月夜見 hide-and-seek  〜月夜に躍る・]T

               〜ゾロ誕記念DLF作品




  ――― 遠く近く聞こえるのは、単調で緩慢な潮騒の音。


 この土地に住んでいる者には、塩っからいばっかな風とワンセットで“あって当たり前”の環境音だから、いくら叙情的なBGMでも特に感慨なんてなかった筈なのにな。時折、灯台とは別口のサーチライトの光芒が横切るせいで、あんまり星の見えない平板な色合いの夜空の下。一応の警戒をしていた筈が、気がつくと…波の音へと半分ほども意識が奪われている自分に気がつく。気もそぞろってのはこういうのを言うのかもな。何せ、今、俺が手に入れようとしているものは、日頃やってる“仕事”として請け負ったものじゃあなかったから。

  “ったく、面倒なことを〜〜〜。”

 そうそう暇じゃあねぇんだ、俺様はよ。これでも引っ切りなしっていう依頼を片っ端から片付けるのに追われてて、だからあんな守銭奴な女を仲介に選ぶんじゃなかったと、またぞろ不快なことを思い出しちまったりもするのだが。昨夜だって、隣町の金満家の屋敷に乗り込み、ご大層なタイムロックとやらに守られてた…そこんチの成金親父そっくりっていう、趣味の悪いにも程があんぞな漬物石くらいな大きさの黄金の置物を、まんまと持ち出し、駅前のでっかい花時計のど真ん中へと展示してやったばかり。何でもそれって、裏金にと ある筋から上納された金槐で作ったっていう大ふざけな代物らしいんだが。それを作った職人が、間違えて見本のレプリカを収めてしまったらしくって。相手は裏世界のドンとの噂も高い実力者。バレたら何をされるやら…と、泣き泣き依頼されたって話だったそうだが。そんな事情なんてもんに、俺は一切関心はねぇ。それなりのルートを通って届いたところの、怪しい背景や思惑はないと判定された依頼だってのなら、後は頼まれた通りをやってのけるだけ。扱った品の“価値”の3倍額を報酬とし、感情は殺して仕事を遂行するってだけの、ただの泥棒にすぎないからよ。………ただまあ、何を代替にしたとしても結構重さが違ったはずの、レプリカと本物の見分けがつかねぇような大間抜け野郎なら、こうまで自分にそっくりな像だってのに、人目についても誰のものかは判らないだろうとか言い出しそうな気がしてな。自分の持ち物が盗まれました、はい、この、たっくさんの不正隠匿資産が詰まった金庫からです…とは、届け出ることが出来ない以上、あれだって値打ちはあろう自慢の彫像、どこまで白ァ切れるかを試してやりたくなっただけ。侵入経路には足跡だの、金庫の取っ手にはインクのついた手で触っちまった手の型だの、わざとらしいにもほどがある“誰ぞが忍び込んで此処をいじりましたよ”痕跡を山ほど残して来てやったしよ。金庫内の他のあれやこれやを他所へと移すには、かなりの時間が掛かりそうな充実ぶりだったしな。あからさまな“盗難現場”の惨状と、でも、それなりの筋へ届けたら国税局だって黙ってなかろうから自分がどうなるかってジレンマと、どっちに軍配が上がるんだろか。放っておいても、家政婦や何やが近所で“此処だけの話”を色々喋ってたそうだから、まあ時間の問題ではあろうけどもな。

