと、もしももしも掲載いただく場合は
“R-12指定”という表示をお忘れなきように。
(お手数かけます・汗)
宜しかったら掲示板へ一言下さると嬉しいです。
(巻末に葉様からのサプライズ・プレゼントつきvv)





          1


 世界中の船乗りたちから“魔海”とも呼ばれている偉大なる航路“グランドライン”の真っ只中で、それはそれは大規模な低気圧と遭遇し、愛船ゴーイングメリー号から放り出され、仲間たちとはぐれる格好で絶海の孤島に漂着したルフィとゾロだったが、そんなどさくさにも冷静だったロビン嬢の打った手筈により、ほどなくして無事に仲間たちと合流することが出来た。


 浜辺に立ち込めた静かな夜陰に、不意に降り出した小雨のような音が時折沸き立つように聞こえてくるのは、実は頭上に葉を揺らすヤシの樹の、独特な木の葉擦れの音。そこへと、これも静かな細波の響きがさわさわと打ち寄せて。無音ではないが、なればこその穏やかで静かな夜である。亜熱帯の気候にあるのか、陽が落ちても気温はさして下がらない。といって、寝苦しいほど暑くもない、結構な環境の島である。自分たちは大嵐によって此処へ運ばれた身だが、水も食料も豊かでこうまで過ごしやすい環境でありながらも手つかずなままだった辺り、そういう方法でしか辿り着けないような位置にあるのだろう、恐らく。
「………。」
 そんなステキな天然リゾートに辿り着けた奇遇もまた、ウチの船長の運の強さの賜物とばかり、迎えに来たクルーたちはさっそく喜々として上陸し、低気圧の襲来で邪魔された、船長殿の生誕パーティーの準備に取り掛かった。仕込んであった料理の半分ほどを、嵐による大揺れに撹拌されてお釈迦にされたシェフ殿は、この島の軟水らしき泉水や新鮮な果実、生きのいい鮮魚という思いがけない良質の素材に大歓喜。早速にも新しいメニューを組み直す。
『軟水?』
『ああ。水の種類だよ。含まれてるミネラルの種類とかphバランス、イオンバランスとかってのかな。飲み口でも分かっただろうが、軟水の方が吸収が良いから料理全般に向いてんだな、これが。古い土壌から涌いた水は硬水な場合が多くて、長時間煮込む料理には打ってつけなんだが………って、解るか?』
 サンジの講釈について来れたのは、男衆たちの中ではチョッパーだけのようだった。ちなみに、コーヒーの微妙なほろ苦い味わいは軟水でなければ引き出せないのだそうで、18世紀になってやっと、新大陸での覇権を遅まきながらも得たにも関わらず、大英帝国イギリスでコーヒーがまるきり普及せず紅茶が爆発的に普及したのも、当地が硬水しか涌かない土地柄だったからだそうな。閑話休題
それはさておき。これがなくては始まらないからとそれだけは死守した肉料理と、此処でメニューに加えた魚の料理に、直前に寄港した港町で大量に仕入れたチョコレートや蜂蜜、生クリームなどなどをふんだんに使った、フルーツ一杯のスゥイーツやデザートの数々。これらはシェフからのプレゼントという意味合いも兼ねていて、さっそく大きなケーキと大きな骨付き肉にかぶりついた船長殿は、満面の笑顔でもって“ありがとう”と同義の“凄げぇ旨いっ!!”で応じて見せた。ナミとロビン嬢からの手縫いの新しいシャツ半ダースに、ウソップからの新しい釣竿“スコープ付きスーパー・バージョン”(意味があるのか、釣竿のスコープって/笑)、チョッパーからの傷用塗り薬と救急絆創膏一抱えのセット。それぞれにいかにもなプレゼントが次々に贈呈され、一番の理解者であると同時に一番の不器用者でこういう時にはいつも頭を悩ませている筈のゾロからは…なんと、暇を見ては少しずつ彫ったという、親指ほどの小さな魚…に見えるが実はイルカの木彫りのマスコットが贈られた。キーホルダーに出来るような金具もついていて、
