月夜見 puppy's tail 〜その6
 

  “閑話”


 澄んだ空気の中に、軽やかな小鳥の囀る声が響く。朝のご挨拶を交わしているのか、幾つもの囀りが重なって、ロンドみたいに繰り返し聞こえてくるけれど。随分と遠いところからのものならしくて、輪郭を辿ろうとした途端、どこかへ飛び立ったか遠くなる。

  "………。"

 都心に比べると少しばかり標高もあり、何より緑も多い土地だからか、盛夏に入ってもさほど蒸し蒸しとはしないで、いたって過ごしやすい気候が続いているが、その分、朝晩、殊に明け方なぞは、油断していると肌寒い日もある。
「………。」
 何だか中途半端な時間帯に"ぽかり"と目が覚めてしまったようだ。カーテンの向こうは白々と明るいらしくて、だが、まだ陽は昇っていないような早朝。
「うにゃい…。」
 以前はこのくらいの時間帯に ぱきーっっと目が覚めていたんだのに。リードを咥わえて来て、ゾロのこと擽くすぐって"お散歩に行こうよう"って起こしてたのに。赤ちゃんを身ごもって以降、何故だか随分と"お寝坊さん"になってしまったルフィであり、薄く薄く眸を開けかかったものの、
「ふに…。」
 鼻の頭が少し、つんとして寒いと気がつくと。暖かいところを求めて薄手の羽毛のお布団の中、うにうにと もぐり込み、いい匂いのする懐ろへとその鼻先を擦りつけた。ベッドの中で寄り添っていたのは、少ぉし堅くて、でも頼もしい、広い広い胸板。お揃いのパジャマのボタンとボタンの間にお鼻を突っ込むと、
「………。」
 いつの間にか、大きな手が頭をもぞもぞと撫でてくれてる。起こしちゃったかな。
「…みゅ〜。」
 顔を上げようとするけど。ごめんねとか おはようとか言いたくて、それにゾロのお顔が見たくって、上を向きたくなるんだけれど。そんな気持ちをほろほろと蕩かすように、温かいケープみたいなのが意識をくるみ始めるから。
「……………。」
 小さな奥様、再び くうくうと夢の世界へ攫われてしまったご様子である。



            ◇



 それまではずっと、仔犬の方の姿でお元気に目覚めていたものが、海
カイくんを身ごもって以降は、ずっと少年の姿のままで目覚めを迎えているルフィ。それもまた"お寝坊さん"になったことへ大きく関与しているらしく、どうやら坊やを生んでからの彼は、それまでの"シェルティの姿の方が基本"だった体から"人間の方が基本"な体になったようだ。

  『生まれた子供は最初の1年間ずっと人の方の姿だって言ってたろう?
   それに合わせてのことなのかもしれないな。』

 犬と人間の成長の度合いはその寿命の差から大層な楽さがあるのだが、殊に最初の一年が最も違う。犬は6週間目で乳歯が生えそろって離乳が始まり、2カ月くらい経つと自我が芽生え始めて外界や他の生き物への対応が出来るようになって、もう"親離れ"出来るという。(これは人だと3歳児くらい。)そして、半年で永久歯が生えそろい、家庭という集団の中での"自分の位置"が把握出来るようになる。(人だと9歳児くらいか。)こんな調子で"犬の寿命"なら最初の1年で人の18歳まで一気に育つが、彼らの寿命は人と同じ。よって、犬の世界でいつまでも乳児でいるのは非常に大変だが、そこはさすが精霊さんで。赤ちゃんがせめて何とか自分で動けるようになるまでは、親も子も人間の側で居やすいようになっているのだろう。そんな風だからこそ、特殊な身でありながらも…助力だって得にくかったろうに、生きながらえて来られたのだろうと思われる…。




