手をつないで春まで歩こう


“如来様には お見通しvv”




クリスマスからまだ半月少々なのだが、
それでも、あれほど沸いた年末や
厳粛な、それでいて晴ればれと照れつつ(?)
向かい合って“おめでとう”を言い合った元旦も過ぎての、

 「もう半月過ぎちゃったんだねぇ。」

コタツにあたってテレビを観つつ、
大阪の戎神社での年初めのお祭り“十日戎”を前に行われるという恒例神事、
朝っぱらからダイナミックな走りで境内を疾走する福男選びの駆けっことやらへ、
もうか、早いなぁなんて感慨深げになっておいでのブッダ様。
世間様でもさすがにそろそろお正月気分も抜けて来ており、
それでいて、今年になって初めて会う人が
まだ幾たりかはいるがため、
おめでとうございますというご挨拶がまだまだ聞かれなくもないという微妙な頃合いで。

 “いやいや、それはさすがに…。”

ですかね、やはり。(苦笑)
只今 絶賛バカンス中なこともあり、
宗旨的にもお立場的にも
欧米風に“はっぴー・にゅう・いやあ!”と大騒ぎしたって特に問題はなかった、
こちら最聖のお二人も、
せっかく日本にいるのだからと、
昨年同様、それなりの迎春準備を整え、
静かに過ごすことで
年越し年明けの情緒を楽しまれたようで。
豆と根菜中心という偏りようではあったが、
おせち料理も用意したし、
大みそかの晩には
近所のお寺まで出向いて除夜の鐘をつき、
元旦には餅を焼いて
澄まし仕立てのお雑煮も作って食べた。
知己たちから届いた年賀状を楽しみ、
テレビで中継されてるような
大御所は避けたけど、
それなりのにぎわいで華やいでいた
近場の神社へ初詣でにも出掛けたし、
そうそう今年は
書き初めなんてのもしたっけねと、
ほんの2週間ほどの間に手掛けた
あれこれを思い出しているところへ、

 「たっだいまぁ〜♪」

それは軽快な足音が
二階まで駆け上がって来、
おやと、
それへ気づいて顔を上げた
こちらの反応さえ
間に合わなんだほどの大急ぎ。
たかたったと
スニーカの靴音が玄関へ駆け込んでくる。
言うまでもなく、
当家のもう一人の家人のご帰還で、

 「お帰り、イエス。」

出迎えにと立って行こうとしかかる
こちらの所作を玄関から見やって、
切れ長の目許を細め、朗らかに笑ったまま
“いいからいいから”との両手掛かり
こちらを押し止めるような
仕草をして見せる神の子様は、
駅前の商店街から戻って来たところ。
といっても、
彼が一人でお買い物に出たのではなくて、
いつもの如く 二人一緒に出掛けたものの、

 『あ、しまった。』

帰り道にて
ブッダがうっかり買い忘れた
今日のお買い得を思い出し、
その小麦粉とブナしめじとを
買い足しに引き返してくれたのであり。
不意に立ち止まり、
来た道を振り返る素振りを見せた
如来様からそれを訊き、

 『いいよ、任せてvv』

そりゃあ気安く引き受け、
回れ右したイエス様。
そんなの悪いし、
何なら一緒に引き返していいのではと
引き留め掛かったブッダへは、

 『ダメ、今日も随分と寒いよ?』

ちゃんとマフラーもしてるし
着込んで来てもいるけれど、
それでも少し強い風が頻繁に吹いており。
お喋りしつつの帰途のうちも、
ひゃあと何度か首をすくめていたの、
しっかと見ていたイエスだったようで。

 『風邪引いたらどうするの。』
 『あのねぇ…。』

そこはお互い様じゃあないかと
食い下がったものの、
自分には風邪は寄らないものと、
いつもの文言であっさり言い返され。

 『それに、
  私は鹿さんたちへの用心も要らないから、
  大急ぎで走って往復できるしね。』

 『あ…。』

そのまま“じゃあね”と
元来たほうへ駆けてってしまった
フットワークの軽やかさよ。

 “私がらみじゃあないことへは、
  存外とお尻が重いときもあるのになぁ。”

ex,お部屋のお片付けとかでしょうか?(笑)