  ――― おっと。話が逸れちまったな。

 あんたとも何度か逢ってっから、もう思い出せたんじゃねぇのか? そう。俺はこの町を拠点にあちこちに出没しては依頼された“盗み”を働く小悪党。同一犯の犯行らしいとまでは何とか解析出来たらしい、俺が関わった一連の事件を扱う記者連中が、正体の判んねぇ俺へと勝手につけた仇名は“怪盗・大剣豪”っていうんだが、正体はただのケチなこそ泥だ。そりゃあまあ、難攻不落なんて言われてたらしい大仰な構えの金庫だの最新鋭とかいう防犯装置だの、これまでに色々破って来たし、それでもこうやって“正体不明”なまんま、平然と娑婆を闊歩してられるってことは、そういうのを苦にもせず蹴倒し続けて来た、負けなしって証しなんだろうけれど。だからって大いに宣伝することでもなかろうからよ、こちとら必要以上の騒動は起こしたかねぇ、仕事がねぇ時は出来ることなら ひっそりとしててぇんだがなぁ。
『こんのクソマリモ野郎がっ! 俺んチのお宝、どこやりやがったっ!』
『………はあ?』
 晩飯を食いに行った先、用向きがなくとも勝手がいいからってついつい毎日足を運んでる場末のグリルへと、何の身構えもないままに向かったら。そこのグル眉・似非フェミニスト・オーナーが、いきなりそんな風に人を怒鳴りつけやがってよ。陽のあるうちは軽食を出す喫茶グリル、晩になったら酒肴中心のスナックへと変貌するその境目、一旦閉店する時間帯を見越して行ったには違いなかったが、それにしても…店内が異様に静まり返っており、仕込みを手伝うバイトの兄ちゃんたちもいなかったんで、何かあったには違いないみたいだなと踏みはしたけど。それにしたって、ドアから入ってすぐにも ぶんっとご自慢の蹴撃が飛んで来たのは穏やかじゃねぇ。
『誰が何をどうしただと?』
 聞き捨てならない順番で、事情
ワケの判らん怒号を浴びせられたような気がしたんだがと、こっちも目許を眇めて訊き返せば、
『ウチのお宝だよ、お宝っ。』
 長っとろくも伸ばした金髪の前髪の陰から、恨めしげな目で睨みつけやがってよ。大切にしているお宝をまんまと盗まれたんだ、お前も天下の怪盗だったら、とっとと捜し出して来やがれと。………何だか支離滅裂な言いようをしやがってよ。
『…一体誰に何を盗まれたって?』
 何だか先程の啖呵では、この俺様が盗っていったような言い方をしてなかったか? それが今度は、探して来やがれだと? 日頃も時々、俺には理解不明な言動の多い奴だがよ、今日はまた輪をかけて酷くねぇかと、どうにも怪訝そうな顔をしていたら、
『だから。あんたに盗まれたようなもんだって言いたいサンジくんなんじゃないの?』
 くすすと癇に障るような笑い方をしながら、カウンターの脇、オフィスのドア横の通用口から現れたのが、ずんと寒くなって来たってのに相変わらず寒そうなカッコでいやがる守銭奴女で。太腿丸出しってのは、いくら着てるのがお前であってもルフィの教育上よくないから辞めんかと、あれほど言っても聞かねぇこいつには、
『ナミさ〜〜〜んvv』
 非難の一言もない、セクハラ差別野郎がガラリと態度を変えやがったのへと、いなすような笑い方をしてから、
『此処まで言やぁ判るでしょ? 何を盗られたサンジくんなのか。』
 意味深に笑ってから、はいこれと渡されたのが無地のはがき大の角封筒。表にも裏にも何にも書いてはなかったが、ヒントが入ってるからと言われて中に入ってたカードを取り出せば。

  『読めんぞ、こりゃ。』

 よくぞ、その場で開けました。向かっ腹が立ったまま、出てった表で開封していたならば、カッコ悪いことにも戻って来て解読を頼む運びになっていただろから。やっぱりはがきくらいの大きさの、ファンシーなイラスト入りのカードが入っており、そこに綴ってあったのは………一体どこの国の古代文字だかというほどにも、意匠化されきってた難解な記号文字。誰の字かって? だから、ここまで話が運べば…判るだろうがよ、あんたにも。

  『何言ってやがんだ。こんなかわいい字くらい、読めんでどうすんだ。』

 こんな薄情な奴に、何でまたウチのルフィは…なんてブツブツと、実の兄上が解読してくれた一文は、やはりあの、時々油断も隙もない小僧っ子の残した“暗号”だったらしくって。

  《 なぞなぞだぞ。贈り物を失くした場所は?》

 ………書き置きでもなけりゃあヒントでもないような気がするのは、俺だけだろうか。
『何が“盗まれた”んだかよ。』
 これって奴が自主的にどっかに隠れたから探せって意味の、言ってみりゃ“挑戦状”じゃねぇかと言ってやると、
『ヒントがあっただけでもありがたいと思いな。』
 何でこんな無愛想で朴念仁な気の利かない奴に、俺の大事なルフィってばこうまで懐いてやがるんだかなぁ。せめて真っ当な仕事をしてる奴ならば、この際だから男女の別は問わないで交際をOKしてやっちゃうのになぁ…なんてことまで言い出しやがったほどに。今夜はいつにも増して会話にならない相手へ、こっちもがっくしと肩を落として見切りをつけると。後はナミに任せる格好にて、深まり行く秋の気配も濃い宵の中へと、飛び出してた俺だった。