  「ゾロ? 何書いてんだ?」

 少しばかり遅い朝ごはんが済んで幾刻か。すっかり明るくなった居間のテーブルにて、割としっかりした作りのノートを開いている彼に気づいて、ツタさんの後片付けを手伝っていたキッチンの方から、パタパタとスリッパを鳴らして駆けて来た、小さな伴侶が小首を傾げる。作家だったゾロの父が少しずつ教えたらしく、学校には通ったことのないルフィながら字の読み書きは習得済みだそうで、日本語どころか簡単な英会話までこなせる彼だとか。
「ん? お前のことを書いた日記、みたいなもんかな。」
 盛夏のそれとは到底思えないくらい爽やかな涼風がさやさやとそよぎ込む、広々としたリビングの窓際のソファーに腰掛けていたゾロの、すぐ隣りへ ぽふんと飛び込むようにして座ると、そのまま果敢にも長い脚のお膝によじ登り、懐ろの中へともぐり込んで来る。そうして、
「見して見してvv
 ノートに顔がくっつきそうなほどまで身を乗り出して、開いた帳面を覗こうとする彼の、いかにも子供っぽい無遠慮な様子に苦笑しつつ、だが、隠すつもりはご亭主の側にも元からなくて。こちらは身を起こすと、見やすいようにとペンを走らせていた手をどけてやり、無難な言い方を選んで返事を返してやったゾロだった。不思議な存在である彼らの不思議な色々。自分の父が彼の父上から話を聞いて書き留めておいたように、人に非ざる彼らのあれこれ、先々で何かあった時や次世代の子供らが困らぬように、一応は書き残しておいた方がいいと思ってのこと。
「ほら。ルフィがいきなり熱を出して焦ったことがあったろう?」
 あれはそう、初めての発情期
(さかり)を迎えた晩でしたねvv(『内緒だよ…?』参照) 微妙に人と違う彼らだから、どういう対処をすれば良いのか、薬を与えても良いものか。ただでさえ医学的に素人なのに、何のヒントもないようではただただ困るばかりで。父のノートが見つかったことで自分も相当助かったため、今後のためにどんな小さなことでも書き留めておくようにしたゾロであるらしいのだが、

  「あ、分かった。"観察日記"だな?」

 ノートから顔を上げ、にぱーっと屈託なく笑ったお顔で言うルフィであり…って。アサガオやヒマワリじゃないんだからさ。他に言いようがあるでしょうが。当然のこと、ゾロも"おいおい"という顔になり、
「そういう言い方は止
しな。」
 懐ろの中、至近から見上げて来た無邪気なお顔へ"メッ"という顔をして見せる。こんな細かいことへまでというのは、それこそ気の回し過ぎなのかもしれないが、いかにもな言いようは、そのまま…見下ろし目線で彼のことを捉えているようだからと。さかりや交配、その他の様々な表現にあっては、これで結構気を遣っているゾロである。とはいうものの、

  "それとも"人扱い"する方が傲慢なのだろうか?"

 あらたまった"特別視"もまた、逆な方向から意識させる"区別"にならないかと。また、他の生き物に比較して果たして人間がどれほどの"お偉い格"なのかと、そういうところまで考えたなら際限が無く。そんな風にまで思うことがあるくらいだから、相当に行き届いていて。だがだが、
「ん、分かった。」
 生意気言って叱られたとでも思ったか、きゅう〜んと眉を下げて"ごめんなさい"のお顔になるルフィは、本当に可愛いものだから、
「あ、いや…。」
 そこまで叱っちゃあいないんだよと、いきなり言葉を濁し、
「???」
 きゅう?と。ますます愛らしく…変化
へんげした時の、ちっちゃなシェルティの姿をそのまま彷彿とさせるかのように、ひょこりと小首を傾げて見せる幼い奥方の仕草にあっては、
「えっとだな…。/////
 言葉に詰まり、判断力が停止し、
「?」
 ほんの目の前…どころか、腕の中にいる愛おしい子を、
「…っ、…あやや。ゾロ? どした?」
 ついつい がばちょと抱き締めてしまう、案外と押しに弱い、元・剣道全日本チャンピオンがいたりするのである。お〜い、しっかりしろ、ご亭主っ!
(笑)