『うわぁ〜、ゾロって結構器用だったんだ。』
『…結構は余計だよ。』
『そだぞ、ルフィ。最初のうちは指先傷だらけにして大変だった…むがむが。』
 恐らくは指導にあたったのだろう、弁護しかけたチョッパーのお口を塞いだ大きな手にはもう、その傷とやらは痕跡さえなかったから、相当早くから手掛け始めた彼だということではなかろうか。
「………。」
 美味しい料理と見事なデザート、大人組には取っときのお酒。どんな理由でも宴会になってしまう陽気な彼らにとって、大好きな船長の誕生日&無事な再会というお題目は大騒ぎをして祝うのに充分なテーマ。唄ったり踊ったり、この人数でよくもまあというほど大いに盛り上がり大いに騒いでの宴は宵から夜更けにまでなだれ込み、日付が変わる前には年少さんの二人ほどが睡魔に負けてまず沈没。それから段々と残りの面々も意識が曖昧になり、最も酒に強い女性陣たちが船へと寝に戻って行ったのが未明になりかかった頃合いだったか。騒ぎのせいだけではない、今日は大嵐との格闘も演じた彼らである。そこへの宴や美酒は結構効いたというところで、ベストコンディションならもう少しは保
ったかも。女性二人があちこちで沈没した男衆たちに毛布をかけて回り、それじゃあとGM号へ戻るべく、浜に着けていたボートを操って漕ぎ出して…幾刻か。
「………。」
 何だか目が冴えて、最初に運ばれた寝床代わりのマットの上でぱたんぱたんと寝返りを打っていたが、それでもどうにも寝付けなくって。むくっと身を起こすと、くるまっていた毛布を肩にかけたまま、辺りを見回し、
「………。」
 煌々と降りそそぐ月光を蒼白く反射している砂浜。夜目が利くせいで目映いほどに見やすい視界の中、ヤシの樹の根元に凭れて、胡座をかいて座ったまま眸を閉じている男の傍らへと足を運ぶ。彼にも毛布は掛けられてあったが、何しろ身を起こしているようなもの。床屋の散髪用のケープのように前から掛けられたらしきものが、今は膝までずり落ちている。白いシャツの胸板の上へ丸太のような腕を組んだままな上体が、月光に照らされて浮き上がって見えて、幅のある大きな肩の上、少しばかり前へと倒された首が窮屈そうだ。それで、という訳でもなかろうが、眉間には相変わらずの深い皺。何か小難しいことを考え込んだまま寝付いたようにも見えるが、
「………。」
 その正面へぺたんと座り込んで、厳然と男臭い顔を覗き込み、
「……………。」
 じーっとじーっと覗き込んでいると、ややあって。
「………どした。」
 声を掛けてくれる。それへと衒いなく、
「あんな、さっき目が覚めた。」
「眠れないのか?」
「うん。」
 毛布を肩に、こくりと頷く。大いにはしゃいだ、お酒もちょっぴり舐めたとあって、チョッパーとほぼ同時くらいにあっさり沈没したルフィだったのだが、こんな中途半端な時間にひょっこりと目が覚めてしまい、今度はなかなか寝付かれず、ううと唸った揚げ句に剣豪殿に助けを求めたという訳である。
「昼寝したからかな?」
「そうかもな。」
 首を俯
うつむけたままで応じて、静かにその切れ長の目を開けたゾロは、ゆっくり顔を上げると、正面に座り込んで月光に照らされた船長殿を見やる。帽子はお膝に、両の脚の間にぺたんと尻を落とした、どこか子供じみた座り方。小さな肩に引っかけた毛布が、まるで異国の装束であるトーガか大きめの上着を羽織っているようで。片方の肩からずり落ちかかった端を直してやろうとすると、伸ばされたその大ぶりな剣豪の手を小さな両手で捕まえる彼だ。