 「えっと、
  小麦粉は薄力粉の1キロのほう、
  ブナしめじは
  お徳用パックのほう、だよね?」

 「うん、ありがとね。」

間違えて買って来ては何にもならぬ、
なので
スーパーの顔馴染みのパートさんに
確認しちゃったと。
幼い子供が
ちゃんと工夫したんだよと報告するよな
お言いようをするのへ、
商品を一応は確かめてから、
助かったよとブッダも感謝の笑みを向け。
それぞれ収納したついで、
コタツのほうへ向かうイエスと
入れ違いになりながら、
温かいミルクティーを淹れて差し上げる。
ダウンジャケットを脱ぐと、
いそいそとコタツへ足を入れる様子へも

 “そんなに寒かったのに
  私に代わって
  引き返してくれたなんてねvv////////”

私だってそのくらいはこらえも利くのに…と
ムキになったり
もどかしがったりするのではなく。
大切にされていて嬉しいvvと感じてしまい、
そんな お惚気が
含羞みの笑みつきで胸のうちへ浮かぶ。
ほんの最近になってやっと身についた、
余裕というか落ち着きというかだけれども、

 “…まあ、安定には違いないのかな?”

イエスを
何にも替え難いほど好きだと自覚して、
立場上 問題かも知れぬ“それ”を、
無理から秘さずともいいのだと、
他ならぬイエス本人から
“だって私もそうなんだもの”という
大威張りの告白つきで諭されて。

  やだ、うそ、ホントに?
  それって嬉しいvv と

想う人から想われている喜びに
舞い上がったものの、
慣れない恋情に浮足立ってもいて。
触れられただけで飛び上がったり、
はたまた勝手に疑心暗鬼におちいったり、
イエスには
随分と辛いことばかり押しつけてたと思うし、

 “いくら博愛の人だからとはいえ…。”

よくも投げ出さず見限らず、
傍に居続けてくれたなと、
今だからこそ、そんなところへも想いが至り、
しみじみと感謝したくもなる
ブッダだったりするようで。

 「はい、お待たせ。//////////」

寒かったでしょ、
ありがとねという感謝も込めて、
殊の外 丁寧に淹れたミルクティー。
こたつまで運んで
どうぞとイエスの前へと差し出せば、

 「わあ、ありがとーvv」

わぁいとお顔がほころぶのが、
これまた胸へ染み入るほど嬉しい。
口元を尖らせ、ふうふうと冷ましつつ、
最初の一口を
おっかなびっくりで飲むのは、
相変わらずに猫舌だからで。
口元や顎にはお髭もたくわえた
一端の大人だというに、
それらがしっくりと馴染む、
男臭い精悍な面立ちをしてもいるというに。
自分好みの甘さなのへと気がついて、
嬉しいなぁと殊更に笑みを濃くするのがまた、
せっかくの凛々しさを薄めるにも関わらず、

 “あああ いいお顔だなぁvv”と

こちらもまた嬉しくてたまらず、
甘いものを咬みしめたよに
破顔しているのだから世話はなく。

 「何 観てたの?」
 「え? えと、わくわくワイドだよ。」

お昼のニュースが始まるまでの
場つなぎワイドショーのようなもの。
イエスがすぐ戻るだろうからと、
待ってる間に眺めていただけで、
特にいつも見ているというほどの
番組でもなくて、

 「こういうのも
  そろそろお正月特集でも
  なくなってくるよね。」

 「そうだね。」

 「でも、ニュースでは、
  新年ならではの
  大寒準備の話とか時々出てくるよね。」

 「うん。」

 「昨日も、かきもち作りの話と、
  今時分の竹の皮で
  火繩を作る話とか聞いたしね。」

他愛のない話が続いただけ。なのに、

 「……………いえす。」

ふと、ブッダが
“ちょっといいかい?”的な
お声を掛けてきて、

 「?? なぁに?」

屈託のないお返事をした
イエスだったにもかかわらず、

 「キミ、
  もしかして何か隠しごとしてなぁい?」

 「……え?」


微妙な何かに気がついたように
ブッダの手放しの笑顔が
いつの間にか やや翳っている。
いやそこまで大仰なものではないのだが、
さらさらと流れていたせせらぎに、
小さな笹舟が流れて来たので、
ついつい追うような視線を向けたというか。
他愛のないものながら、
ついつい注意が向いたものがあったというか。
大したものじゃなかろと思うからこそ、
こうして訊いたんだよと、
それは穏やかなお顔で問うた如来様だったが、