            ◇



 今夜も月のきれいな晩だなぁ。あんなあんな? 俺がゾロと初めて出逢った晩も、そりゃあ月が綺麗な晩だったんだぜ? スナックのボーイというかマスコットというか、まだまだ子供に近い年だったのに働いてたサンジが帰って来るのが待ち切れなくて。遅い時間だったけどお迎えにって表に出てたらサ、大通りの方から警察の車が路地にまで突っ込んで来てサ。何か捕り物の最中だったらしくて、狭い道幅にいっぱいな車がしゃにむに飛び込んで来たって感じだったから。ブレーキの音もしなかったし“これはもうダメだ”って思っちゃって、体も堅まっちゃってたら、どっからか風みたいな勢いで飛んで来た何かが、俺ンこと掻っ攫ってくれて。我に返ったら…まだ若い兄ちゃんが、俺を軽々と抱っこしてて、凄げぇ鮮やかに飛び上がって車から庇ってくれてた。そん時に落っことしてったでっかいルビーを返さなきゃって思ってたらさ、腕の達者な“大剣豪”なんていう怪盗が活躍しだしてさ。物騒な武器や火薬なんかは使わないで、一体いつの間に?ってスマートなやり方で金庫や倉庫を破ってしまう。しかもたった一人でだ。今時のコンピューターだのハイテクだのにも頼ってなくて、正に身ひとつで挑戦してやっつけちまう。力自慢の警備員たちが追って来たらば、仕方がないからって立ち合うんだが、そん時に使うのがどうやら刀らしいからって、それで“大剣豪”なんて仇名が付いたんだけどもさ。どんな窮地からも易々と脱出出来るし、威張りくさってやがる役人とか汚いやり口で太りやがった金持ちとかしか狙わないから、すっかりと英雄、えっと、何てったっけ、ああそうそう“義賊”って呼ばれてもいた。俺はその“大剣豪”があの時の兄ちゃんに間違いないって思ったよ。そいでもって追っかけて追っかけて、やっとのこと、弟子にしてもらえたんだけどもサ。何てのか、ゾロってば他人のこと、あんまり信じてなくて。正体がバレたら速攻で手配されて逮捕されちゃう、危険な立場だからしょうがないっていう順番じゃなく、何か…負い目でもあんのかな、人と関わらないようにって殊更に構えてる気配があってサ。でも、そんなんヤダったから。俺、凄げぇ頑張って、せめてこっち向けって。俺ンことくらい関心持てって、煩いくらいまとわりついてやったらサ。何てのかな、少しずつだけど、構ってくれるようになって来たし、そうなるとあんなカッコいいゾロだから、何かこっちも凄げぇ嬉しいvv あ、知らないんだ。ゾロって凄げぇ凄げぇカッコいいんだからな♪ 実用に即して よ〜くよく鍛えた体つきはサ、山みたいなとかゴリラみたいなっていうような、いかにもムクムクってした筋肉質の大男じゃあないんだけれど。バランスが取れてる肢体は、いっそモデルばりに綺麗なのかも。…いや、骨っぽい びしょうねんの睫毛バシバシのお耽美なのとか、妙なハードゲイ方面のっていうんじゃなくってさ。
(笑) 要らない肉をきれいに絞ってるから鋼みたいに強かで逞しくって。素人が下手な殴り方したら、殴った方が指の骨とか折りかねないほど、腕も脚も背中も腹もそりゃあ堅ったいんだぜぇ? あと、顔だってニヒルで男臭くて、精悍? そうそう、そんな雰囲気バリバリでカッコいいしさ〜vv 目付きは悪いし無愛想だし、負けが込んでて寝不足のギャングみたいな顔だなんて、サンジは酷でぇこと言うけどサ、鷹みたいな鋭い目許と、にやりっていう太々しい笑い方が似合う口許。一端の男としての貫禄っつーの? それなりの蓄積がないと、ああまで重厚に決まらないっての♪ まるでミーハーみたいなノリで大好きだったゾロ。時々はサ、俺ンこと子供扱いして、仕事に連れてってくれなかったりもすんだけど。

  ――― もしかして俺って、ゾロには鬱陶しい存在なんかなぁ?

