手をつないで春まで歩こう
“寒もひとしおの頃合いなれど…”
今年は暖冬だと誰かが言ってたそうで。
それにしてはその入り口から凄まじい豪雪や吹雪という寒さが襲ったし、
時折 息継ぎのようないいお日和も訪のうたが、
クリスマスや三が日は ずんと冷え込んだし、
「大寒っていうのが成程って思えるほど、今って物凄く寒いものねぇ。」
コタツ布団に肩までつかり、
ううう〜〜っと震える振りをして見せるイエスなのへ、
クスクス微笑いつつも頷いたブッダが、
「日本では、節分前後が一番寒いそうだしね。」
何とか寒波といろいろ言うけど、
特別な低気圧だの寒気団だのが来なくとも、
この時期は底冷えして当たり前なんだってと、
松田さんから聞いたらしいお説をおすそ分けしてくれる。
ほんのついさっき淹れてくれたミルクティーは、
意識してだろか紅茶の風味が心持ち濃くて。
油断すると とろとろ眠くなりそな怠惰な気分をそおと叱咤し支えてくれるよう。
“何をさせても、
ツボというかコツというかを手際良く掴んじゃうんだよねvv”
かつては王子として生まれ、
世界を制す覇王たる相をしていると周囲から期待されつつも。
世にあふれる哀しきことに眸を留めては、憂いてばかりいたという慈悲深き人で。
想像を絶する苦行を幾つも体験しただけでは収まらず、
“聖人となっても、果敢にあれこれやりたがるしねぇ。”
どんな苦境にあった人へも理解を寄せ、
導きの手を延べられるように…らしいのだが。
彼ほどに深き寛容の心を持つ人なれば、
わざわざ同じ想いを体感せずとも
その慈愛の笑み一つでくるみ込んであげられようにと、
思えてならないイエスであり。
“だってサ…。////////”
すぐ傍の斜め横におわす彼の横顔を ちらと盗み見し、
そのまま口許をうにむにとたわめさせてしまうのは、
これ以上はない至福をじわりと甘く感じたから。
ふくよかな相好から滲む まろやかな笑みや、
ちょいと背条を張った説法のとき以外の
それは柔らかで響きのいいお声は、
いろいろあった末に天界へと迎えられたイエスの
すっかりと疲弊しきっていた心を、それはそれは温かく癒してくれたし。
その慈愛があまりに深かったものだから、
光の存在、神の子であり、
別け隔て無く愛を授ける存在でもある自分は
逆にそんな想いを抱いてはならぬはずの、
誰か一人だけへと傾ける唯一の愛、
深き恋情というものを初めて彼へと意識してしまったほどで。
“うう〜〜〜っ。///////”
いやいや、こういう言い方をすると、
タブーを犯したのは彼のせいになってしまわぬか。
総ては自分が未熟だっただけ、
こんな素晴らしい人がいることを知らなかったのがいけない。
そこも重々判っていたればこそ、
天真爛漫に 人を愛し許すことを奨励して来た彼が、
切なくなるほど恋焦がれつつもそれが暴かれたりせぬようにと何とか我慢し。
ただ逢いたいということさえ切望となるほどの煩悶と化し、
“………って、あれ?”
もしかして、無理から押さえ込んだのも、
この恋情が深く熱いものへと育った原因かも知れなかったりして?
いやいや、別にそうなって困ったワケではないけれど。
それに“お友達”という等級でなら問題なかろと、
弟扱いながらも親しくしてもらえて、それは幸せだったりもしたのだし。
“でもなぁ…やっぱり…う〜ん?”
いっそ弾けていたって良かったのかも?