 「な、………なに何なに、
  どうしてそんなこと訊くの?」

え?と、そちらも一瞬、
一旦停止した笑顔が、
やや引きつりつつ
無理から繕ったようなそれへ
構築され直すあたり、

 “ホント、
  キミって隠しごとが下手だもんね。”

あまりに判りやすい慌てっぷりも、
嘘偽りはいけないと説く、
最聖ならではの素地からか。
頼もしいほど男らしい顔もお素敵だが、
一転して落ち着きがなくなってしまった判りやすさも、
これはこれで微笑ましいと。
そんなヨシュア様の素朴さ純朴さへ
ほのぼのしかかったものの、

 “…えっとぉ。//////////”

雲上の天界にて、
この自分への思慕を
二千年紀も隠し通してた
イエスでもあったという
凄まじいほど恥ずかしい
例外事例を思い起こした如来様。
これもまた ずば抜けて聡明であるがゆえ、
他でもない自分自身で気づいてしまい、
そんなセルフつっ込みが
出来てしまう身が恨めしい…と
こそりと口許をうにむに咬みしめておれば、

 「〜〜〜何で判ったの?」

イエスがさっさと降参してくれたため、
何とはなく
それに救われていたりして。(苦笑)
ブッダとしては決して
カマをかけた訳じゃあなかったけれど、

 頑張って途惚け続ければ、
 言い抜け切れたかも知れぬのに、と

そういう素直さへ新たな苦笑が洩れもして。

 「何でと言うか…。」

もしかして三角座りをしているイエスなのか、
すぐ手前が少し高くなってる
コタツ布団なのも微笑ましいなと感じつつ、

 「場がもたないのが
  落ち着けないみたいに、
  矢継ぎ早に話しかけてくるなんて。
  そんなの
  キミらしくなかったからだよ。」

意地悪は無しよと、
思ったままを答えて差し上げる。
そうと言われても
思い当たりはなかったものか、
やはり素直に
“え?”と小首を傾げるイエスだったけれど、

 「話すことが無いならないで、
  黙ってテレビを一緒に観てた。
  視線が合ったら
  そのまま“ふふー”って
  微笑ってくれてた。
  なのに今日はさっきから、
  やたらと話しかけてくるし、
  そういや落ち着きないし。」

 「ううう…。//////」

そうかそんなに挙動不審だったかなんて、
ややうなだれて
真面目に反省するのが また可愛い。
うなだれたことで
耳元や頬へと降りて来た髪を、
どれと手を延べて
耳朶の上まで掻き上げてやり、

 「さ、種明かししたんだから、
  キミも話して?」

 「ううう〜〜。///////」

それもまた
おかしな理屈だと知らん顔していいのにね。
苦手なタマリンドのスープを
出された時みたく、
断るという選択はなしと、
いかにも酸っぱそうな顔になるところがまた、
ブッダには可笑しいやら可愛らしいやら。
ああでも、隠そうとしたということは、
彼にとっては深刻な事案かもしれないから。
何を言い出しても
笑ってはいけないと肝に命じて、

 「………。」

言おうか言うまいか、
まだちょっと逡巡しているの、
根気よく待っていようと
構えて…いるまでもないほどのすぐにも、

 「あのね? 
  私、キミに内緒で
  勝手なことをしちゃったの。」

とうとうお膝を抱えたものか、
顎先を盛り上がってた
コタツ布団にちょんと埋め。
全部をくっきりはっきり
聞かれたくないですとの構えを取って、
それでもぼしょぼしょと語り始める。

 「勝手なこと?」
 「…うん。」

問い返されただけで、
薄い肩をひやっとすぼめるものだから。
キョトンとして見せただけのお顔
それでも素早く和ませて笑って、
怒ってないよとの意思表示をして見せる。
上目遣いになる可愛さを
“狡いなぁ”と思いつつ、
先を促せば、

 「あのね、さっき商店街へ戻ったら、
  婦人会の奥様がたに呼び止められて。」

ここでとうとう視線を合わせなくなり、

 「この週末に婦人会でお茶会をしますが
  よければご一緒しませんかって、
  キミへ伝えてほしいって言われてサ。」

モショモショがモゾモゾという、
ますます歯切れの悪い言いようになり。
しかも、口許自体を
コタツ布団へ押し付けてしまったものだから、
最後のほうは
さしものブッダでも聞き取りにくく。