「…ルフィ?」
 手を上げたことで、毛布がすとんと滑り落ち、小さな肩が両方とも夜陰の中に露
あらわになる。丸く落ちた毛布の輪の中、真珠色の月光に濡れた小さな肢体は、
“………。”
 無口なせいもあってか、どこか…いつもの彼よりも心細げに見えた。剣豪殿の大きな手を掴まえた少年は、自分の懐ろ近くへその手を引き込み、手のひらを返させて満遍なく眺め回す。片方の手に乗せる格好で、もう一方の手の指先で何かを確かめるよう、なぞってゆくルフィで、その触れるか触れないかというむず痒い感触の目的は、ゾロにも何となく分かった。
「…言ったろ? 最初の頃だけだって。もう傷はないぞ?」
 プレゼントを彫るための慣れぬ細工作業で手を傷だらけにしていたというゾロ。だが、
「俺、全然気がつかなかった。」
 ズボンのベルト通しに留め具の輪を通して、身につけることにした可愛らしいマスコット。常識では不可能とされる鋼さえ刀で斬ることの出来る彼だが、それとは正反対なこまやかな集中と器用さを要求される“木工細工”という作業には、相当手古摺ったのだろうとあっさり想像もつく。だというのに、自分は丸きり気がつかないでいたというのが何だか…。
「…他でそういうこと、ないだろな。」
「んん?」
 顔を上げたルフィは、
「俺が知らないとこでゾロが傷ついてるとか。…俺、鈍感だし、無神経だからさ。」
 真摯な表情で言葉を継いだ。これは“どうでも良いこと”ではないから。どうでもいい人のことではないからだ。それへと、
「あのな…。」
 らしくもない細かいことを言い出す彼に、やや呆れたように何か言いかけたゾロは、だが、きゅうっと口許を尖らせたルフィの顔を見て、ため息をつくようにその大きな肩を落とした。
「ねぇよ、そんなこと。」
 言葉はぶっきらぼうだが、声音はうっとりとやさしく低められたそれ。そうと言い返すと、自分の手のひらの上の小さな手を掴み返す。
“そんな風に思わせた時点で、力不足だって事じゃねぇか。”
 この手は自分なんかを気遣いいたわるために使われる手ではない。そうと思うと何だかほろ苦くて、だが。言えば愚痴になるからその代わり、淑女のそれのように掲げて引き寄せた手の指の背へ、そっと唇を触れさせる。
「くすぐってぇって。」
 打って変わってくつくつと。破顔しつつ喉の奥に引っ掛けるような笑い方をするルフィだったが、自分の小ぶりな手で口許が隠れていたゾロが、そのままぐいっと腕を引っ張り、小さな体を引き寄せたのには不意を突かれて、
「…え?」
 転がり込んだ懐ろの中から見上げたのと同時に、そっと口許を塞がれた。やさしい口づけはゾロの温みと大好きな匂いの中、ルフィの中の何かをそっと紐解いてゆく。
「…ん。」
 角度を変えたその拍子に、うっすらと開いた唇の隙間へと滑り込んで。くちゅり・ちゅく…と濡れた音をわざと立てながら暖かで柔らかな口の中を犯すと、小さな手が胸元へとすがりついて来る。
「ぞ、ろ…。」
 やっと解放された時にはわずかに息が弾んでいて。とろんと潤みを増した眸へと目顔で“良いか?”と問うと、
「………。」
 返事の代わりに懐ろ深くへ顔を埋めてくる彼で。嫌だという素振りではない、含羞
はにかみの様子だと判るそれへ声を出さずに笑ったゾロは、腕の中に愛しい体を抱いたまま静かに立ち上がると、足音も立てずに木立ちの中へゆっくりと歩みを運んだのだった。