ああでもそれだと、
今の今、こんなに幸せではなかったかもしれない。
どんなに信じ合い愛し合ってる恋人同士でも
付き合いが長すぎると“倦怠期”とかいうのもやってくるって、
“オリュンポスの ○○さんが言ってたしなぁ。”
イエス様、そこは自主規制でよろしく。(笑)
愛しい人を想い過ぎたからだとはいえ、
何だか妙な方向へと思考が逸れ出したイエスだとも知らず。
目の前へ開いたPCを見るでなく、
何へか沈思黙考する彼の様子に気づき、
“………あ。///////”
こちらはこちらで、新聞を広げていたブッダ様。
視線が下がることで伏し目がちとなったそのお顔に、
こっそりとはいえ ついつい視線が向いてしまってしょうがなく。
“こういうのも、本当はいけないのだけれど…。////”
執着とか欲望とか、その果てで煩悩に育つだろう想いには違いないので、
そういう気持ちは 抱いても育ててもいけないと、
他でもない自身で説いているというのにね。
“深く知ろうとした人が、
他にまるきりいなかった訳でもないのにね。///////”
もしかしたら始まりは同情のような想いだったかも。
人の和子らへ神の意志と教えを授けるべく、
幼き頃からそれは苦難の生涯を辿り。
裏切りに遭い、身勝手な罵倒を浴び、
罪人と共に磔刑に処される屈辱にまみれつつという何とも壮絶な死を迎え、
天界へ迎えられたときは どれほど傷心していたことか。
けれど、そういった詳細を把握してもなお、
その聡明さや純真さは押しつけがましくもなくの無邪気で軽快で素晴らしく。
するすると心に馴染んでの、他の人では得難いと思うまでに暇間はかからず。
“今にして思えば、素地は前からあったんだなぁ。///////”
イエスが降臨のため 地上へ遣わされたりすると、
逢えぬという大前提がちょっとした苦痛になり、
ひりひりと切なくなるくせに、彼を想うことがますますと多くなりもした。
懐かれると悪い気はしなくて、
少しでも手が空くと、
彼が息抜きに身を置くことの多い“端境の庭”へと足を運ぶのが常ともなった。
そんな頃から少しずつ、彼への“特別”な想いは育まれていたのかも。
“……。/////////”
澄んだ玻璃玉のような、彼の双眸の淡い色合いが好きだ。
光を集めたような軽やかで明るい瞳は、だが、
何かしらを考え込んで伏し目がちになると
睫毛の陰が落ち、何とも言えない表情を滲ませる。
凄惨な生涯だったことへの後悔や怨嗟は欠片ほども持たぬ人であり、
あくまでも…ちょっとした考えごとばかりなのだけれど。
物思うときの彼の、真摯な冴えをはらんだそんな横顔は、
不思議と、よそ見をされているのだなんていう悋気は呼ばず、
ただただ見ほれてしまうばかりになってしまう如来様なのであり。
「……? どうしたの、ブッダ?」
「え? あ・いやいや、何でも…。//////」
見つからないよう、早く視線を剥がせばよかったが、
ついつい見惚れての見つめ続け過ぎたよで。
あわわと慌てて視線を泳がせ、
窓辺近くに置かれた小さな鉢を見、ほっとしたよに破顔して。
「イエスの想いのおかげか、
寒いのにも負けないで 花がもってるなぁと。」
紫のアネモネと淡いピンクのラナンキュラスという
早い春を思わせる取り合わせの鉢植えは、
昨日、イエスがこそりと用意していたらしいのをブッダへ贈ってくれた、
ある意味 恒例の“愛妻の日”の贈り物。
冗談抜きにすっかり忘れ去ってたところへ、
昼食後に、あのあのどうぞとコタツの天板へ差し出され。 一体どういう手品だろうか、まさかに 神通力とか使ってないでしょうねなんて、
深瑠璃色の双眸を真ん丸く見開いておれば、
『愛してるよ、ブッダvv』
『〜〜〜っ。////////』
あああああっ///////
そうかそういやそういう日があったっけ
確か去年もチューリップの花束もらったよな