 「…それって、
  イエスも一緒に行っていい
  お茶会だったと思うけど?」

きっと日頃の井戸端会議の
延長戦のようなものに違いなく。
ブッダだけが誘われたのへ
つい拗ねたのかなと、
そんな風に推察したブッダのお言いようへ、

 「違うの。」

そういう背景もちゃんと拾ったのだろう
“ん〜ん”と
かぶりを振って見せたヨシュア様。
もうすっかりと、
大好きなご主人様から叱られている
ダックスフントくんのような
お顔と態度になったまま、

 「…私、
  それがどんなお茶会なのかまで
  考えなかったの。
  そいでね、
  ブッダは週末に、
  予定があるから伺えませんて
  言っちゃったの。」

 「………おや。」

明かしてしまったからには
もう怖いものはなしとばかり、
勢いづいて開き直ってしまったものか。

 「だって…だってさ、
  寒椿を観に行くって言ってたでしょう?
  そりゃあ、
  それを週末にとまで
  煮詰めてはなかったけれどもサ」

叱られるのを覚悟していた消沈ぶりから、
一転、ボク間違ってませんものという、
主張を始めるところがまた

 “…………かぁわいいなぁ、もうvv”

ムキになってのこととはいえ、
きりりと目を据えてしまったところなぞ、
見ようによっちゃあ
ブッダをメロメロにしてしまう
精悍なイケメン顔に近いというに。
それらの芯となっているものがものなだけに、
開き直ってる大人げのなさが、
今のブッダには
ただただ可愛いと思えてならずで。

 「…♪」
 「………うう。」

照れ隠しの八つ当たりとはいえ、
ブッダを相手に
咬みつくような態度を取るなんて
順番がおかしいと。
そこはやっぱりイエスとて、
すぐにも気がつくものだったし、
咬みつかれているブッダ本人が
それは優しく微笑っているものだから、
居たたまれなさも
当社比 147%くらいに
跳ね上がってしまったらしく。

 「う〜〜〜。/////////」

コタツ布団へ顔を突っ伏し、
そこへうにむに
おでこや頬を擦りつけてしまうイエスなのへ、

 「いえす。」

自己嫌悪も過ぎると毒だ。
ましてや、愛しいお人の困っている姿なんて、
こちらにだって得なぞないので。
よいしょとコタツから出て腰を上げ、
少々行儀は悪いが
速さを優先しての膝立ちでにじり寄り、

 「ほら。私、怒ってないでしょう。」

だから顔を上げてよと、
間近に寄って声を掛けたが、
それでも“いやいや”と
かぶりを振るものだから。
かすかに溜息をついてから、
薄い肩の上、
前へと流れる濃色の髪との隙間に
わずかに見えてた
イエスの耳へとお顔を寄せて……


  「……。/////////」
  「…っ☆/////////」


不意打ちのキスを落とされたことか、
それとも耳なんて
意外なところへだったからか。
うひゃあっと、肩を跳ね上げ驚いたものの、


  「……あ。////////」


こちらの反応へ、
さすがに今度はブッダが赤くなったが。
そんなお顔への反応は、
それこそずっとずっと
“愛しの君が大事vv”と
培って来たきねづかですもの、
イエスが放っておきはしない。
わあと飛び退きかけたのへ、
盾のように体の前で構えてた腕を捕まえ、
そのまま ぐいと引き寄せて。


  「キミからキスして来たんだからね。」
  「う……、うん。////////」


  何がどうとか訊くのは野暮よ。
  愛しい君の甘い匂いのする身を引き寄せ、
  やんわりとまぶたを降ろす所作にて
  説き伏せて。
  小首を斜めに傾げたまんま、
  愛らしくも麗しく、
  世に並ぶ者なき賢き君へ、
  敬愛を込めての口づけを捧げて。
  甘い香りと一緒に
  豊かでつややかな髪がこぼれるのへと
  一緒に包まれながら、
  あとは…二人だけのやさしい内緒vv




   〜Fine〜   15.01.10.(〜01.18.)


たまにはブッダ様の側が余裕のお話をと思ったんですが。(笑)
つか、大したことないネタでしたのに、
書くのにこんなに間がかかっているのが何ともはや。
そんなせいでお話もずるずる長くなってしまいました。(とほほん)
お仕事が忙しいのはしょうがないけど風邪引きは想定外でしたしね。
PCもへそ曲げたままだし、個人的にも……う〜ん。
ががが、頑張るぞ。


ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv

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