 今夜くらいは付き合ってほしかったからさ。仕事のつなぎをやってるナミさんに言って、依頼を入れないでってお願いしといた。そうなると、どっか他所で羽伸ばしとかするのかな? いやいや、ゾロは毎日のように“バラティエ”にご飯食べに来るから大丈夫。つか、俺がアパートの方に行ってちゃ、謎解きの意味ないしな。ゾロはあんまり頭を使うの得意じゃないみたいだけど、ちゃんと考えて探してくれなきゃ意味が、ないし、って。わぁ〜〜〜、何かいい匂いするぞ。そういや腹減ったよなぁ。サンジが持たせてくれた弁当もとっくに喰っちまったしさ。日付を越すようなら諦めてとっとと帰って来いって言われてたけど、まだ…9時だしなぁ。

  「…る〜ふぃ〜。出て来い。」

  ………うっ、ゾロの声じゃんかよ。やっと来やがったなvv でもでも、そんな簡単には出てってやんないんだからな。結構寒いのに俺がどんだけ待ってたか、思い知らせてやらなきゃだから、

  「早く出て来んと、せっかくの肉まんが冷めるぞ〜〜〜。」

  う〜〜〜〜〜〜。ゾロの卑怯者〜〜〜〜〜。

  「………カレーまんは?」
  「あるから出て来な。」



 って、瞬殺ですな、こりゃ。
(爆笑)






            ◇



 港の埠頭に居並んでいた倉庫のうちのどれかだってのは何とか判った。

  《 なぞなぞだぞ。贈り物を失くした場所は?》

 贈り物は“gift”で失くすは“lost”だから、アナグラムとかいう文字の並べ直し暗号のつもりなら、場所ってこともあって“loft”だろうと目星をつけて。ところでこの町は、今でこそ観光色も強まってるが、そもそもは流通の拠点、世界中から集まっては散って行く山ほどの貨物の中継地でしかなかったほどだから、倉庫と言われても、町中に港に、山の手にだって倉庫群は新旧いっぱい。あの“バラティエ”から一番近場の、西の港の倉庫群にしたっても、2桁の番号が振ってあるほどに沢山あるから。こりゃしょうがねぇなと、まずは携帯電話へと電話をかける。マナーモードにしてやがるんだろうが、こっちの技能を舐めてもらっちゃあ困る。バイブ機能の唸る音ってのは、結構離れてても聞こえる特殊な響きだからな。潮騒の音に紛れそうになるそれを辿り、あんまり奥向きの倉庫じゃなかろうと目串を差しての探査を続ければ、一番近い位置へと出たから。そこからは簡単で、石灰熱で温められるケースに入れて来た、サンジ謹製の肉まんの数々をほ〜れほれと匂いが届くように振り回してやれば、あっと言う間に反応が出た…という訳で。
「何だよお前。この寒空に隠れんぼかよ。」
 相変わらずガキだよな〜と笑ってやれば、顔の形が変わるほどもの肉まんを頬張ったままで、
「違わいっ!」
 器用な奴だ、ちゃんと聞こえる滑舌だよ。こういう奴なら、両手が塞がってて口に何か咥えた状態でも、ちゃんとした会話が出来たりすんだろな。とはいえ、勢い込み過ぎてげほごほと噎せてしまったのへ、これもサンジから持たされた、ハチミツとライムのホットドリンクを差し出せば。ふうふうと大仰なくらいに吹いて冷ましながら、こくこくと飲んで、ぷはーっと大きな息をつき、
「だからさ。今夜は特別な晩じゃんか。」
「…特別?」
 こいつめ、妙なところで例えば“記念日”とか振り回す奴だからな。何の日だって? お前と俺とが初めて逢った日か? そんなもん、俺の方から確認した頃にはもう、俺の追っかけやっとったろに。違う? …あ、そか。そうじゃなくてのお初の方か? もっとチビだったお前を助けてやったとかいう? けど、あれは…そうだよな、もっと寒い、冬場だったよな。じゃあ、えっとえっと、サンジの店に初めて出入りした日…なんてお前は知らないか。最初に一緒に仕事した日か? それも違うんか? う〜〜〜〜、何の日だよ、一向に出て来ねぇぞ? 若ボケかとか言って笑ってんじゃねぇよ。俺だって、大事な日なら覚えてるんだ。お前の誕生日だとか、初めて顔合わせて喋ったっつか、喧しい追っかけがお前だって判った日とか、頼んでもねぇのに助っ人に来やがった晩とか。………何だよ、妙な顔しやがって。何か入ってたのか? その肉まんに。