          2


 宴のメインとなる料理を担当するため、常のことながら自動的に今日の催しの責任者となったシェフ殿の厳命で、何度も何度も水汲みをさせられたせいですっかり覚えた泉までの道。腕に抱えた小さな温みは、やわらかな頬をこちらの胸板にくっつけて大人しくしていたが、辿り着いた場所を見回すと、
「…あ。」
 冴え冴えと静謐な帳
とばりの降りた広場の中央。銀の鏡のような泉の水面に映った月影に、小さな声を上げて見せる。昼間見た時には瑞々しい爽やかな緑が溢れていたのに、その色彩が夜陰に呑まれると、一転してただただ静かなばかりの気配が満ちた、閨ねやにも似た別な空間へと変わっている。そんな変化に気を取られている彼に小さく微笑し、肩に引っ掛けて来た毛布を片手で振ってバサッと広げると、適当な下生えの上へと敷いて。それから、もう片方の腕の中、自分の毛布にくるまったままだった少年をその上へ静かに横たえてやる。膝に乗せたままだった麦ワラ帽子をそっと取り上げて脇に避け、その傍らへ腰から外した刀を並べ、傍らへ寄り添うように腰を下ろし、赤ん坊の“おくるみ”のように少年を包んでいる毛布の重ねに手をかける。
「誰かが水飲みに来ないかな。」
「甕
かめや樽にたっぷり入ってたから、ここまでわざわざ来ねぇよ。」
 掠れさせるほどに低められた声での囁き合い。簡単にくるまれていた毛布を左右へよけると少年の体が現れて。温もりの中から少し涼しいしっとりとした夜気に晒されたのへか、かすかに肌を震わせたが、毛布の上へと散らした黒髪を大きな手で優しく梳かれて、自分の傍らに肘枕をついて寄り添うゾロの顔を見やると、甘えるようにふんわりと笑う。
「…なあ。」
「んん?」
「上、脱いでよ。」
 ねだられて“ああ”と頷き、身を起こす。胡座半分という座り方なまま、胸板の前で腕を交差させ、腹巻きごと白いシャツを引き上げてかなぐるように脱ぎ去ると、夜陰の中、月光を浴びて陰影のついた、やや粗削りな肉置きが浮かび上がり、
「………。」
 ルフィは言葉を無くして見惚れてしまう。
「どした?」
「ん、カッコいいなって。」
 その見事な半裸に見とれて言葉がないのだと言われて、一瞬眸を見開いたものの、
「何言ってる。」
 ゾロは取り合わないような言いようをして苦笑を見せた。だが、
「ホントだって。」
 同じ男だからこそ惚れ惚れとするこの素晴らしい肢体。至高の野望を極めるためにと、日々鍛え抜かれ、研ぎ澄まされているこの身体
カラダとこの精神ココロと。それらを置く場所に自分の傍らを選んでくれたことが、例えようもなく嬉しくなる。
「………。」
 青い月光に濡れたように縁取られたその雄々しい体躯は、いつもの船倉の薄暗い部屋で見るより何倍も見ごたえがあって。だが、同時に何故だか…少々妖冶かもとも思った。陽光の下ではただただ健康的で壮強で、頼もしいばかりな筈のその裸形が、何故だかどこか淫靡にも見えて。
「…ん。」
 折り重なって来た身体の質感に気づいて、見栄えへとうっとり酔っていた眸を伏せる。逞しい腕と頼もしくてやさしい芳香とにくるみ込まれるように抱かれながら重なった唇の感触は温かく、再び腔内を舌を犯されるままになりながら、全身の肌目の下、不意に血流の温度が跳ね上がったような気がして。
「ん、…はぁ、んん。」
 やや乱暴に解放された口許から、思わずのものとして随分つやのある声が洩れたものだから。我ながら驚いてはっとしたように眸を開けたのと、ゾロがこちらのおとがい深くへ顔を埋めたのとが同時で。ほんの刹那のすれ違いざま、薄く笑っていた口許だけが見えたような気がした。これも手慣れたというのか、どこをどう辿れば甘い声を奏でる彼であるのか、どこをくすぐれば、どこを貪
むさぼれば、乱れ酔いしれる彼であるのか、既に熟知し尽くしているゾロであり。耳の下、皮膚の薄い辺りを、ざらりと舐め上げてから、おとがいのラインに沿って唇で吸いつきながらくすぐってゆくと、
「ん、ャあっ、んん。」
 肩を窄めるようにしてルフィは身を震わせる。甘ったるい香りが体温に乗って鼻先へと届き、昼間の溌剌とお元気な顔がベールに包まれて、代わりに別な顔が覗く頃合いを男に告げる。丸きりの別人と化す訳ではないが、それでもどこか…臆病そうだったり力なく虚ろだったりと、本人も気づいてはいないのだろう様々な顔が容易に垣間見えるようになる。理性という箍
たがが外れてのことには違いないのだが、あれほどまでに陽気で快活、芯の太い豪胆な少年であるものが、何とも言えない切なげな顔になり、すがりつくような甘くて細い声を上げるのだから、その両方ともを知っているゾロでさえ、時に…本当に同一人物であるのだろうかと不思議を感じるほど。
「ぁあっ、や、あ…。」
 なめらかな肌目を辿る唇が、首筋から鎖骨の合わせ、胸元へと降りてゆき、そんな間にも手慣れた様子でシャツをはだけられ、背に回された腕へと上体をふわっと抱えられて腕から抜き取られている。胸の小さな尖りを捏ねられたり、耳朶の縁を甘咬みされたりするその拍子に、事が運んでしまうため、何の抵抗も出来ないまま、気がつけば着ていたものが実にあっさりと剥がされていたりする。無人島だとはいえ、少し離れた浜辺には仲間たちが寝入っているのに。それを思うと“かあっ”と頬や身の裡
うちが熱くなるのだが、
「ん、ぞろ…、や…ぁ…。」
 じわりと仄かに痛痒く、微熱とともに甘い陶酔を招くような。肌の柔らかな弱いところへ容赦なく吸いつかれては、緊張も羞恥もたちまち吐息の中へと蕩けていってしまうから。
「あ、ああ、やっ、んん…。」
 苦しげに眉を寄せ、息を弾ませ始める少年の甘やかな媚態にあって、ゾロの感覚もやがては炙られて、いつもの夜のように、とろとろと蕩けてゆくのである。