ウリエルさんを目覚まし役にするほど捨て身で頑張ってくれて
凄っごく照れちゃったほど嬉しかったのにぃ〜〜vv
…とばかり、一気にそんなこんなが聡明な脳裏を駆け巡ってから、
なんで忘れてたかな、油断しまくり///////
あらためて反省しもした ひと騒ぎ。
勿論、大慌てしたこと含むの動揺あれこれは、あくまでも内心での大騒ぎ。
表へは何とか出さずに通しておいでの釈迦牟尼様なので、
「…えっとぉ。///////」
贈られたお花にぼんやり見とれて愛でてたのと言われると、
あら嬉しいvvと 素直に受け取ったイエスだったものか。
ブッダも大好きな大作りの手で ほりほりとくせっ毛を掻き回しつつ、
それこそ視線を泳がせて、
落ち着きをなくして照れてしまう可愛さであり。
お互いがお互いへ
萌えてばかりのお二人さん。
願わくば、
激しいまでに“きゅうんvv”と来るたび、
ご近所さんで妙な奇跡を起こしていませんようにね。
● おまけ ●
この冬は、といいますか、
テレビの情報番組などでよく聞くのが、
寒に晒して育てる“ちぢみホウレンソウ”とやら。
「何でも、寒さに対抗して葉の厚みも増して
甘みが濃くなるんだって。」
野菜と言えばの蘊蓄は元から多いブッダが
にこにこと嬉しそうにイエスへと説明をしてくれて、
「ほら、ハクサイやキャベツも、
雪に埋めておくと甘みが増すって言うじゃない。」
「あ・それ、
こないだのわくわくワイドでも言ってたねvv」
ちなみに、大根やニンジンでそれをやると、
種を残さねばと 根っこより葉の方にばかり栄養がいってしまい、
しまいにゃ茎が伸びて花が咲くので、
根こそ育てたいのに逆効果になるからご用心だぞよと、
NHKの『野菜の時間』で言ってたぞ。
「鍋にして食べると美味しいって。
八百政さんでも扱ってないかなぁ。」
ブッダの側は、売り出しのチラシを見ていて思い出したらしく、
特別な商品だから載せるのは無理かなぁなんて、
それでも商店街のそれ、隅々までを浚っておいでの傍らで。
野菜の美味しさは奥が深いこと、
地上で今のような シェア生活を始めたからこそとみに目覚めたイエスとしては、
ブッダのご意見へ“うんうんvv”と嬉しそうに頷いていたれども、
「私たちも同じだよねvv」
「………………え?」
ちょっと恥ずかしそうに、
でも嬉しいのほうが断然勝さってるという笑顔になったヨシュア様。
お惚気の気配を感じつつ、でもでも、
どういう意味かを知らずにはおれない、
どんなことへも探求心旺盛な釈迦牟尼様が、
小首を傾げて“それって?”と訊くよなお声を掛けたれば、
「だってサ、私たちも
寒くなるとますますとくっついて、
そんなこんなで ますますと甘くな………vv」
「だあもうっ、
それ以上は 言わなくていいっ。////////」
誰が聞いているでなし、
それでも恥ずかしいなんて ブッダったら可愛いなぁと、
柔らかい手のひらで口許を塞がれたイエスが、
何とか見えてる目許を やんわりたわめてしまい。
「イエス〜〜〜。////////」
照れてるならまだしも、仏の顔が消えないように、
その辺でやめときなさいと
場外から幾つも声が聞こえて来そうな
微妙な寒風も吹き抜けた、二月の初めのことでした。
〜Fine〜 15.02.01.
*これまでも結構寒かった日はあったけれど、
今日は妙に足腰が冷えまして。
そんなに凄い寒気団が来てるのかと思っていたらば、
……いつも履いてたニットのレッグウォーマーを
洗濯していて朝から履いてなかったから、
のようでした。
あんなささやかなものでこうまで違うんだなぁ…。
あ、こういうことは日記に書くのか。(進歩がない…)
めーるふぉーむvv
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