            ◇



 さて。世の生き物たちには、主に春先、それから秋口といった"季節の変わり目"という頃合いに雄と雌とが愛を語らい合う"発情期"というものがあって、子孫繁栄に本能が駆り立てられる時期というものの周期、環境の穏やかな時期に重なるようにとメリハリはっきりしてもいる。これがないのは、哺乳類では人間とウサギやネズミくらいなものなのだそうで。………まあね。天然自然の環境下で暮らさなくなって幾星霜。寿命だってとんでもなく延びた、極めて常識外れの生き物ですからね、人間は。いや、だから、そういう話をしたいんじゃなくって。他は知りませんが、人間の最も身近な動物、犬や猫の発情期って、実は雌がコントロールしているのだそうですね。雌がその気になるのが春と秋。その頃に独特なフェロモンの匂いを雌が放つのへ雄が刺激され、そうして"愛の季節"へ突入するのだそうで。よって、雄は…何となれば"いつでもいらっさいvv"という、言わば"一年中発情期状態"だってことならしい。あと、これはめっきり余談だが、男が浮気するのはより多く自分のDNAを残したいという遺伝子の働きのせいであり、女が浮気した男よりも相手の女に憎しみを抱くのも、自分のDNAだけを自分が認めた優秀な
男のDNAと添わせて残したいという、やはり遺伝子の働きからなのだそうで。本能なんぞに振り回されず、もちっと理性的になろうよと思うのは、自然の摂理に逆らっていることなのでしょうか? 閑話休題それはさておき