 どんな嵐からも守りたいのに、
 触れることさえ我慢してでも大切にしたいのに、
 その反面、
 全てを奪って掻き抱きたい、全てを壊して取り込みたい。
 そんな嗜虐的な想いも沸き立つから不思議。
 禁忌と欲望、安穏と激情。
 どちらもホントで、どちらも面憎い“真意”。
 奔放なままに振る舞わせて、やりたいこと何でも掻き寄せてやりたいのに、
 誰にも何にも触れさせず、鎖につないで閉じ込めたい。
 羽根ほどの負担さえ与えないよう、やさしく包んでやりたいのに、
 鼓動も吐息も一つになるほど、より近くへにじり寄りたい。
 高ぶった激情を一緒に昇華させることで、より密になって確かめ合いたい。


「ゾロ。」
 切れ切れとなった急くような息の下から、ルフィが声をかけてきた。
「んん?」
「好きだからな、ずっと。」
 永遠を絶対を軽々と口にする。そんな重大な誓約を、これまで幾つ、交わして来たことか。
「ああ、俺もだよ。」
 口唇の片端を吊り上げるような笑い方をし、
「ちゃんと、海賊王になるまで、ずっと傍から離れねぇから、覚悟しとくんだな。」
「………。」
 返事はなかったが、それは…じわりと下腹から這い上がって来た熱い感覚に意識を捕らわれていたから。
「あ、ああ、んん、やぁ…。はぁ、ん…。」
 解放をねだって意識が揺さぶられる。胸元辺りに抱え込んだ格好の、愛しい男の頼もしい肩や短な髪に指を立て、押しやりたいのだか、抱きすくめたいのだか、声のトーンが上がるにつれて、指にこもる力も自然と強くなり、
「やぁ…ん、…。ああ、は…んっ。」
 与えられる律動の早さにそって、上がる睦声の切れ切れの呼吸も急くように早まって。

  「…あ、ああっぁあ…っ!」

 やがては目も眩むような奈落へ、二人して落ちてゆくその時を迎えて、愛惜しい相手を、抱きすくめ抱きしめられて、夢の中へと逃げてゆく意識が我知らず暗転してゆく。


“…ルフィ。”
 腕の中、大切なものとしてそぉっと抱えた幼い寝顔。くったり疲れて、だが、ともすれば無心なそれにも見える穏やかな寝顔に、儀式のようにそっと口付けて、彼の剣士はそっと誓った。死が二人を分かちに来たって追い払い、何があっても傍らにいてやるからな、と。




  〜Fine〜  02.5.16.


  *今週は月曜のup以降、
   他所様の船長BD企画のハシゴをし続けていたのですが、
   いやはや、どちら様も素晴らしいvv
   トレヴィアン、ハラショー、ブオーノでございまして、
   自分とこの更新もすっかり忘れて、遊び歩いておったのじゃ。
おいおい
   ほんに、船長ファンには堪らない五月でございますvv
   …で、
   どちら様も結構HOTなお話しをupなさっておいでで。
   それに比べてウチのは
   ちょぉっと“ぬるい”んじゃないかい?とか思いましてね
(笑)
   わざわざ“蜜月〜”設定にしたにしては…ねぇ?
   とゆ訳で、もう少しだけ書き足してみた次第でございます。
   お持ち下さった方々には却ってお手間をおかけするやも知れませんので、
   こっそりとUPさせていただきましたが…いかがなもんでましょ?

  *とて。
   『rough』の葉サマより、
   それはそれは艶っぽいイメージイラストを頂戴してしまいましたvv
   
こちらにUPさせていただきましたので、
   宜しければ、是非ともご堪能くださいませですvv


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