  ――― ゾロの馬鹿。

 ああ? 何だよ、その言いようはよ。…って〜な。何投げてやがる。でこに当たっただろうがよっ。………これって、ピアスか? 今つけてんのと同じだな。え? 違う? 特殊なICタグが入ってて、携帯との会話が出来る? 周囲の静電気で充電しもって機能するってタイプだから、つけてるだけなら警報機や何やには引っ掛からないし、骨伝導式だから、小さい声でもちゃんと通じる? 何でこんなもん、

  ――― だから。今日はゾロの誕生日だからだっ。

 …………………………あ、そかそか。そうだったか。誕生日な、うんうん。それでか…ふ〜ん。それにしたって、馬っ鹿だなぁ。俺が今日に限って“バラティエ”に行かなかったらどうしてたよ。サンジが言うには朝っぱらから出掛けたまんまだったったていうじゃないか。風邪とか引いたらどうしてたよ。ほれ、こっち来い。子供じゃねぇ? 馬鹿、セメントに直座りは冷えんだろがよ。お前っくらいの重さじゃ、膝に乗せても堪えねぇっての。それにお前平熱高いからよ、こっちも温ったかいんだって。お、お、暴れんじゃねぇよ、大人しく…。

  ――― うう。//////////

      やぁっと静かになりやがった。

      いきなり○スするなんて、ずっこい。

      なんで伏せ字なんだ。
      むちゃくちゃ いかがわしいこと、したみてぇじゃんかよ。

 いいから大人しくしてな。そういや、こんな時間帯に外で逢ってるのは久々かもな。夜中の仕事に呼んでくれねぇ? 当たり前だろが、こんな寒くなって来たのによ。ずっこい? なんでそういう言い方されっかな。第一、お前には下調べとか何だとか、昼間のうちにしか出来ねぇフォローを結構いっぱい任せてんだろうがよ。そんなじゃ詰まんねぇ? 俺がやってんのは、誰ぞの鼻を明かして回るだけの“お遊び”じゃねぇっての。完遂すること優先なんだから、時々は無茶な手だって打つし、その場その場で攻め方だってどんどん変更しちまうし。そういう気まぐれで突発的なやりようへ、引っ張り回す訳んにゃいかんだろうがよ。………何だよ、そんな神妙そうな顔しやがってよ。…んん?


  ―――なぁ、こんなまで誰かのことが気になって気になって、
      判らないってのがじりじりするほど
      口惜しかったり辛かったりするのって、俺、初めてだからサ。

      ほほぉ、そりゃあ奇遇だな。

      何だよ、それ。

      俺も同じこと、考えてたからだ。

      う……………。/////////



 これはやっぱり、天下の大怪盗さんに、ハートを盗まれた坊やだったみたいです。もう少しで真夜中の、夜陰が垂れ込める海辺の天穹をゆくは、蒼い光をまとった速足の流れ星。頬っぺが赤いのは寒いからだかんな、寒いからくっついてんだかんなと、妙に言い訳を並べつつ、ぎゅむぎゅむと抱きついて来る小さな温もりへと苦笑をしつつ。大怪盗さんの方でも、何だか…困ったなぁと言いたげなお顔、隠し切れずにいらしたようですよ?




  〜Fine〜  05.11.13.〜11.15.


  *お誕生日には欠かせなくなってる“怪盗ゾロ”さんですが。
   この人、ここんトコ真っ当な盗みを全然してないような気が…。
   犯罪行為なんだから、手を染めないに越したことはないのかも知れませんが、
   でもなぁ…う〜ん。
(笑)

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