  「…ルフィ、大丈夫か?」

 いくら…お互いの意志や気持ちを十分に確かめ合っており、もうもう猛烈に君がほしい、好いたらしいあなたからの熱情が嬉しいとばかり、真っ向から向かい合い、真っ直ぐ求め合う、真実無二の愛の炎が常に激しく燃え盛ってる二人だとはいえ。
おいおい 片やはまだまだお子様の域を完全に出てはいない幼い身、そして片やは、こんないい年齢、いい体格になるまで、こういう方面へ縁がないままに来てしまった、極めつけに野暮な武骨男と来て。こらこら 愛情と情熱は時として逆方向に突っ走りやすく、どんなに研ぎ澄まされた理性であっても、本能の暴走には敵わない時がある。受け入れる側の幼さを重々分かってはいても、なればこそ、まずは いたわってやらねばならないと理解してはいても。リードする側の経験値不足がついつい…狂おしさに猛った激流に押し負かされて、自制の堰せきを守り切れず。結果、相手への愛しさの苛烈さ加減というやつを、なかなか制御出来ないでいたりもする。………回りくどいですかね。早い話が、
「うにゃい…。」
 コトをいたした翌朝に、小さな奥方が起き上がれないような日がたまにある。これを"上手くできている"というのもナンではあるが、コトに費やされる運動量だかエナジーだか、男性と女性だと女性の方が断然少ないのだそうで。男性は100m全力疾走くらいの体力を使うのに対して、女性はせいぜい小走り10mくらいなのだとか。(いや、こういうのも"ケース・バイ・ケース"なんでしょうけれど。)これは行為時の役割分担
からくる話ではなく、興奮して体内の活性化が起こって…という活力燃焼システム次元の話であって、ともすれば女性の艶っぽい声や悩ましげな媚態だけでも燃え上がってしまえるくらいだから、男という性はよっぽど"可燃物"で出来ているらしい。こらこら ………で、何が言いたいかというと、彼らの場合、受け止める側も男の子なので、消費の程は女性が受け止めるより大変だということで。そこへ加えて"幼い坊や"なものだから…。こういう書き方をすると何やら"犯罪"めいてしまいそうになるほど、大変の"二乗"とか"三乗"とかになりかねず、
「だいじょぶ。ちょこっとダルいだけ。」
 朝一番という、常の彼なら最もお元気な時間帯だというのに、くったりと力ない様子にて、だのに"心配しないで"なんて何とか微笑って見せようとするルフィであり。基本体力の格差の問題もあるがそれよりも、回復力万全な筈の子供が前日の疲労が抜け切らないなんてのは、確かにとんでもないことだし、仮にもフィットネスクラブで"インストラクター"なんてものをやってる人なのだからして、ゾロには何がどうしてこうなっているのか、きっちり全部分かっていて。起き上がれないままな枕の上から、それでも気丈に微笑って見せる幼妻に、図体の大きなご亭主はただただ、
『面目次第もございません』
という済まなさそうなお顔になってしまい、真白きシーツの上、その大きな手でルフィの丸ぁるいおでこや猫っ毛を心配そうにさわさわと撫でてやるばかり。それでなくたって、今の奥方には坊やへの"授乳"という大事なお務めがあるのに、栄養を与える母体がこんなに消耗していてどうしますかと、先日とうとうツタさんからやんわりと叱られた、情けないご亭主でもあって。
(笑)
「…そんなお顔しないでよ。」
 ルフィは小さな手を伸ばして来ると、大好きなゾロの頬をそっと撫でた。少女のそれと大差ないような自分のふかふかな肌と違い、鞣
なめした革みたいな堅さと張りがある、いかにも大人の男の人の肌。深色の瞳を宿した切れ上がった目許や、少し頬骨の立った男臭いお顔にたいそう似合った肌であり、面立ちひとつ、肌という部位ひとつ取ってもこんなにも大人で頼もしい人が、そのがっちりとした肩を落として、こうまでしょぼしょぼと後悔しちゃうくらい、自分を制御出来ないだなんて。
「手加減出来ないっていうの、ゾロが物凄く俺んこと好きだっていう証拠なんだもん。」
 そうと思えば、もうもう嬉しくてしょうがないルフィであるらしい。でしょ?なんて、目許を細めて微笑ってくれたりする彼の健気さにあっては、もう既にベッドの傍らに跪
ひざまづいているのだが、その上で額を床に打ちつけて、額突ぬかづいたって構わないと思ってしまうらしい、こちら相変わらず"体育会系"のご亭主で。真っ直ぐにこちらを見やる、そんな苦悩のお顔がまた、
"うっと…。/////"
 ルフィにしてみれば、切なくて愛しくて堪
たまらない。同じ男だもの、彼の豪快で力強い気性や、自信に満ちて大人びた、余裕ある態度には素直に憧れるし、ただただ気の利かないばっかりな武骨そうな人に見えて、でも実は…優しく気遣ってくれる、行き届いたところが一杯あって。日頃は落ち着き払って見えるけど、あの時だって…ルフィの容態が悪化した時、父上が残したノートを探していた彼は、鍵の開かない机を迷う事なく叩き壊そうとしてくれた。冷静だなんてとんでもないと、そうまで取りのぼせてしまうほど、自分を大事に思ってくれる人。
「俺、早く大人になんなきゃだよね。」
 動機がこれってどうよと思われるものの、いかにも子供らしいことへと決意を固めた様子のルフィへ、
「…やっぱ、無理させてるんだろうな。」
 ご亭主の方は"ごめんなさいモード"がなかなか解けずにいるご様子。思い返せば初めてのあの晩も、いくら彼の側から切なげに求められ請われたからとはいえ、頑として手を出さずにいられもした筈。微熱や悪心という苦しげな病状を長引かせることになったかも知れないとは言え、数日過ごせばけろりと引いたもの。だのに、愛しさに負けてしまい、こんな早くに彼の"成長"へ火を点け開封してしまった。そして…そのままずるずると、さかりの時期でなければ子を宿すこともないらしいと分かってもなお、熱欲の赴くままに抱擁を続けている自分の犯している罪はやはり大きいのだなと、その自制心のなさを振り返ると、零れる溜息も一際大きくなるゾロであるらしい。だがだが、
「違うもんっ!」
 ついのものとして ぽつりと零れたらしきゾロの呟きに、ルフィはともすればムキになって語気を荒くした。
「ルフィ?」
 辛い身だろう当の本人が何をそんなに…と、却ってキョトンとするゾロへ、
「だって…無理なんかしてなくて…あの…。/////
 今度は何故だか"かぁ〜〜〜っ"と赤くなった坊やであって。仄かに萎えて頼りなげでいたお顔が朱に染まると、そうですね…何と言えばいいのでしょうか。思わぬ発熱に弱々しくなっていて、いつものお元気な時には気配さえない筈の、何とも言えない儚げな色香が目許や表情に増すから…不思議なもの。しかも、
「だってさ、俺…何んにも出来なくて。その、ゾロに、してもらってばっかでサ。」
 しどろもどろになって一体何を言い出すかと思いきや、
「俺…も、何かをして、ゾロに気持ちよくなってほしいけどサ。何か、いつも何がなんだか分からなくなっちゃうから、だから…。」
「ちょ、ちょっと待て。」
 何を言い出さんとしている彼なのか。ようやく…何となく判って来て、ついつい室内を見回してしまったご亭主だった。広々とした寝室は2階の奥向きにあって、窓からの涼しい風を通すためにとドアが開け放たれてある。彼らの身の回りを世話して下さっているツタさんは、立ち聞きなんてお行儀の悪いことをする人ではないが、逆に…こんな会話をお聞かせするのが、何だか恥ずかしいというか忍びなかったゾロであるらしくて、
「あのな、ルフィ。」
 少し遠く、台所辺りからの食器の音がするのを確かめてから、ほうっと胸を撫で下ろして、さて。
「………。」
 何と言ってやれば良いのやらと、ちょいと言葉に困った。ルフィがその健気さの中で決意したところの、

  『早く大人にならなくちゃ』

 これって、翌日に響いたりしない、体力のある大人にならなくちゃという意味だけではなく、どうやら…彼と対等にあれやこれやとお相手出来る身にならなくちゃという意味でもあったらしい。………う〜ん、それって。ねぇ?
"…何が言いたい。/////"
 いえ別に。ただ、こんな坊やが"頑張るぞ"と思うだなんて、一体どんな夜を過ごしてんだかと。どんな風に"手取り足取り"頑張っているのかな〜と、思ってしまっただけですが。
"ここでそれを暴露したら、この話、一気に"R−12"行きだぞ。"
 もう既に怪しいって。
(笑) それに、知らないの? ウチには"R−15"のお部屋もあるんだもんね…って、威張ってどうする自分。そうじゃなくってだな。
「…あのな、ルフィ。」
 こほんと一つ、ちょいとばかし わざとらしい空咳をしてから。ゾロは再び、愛する奥方の髪やおでこを撫でてやると、
「お前は…だ。その、何にもしなくて良いんだよ?」
 何でわざわざこんなことを言わなきゃならないんだろうかと、顔がかっかと熱くなって来そうになるのを何とか堪
こらえつつ、ご亭主、頑張って言葉を続ける。
「どうして?」
 体を重ねるまでの間柄になっていながら、だがだが、何も知らないままな幼い奥方。なればこそ、考え違いや勘違いをしているようなら、それを正すのは自分の務め。今回の場合は"勘違い"と言い切れる事象かどうか、少々…その、なんだ、微妙なところだが。
(笑)
「何か出来たら、その…却って俺が複雑だからだ。」
 おいおい、お兄さん。思ったよりパニくってますね、もしかして。一向に意味が分からないらしく、
「???」
 きゅう?と。枕の上にて小首を傾げる幼(いとけ)ない奥方に、困ったような苦笑を向けつつ、

   "う〜ん。これって男の勝手な言い分なんだろな。"

 というか、オジさんの惚気にしか聞こえませんけれど。
(笑) 何も知らない無垢なところが良いだなんて、何か知ってちゃ複雑だなんて、むっつり加減もここに極まれりですぜ? 清廉潔白、朴訥で不器用で真っ直ぐで。だから…何にも知らない、晩生おくての純情男。このご亭主、そんな野暮天だとばかり、筆者までもが思っていたのだけれど。誰に習うこともなく、相手への愛情と要求とから、自然に身につき学ぶものってのはあるらしい。今は今はとりあえず、奥方をいたわってあんまり無理はさせぬこと。限度を守って、やさしい睦み。………よろしいですか? それではお大事にvv





  〜Fine〜  03.6.30.


  *ささやかな話ではなく、ちょっと"した"話かも?
おいおい
   見たまま天然 vs 見かけによらず晩生の"純情"対決は、
   果たしてどちらに軍配が上がるのか。
こらこら
   油断すると"ぷち・えっち"なお話になりかねないので、
   これで結構、ギリギリのところというのを考え考え書いてます。
   でもなぁ。"天上の海〜"の方とは違って、
   こっちのお二人さんは、きっちりと"そういう"間柄だしなぁ。
   ルフィの年齢設定も、微妙に高校一年生…くらいにしてはいるんだけれど、
   犬になった時の姿が"シェルティ"ちゃんですものねぇ〜vv
   恐らく"敗因"はそこにあるのではないかと。
(苦笑)


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